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親の一人暮らし介護、何から考える?家族ができることや判断の目安を解説

 公開日:2026/03/24
親の一人暮らし介護、何から考える?家族ができることや判断の目安を解説

高齢の親が一人暮らしを続けるなかで、そろそろ介護が必要かもしれないと感じる瞬間は、どの家庭にも訪れます。しかし、いざ介護を考えても、何から始めればよいのか戸惑う方も少なくないです。本記事は、親の一人暮らし介護を考え始めるときに押さえておきたい基本の視点や、家族ができるサポート、専門機関への相談タイミングなどをわかりやすく解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

要支援・要介護状態でも一人暮らしを続けている高齢者の現状

要支援・要介護状態でも一人暮らしを続けている高齢者の現状

要支援・要介護認定を受けていても、一人暮らしを続ける高齢の方は年々増えています。介護サービスの利用や地域の支援体制を活用しながら、自立した生活を維持している方も少なくありません。

要支援・要介護になっても一人暮らしを選ぶ背景

さまざまな理由があります。まず、長年住み慣れた自宅での生活を望む気持ちが強いことが挙げられます。自分のペースで過ごせる安心感や、地域とのつながりを保ちたい思いから、住み替えや施設入所に抵抗を感じる方も少なくないです。さらに、近年はインターネットや宅配サービスが充実し家から出なくても生活が送れるなどの社会構造の変化や技術の進歩も考えられます。また、訪問介護やデイサービスなど在宅支援の選択肢が広がり、一定のサポートを受けながらも自立した生活が可能になっています。

参照:
『論文記事:高齢者のエイジング・イン・プレイス(地域居住)に影響を与える要因 202203-03』(一般財団法人 厚生労働統計協会)
『高齢者の独居問題 』(健康長寿ネット)

家族と離れて暮らすケースが増えている理由

子ども世代は就学や就職を機に都市部へ移り、その土地で家庭を築くケースが多く、親世帯と別居せざるをえない状況も増えています。子どもが結婚すると親とは同居しない核家族化の進展も要因に挙げられます。また、親子双方に子どもが近くにいれば別居でもよいという意識があり、同居ではなく近居を選ぶ価値観も定着しつつあります。こうした複合的な要因が重なり、家族と離れて暮らす高齢の方の増加につながっています。

参照:
『増加する高齢単身世帯』(埼玉りそな経済情報2023)
『同居・近居・別居の選択』(季刊家計経済研究)

一人暮らしで介護が必要になったときに起こりやすい不安や問題

一人暮らしで介護が必要になったときに起こりやすい不安や問題

一人暮らしで介護が必要になると、転倒や急病時に誰にも気付かれない不安、買い物や掃除など日常生活の負担増加、孤独感や認知症の進行への心配、手続きや金銭管理への不安など、心身ともにさまざまな問題が生じやすいです。

転倒や急変など安全面での心配

一人暮らしで介護が必要になった高齢の方にとって、大きな不安の一つが転倒や体調急変に気付いてもらえないことです。家の中での転倒は骨折や頭部外傷につながりやすく、その場から動けなくなった場合、長時間発見されないことが重症化や命の危険を招くおそれがあります。

また、心筋梗塞や脳卒中、肺炎などは、発症から治療までの時間が予後を大きく左右しますが、一緒に住む家族がいないと、本人が自力で通報できない状況では対応が遅れてしまうリスクがあります。さらに、夜間や入浴時など見守りが行き届きにくい時間帯は、ヒートショックや脱水、低血糖などの急変も起こりやすいです。

参照:
『転びやすくなる原因は?』(国立長寿医療研究センター)
『1.高齢者に多い救急疾患』(日老医誌)

体調変化や認知機能低下に気づきにくいリスク

一人暮らしで介護が必要になった高齢の方は、自分の心身の変化に気付きにくく、周囲からも異変が発見されにくいリスクを抱えています。 体調面では、倦怠感や息切れ、食欲低下、歩行のふらつきなどの細かな変化があっても、年のせいと受け止めてしまい、受診が遅れることがあります。その結果、軽い風邪や持病の悪化が肺炎や心不全など重い病気につながったり、転倒後の痛みを我慢しているうちに骨折が判明したりするケースも少なくないです。認知機能も、物忘れなどの初期症状は、自分では自覚しにくく、一人暮らしだと周囲の人が違和感に気付く機会も限られます。

参照:『独居の認知機能低下高齢者の権利利益を保護することができる地域包括ケアシステムの構築に』(厚生労働省)

生活管理や服薬管理が難しくなるケース

日々の生活管理や服薬管理が難しくなるケースが少なくないです。複数の持病を抱えることが少なくない高齢の方は、服用する薬の種類や回数が増えやすく、どの薬をいつ、何錠飲むのかを一人で正確に管理するのは負担が大きいです。特に認知機能の低下がみられる場合には、飲み忘れや重ね飲み、用量・用法の間違いなどが起こりやすく、病状悪化や副作用、低血糖や血圧低下など命に関わるトラブルにつながるおそれがあります。

