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親が認知症かも?と思ったときの判断の目安と家族ができること

 公開日:2026/03/21
親が認知症かも?と思ったときの判断の目安と家族ができること

親の物忘れが増えた、同じ話を短い間隔で繰り返す、支払いのミスが続くなどの変化が重なると、家族は心配になることがあるでしょう。一方で、年齢による物忘れに加えて、ストレスや睡眠不足、薬の影響、感染症や脱水などの身体の不調でも、似た変化が表れることがあります。そこで大切なのは、何となく不安という感覚だけで抱え込まず、今までと違う点を具体的な出来事として整理し、生活の困りごとがどの場面で起きているかを確認することです。

この記事では、認知症の基本と主な種類、物忘れとの違い、認知症が疑われる変化の目安を整理したうえで、似た症状が出る病気や状況もあわせて解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

認知症の基礎知識


親の変化を見極めるには、認知症がどのような状態かを知っておくと判断しやすいです。ここでは、認知症の概要や主な種類、物忘れとの違いを解説します。

認知症の概要

認知症は、記憶や判断、段取り、言葉の理解などの働きが低下し、日常生活に支障が続く状態を指します。単に出来事を忘れるだけでなく、忘れた自覚が乏しくなったり、同じ確認を何度もしたり、予定を組み立てられなくなったりすることがあります。進み方は人によって差があり、はじめは軽い違和感として表れます。本人が疲れているときや環境が変わったときに目立つ場合もあるため、場面と経過をセットでみていくことがポイントです。

認知症の種類

認知症にはいくつかの病気が含まれます。代表はアルツハイマー型認知症で、新しい出来事の記憶が保ちにくくなり、少しずつ生活の段取りが崩れやすいです。血管性認知症は脳梗塞などの影響で起こり、得意なことと苦手なことの差が出やすく、階段状に変化することがあります。レビー小体型認知症は、注意力の波や幻視、睡眠中の大きな寝言や手足の動き、動作の緩慢さが目立つ場合があります。前頭側頭型認知症は、性格や行動の変化、同じ行動の繰り返し、社会的な配慮の低下が先に現れることがあります。どの型かで支援の工夫が変わります。

物忘れと認知症の違い

年齢による物忘れは、体験の一部を思い出しにくくても、出来事そのものは覚えていることが少なくありません。例えば、食事の内容を思い出せなくても、外食したこと自体は覚えているといった形です。また、後から思い出したり、ヒントがあると想起できたりすることがあります。

一方、認知症は、出来事自体が抜け落ちやすく、ヒントがあっても思い出しにくいことがあります。さらに、忘れることに加えて、段取りを組む、手順を守る、状況に合わせて判断するといった力が落ち、約束を忘れて外出してしまう、支払いの手順がわからない、料理や家事の工程が止まるなど生活に影響が出やすい点が違います。

親の認知症が疑われる変化


認知症を疑うかどうかは、物忘れそのものよりも、生活の流れに支障が続いているかで考えると整理しやすいです。ここでは、家族が気付きやすい変化を、記憶、家事や金銭管理、性格や感情の面から解説します。

記憶力が低下している

同じ質問を短い間隔で繰り返す、会話の内容をすぐに忘れて話がかみ合いにくい、置き場所を忘れて探し物が増えるといった変化が続くことがあります。約束や予定そのものを忘れてしまい、予定表やメモを見ても思い出しにくい場合は、生活の困りごととして表れやすいです。ほかにも、電話の用件を伝えられない、服薬の飲み忘れや重複が起きるなど日々の行動に影響が出ることがあります。

金銭管理や家事がうまくできない

支払いの期限を忘れる、請求書を処理できずにたまる、通帳やカードの管理が乱れるなどは、早い段階から家族が気付きやすい変化です。買い物で同じ物を重ねて買う、計算や段取りが合わずに会計で戸惑う、ネットや電話の手続きが急に難しくなることもあります。家事は、料理の手順がわからなくなる、味付けが変わる、火をつけたまま別のことを始める、洗濯の工程が止まるなどいつもの流れが崩れる形で現れやすいです。

