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介護と仕事は両立できる?働きながら介護を続けるための制度や具体的な対策を解説

 公開日:2026/04/12
介護と仕事は両立できる?働きながら介護を続けるための制度や具体的な対策を解説

働きながらご家族の介護を続けていると、身体の疲れだけでなく、この先どこまで続くのだろうという不安を感じることがあるかもしれません。実際に、ご家族の介護や看護を理由に離職する方は、年間約10万人と報告されています。しかし、介護が始まったからといって、ご自身の仕事やキャリアをすぐに手放す必要はありません。公的な支援制度や介護保険サービスを組み合わせることで、フルタイム勤務を続けながら介護に取り組んでいる方もいます。
本記事では、仕事と介護を両立する際に直面しやすい課題、知っておきたい公的制度、日常で取り入れやすい工夫について解説します。

参照:『介護保険制度について(40歳になられた方へ)』(厚生労働省)

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

介護と仕事の両立が難しい理由

介護と仕事の両立が難しい理由

仕事と介護の両立が難しくなる背景には、介護ならではの性質があります。仕事の責任が増しやすい時期と、親の生活を支える必要が出てくる時期が重なりやすく、十分な準備ができないまま対応を迫られることが、負担を重くする一因です。ここでは、両立が難しくなりやすい理由を解説します。

介護は突然始まるケースが多い

介護は、前もって十分に準備できるとは限りません。親が転倒して骨折し入院したり、脳血管障害などで急に倒れたりしたことをきっかけに、退院後すぐ生活支援が必要になることがあります。育児のように見通しを立てながら準備するのが難しく、仕事の調整や支援体制づくりが間に合わず、急な休みや勤務変更を迫られることがあります。

その結果、何から手を付ければよいのかわからず、気持ちが追い込まれやすくなります。介護そのものだけでなく、医療機関との連絡や退院後の生活調整、介護保険の申請などが重なるため、最初の時期ほど混乱しやすい傾向があります。

介護の時間的負担が大きい

在宅での療養生活を支えるには、排泄や入浴、食事、移動の介助など、毎日の暮らしを支えるために相応の時間がかかります。さらに、直接的な介助に加えて、通院の付き添いや介護認定の申請、更新手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなども必要です。このような予定は平日の日中に入ることが少なくなく、仕事を休みにくい立場の方ほど負担が大きくなりやすいです。ひとつひとつの用事にかかる時間は長くなくても、細かな調整が重なることで、仕事と介護の両立が難しくなることがあります。

精神的負担が徐々に増える

介護が大変になりやすい理由のひとつに、終わりの時期を見通しにくいことがあります。責任感が強いご家族ほど、周囲に頼ることをためらい、自分たちだけで支えようとして無理を重ねてしまいがちです。仕事を続けながら介護にも向き合う生活では、休息や気分転換の時間を確保しにくく、疲れが蓄積しやすくなります。さらに、日々の忙しさに加えて、この先どうなるのかわからない不安や、相談しにくさから生まれる孤立感が重なることもあります。介護離職の背景には、介助の時間だけでなく、こうした気持ちの負担が積み重なっている場合もあります。

介護と仕事を両立するために知っておきたい制度

介護と仕事を両立するために知っておきたい制度

介護を理由に仕事を辞めずにすむよう、育児・介護休業法において、働く方を支える制度が整えられています。制度の内容を知り、勤務先に早めに相談することが、両立に向けた第一歩です。

介護休業制度

介護休業は、要介護状態にある対象家族1名につき、通算93日まで取得できる制度です。この93日は3回まで分割して使うことができます。制度上は、介護そのものを休業中ずっと家族だけで担うためというより、介護サービスの導入、施設探し、ケアマネジャーとの相談など、働きながら介護を続ける体制を整える期間として位置づけられています。

そのため、介護休業を取る場合は、休んでいる間に何を整えるかを明確にしておくことが大切です。例えば、訪問介護を導入する、通所介護の利用を始める、今後の主な連絡先を整理するなど、休業期間を準備に充てる発想を持つと、その後の両立につながりやすくなります。

参照:『「仕事と介護の両立支援制度」を周知しよう』(厚生労働省)