また、食事の準備や掃除、通院の段取りなど生活全般の管理も一人では回らなくなり、気付いたら食事が簡素になっていた、低栄養になっていた、受診日を忘れてしまったなどの状況が積み重なることもあります。

参照:
『安全な薬物療法 ガイドライン』(日本老年医学会)
『独居認知症高齢者等が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりをめざして』(厚生労働科学研究費補助金)

家族が一人暮らしの親を支えるためにできること

家族が一人暮らしの親を支えるためにできること

一人暮らしの親を支えるためには、定期的な連絡や訪問で様子を確認しつつ、見守りサービスや在宅介護サービス導入などの検討が大切です。また、通院や手続きの同行、緊急連絡体制や鍵の預かりなども話し合い、支援体制を整えていきます。

定期的な連絡や訪問による見守りと状況確認

電話やオンライン通話で声のハリや話し方の変化をさりげなく確認したり、「この頃よく眠れているか」「食事はとれているか」など、体調や生活リズムに関する会話を意識的に取り入れたりすると、小さな変化にも気付きやすいです。また、可能な範囲で実際に顔を合わせる機会をつくり、冷蔵庫の中身や室内の片づき具合、薬の残り、郵便物のたまり具合など、生活状況をさりげなくチェックします。会うたびに「前回より歩き方がふらついていないか」「同じ話を何度も繰り返していないか」などの点も意識して見ることで、体調悪化や認知機能低下のサインを早期にとらえやすいです。

介護保険サービス関連の調整や手続きのサポート

介護が必要になった一人暮らしの親を支えるうえで、介護保険サービスに関する調整や手続きのサポートは、家族が果たせる役割の一つです。まず、要支援・要介護認定の申請にあたり、市区町村の窓口に同行したり、主治医の情報やこれまでの生活状況を一緒に整理したりしておくと、スムーズに実態に合った認定につながりやすいです。認定後は、担当ケアマネジャーとの面談に同席し、親本人が言葉にしきれない困りごとや家族としての希望(見守り頻度、利用しやすい時間帯など)を補足して伝えることで、より実情に合ったケアプランを作成します。

また、訪問介護やデイサービスなど、複数サービスの利用調整は、事業所との連絡・日程調整・契約内容の確認など事務的な負担も少なくありません。こうした連絡窓口を家族が引き受け、共有していくことで、サービスが途切れず、安心感を持って利用し続けられます。

参照:『サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)

親の意思を尊重しながら負担を分散する関わり方

親の一人暮らし介護を支えるときは、親の意思を尊重しながら、家族の負担を一人に抱え込まない関わり方が大切です。まず、「どうしてほしいか」「どこまで自分で頑張りたいか」を親自身の言葉で確認し、押しつけではなく一緒に選んでいく姿勢を持ちます。

そのうえで、食事の買い出しは子どもが担当する、通院同行はきょうだいで交代するなど、家族同士で役割分担を話し合い、できることを具体的に整理しておくと負担が偏りにくいです。また、地域包括支援センターやケアマネジャーとも相談し、公的支援を積極的に取り入れることで、家族がすべてを背負わなくてよい体制を整えることができます。

参照:
『第5章 認知症のケア 10.家族介護の視点から』(公益財団法人長寿科学振興財団)
『家族介護者の負担を軽減するための支援方策 に関する調査研究事業報告書 平成 26 年 3 月』(一般社団法人シルバーサービス振興会)

一人暮らしの介護を支えるサービスや支援

一人暮らしの介護を支えるサービスや支援

一人暮らしの介護を支えるためには、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護保険サービスに加え、配食・見守り・安否確認サービス、地域包括支援センターや民生委員による見守り・相談支援など、地域の公的支援や民間サービスを組み合わせて活用していくことが大切です。

在宅介護サービス

在宅介護サービス(居宅サービス)とは、自宅に暮らしながら介護や医療的ケアの支援を受けられる仕組みで、介護が必要な一人暮らしの高齢の方を支えるうえで重要です。代表的なものとして、ヘルパーが自宅を訪れて身体介助や生活援助を行う訪問介護、看護師が健康管理や医療的処置を行う訪問看護、入浴が難しい方を自宅の浴槽などで支援する訪問入浴、理学療法士や作業療法士による訪問リハビリテーションなどがあります。

また、日中に送迎付きで施設に通い、入浴・食事・機能訓練などを受けるデイサービス(通所介護)や、短期間だけ施設に宿泊して介護を受けるショートステイ(短期入所生活介護)、さらに、小規模多機能型居宅介護のように、通い・訪問・泊まりを一体的に提供するサービスもあります。

参照:
『居宅サービスとは 』(健康長寿ネット)
『どんなサービスがあるの? - 小規模多機能型居宅介護』(厚生労働省)