性格や感情が変化する

以前より怒りっぽくなる、不安が強くなる、疑い深くなる、意欲が落ちて外出や交流を避けるなど気分や対人面の変化が目立つ場合があります。逆に、場にそぐわない言動が増える、同じ行動を繰り返す、こだわりが強くなるなど行動の変化が前面に出ることもあります。こうした変化は認知症だけでなく、うつ状態、睡眠不足、環境の変化、薬の影響でも起こりえます。

認知症と似ている症状が現れる病気や状況


親に変化が出たとき、すぐに認知症と決めつけず、ほかの原因も並行して考えると次の行動が取りやすいです。原因によっては治療や環境調整で改善が期待できるため、家族は経過ときっかけを整理し、早めに相談につなげましょう。

認知症と似た症状が生じる可能性がある病気

認知機能の低下は、脳の病気だけでなく、内科的な不調でも起こりえます。例えば、感染症脱水でぼんやりして会話がかみ合いにくくなることがあります。甲状腺機能の低下栄養の不足(特にビタミンB12や葉酸)貧血などでも、意欲低下や集中しにくさが表れる場合があります。急に日付がわからなくなる、夜に落ち着かず興奮する、幻覚が出るなどは、せん妄として現れることがあり、原因の治療で軽くなることがあります。また、頭部外傷の後に慢性硬膜下血腫が隠れていたり、歩行のふらつきや尿のトラブルと一緒に正常圧水頭症が関係したりすることもあります。急な変化、転倒や打撲の後、発熱や食事量低下があるときは、受診時に必ず伝えましょう。

ストレスの増加や環境の変化

引っ越しや入院、家族構成の変化、介護サービスの開始など生活環境が変わった直後は、慣れない手続きや情報の整理が増えるため、一時的に物忘れが増えたように感じたり、段取りが乱れたりする場合があります。数日から数週間の範囲で、予定を把握しにくい、準備に時間がかかる、同じ内容を確認する回数が増えるなど、生活のやりにくさとして表れやすいです。環境に慣れて負担が減ると落ち着いてくることもあります。

薬の副作用や体調不良

薬の影響で眠気やふらつきが増えると、反応が鈍くなり、物忘れが強まったようにみえることがあります。薬の数が増えた時期や飲み方が変わった時期と症状の出方を照らし合わせて記録しましょう。風邪気味や便秘、痛み、難聴や視力低下なども、会話や行動に影響し、誤解や不安につながります。

親が認知症かもとと思ったときに家族がやるべきこと


親の変化に気付いたら、家族は焦って結論を急ぐより、状況を整えて相談につなげることが近道です。ここでは、記録の取り方、安全を守る工夫、相談先へのつながり方を、すぐに始められる形で解説します。

親の変化を記録する

受診や相談の場では、短い時間で経過を伝える必要があります。そこで、気付いた出来事をメモに残しておくと話が整理しやすいです。日付、起きた場面、困った内容、家族がどう対応したか、本人の反応をセットで書きます。例えば、支払いの遅れが出た、同じ物を買った、服薬が重なった、火を消し忘れたなど具体例があるほど評価が進みやすいです。あわせて、発熱、食事量、水分、睡眠、便秘、痛み、転倒の有無も簡単に残すと、認知症以外の原因も見落としにくいです。スマートフォンのメモでも手帳でもかまいません。家族が一人で抱え込まず、共有できる形にすると続けやすいです。

安全の確認と対策を実施する

生活の安全は、危険が起きる前に対策しておきましょう。家の中では、転倒しやすい段差や滑りやすいマットを減らし、夜間は足元灯を置くとよいです。火の取り扱いが心配なら、IHへの切り替えや消し忘れ防止の器具、調理の見守りを組み合わせます。金銭面は、通帳やカードの置き場所を固定し、請求書の置き場と支払い日をみえる形にします。知らない電話や訪問で契約しない、暗証番号を伝えないなど家族で合言葉を決めておく方法もあります。運転を続けている場合は、同乗して運転の癖やヒヤリとする場面を確認し、無理のない範囲で運転機会を減らす相談を始めましょう。買い物や通院の代替手段も一緒に考えておくことも大切です。

