訪問入浴介護とは?サービス内容や利用できる方、当日の流れや費用の目安を解説

訪問入浴介護は、自宅での入浴が難しい高齢の方や障碍のある方に対して、専門のスタッフが浴槽を持ち込み、入浴をサポートする介護サービスです。清潔を保つだけでなく、心身のリフレッシュや血行促進にもつながる大切なケアとして、多くのご家庭で利用されています。看護職員と介護職員がチームで訪問し、体調確認から入浴介助、後片付けまでを丁寧に行うため、安心感を持って自宅で入浴を楽しむことができます。本記事は、訪問入浴介護のサービス内容や利用できる方の条件、当日の流れ、費用の目安を解説します。

監修作業療法士:
稲木 康平(作業療法士)
経歴:回復期病棟で約9年ほど、患者様やご家族様のニーズに合わせたリハビリテーションを実施する。また、数多くの患者様に対して、退院後に快適な生活を過ごされるための自宅の環境調整や、介護サービスの提案、家族指導も行ってきた。
資格:作業療法士免許、医療経営士3級
目次 -INDEX-
訪問入浴介護とは

訪問入浴介護は、自宅での入浴が難しい方に専門スタッフが訪問して入浴を支援するサービスです。
訪問入浴介護の定義
訪問入浴介護とは、自宅での入浴が困難な高齢の方や障碍のある方に対して、専門のスタッフが利用者の自宅を訪問し、安全性を重視し快適な入浴を提供する介護サービスです。看護職員1名と介護職員2名の3人1組が専用の入浴車で訪問し、移動式浴槽を設置して行います(要支援1、要支援2の方が受けることのできる介護予防訪問入浴介護は、看護職員1人と介護職員1人の計2人)。
入浴前には看護職員がバイタルサインを確認し、体調に問題がないかをチェックしてから入浴を実施します。入浴中や終了後も体調の変化に注意を払いながら、全身の清潔保持や血行促進、リラックス効果を図ります。訪問入浴介護は、入浴による爽快感や生活の質(QOL)の向上を支援するだけでなく、介護者の負担軽減にもつながる重要なサービスです。
参照:
『訪問入浴介護とは 』(健康長寿ネット)
『介護予防訪問入浴介護とは 』(健康長寿ネット)
訪問入浴介護が必要になる状況
自宅の浴槽への出入りや浴室内での立位保持・座位保持が難しく、家族の介助だけでは安全性を重視して入浴できない場合が挙げられます。具体的には、脳卒中後の麻痺や高度の関節拘縮、重度の心不全・呼吸器疾患などにより、浴槽をまたぐ、立ち上がる、しゃがむなどの動作の途中で転倒する危険が高い方が挙げられます。また、長時間の移動を伴う通所サービスの利用が負担になる方も対象です。寝たきりで体位変換や移乗に介助を要する方や、認知症により浴室での見守り・声かけが欠かせない方も、訪問入浴介護の利用で、自宅で安心感を持って入浴が可能です。
訪問入浴介護の利用者とは
介護保険で要介護認定を受けていて、自宅の浴槽を使った入浴が安全性を重視して行えない方を指します。具体的には、寝たきりやそれに近い状態でベッドからの起き上がりや車椅子への移乗に常に介助が必要な方、脳卒中後の片麻痺やパーキンソン病、重度の関節リウマチなどにより、浴槽をまたぐ・立ち座りをするなどの動作が困難な方が含まれます。
また、心不全や慢性閉塞性肺疾患などで少しの動きでも息切れしやすく、通所介護の入浴まで体力がもたない方、認知症が進行していて浴室内での見守りや声かけが欠かせず、家族だけでは不安が大きい方も対象です。さらに、褥瘡や皮膚の発赤があり、入浴のたびに皮膚状態の観察や保清に配慮が必要な方にとっても、看護職員と介護職員がチームで支援する訪問入浴介護は、在宅生活を続けながら清潔と安心感を保つために有用なサービスです。
訪問入浴介護で受けられるサービスの内容

