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介護椅子の選び方ガイド|種類別のポイントと介護保険の利用方法を解説

 公開日:2026/03/19
介護椅子の選び方ガイド|種類別のポイントと介護保険の利用方法を解説

年齢を重ねるにつれて、立ち座りの動作が辛くなったり、転倒の不安を感じたりすることは少なくありません。「母が最近、食卓の椅子から立ち上がるのに苦労している」「お風呂場で滑りそうになったと聞いてヒヤッとした」などの経験はないでしょうか。
しかし、身体の状態に合った介護椅子の活用で、転倒のリスクを減らし、毎日の立ち座りや介助を楽にできる場合があります。

この記事では、場所別(玄関、リビング・ダイニング、浴室)の介護椅子の選び方や、失敗しないためのポイントを解説します。また、購入費用の負担を軽減できる介護保険の制度も併せて解説します。

稲木 康平

監修作業療法士
稲木 康平(作業療法士)

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出身大学:金沢大学

経歴:回復期病棟で約9年ほど、患者様やご家族様のニーズに合わせたリハビリテーションを実施する。また、数多くの患者様に対して、退院後に快適な生活を過ごされるための自宅の環境調整や、介護サービスの提案、家族指導も行ってきた。

資格:作業療法士免許、医療経営士3級

介護椅子の基礎知識

介護椅子の基礎知識

まずは介護椅子の基本的な定義や役割を整理しましょう。

介護椅子の定義

介護椅子は、高齢の方や身体機能が低下した方の、座る・立つなどの動作を補助し、安全で快適な生活をサポートするための椅子です。
単に座れればいいというものではなく、身体機能の変化に合わせて、日常生活動作(ADL)の維持・向上を目的として設計されたものです。
一般的な椅子よりも座面が高めに設計されていたり、立ち上がりやすいように肘掛けが付いていたりと、身体機能の低下を補う工夫が施されています。

種類によっては介護保険を適用し、自己負担を抑えて購入やレンタルができる場合があります。

介護椅子の役割

介護椅子は、利用者の自立支援と安全確保、そして生命を守るための重要な役割を担っています。
実際に、高齢の方の事故は住み慣れた自宅のなかで多く発生していることがわかります。東京消防庁の救急搬送データ(令和3年中)によると、高齢の方の転倒事故は住宅など居住場所の屋内での発生が多く、その発生場所の上位は以下のとおりです。

  • 居室・寝室(22,333人)
  • 玄関・勝手口など(2,988人)
  • 廊下・縁側・通路(2,059人)

居室や玄関など、生活動作の拠点となる場所には転倒のリスクが潜んでいます。身体に合った椅子を使い、しっかりとした肘掛け(アームレスト)を支えにすることで、バランスを崩して転倒するリスクを大幅に減らすことができます。

適切な椅子を選ぶことは、ご本人の安全を守るだけでなく、見守るご家族の安心感にもつながります。

参照:『救急搬送データからみる高齢者の事故』(東京消防庁)

介護椅子を利用するメリット

介護椅子を利用するメリット

介護椅子の導入には、ご本人だけでなく、介護をするご家族にとっても大きなメリットがあります。

介助負担を軽減できる

介護椅子を利用すれば、立ち座りの動作がスムーズになり、介助に必要な力が少なくて済みます。
例えば、回転機能付きの椅子であれば、方向転換の際に椅子を引いたり持ち上げたりする必要がなくなり、介助者の腰への負担を大幅に減らすことができます。

利用者の姿勢や安定性が向上する

身体に合った介護椅子は、ただ座りやすいだけでなく、座っている間の姿勢を安定させる効果もあります。

背もたれや肘掛けが適切な位置にあることで、長時間の座位でも疲れにくくなり、食事や団らんの時間を快適に過ごせるようになります。また、立ち上がる際も肘掛けを支えにすることで、ふらつきや転倒のリスクを軽減できます。

また、正しい姿勢は、誤嚥(ごえん)防止に直結します。
特に食事の際、足裏が床にしっかりと着き、骨盤が安定した状態で深く座ることで、背筋が伸びたよい姿勢を保ちやすくなります。

逆に、足が床に着かずブラブラしていたり姿勢が崩れていたりすると、顎が上がってしまいがちです。顎が上がると気道が広がりやすくなり、食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまう誤嚥のリスクが高まります。適切な介護椅子で、顎を軽く引いた安定した姿勢を作ることは、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

