介護アセスメントとは?目的や評価内容、家族が知っておきたいポイントを解説

介護アセスメントは、介護サービスの利用開始時に必ず行われる過程です。個別に状況を把握して、利用者に理想的な支援を考えるためには欠かせません。本記事では、介護アセスメントとは何か、目的や流れ、具体的な質問など知っておきたいポイントを解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護アセスメントとは

介護アセスメントとは、利用者にとって本当に必要な支援は何かを明らかにする過程です。いざ介護サービスが必要になったときに始めに行われ、利用する介護サービスを決定します。介護アセスメントの意味と目的を知っておきましょう。
介護アセスメントの意味
介護アセスメントとは、利用者の状態、生活環境、家族状況などについて、多角的に情報を集め、評価して分析する一連の流れです。主に、ケアマネジャーによる利用者本人や家族との面談で実施されます。ケアマネジャーが一方的に評価するものではなく、利用者本人が自分の状況や希望を伝える重要な機会でもあります。
要介護度が同じでも、利用者によって生活環境や心身の状態、価値観、希望などは異なります。個別に事情を把握して、必要な支援を考えるためには欠かせない過程です。利用者が直面している課題を明らかにして、生活の質の向上につなげます。
介護アセスメントの目的
介護アセスメントの目的は、利用者にとって本当に必要な支援を明らかにすることです。介護サービス利用開始のタイミングだけではありません。利用者の状態が変わった時やケアプランの見直しが必要な時など、継続的に行われます。
利用者一人ひとりに合ったケアプランを作成するために、情報収集は欠かせません。情報収集が不十分なままだと的外れな介護が行われるリスクがあり、場合によっては事故や利用者の不満につながる可能性があるためです。利用者本人の意見や家族の考えも考慮しながら、希望に沿うために解決すべき課題を見つけ出します。
また、アセスメントは利用者のできないことを確認するためだけのものではありません。現在維持できている能力や強みも同時に把握し、それを活かした支援を考えることも重要な目的です。能力を尊重した支援は、利用者の自立心や意欲の維持にもつながります。
ケアプランとの関係
介護アセスメントは、ケアプランと密接に関わっています。ケアプランとは、利用者に提供する介護サービスを具体的に記した計画書です。アセスメントで情報収集し、課題分析して必要と考えられた支援を反映してケアプランが作成されます。作成するのは専門職ですが、利用者の意向をケアプランに反映するための重要な過程です。
ケアプランは一度作成して終わりではなく、アセスメントの再実施とともに継続的に更新されます。
適切なケアプランが作成できるかどうかは、いかに介護アセスメントが行えるかにかかっています。
介護アセスメントで確認される主な内容

