要介護5とは?受けられるサービスや介護費用などわかりやすく解説します

ご家族が要介護5と判定され、途方に暮れている方もいるでしょう。要介護5は介護保険制度の中で最も重い区分であり、日常生活のほぼすべての場面で介助なしでは生活が成り立たない状態です。在宅介護の疲弊と、施設入所への罪悪感に板挟みになる葛藤は、とても自然なことです。
この記事では、要介護5の認定基準や介護サービスの種類、費用の目安など、ご家族が次の一歩を踏み出すためのポイントを解説します。
※この記事は2026年3月時点の制度に基づいています。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
"要介護5"とは

要介護5とは、介護保険制度の7区分で最も介護の必要度が高い状態です。身体・認知機能が著しく低下し、全面的な介助なしには生活が成り立ちません。認定の仕組みや基準を解説します。
要介護認定の仕組み
市区町村の窓口へ申請後、訪問調査と主治医意見書をもとに一次判定が行われ、介護認定審査会の審査(二次判定)を経て区分が決まります。
要介護5の認定基準
要介護5の指標は、要介護認定等基準時間が110分以上、またはこれに相当する状態です。具体的な状態の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 具体的な状態の目安 |
|---|---|
| 生活全般 | 食事・排泄・入浴・着替えのすべてに全面的な介助が必要 |
| 移動 | 自力での起き上がり・立ち上がり・歩行が困難で、寝たきりに近い状態 |
| 姿勢保持 | 寝返りが自力で行えず、数時間おきの体位変換の介助が必要 |
| コミュニケーション | 意思疎通が著しく困難になるケースが多くみられる |
要介護5は、身体への直接的な介助だけでなく、医療的なケアも必要になることが多い段階です。日常的な吸引処置や経管栄養など、医療行為に対応できる体制を整えることが、在宅継続を左右するポイントです。
要介護4との違い
要介護4と5はどちらも全面介助を要しますが、基準時間が異なります。各区分の目安は以下のとおりです。
| 区分 | 基準時間の目安 | 状態の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 | 日常生活はほぼ自立 家事などに一部支援が必要 |
| 要支援2 | 32分以上50分未満 | 立ち上がりなどが不安定で、支援の必要性が高い |
| 要介護1 | 32分以上50分未満※ | 日常生活に部分的な介助が必要で、状態が不安定 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 | 日常生活の多くで部分的な介助が必要 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 | 日常生活のほぼ全般で全面的な介助が必要 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 | 日常生活全般で全面的な介助が必要な重度の状態 |
| 要介護5 | 110分以上 | 介助なしには生活できない、介護保険制度で最も重い状態 |
※要支援2と要介護1は同じ時間帯。認知機能の低下や病状の安定性などで振り分けられます。
要介護4との大きな違いは意思疎通の困難さと医療ニーズの増大です。嚥下(えんげ)機能の低下に伴う経管栄養や、日常的なたんの吸引が必要になるケースが増えます。
要介護5の方の生活状態の目安

介助の必要度や認知機能の変化を解説します。
日常生活のほとんどに介助が必要な状態
起床から就寝まで、ほぼすべての場面で介助者の手が必要です。主な介助の内容は以下のとおりです。
| 場面 | 介助の内容の目安 |
|---|---|
| 食事 | 飲み込み(嚥下)の見守り・補助、きざみ食やとろみ食など食事形態の管理が必要 |
| 排泄 | おむつ交換・トイレへの移乗に全面的な介助が必要。失禁が常態化しているケースも多い |
| 入浴 | 洗体・洗髪・浴槽への出入りすべてに介助が必要 |
| 着替え | 起き上がりから着脱まで、すべての動作に介助が必要 |
移乗(ベッドから車いす、車いすからトイレへの移動など)は介護者の腰や膝への負担が大きいため、スライディングボード(移動補助板)や移動用リフトなどの福祉用具を積極的に活用しましょう。
寝たきりに近い生活になるケース
要介護5では、自力での寝返りや起き上がりが困難になり、一日の大半をベッドで過ごすケースが少なくありません。この状態が続くと特に気を付けたいのが褥瘡(じょくそう、床ずれ)です。長時間圧迫されることで組織が壊死(えし)する状態で、こまめな体位変換や予防マットレスの導入、毎日の皮膚観察が大切です。
訪問看護師が定期的に皮膚の状態を確認し、医師と連携しながら処置を行うことができます。
認知機能の低下がみられるケース
認知機能が著しく低下し、記憶力・判断力・言語能力が大幅に失われるケースが多くみられます。身体的な介助以上に、精神的なつながりが希薄になる寂しさが伴う方も少なくありません。
認知機能の低下に伴い、以下のような状況に直面することがあります。
| 症状 | 具体的な影響 |
|---|---|
| 意思疎通の困難 | 「痛い」「トイレ」などの意思表示が難しくなり、本人の不快を察知することが介護者の大切な役割になる |
| 失禁の増加 | 排泄の感覚が薄れ、おむつへの依存度が高まる |
| 表情・反応の乏しさ | 感情の表出が減り、家族としてのやりがいを見つけにくくなるケースがある |
穏やかな声のトーンや触れる手の温かさなどは、言葉が伝わりにくい状態でもご本人に届きます。「伝わらない」と感じながらも続けるケアの積み重ねが、ご本人の生活の質(QOL)を支えています。
要介護5で利用できる主な介護サービス