入浴前後の体調確認と自宅での入浴介助、洗髪・洗身・後片付けまで一連の入浴ケアを受けることができます。
入浴介助の具体的な内容
まず看護職員が血圧や脈拍、体温、呼吸状態などを確認し、その日の体調で入浴してよいかを判断します。次に、介護職員がベッドからストレッチャーや車椅子への移乗を介助し、脱衣やかけ湯を行いながら、利用者さんが安心感を持てるように声かけを続けます。
浴槽内では、体調に配慮しつつ、洗髪・洗顔・上肢・下肢・背中などを順番にやさしく洗浄し、必要に応じて爪や皮膚の状態も観察します。洗身後は、しっかりとすすいでからゆっくりと湯船につかり、疲労や息切れがないかを確認しながら短時間で切り上げます。浴槽からの退出後は、素早く全身を拭いて保湿剤などを塗布し、更衣や整容を整えたうえで、再度バイタルサインを測定して体調の変化がないかを確認し、さいごに使用した用具や浴槽の片付けと室内の簡単な清掃まで行います。
看護職員による健康チェック
看護職員による健康チェックが、安全性の高い入浴に重要な役割を担います。まず入浴前に、血圧・脈拍・体温・呼吸状態などのバイタルサインを確認し、その日の体調や持病の状態から「入浴してよいか」「シャワー浴や清拭に切り替えるべきか」を判断します。
また、心不全や呼吸器疾患がある方では、むくみや呼吸苦の有無、顔色なども細かく観察します。皮膚も、褥瘡や発赤、かゆみ、発疹の有無をチェックし、洗い方や湯温への配慮につなげます。
入浴中も表情や会話から疲労感やめまいの兆候がないかを見守り、異変があればすぐに中止します。入浴後には再度バイタルサインを測定し、血圧低下や脱水症状がないかを確認したうえで、その日の状態を記録し、必要に応じて主治医やケアマネジャーへ情報提供を行います。
入浴が難しい場合の対応
その日の体調や全身状態に応じて、無理をせず別の方法で清潔を保つ対応を行います。入浴前のバイタルサイン測定や表情・呼吸状態などから、血圧が高すぎる・低すぎる、熱がある、強い息切れがある、ぐったりしているなどの異常がみられた場合には、看護職員が入浴を中止または延期と判断します。
その際は、全身浴ではなくシャワー浴や部分浴、ベッド上での清拭、足浴・手浴など、身体への負担が少ない方法に切り替えて、できる範囲で清潔保持とリラックスが得られるように調整します。また、認知症の方などで強い拒否がみられる場合も、無理に入浴をすすめず、声かけや環境調整を行いながら、まずは清拭のみとするなど、本人の気持ちや安全性を重視した柔軟な対応を行います。
利用対象者と利用開始までの流れ

訪問入浴介護の利用対象者の条件と、ケアマネジャーへの相談から契約・サービス開始までの手続きの流れを解説します。
訪問入浴介護の利用対象者
訪問入浴介護の利用対象者は、介護保険で要介護認定(原則要介護1〜5)を受けており、自宅の浴槽で安全性の高い入浴が難しい在宅の方です。具体的には、寝たきりやそれに近い状態でベッドからの起き上がりや移乗に常に介助が必要な方、浴槽をまたぐ・立ち座りをするなどの動作に高い転倒リスクがある方が含まれます。また、心不全や慢性呼吸不全などで通所介護の入浴までの外出が負担となる方、認知症が進行し浴室内での見守りや声かけが欠かせず家族だけの介助では不安が大きい方も対象です。
参照:
『訪問入浴介護とは 』(健康長寿ネット)
『どんなサービスがあるの? - 訪問入浴介護』(厚生労働省)
サービス利用開始までの流れ
まず介護保険で要介護認定を受けていることが前提です。そのうえで、担当ケアマネジャーに相談し、「自宅での入浴が難しいこと」「訪問入浴介護を利用したいこと」を伝えてケアプランへの位置付けを検討してもらいます。次に、ケアマネジャーが訪問入浴介護事業所を紹介し、事業所の担当者が自宅を訪問して、浴槽を設置できるスペースや電源・給排水の状況、駐車場所、利用者さんの心身の状態などを確認したうえで、サービス内容や頻度、留意点を打ち合わせます。内容に同意できれば、事業所との利用契約を結び、主治医から入浴許可を得たうえで、ケアプランに沿って訪問入浴介護の利用が開始されます。
参照:『介護保険・障害者自立支援事業/訪問入浴事業/ 』(鶴田町社会福祉協議会)
訪問入浴介護の流れと家族が行う準備