介護アセスメントでは、さまざまな視点から利用者の状態と困りごとを確認します。厚生労働省は、令和5年改正の課題分析標準項目として23項目を定めています。以下では、主な内容を4種類に分けて解説します。アセスメントに備え、適切なケアプラン作成につなげましょう。
参照:『介護保険最新情報 Vol.1179』(厚生労働省老健局 認知症施策・地域介護推進課)
身体機能や日常生活動作(ADL)
介護アセスメントでは重要で、健康状態や日常生活を送るために必要な動作がどの程度できるか把握します。Activities of Daily Livingを略してADLと呼び、基本的日常生活動作と手段的日常生活動作に分類されます。
基本的日常生活動作は、日常生活で行う基本的な動きです。具体的には、起き上がる動作や身だしなみを整える動作、移乗、移動、食事、着替え、排せつ、入浴などが該当します。
手段的日常生活動作は、複雑な手順を伴う日常生活の動きです。料理、掃除、洗濯、交通機関の利用、金銭管理、スケジュール調整などが該当します。
利用者が生き生きと生活するために、身体機能やADLの維持や向上を目指したケアプランの作成が必要です。
認知機能や精神状態
日常生活で意思決定を行うための認知機能や精神状態を確認し、日常生活で困っていることがないか把握します。記憶力、判断力、見当識などの認知機能は、薬の飲み忘れや鍵のかけ忘れ、火の消し忘れなど、生活上の安全に関わります。
また、気分の落ち込みや不安、意欲の低下などのうつ状態の傾向がないか確かめ、認知症やうつ病を発症していないか確認するのも大切です。
認知機能や精神状態、社会との関わりの状況などから、利用者らしく生活できるよう、不安を軽減するような支援につなげます。
認知機能の変化は、本人よりも家族や周囲の人が先に気付くことがあります。「近ごろ、同じことを何度も聞くようになった」「外出を嫌がるようになった」などの日常の変化も、アセスメントの場で積極的に伝えるとよいでしょう。
生活環境
利用者が生活している環境を把握して、居住環境の安全性や生活に支障がないかどうか確認します。同じ問題を抱えていても、利用者が置かれている生活環境によって適した支援が違うためです。同居家族の有無、段差や手すりのような住居内のバリアフリーの状況、トイレやお風呂の造りなどを調べ、具体的な支援の方向性を考えます。自立した生活が長く続けられるような、環境を整えるための支援を考える際に大切です。
住環境の確認は、事故を未然に防ぐためのチェックの意味も持ちます。利用者が特に不便はないと感じていても、客観的に見るとリスクがある場合もあります。面談の際には、気になる箇所を一緒に確認してもらえるようにケアマネジャーに声をかけましょう。
本人や家族の希望
ケアプランに反映するため、利用者本人の希望や想いの把握が求められます。ケアプランは、あくまでも利用者本人のためのプランです。「~できない」という課題を「~したい」という目標にとらえ直し、実現できる支援を考えます。
一方、利用者家族の希望や介護への参加意欲も重要です。介護で利用者家族が心身の負担やストレスを感じることがあります。家族自身の意向や生活にも配慮したケアプランが求められます。
介護アセスメントの流れ

介護アセスメントは、ケアマネジャーが利用者の自宅を訪問し、本人や家族との面談から始まります。単なる質問の受け応えではなく、住環境の観察や関係者への確認なども含む多面的な視点で行われるものです。
質問に的確に答えられるか不安を感じる場合は、事前にメモを用意しておくといいでしょう。日頃から気になっている症状や困りごと、変化などを書き留めておくと、面談当日にスムーズに伝えられます。また、本人が言葉でうまく表現できない場合は、同席している家族による補足も大切です。
聞き取りや面談による情報収集
ケアマネジャーが利用者の自宅を訪し、本人や家族と面談して必要な情報を聞き取ります。心身の状態や日常生活の困りごと、家族構成、既往歴、通院の有無などを確認し、本人と家族どちらの意向も直接確認します。利用者の状態をより正確に把握するためです。
また、すでに通院している場合などは、主治医をはじめとした関わりがある専門職からも情報収集して複数の視点から評価します。
施設入所の場合は、施設担当スタッフがアセスメントを行い、入所後の生活支援計の作成につなげます。
生活状況の確認や観察
自宅訪問時に、面談と並行して実際の生活環境や動作の観察も行われます。玄関の段差、廊下の幅、浴室やトイレの造り、寝室の位置などを確認します。起こりうる転倒リスクや、背活動線上の問題点を把握するためです。ケアプランの作成だけでなく、福祉用具の選定や住宅改修の必要性を判断する際にも大切です。
自宅内で利用者本人が実際に日常動作を見せると、身体機能をより具体的、客観的に評価できます。訪問時には、普段通りの生活の様子を見せましょう。見られているから、と普段と異なる行動をしてしまうと、実態に合わない評価につながる可能性があります。
ケアプラン作成への反映
アセスメントで収集し分析した情報は、ケアプランを作成する際に直接反映されるものです。ケアマネジャーは、アセスメントの結果をもとに生活上の課題を整理して、解決するための目標とサービス内容を組み立てます。ケアプランの原案ができあがると、サービス担当者会議によって内容の確認や調整が行われます。
サービス担当者会議は利用者本人や家族も参加するものです。作成されたケアプランの内容に疑問や意見がある場合は遠慮なく伝えましょう。本人と家族の同意を得てケアプランが確定した後、各介護サービスの利用が始まります。
ケアプランはサービス開始後も定期的に見直され、少なくとも月1回のモニタリング訪問が行われます。利用者の状態が変化すればアセスメントを再実施し、状況に合わせて更新されるものです。
質問事項の具体例
介護アセスメント面談時の質問事項はどのようなものか、具体例を以下に挙げます。
- 歩行や起き上がったり立ち上がったりする動作や不安はあるか。
- 食事、入浴、排泄は自分でできるか。
- 転んだ、骨折した経験はあるか。現在かかっている病気はあるか。
- 起きる時間や寝る時間はどれくらいか。
- 家事はどの程度できるか。
- 服薬管理ができるか。
- 自宅に不便な場所はないか。
- どのような生活を続けたいか。
- どれくらい家族に助けてほしいか。
- 日常生活で心配なこと、困っていることは何か。
このような質問の答えがアセスメントシートと呼ばれる様式に沿って記録され、ケアプラン作成時に反映されます。
アセスメントにかかる時間と回数の目安
介護アセスメントにかかる時間や回数は、公的に設定されていません。個人差がありますが、初回は確認すべき項目が多く、住環境の観察も含まれます。1時間〜1時間半程度かかると想定しましょう。
サービス開始後も、利用者の状態が変化した場合や、ケアプランを見直すタイミングで再度アセスメントが行われます。例えば、入院や退院の後、季節の変わり目に体調が変化した場合、家族の介護事情に変化があった場合なども再アセスメントの対象です。前回と同じ状況とは限らない視点を持ち、気になることがあればケアマネジャーに積極的に相談しましょう。
家族がアセスメントを受ける際のポイント