要介護5の区分支給限度基準額(月額)は、36,217単位(約362,170円分)です。この範囲内であれば、所得に応じた1〜3割の自己負担でサービスを組み合わせて利用できます。
ここでは、主なサービスを解説します。
参照:
『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
『介護報酬ハンドブック』(シルバー産業新聞社)
訪問介護(ホームヘルプ)
ホームヘルパーが身体介助(入浴・排泄・食事・移乗など)や生活援助(掃除・洗濯・調理など)を行うサービスです。一日複数回の訪問を組み合わせるほか、定期巡回・随時対応型訪問介護看護で夜間も含めた切れ目のない支援が受けられます。
訪問看護や訪問リハビリ
訪問看護は、看護師が自宅を訪問し医療的ケアを行うサービスです。要介護5では医療ニーズが高まるため、在宅継続の要といえます。訪問リハビリでは関節拘縮の予防や嚥下機能の維持を支援します。主治医の指示のもと両サービスを組み合わせることで、医療と連携した介護体制をつくれます。
ショートステイ(短期入所生活介護)
数日から数週間、介護施設に宿泊して介護を受けるサービスです。介護者の体調不良時だけでなく、まとまった休息のための定期利用も推奨されます。「休むために預けるのは申し訳ない」と感じる方もいますが、ご家族の健康が在宅介護を長く続ける土台になります。
福祉用具レンタルや住宅改修
要介護5の方の在宅生活では、福祉用具の活用が安全性と介護者の負担軽減に直結します。介護保険では、以下のような用具のレンタルが対象です。
- 特殊寝台(電動ベッド)およびサイドレール
- 床ずれ防止用具(エアマットレスなど)
- 体位変換器
- 移動用リフト(つり具の部品を除く)
- 車いす(自走用・介助用)および付属品
また、住宅改修では、介護保険を利用して20万円を上限に、車いすやストレッチャーが通るための段差解消、引き戸への扉の取り替えなどを含め、工事費用の一部が支給されます。
住環境を整えることで、介助作業を安全に行いやすくなります。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しながら、必要な用具や改修を検討しましょう。
要介護5で入居を検討できる介護施設

在宅での生活継続が難しくなった場合や医療的なケアが増大している場合には、施設入所が現実的な選択肢になります。要介護5の方が入居を検討できる主な施設を解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上を対象とした公的施設です。24時間体制でケアスタッフが常駐し、終身利用が基本です。費用が抑えられ人気が高く、入居待機が数ヶ月から数年になるケースもあります。ただし要介護5の方は優先されやすいため、早めに複数施設への申し込みをおすすめします。
介護付き有料老人ホーム
民間企業が運営し、24時間体制で介護や機能訓練が提供されます。特養に比べ費用は高めですが、待機期間が短くすぐに入所が必要な状況に合わせやすい選択肢です。医療連携や認知症対応の専門性が異なるため、複数比較してご本人の状態に合った環境を選びましょう。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、病院退院後にリハビリを集中して受け、在宅復帰を目指す施設です。医師・看護師・リハビリ専門職が常駐しています。要介護5の方の場合、在宅復帰が難しいケースも多いですが、特養の入所待ちの間や医療的ケアが落ち着くまでの一時的な入所先として活用されることもあります。
介護医療院
介護医療院は、長期にわたる医療ケアが必要な方向けの公的施設です。日常的な医学管理と介護サービスを一体的に提供し、看取りやターミナルケアにも対応します。「生活の場で医療を受けたい」というニーズに応え、医療的ケアの必要度が高い方に適しています。
家族が要介護5になったときに考えたいこと