介護休暇制度

介護休暇は、要介護状態にある家族が1名なら年5日、2名以上なら年10日まで取得できる制度です。現在は時間単位で取得できます。通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ、認定調査への立ち会いなど、短時間の対応が必要な場面で使いやすい制度です。介護は、急に病院受診が必要になったり、予定外の調整が入ったりすることがあります。そうした場面で有給休暇だけに頼るのではなく、介護休暇を組み合わせることで、仕事への影響を少し抑えやすくなります。勤務先の就業規則で、申請方法や有給・無給の扱いも確認しておきましょう。

参照:『「仕事と介護の両立支援制度」を周知しよう』(厚生労働省)

勤務時間調整制度

介護休業とは別に、事業主には、介護と仕事の両立を支えるための勤務時間調整の措置を設ける義務があります。具体的には、短時間勤務制度やフレックスタイム制度、時差出勤制度、介護費用の助成措置のいずれかについて、利用開始から3年以上の期間内で2回以上利用できるように整備することが求められています。あわせて、所定外労働の制限や深夜業の制限も請求できます。

介護は、毎日長く休むより、始業時間を遅らせる、残業を減らす、夜間対応を避けるなど、働き方を少し調整するほうが現実的な場合もあります。制度の有無だけでなく、自分の仕事に当てはめたときにどの制度が使いやすいか、上司や人事担当者と早めに相談しておきましょう。

参照:『「仕事と介護の両立支援制度」を周知しよう』(厚生労働省)

介護サービスを活用して負担を軽減する方法

介護サービスを活用して負担を軽減する方法

仕事と介護を長く両立していくには、介護保険サービスをうまく使い、ご家族だけで抱え込まない形をつくることが欠かせません。家族が担う役割と、介護の専門職に任せる役割を分けることで、毎日の負担が変わります。

在宅介護サービスの活用

住み慣れた自宅で生活を続ける場合は、自宅を訪問するサービス(訪問介護)と、施設に通うサービス(通所介護)を組み合わせていく形が基本です。訪問介護は、食事や入浴、排泄などの身体介助だけでなく、生活援助として日常生活を支える支援も受けられます。ご家族がすべてを担わなくてよくなることで、仕事を続けるための余白が生まれます。また、通所介護を利用すると、日中に機能訓練や見守りを受けながら過ごせるため、その時間にご家族は仕事に集中しやすくなります。夜間や休日の不安が強い場合は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用が役立つこともあります。通い、訪問、泊まりを組み合わせたい場合には、小規模多機能型居宅介護も選択肢です。

施設への入所

要介護度が上がり、在宅生活の維持や仕事との両立が難しくなってきた場合は、施設入所を検討することもあります。介護老人福祉施設や介護老人保健施設、認知症の方向けのグループホームなど、状態や目的に応じて選べる施設があります。

施設入所は、家族が介護を手放すことではありません。安全な療養環境を確保しながら、ご家族が無理なく関わり続けるための方法のひとつです。入所までに時間がかかることもあるため、必要になってから慌てるのではなく、負担が増えてきた段階でケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、情報を集めておきましょう。

退職を検討する前に考えたいこと

退職を検討する前に考えたいこと

仕事と介護の両立が苦しくなると、退職という選択が頭に浮かぶことがあります。ただ、疲れが強い時期ほど判断が狭くなりやすいため、まずは収入面や生活面、今後の見通しを整理することが大切です。離職以外の方法で状況を和らげられないか、順番に確認しましょう。

介護離職がもたらすリスク

介護のために仕事を辞めると、毎月の収入が途切れるだけでなく、ご自身の将来設計にも影響が及びます。介護費用と生活費を同時に支える必要があるなかで、収入源が減ることは大きな負担です。年金や貯蓄だけで長期間の介護に対応することは簡単ではありません。

さらに、離職によって職場とのつながりが薄れると、社会的な孤立感が強くなることもあります。介護の負担が軽くなるとは限らず、むしろご自身の生活の張り合いが減って気持ちが落ち込みやすくなる場合もあります。退職は選択肢のひとつですが、最初に選ぶ方法ではなく、制度やサービスを試したうえで検討する流れが望ましいといえます。