介護椅子の種類

介護椅子の種類

介護椅子には、使用する場所や目的に応じてさまざまな種類があります。それぞれの場所で「何に困っているか」を解決できる機能を選ぶことが重要です。

玄関用の介護椅子

玄関での靴の脱ぎ履きを安全に行うための椅子です。玄関は段差があり、靴の脱ぎ履きでバランスを崩しやすい場所です。

立ち上がりやすさはもちろんですが、ブーツやハイカットの靴を履く場合は、座面が少し高めの方が動作が楽になります。手をついて体を支えられるしっかりした肘掛けがあるものを選ぶと、より安全に動作を行えます。また、狭い玄関でも動線を確保できるよう、折りたたみ機能があるものや、杖立てがついているタイプも便利です。座面の下に買い物袋や靴を置ける棚がついていると、荷物を床に置くためにしゃがむ必要がなくなり、転倒リスクを減らせます。

リビング・ダイニング用の介護椅子

食事、団らん、休息を快適にするための椅子です。1日の大半を過ごす場所であり、食事のしやすさとリラックスの両立が求められます。

ダイニングテーブルで使用する場合は、テーブルの高さと椅子の座面高のバランス(差尺)が合っていないと、猫背になったり腕が疲れたりします。そのため、座面の高さ調整ができるタイプが理想的です。

また、食事のたびに椅子を引くのは、介護される方にとっても介助者にとっても重労働です。座面が回る回転式であれば、椅子を動かさずに身体の向きを変えるだけで済むため、負担が激減します。テレビを見たりうたた寝をしたりするなら、背もたれが高く(ハイバック)、リクライニング機能があるものが適しています。

浴室用の介護椅子

滑りやすい浴室での転倒防止と動作補助を目的とした椅子です。事故が起きやすい場所の一つである浴室では、安全性と衛生面が優先です。

湿気が多い場所なので、カビが発生しにくく、アルミやステンレスなど錆びにくい素材のものを選びましょう。座面の中央がU字型にくり抜かれているタイプは、立ち上がらなくても陰部やお尻を洗うことができるため、ふらつきの不安がある方に適しています。

濡れた床でも滑らないよう、脚先に大きめのゴムキャップ(滑り止め)がついているか忘れずに確認しましょう。日本の浴室は狭いことが多いため、家族が入浴する際に邪魔にならないよう、コンパクトに自立して折りたためるものが重宝されます。

なお、浴室用の介護椅子(入浴補助用具)は、条件を満たせば介護保険の特定福祉用具購入の対象です。

失敗しない介護椅子の選び方

失敗しない介護椅子の選び方

介護椅子選びで失敗しないためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

設置場所や使用シーンに合うものを選ぶ

どこで・何のために使うのかを明確にしましょう。
例えば、狭い浴室に大きなシャワーチェアを置くと、介助スペースがなくなってしまい本末転倒です。設置場所の広さを測り、動線の邪魔にならないサイズを選ぶ必要があります。また、ダイニングであればテーブルとの高さの相性も考慮しましょう。

利用者の体格や身体状況に合ったものを選ぶ

ご本人の身長や体重、身体の動きに合わせて選ぶことが重要です。
小柄な方には座面の低いもの、体格のよい方には耐荷重が高く座面の広いものが適しています。また、片麻痺がある方の場合は、健側(麻痺のない側)で操作しやすいレバー位置のものや、移乗しやすいように肘掛けが跳ね上げられるタイプなどを検討するとよいでしょう。

厚生労働省の『職場における腰痛予防対策指針』などでも、椅子に座った状態で足の裏全体が床に接していることが推奨されており、適切な座面の高さの目安は以下のとおりです。
まずはご本人が実際に座ってみて、深く腰掛けた状態でカカトまでしっかりと床についているかを確認しましょう。足の裏全体が床にしっかりと着かない高すぎる椅子は姿勢を不安定にし、逆に低すぎる椅子は立ち上がる際に膝や腰へ過度な負担をかけます。

長年愛用している椅子でも、加齢による体型の変化や筋力の低下により、高さが合わなくなっているケースが多々あります。

参照:『職場における腰痛予防対策指針』(厚生労働省)

必要な機能や安全性を把握しておく

介護椅子には、利用者の身体状況や介護者の負担を軽減するためのさまざまな機能があります。必要な機能を具体的に把握し、安全性とのバランスを考慮して選ぶことが大切です。
主な機能と特徴は以下の表のとおりです。