要介護5の介護生活では、お金への不安や先が見えないつらさがつきまといます。ここでは、具体的な費用の目安や無理なく在宅を続ける工夫、限界を感じたときに頼れる相談先を解説します。
要介護5の区分支給限度額
要介護5の区分支給限度基準額(月額)は、36,217単位です。1単位10円換算で、約362,170円分のサービスを介護保険の範囲で利用できます。
自己負担の目安(1割負担の場合)は以下のとおりです。
- 支給限度基準額(月額): 362,170円
- 自己負担(1割)の上限: 36,217円
所得に応じて2〜3割の負担になる場合もあるため、ご自身の負担割合は介護保険負担割合証で確認しましょう。
参照:
『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
『介護報酬ハンドブック』(シルバー産業新聞社)
在宅介護にかかる費用の目安
介護保険の自己負担分に加え、保険対象外の費用もかかります。費用の目安は以下のとおりです(※介護保険利用者全体の平均額)。
| 費用の種類 | 平均的な金額の目安 |
|---|---|
| 月々の費用 | 平均5.3万円(介護サービス費や消耗品代など) |
| 一時的な費用 | 平均47.2万円(住宅改修や介護ベッドの購入など) |
限度額の上限まで使っても介護体制が不足する場合、自費でサービスを追加するケースもあります。費用全体を把握したうえで、ケアマネジャーとサービス計画を立てましょう。
参照:『介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?』(公益財団法人 生命保険文化センターの「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」より)
施設入所にかかる費用の目安
施設に入所した場合、調査によると、月々の費用は平均13.8万円です(※要介護度を限定しない施設利用者全体の平均額)。
介護保険施設に入所した場合の月額費用は、施設サービス費の自己負担分に加え、居住費・食費・そのほかの日常生活費で構成されます。
特別養護老人ホーム(特養)の自己負担の目安(月額)は以下のとおりです(要介護5・自己負担1割の場合)。
| 費用の内訳 | 多床室を利用した場合 | ユニット型個室を利用した場合 |
|---|---|---|
| 施設サービス費の1割 | 約26,130円 | 約28,650円 |
| 居住費 | 約27,450円 | 約61,980円 |
| 食費 | 約43,350円 | 約43,350円 |
| 日常生活費 | 約10,000円 | 約10,000円 |
| 合計 | 約106,930円 | 約143,980円 |
※介護老人保健施設(老健)や介護医療院などのほかの介護保険施設、および介護付き有料老人ホームなどの民間施設に関しては、施設の種類や居住費・食費の設定などにより金額が異なります。
参照:
『サービスにかかる利用料』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
『介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?』(公益財団法人 生命保険文化センターの「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」より)
所得の低い方は補足給付で食費・居住費が軽減されます。詳細はケアマネジャーや施設の相談員に確認しましょう。
在宅介護を続ける場合のポイント
在宅継続を支えるためのポイントは以下のとおりです。
| 対策 | 具体的なポイント |
|---|---|
| サービスの積極活用 | 訪問介護・訪問看護・定期巡回などを組み合わせ、介護の手が入らない時間帯をできるだけ減らす |
| 福祉用具の活用 | 移動用リフトやエアマットレスなどを導入し、介護者の身体的負担を軽くする |
| 定期的なショートステイ | 定期的にショートステイを組み込み、介護者がまとまった休息を取れる日を作る |
| 医療との連携 | 訪問看護・往診医・ケアマネジャーが連携する体制を整える |
無理が積み重なると共倒れのリスクも高まります。周囲の支えを借りながら無理のない体制を整えましょう。
施設入所を検討するタイミング
以下のようなサインが現れたときは、施設入所を真剣に検討する時期かもしれません。
- 医療的なケアが増え、在宅では対応が難しくなったとき
- 夜間の介助が常態化し、介護者が慢性的な睡眠不足に陥っているとき
- 介護者の体調が悪化し、介護を続けることが身体的に限界に近づいているとき
- 褥瘡や感染症など、在宅では管理が難しい医療上の問題が繰り返し起きるとき
施設入所は専門家に委ねる選択です。サインが現れたときは、前向きに次のステップを検討しましょう。
介護で困ったときの相談先
主な相談先とサポートは以下のとおりです。
| 相談先 | 役割 |
|---|---|
| 担当ケアマネジャー | 身近な相談相手。サービス調整、費用の試算、施設紹介まで幅広く対応 |
| 地域包括支援センター | ケアマネジャーがいない段階での相談窓口。介護保険の申請・手続きの案内も行う |
| 医療ソーシャルワーカー | 病院に配置された専門職。退院後の生活支援や施設への転院に関する相談が可能 |
誰に聞けばいいかわからないときは、地域包括支援センターで状況に応じた窓口を案内してもらえます。
まとめ

要介護5は日常生活のほぼすべてに介助が必要な、介護保険制度の最重度区分です。訪問介護や訪問看護、ショートステイを組み合わせ、福祉用具や住環境を整えることで在宅生活を支えられます。医療ニーズや介護者の負担が限界に近づいたときの施設入所は、ご家族とご本人を守るための前向きな選択です。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら、誰もが穏やかに過ごせる形を一緒に見つけていきましょう。
参考文献
- 『介護報酬ハンドブック』(シルバー産業新聞社)
- 『要介護認定はどのように行われるか』(厚生労働省)
- 『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』(厚生労働省)
- 『介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?』(公益財団法人 生命保険文化センター)
- 『サービス利用までの流れ|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『サービスにかかる利用料|介護サービス情報公表システム』(厚生労働省)
- 『どんなサービスがあるの? - 定期巡回・随時対応型訪問介護看護』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
- 『どんなサービスがあるの? - 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
- 『どんなサービスがあるの? - 特定施設入居者生活介護』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
- 『どんなサービスがあるの? - 介護老人保健施設(老健)』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
- 『どんなサービスがあるの? - 介護医療院』(厚生労働省 介護サービス情報公表システム)
- 『高額介護サービス費の負担限度額が見直されます』(厚生労働省)
- 『地域包括ケアシステム』(厚生労働省)