介護の期間と状態の変化への対応

介護は、数ヶ月で落ち着くこともあれば、年単位で続くこともあります。また、要介護者の状態は一定ではなく、ゆっくり変化する場合もあれば、感染症や転倒などをきっかけに急に変わる場合もあります。そのため、今つらい状況がこの先もずっと同じ形で続くとは限りません。

介護は、状態に応じて支援内容を見直すことが欠かせません。例えば、通所サービスを増やす、訪問介護の回数を調整する、ショートステイを取り入れるなど、ケアプランを変えることで負担がやわらぐことがあります。離職を決める前に、いまの支援の組み方で本当に限界なのかを、ケアマネジャーなどと一緒に見直してみることが大切です。

介護と仕事を両立している人の工夫

介護と仕事を両立している人の工夫

仕事を続けながら介護に取り組んでいる方は、一人で抱え込まず、家族や職場、関係機関の力をうまく借りています。特別なことをするというより、負担を一か所に集めない工夫をすることが大切です。ここでは、日常で取り入れやすい工夫を解説します。

家族、関係機関とのスケジュール共有

兄弟や親族がいる場合は、誰か一人だけに負担が集中しないよう、介護の方針や費用の分担について早めに話し合っておくと、後の調整がしやすくなります。受診日やサービス利用日、緊急時の連絡先などを共有しておくことで、急な対応が必要になった際にも動きやすくなります。

また、ケアマネジャーや医療機関には、ご自身の働き方を具体的に伝えておくことが大切です。残業の有無、出張の頻度、休みを取りやすい曜日などがわかれば、実際の生活に合いやすいケアプランにつながります。支援者に現状を正確に伝えることは、無理の少ない介護体制をつくる第一歩です。

職場との関係作り

家族の介護をしていることは、直属の上司や関係する同僚に早めに共有しておくほうが、結果として働きやすくなることがあります。急な遅刻や早退、欠勤が必要になった際にも、背景を理解してもらえていれば、業務調整の相談がしやすくなります。

介護は、ある日突然終わるものではありません。だからこそ、困ったときだけ伝えるのではなく、普段から状況を共有し、使える制度について確認しておくことが役立ちます。職場との関係を整えておくことは、制度利用のしやすさにもつながります。

介護負担の分散

介護を長く続けるうえで大事なことは、家族だけで全部を背負わないことです。介護保険サービスを十分に使い、専門職に任せられる部分は任せることで、ご家族の身体的な負担も精神的な負担もやわらぎます。

さらに、公的サービスだけでなく、地域の見守りやちょっとした声かけなど、身近な支えが助けになることもあります。ショートステイを使って休息日をつくる、休日の数時間を自分のために確保するなど、介護する側が休める仕組みを意識的に入れることも大切です。介護を続けるには、頑張り続けることより、無理をため込まない形をつくることが必要です。

介護と仕事の両立が難しくなったときの相談先

介護と仕事の両立が難しくなったときの相談先

介護と仕事の両立に行き詰まりを感じたら、一人で抱え込まず、早めに相談先につながることが大切です。介護保険の申請やサービス利用については、市区町村の介護保険窓口地域包括支援センターが身近な相談先です。地域包括支援センターでは、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが相談に応じ、必要な支援先につないでくれます。

日々のサービス内容の調整や、いまの介護負担をどう減らすかについては、担当のケアマネジャーに伝えることが大切です。また、勤務先で介護休業や短時間勤務制度の利用について困ったことがある場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部室などの窓口が相談先です。制度は知っているだけでは使えないため、困りごとを言葉にして外へ出すことが、状況を変えるきっかけになります。

まとめ

まとめ

仕事と介護を両立するための制度、介護保険サービス、日常での工夫についてみてきました。介護に直面すると、自分たちで何とかしなければと考えがちですが、支援を受けながら続けることは自然なことです。介護保険サービスや勤務先の両立支援制度を使い、周囲と役割を分けながら介護を続けていく視点が大切です。

少しでも苦しくなったら、ケアマネジャーや地域包括支援センター、職場の担当者に相談してください。ご自身の心身の健康を守ることが、結果としてご家族を支え続ける力にもつながります。

この記事の監修医師