訪問入浴介護の当日の流れと、ご家族が事前に準備しておくと安心感が持てるポイントを解説します。
訪問から入浴終了までの手順
訪問入浴介護の当日は、まず訪問入浴車で看護職員1名と介護職員2名のスタッフが決められた時間にご自宅を訪問します。居室の床を養生し、専用の浴槽やホース類などの機材を室内に運び入れて設置しながら、お湯張りの準備を進めます。
その間に看護職員が血圧・脈拍・体温などのバイタルサインを測定し、その日の体調で入浴してよいかどうかを判断します。入浴可能と判断されたら、介護職員がベッドから浴槽までの移動を介助し、脱衣やかけ湯を行ったうえで、洗髪・洗身・陰部洗浄などを順番に行います。洗い終えたら上がり湯をして浴槽からベッドに戻り、全身をよく拭いて保湿剤などを塗布しながら着衣を整えます。
最後に、看護職員が再度バイタルサインを確認して体調に変化がないかをチェックし、スタッフが浴槽や機材の片付けと室内の簡単な清掃を行って終了です。
参照:『白川町訪問入浴』(社会福祉法人白川町社会福祉協議会 公式サイト)
所要時間の目安
訪問入浴介護の所要時間は、1回あたりおおよそ40〜90分程度となることが少なくないです。標準的には、機材の搬入・設置やお湯張り、片付けの時間も含めて60分前後を目安と考えます。ただし、利用者さんの心身の状態や住環境、当日のバイタルサインや体調によって、実際の時間は前後します。例えば、移乗に時間がかかる方や、皮膚の観察・処置が必要な方、認知症があり声かけや安心感をもつための時間を多く要する方では、全体の流れをゆっくり進めるため所要時間が長くなる傾向があります。一方で、短時間での部分浴や清拭に切り替える場合は、40〜50分程度で終了もあります。
参照:『訪問入浴|社会福祉法人 』(塩尻市社会福祉協議会 ー 長野県塩尻市)
家族が行う準備
まず、入浴の前に着替えの衣類、下着、タオル類(バスタオル・フェイスタオル)、必要であればおむつやパッド、保湿剤や軟膏、整髪料などをひとまとめにしておくと、当日の流れがスムーズです。また、居室から浴槽を設置する場所までの動線にある家具や電気コード、マットなどにつまずきやすい物を片付けておくことも大切です。
冬場は室温が下がりすぎないよう、事前に暖房を入れておくと、ヒートショック予防にもつながります。さらに、最近の体調や気になる症状、医師から言われている注意点、入浴のときに困りやすいこと(痛みが出やすい部位、怖がりやすい動作など)をメモにしておき、訪問のときに看護職員・介護職員へ共有すると、安全性が高く負担の少ない入浴介助につながります。
参照:『白川町訪問入浴』(社会福祉法人白川町社会福祉協議会 公式サイト)
訪問入浴介護にかかる費用

訪問入浴介護にかかる費用の目安や自己負担額、加算の有無など、介護保険を利用した場合の仕組みとともに解説します。
利用料金の仕組み
訪問入浴介護の利用料金は、介護保険の1〜3割負担を基本として、サービス提供ごとに定められた単位数に地域単価をかけて計算されます。原則として多くの方は1割負担ですが、所得に応じて2割または3割負担となる場合があります。
訪問入浴介護では、看護職員1名と介護職員2名が行う全身浴や、清拭・部分浴ごとに1回あたりの基本単位数が決められており、この基本分に初回加算や各種加算・減算(清拭・部分浴時の減算など)が加わった総単位数が事業所の請求額です。利用者が実際に支払う自己負担額は、この総額に対して負担割合証に記載された1〜3割をかけた金額です。
参照:
『どんなサービスがあるの? - 訪問入浴介護』(厚生労働省)
『訪問入浴介護とは 』(健康長寿ネット)
『白川町訪問入浴』(社会福祉法人白川町社会福祉協議会 公式サイト)
利用可能な回数
介護保険上で明確な週〇回までなどの回数制限はなく、要介護度や心身の状態、支給限度額の範囲、本人・家族の希望などを踏まえてケアマネジャーがケアプランのなかで調整します。実際には、介護保険の支給限度額内で利用する場合、ほかの訪問介護や通所介護などと組み合わせることが少なくないです。
ただし、皮膚の汚れが強い、発汗が強い季節でさっぱりしたい、家族の入浴介助負担が大きいなどの事情がある場合には、自己負担を増やして回数を増やすことも可能です。
まとめ

訪問入浴介護は、自宅の浴槽で安全性の高い入浴が難しい要介護高齢の方や障碍のある方に対し、看護職員と介護職員が専用の浴槽を持ち込んで入浴を支援する在宅介護サービスです。入浴前後には血圧や体温などの体調チェックを行い、必要に応じて清拭や部分浴に切り替えるなど、安全面に配慮しながら清潔保持とリラックスを図ります。利用対象は主に要介護認定を受けた在宅生活者で、利用回数や頻度はケアマネジャーと相談しながらケアプランのなかで決めていきます。費用は介護保険が適用され、原則1〜3割の自己負担で利用できることが少なくないため、家族の入浴介助の負担軽減にも役立つサービスです。
参考文献