ケアマネジャーに状況を正確に理解してもらうには、希望や困りごとを遠慮なく具体的に伝えることが大切です。より適切なケアプランにつなげるために、アセスメントをより有意義なものにしましょう。
本人や家族の希望を率直に伝える
アセスメントでは、身体の状態だけでなく、本人や家族が「これからどう生活したいか」という意向を伝えることが大切です。「自宅での生活を続けたい」「できるかぎり自分でやりたい」「家族の介護負担を減らしたい」など、どのような希望でも率直に伝えましょう。
本人は自宅を希望しているが、家族は施設入所も検討したい、など本人と家族の希望が異なる場合もあるでしょう。そのような場合も正直に伝え、ケアマネジャーと一緒に双方の意向を整理して現実的な支援策を一緒に考えます。
また、将来に向けた希望を伝えることも今後病状が進んだ場合にどうしたいか、施設入所をどう考えているかなど、現時点では決まっていないことも伝えましょう。方向性を共有しておくと、ケアマネジャーが長期的な視点でサポートしやすくなります。
困っていることを具体的に伝える
より的確な支援を提案するため、できるだけ具体的な状況を伝えましょう。ケアマネジャーは利用者や家族の生活の細部までの把握は困難です。
「入浴時、湯船に入る時に苦労するので手すりが欲しい」「夜中にトイレに起きるが、階段を降りなければならず危険を感じる」などのように、要望や困りごとはできるかぎり明確に伝えましょう。
まとめ

介護アセスメントは、利用者それぞれに合ったケアプランを作るための起点となる過程です。利用者本人の心身の状況や能力、家族の意向や生活環境など、多くの視点から情報を集めて適切な支援につなげます。希望や困りごとは、具体的に伝えるとよりよいケアプランにつながります。介護アセスメントは利用者の生活を整えるための機会だと考え、積極的に活用しましょう。
参考文献
- 『(主として介護支援専門員による)アセスメントについて』(厚生労働省)
- 『介護保険最新情報 Vol.1179』(厚生労働省老健局 認知症施策・地域介護推進課)
- 『居宅介護支援事業所の介護支援専門員が行うアセスメントにおける情報把握の構成要素』(厚生の指標)
- 『介護過程におけるアセスメントに関する一考察 ― 理論と手法の体系的整理の検討 ―』(敬心・研究ジャーナル)
- 『自立生活の指標:日常生活動作(ADL)とは』(健康長寿ネット)
- 『認知症・精神疾患(うつ)のアセスメントと支援』(大阪府)
- 『第3章 認知症の診断 4.認知機能検査』(健康長寿ネット)
- 『家族をケアする:毎日の生活という文脈での家族介護を考える』(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 『日常生活支援住居施設における個別支援計画の策定状況に関する調査事業報告書』(居住支援全国ネットワーク)
- 『介護保険最新情報 Vol.1099』(厚生労働省老健局 認知症施策・地域介護推進課)
『分析表』(石川県)