地域支援と相談窓口

一人暮らしで介護が必要になったとき、地域の支援体制や相談窓口を早めに把握しておくことが重要です。まず、地域包括支援センターは、その地域に住む高齢の方と家族の総合相談窓口として設置されており、介護・医療・生活費・住まい・権利擁護など、困りごとを幅広く相談できます。また、市区町村や社会福祉協議会、民生委員・児童委員などによる見守り事業やひとり暮らし高齢の方向けサービスでは、定期的な訪問や電話による安否確認、生活上の不安に関する相談対応が行われています。

参照:『包括的支援事業とは 』(健康長寿ネット)

一人暮らしが難しくなってきたと感じたときの判断ポイント

一人暮らしが難しくなってきたと感じたときの判断ポイント

一人暮らしが難しくなってきたかを考える目安は、転倒や火の不始末が増えたとき、食事や服薬の管理がうまくできないとき、トイレや入浴など身の回りのことに介助が必要になってきたとき、そしてお金の管理や通院などの手続きが一人では対応しにくくなってきたときなどが挙げられます。

一人暮らしの継続が困難なサイン

身体・生活・認知・心理の各面に表れます。まず、転倒やふらつきが増えたり、階段やトイレ・浴室の出入りなど基本的な動作に強い不安や介助の必要が出てきたりした場合は注意が必要です。食事の準備や買い物、掃除・洗濯がうまく回らず、賞味期限切れの食品やゴミがたまっているなどの生活の乱れも大きなサインです。

また、服薬や通院の管理ができないことが続く場合、健康リスクが高まります。お金の管理があいまいになり、公共料金の滞納や電話勧誘への安易な契約が目立つ場合は、認知機能低下や判断力の低下が疑われます。さらに、外出や人付き合いが減っているときも、一人暮らしを続ける負担が限界に近づいているサインととらえることが大切です。

同居や施設入所を検討する際に確認したいこと

親と家族双方の暮らし方負担を冷静に確認しておくことが大切です。まず、親が何を大事にしているか(住み慣れた地域、人間関係、プライバシー、自立へのこだわりなど)を丁寧に聞き取り、同居・施設・一人暮らし継続+在宅サービスなど、選択肢ごとのメリット・デメリットを一緒に話し合います。そのうえで、介護に必要な支援量(夜間の見守りが必要か、トイレや入浴はどこまで自力か、医療的ケアの有無)、家族が現実的に担える役割(通院同行や見守り頻度、仕事との両立)、経済的な負担(年金や貯蓄、介護費用の目安)を具体的に整理しておくことが重要です。また、施設入所を検討する場合は、立地、医療連携、職員体制、看取り対応の有無、面会のしやすさなども確認したいポイントです。

参照:『有料老人ホーム』(厚生労働省)

家族だけで抱え込まないための考え方

介護は長期戦になりやすく、仕事や子育て、自分自身の健康と両立しながら続けるには、はじめから一人で完璧にやろうとしないと決めておくことがポイントです。また、地域包括支援センターやケアマネジャーに早めに相談し、訪問介護やデイサービスなど公的・民間の支援を積極的に組み合わせることで、人に頼るのも介護の一部ととらえ直すことが大切です。さらに、自分自身の休息や気分転換の確保をわがままではなく、介護を続けるために必要なケアと考え、ショートステイやレスパイトケアの利用も選択肢に入れておくと、心身の限界を超える前に立て直しやすいです。

参照:
『介護負担とは 』(健康長寿ネット)
『家族介護を円滑に行うために』(全国国民健康保険診療施設協議会)

一人暮らしで介護保険サービスを利用するための手続き

一人暮らしで介護保険サービスを利用するための手続き

まず住民票のある市区町村で要支援・要介護認定を受ける必要がありますが、非該当(自立)区分もあります。これは、現時点では日常生活に介護や日常的な支援が必要と判断されない状態のことで、この場合は介護保険の介護サービスは利用できませんが、市区町村の総合事業(介護予防・生活支援サービス)や一般の高齢の方向け福祉サービスを利用できる場合があります。申請は本人のほか、家族や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などが代理で行うこともでき、市区町村の介護保険担当課地域包括支援センターが主な窓口です。申請後は、市区町村の認定調査員が自宅などを訪問して心身の状況を聞き取る認定調査と、主治医による主治医意見書に基づいて介護認定審査会が審査し、要支援1・2、要介護1〜5などの区分が決定されます。認定結果が出たら、要介護の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、要支援の方は地域包括支援センターが中心となってケアプラン(介護サービス計画)を作成し、サービス内容や回数を一緒に検討します。

参照:『サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)

まとめ

まとめ

親の一人暮らし介護では、まず「どこまで一人で安全に暮らせているか」の客観的な確認が重要です。転倒や体調急変、認知機能の変化などを家族が早めに察知し、定期的な連絡や訪問に加え、地域包括支援センターなどへの相談を組み合わせて、親の意思と安全、家族の生活とのバランスを取りながら段階的に支援の形を整えていくことが大切です。

参考文献

この記事の監修社会福祉士