相談窓口とつながる

家族だけで判断し続けると、負担が積み上がります。まずは、かかりつけ医に記録を持参し、必要に応じて認知症を扱う医療機関や地域の支援へつなげてもらう流れが取りやすいです。介護保険や生活支援の相談は、地域包括支援センターが窓口です。受診前でも相談でき、本人への伝え方や家族の負担整理も一緒に考えられます。夜間の徘徊や行方不明が心配なときは、地域の見守りの仕組みや警察への事前相談も選択肢です。

親の認知症について相談できる窓口や医療機関

親の変化に気付いたとき、家族が迷いやすいのがどこへ相談するかです。相談先には、生活支援につながる窓口と、病気の評価を行う医療機関があります。両方を使い分けると、家族の負担を減らしつつ、必要な支援へ進みやすいです。

認知症に関する相談窓口

まず相談しやすいのは、住んでいる地域の地域包括支援センターです。介護保険の申請、ケアマネジャーとの調整、見守りサービスやデイサービスの情報など生活面の支援につながる窓口の役割を担っています。受診前でも相談でき、親への伝え方や家族の関わり方、今すぐ整えたい安全対策も一緒に考えられます。

医療につなげたいときは、認知症疾患医療センターも選択肢です。診断や治療の相談だけでなく、地域の関係機関との連携も担っているため、受診先に迷うときに役立ちます。市区町村の高齢福祉の担当窓口に連絡して、近隣の相談先を教えてもらう方法もあります。さらに、日本認知症学会のサイトで、認知症の専門の医師や、その医師がいる施設を検索できるため、受診先を探すときの手がかりになります。

困りごとが金銭トラブルや契約に関係する場合は、消費生活センターへ相談すると整理しやすいです。身に覚えのない請求、頻回の振り込み、同じ物の大量購入などが重なるときは、家族で口座の動きや郵便物を確認しつつ、早めに相談して手順を整えると被害を広げにくいです。

徘徊や行方不明が心配なときは、地域の見守りの仕組みの確認に加えて、警察へ事前に相談しておくと、いざというときの連絡が進みやすいです。

参照:『専門医・施設を検索』(日本認知症学会)

認知症を扱う診療科

受診先は、まずかかりつけ医から始める方法が現実的です。普段の病気や服薬、最近の体調変化も含めてみられるため、認知症と似た状態が隠れていないかも確認しやすいです。受診時は、家族が記録した具体例と、発熱や睡眠、便秘、転倒、薬の変更などの情報を持参すると伝わりやすいです。

専門的な評価が必要なときは、脳神経内科、精神科、老年内科、もの忘れ外来などが候補です。脳の画像検査や神経学的な評価、気分の落ち込みや幻覚、不眠などの症状の整理、生活上の困りごとの背景確認を組み合わせて、総合的に判断します。どの診療科がよいか迷うときは、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターに相談し、地域の受診導線を教えてもらうとスムーズです。

まとめ

親に物忘れや生活の乱れがみられたときは、認知症だけでなく、ストレスや睡眠不足、薬の影響、感染症や脱水などの身体の不調でも似た変化が起こりうる点を押さえておきましょう。判断の目安は、忘れる内容よりも、金銭管理や家事、服薬、外出などで困りごとが続いているかどうかです。家族は、いつからどの場面で起きたかを具体例として記録し、受診や相談の場で共有できる形に整えると、医師が状況を判断しやすくなるため診断や治療につながりやすいです。

あわせて、安全の対策も早めに始めましょう。転倒しやすい環境を整える、火やガスの扱いを見直す、金銭や契約のルールを家族で決める、運転の様子を確認して代替手段も考えるなど生活に合わせて小さく始めることが大切です。相談先は、地域包括支援センターや認知症疾患医療センター、かかりつけ医が入口です。家族だけで抱え込まず、窓口と医療機関を上手に使い分けながら、長い経過を支える体制を整えていきましょう。

この記事の監修医師