機能 特徴・メリット
立ち上がり補助機能 座面の昇降や傾斜により立ち上がり動作を助け、膝や腰への負担を軽減する
肘掛けの可動性 跳ね上げ式や取り外し式であれば、ベッドや車椅子からの移乗がスムーズに行える
リクライニング・チルト 背もたれや座面の角度調整により、休息時の姿勢維持や体圧分散(床ずれ予防)に役立つ
キャスターとロック 食卓への移動に便利ですが、立ち座り時は忘れずにロック(ブレーキ)をかけ、転倒を防ぎましょう
素材とメンテナンス 食べこぼしなどに備え、防水・防汚加工された素材を選ぶと衛生的

機能面だけでなく、ご本人の気持ちと安全性のバランスにも配慮が必要です。
よくあるのが、長年使っている回転椅子に愛着があり、危なっかしいけれど変えたがらないケースです。ご本人にとっては慣れ親しんだ椅子が落ち着く場所であり、無理に変えると心理的なストレスになることもあります。

こうした場合、頭ごなしに否定するのではなく、「立ち上がる時だけは杖を使おう」「足元に滑り止めマットを敷こう」など、今の習慣を尊重しつつ安全性を高める声掛けや工夫を取り入れてみてください。

介護保険で介護椅子を購入・レンタルできる条件と方法

介護保険で介護椅子を購入・レンタルできる条件と方法

介護椅子の中には、介護保険を利用して自己負担を抑えて利用できるものがあります。ただし、すべての椅子が対象ではないため、事前の確認を行いましょう。

介護保険が適用される条件

介護保険で利用できる福祉用具には、貸与(レンタル)と購入の2種類があります。使用目的や機能によって位置づけが異なり、それぞれの対象品目と適用条件は以下のとおりです。

区分 対象となる主な用具 特徴・条件
特定福祉用具販売(購入) 入浴補助用具(入浴用いすなど)、腰掛便座(ポータブルトイレなど) ・同一年度の支給限度基準額は10万円で、自己負担割合(1~3割)は所得などにより異なる
・レンタルになじまない用具が対象
福祉用具貸与(レンタル) 車椅子、特殊寝台、移動用リフト(※通常の椅子は対象外) ・原則として自己負担1〜3割で利用可能
・電動で立ち上がりを補助するタイプなどは移動用リフトとして対象になる場合がある
・軽度者(要支援・要介護1)は原則対象外だが、例外的に給付が認められる場合がある

参照:
『福祉用具・住宅改修』(厚生労働省)
『要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について』(厚生労働省)

専門家と一緒に計画を立てることも重要です。

自己判断で購入してしまうと、介護保険が適用されなかったり、身体に合わなかったりして損をしてしまうことがあります。ケアマネジャー(介護支援専門員)へ相談し、福祉用具専門相談員を交えて、今の身体状況にはどんな椅子が必要か、介護保険は使えるかを一緒に計画してもらいましょう。

購入・レンタルまでの基本的な流れ

実際に介護椅子を検討し、導入するまでの一般的な手続きは以下のステップで進みます。

  • ケアマネジャーに相談する
  • 福祉用具事業所の選定・提案を受ける
  • 座り心地の確認・納品
  • 費用の支払い

まずは担当のケアマネジャーに相談し、適切な福祉用具事業所を紹介してもらいましょう。その後、福祉用具専門相談員から提案を受け、カタログや実物を見て商品を決定します。

納品後、以下のいずれかの方法で費用の支払いを行います。自治体によって対応状況が異なるため、事前に確認を行いましょう。

支払い方法 仕組みと特徴 メリット・デメリット
償還払い いったん、費用の全額(10割)を利用者が支払い、後日役所に申請して保険給付分(7~9割)の払い戻しを受ける メリット:すべての指定事業者で利用可能
デメリット:一時的に数万円~数十万円の現金が必要になる
受領委任払い 利用者は自己負担分(1~3割)のみを事業者に支払い、残りの保険給付分は自治体から事業者へ直接支払われる メリット:初期費用の持ち出しが少なく、経済的負担が軽い
デメリット:制度導入済みの自治体かつ登録事業者でないと利用不可

自治体によって対応状況が異なるため、事前に確認を行いましょう。

まとめ

まとめ

介護椅子は、ご本人が安全に自立した生活を送るため、そしてご家族の介護負担を減らすために役立つ道具です。
しかし、単に機能がよいものを選ぶのではなく、ご本人の体格や今の椅子への愛着、そして設置場所の環境などを総合的に考える必要があります。
まずは、今使っている椅子の高さ調整から始めてみたり、ケアマネジャーなどの専門家に相談したりしながら、ご本人に合った一脚を見つけてください。
正しい知識と専門家のサポートを活用して、親も子も安心して笑顔で過ごせる環境を整えましょう。

この記事の監修作業療法士