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介護離職とは?仕事と介護を両立するために知っておきたいポイントを解説

 公開日:2026/03/14

親の介護が必要になったら、仕事はどうしたらいいのだろう」このような不安を抱えながらも、具体的な準備ができていない方は決して珍しくありません。十分な心構えや情報がないまま、仕事と介護の両立を迫られるケースもあります。その結果、やむをえず離職を選ぶ方もいます。この記事では、介護離職の基礎知識や主な原因を整理し、介護と仕事を両立するために知っておきたい制度を解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護離職の基礎知識

介護離職の基礎知識

介護離職とはどのような状況を指すのか、現在どのくらいの人が介護を理由に離職しているのかなど、基本的な知識と現状を整理します。

介護離職の意味

介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることを指します。
介護離職は、「自分で介護に専念したいから辞める」という前向きな理由だけで起こるわけではなく、仕事と介護の両立が難しく、やむをえず退職する場合も少なくありません。

介護離職の現状と増加している背景

総務省の統計によると、2022年には約10.6万人が「介護・看護」を理由に仕事を辞めています。この人数は、過去の調査と比べて増加しており、介護離職が深刻な社会問題となっていることがわかります。

介護離職が増加している背景の一つに、少子高齢化の進行があります。75歳以上の方の人数は年々増加する一方で、働き手となる生産年齢(15歳~64歳)の人数は減少しています。そのため、少ない人数で多くの方を支えなければならない状況が生まれているのです。

さらに、厚生労働省の調査によると、介護の対象となる家族は母や父といった親世代が中心で、介護を受けている方の7~8割が75歳以上であることが示されています。介護を担うのは、主に50代~60代前半の世代です。このことから、介護をする方は、仕事で重要な役割を果たしながら、同時に親の介護にも向き合わざるをえない状況にあることがわかります。

参照:
『育児・介護休業法の改正について』(厚生労働省)
『令和6年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書』(厚生労働省)
『そのときのために知っておこう 介護休業制度』(厚生労働省)

介護離職が起きる主な原因

介護離職が起きる主な原因

ここでは、介護離職につながる代表的な原因を整理し、どのような場面で仕事と介護の両立が難しくなってしまうのかを解説します。

介護制度やサービスを十分に活用できていない

介護離職の背景の一つに、介護保険サービスや両立支援制度が十分に活用されていないことが挙げられます。

例えば、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスは、提供時間が限られている場合が多く、仕事の勤務時間と合わずに利用できないことがあります。
また、介護保険制度が複雑で、申請手続きや利用方法などがわからず、必要な支援を受けないままに介護を続けてしまっているケースもあります。

参照:『労働調査 結果の概要』(厚生労働省)

介護の負担が特定の家族に集中している

介護の負担が特定の家族に集中しているのも、介護離職の原因の一つです。特に、同居している家族や、女性、時間の融通が効くとみなされている家族などが、介護の中心を担うケースが多くみられます。結果として、仕事を続けながら介護を抱え込み、心身ともに大きな負担を感じるようになります。

参照:『介護役割と介護負担ー要介護者と同居する家族の実態ー』(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

職場の理解や支援体制が整っていない

介護離職の背景には、職場の理解や支援体制が十分に整っていないことも大きく関係しています。総務省の調査によると、介護をしている雇用者のうち、介護休業制度を利用したことがあると答えた方は11.6%にとどまっていることが示されました。

加えて厚生労働省の調査では、勤務先の問題によって介護離職をした方の約半数が、「勤務先に介護休業や短時間勤務などの両立支援制度が整っていなかった」と回答しました。また、制度が用意されていても、「利用しにくい雰囲気がある」と感じていた方は約4割に上っています。「前例がない」「上司に言い出しにくい」「同僚に負担をかけてしまうのではないか」といった心理的なハードルが、制度の利用を妨げる一因となっているのです。

参照:
『育児・介護休業法等改正について』(厚生労働省)
『令和6年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書』(厚生労働省)

家族や周囲から退職を勧められるケースも

介護離職の背景には職場だけでなく、家族や周囲からのプレッシャーが影響していることもあります。厚生労働省の調査によると、居住する地域において、家族が介護することを求めているような風潮があると感じている人は全体の2割、離職者に限ると3割以上いました。
本当は仕事を続けたい気持ちがあっても、周囲のすすめによって退職を選んでしまうケースもあるでしょう。

介護離職がもたらすリスク

介護離職がもたらすリスク

離職後の生活には、収入やキャリアの影響だけでなく、心身の健康や社会とのつながりといった面にも、リスクが生じます。

収入の減少や生活不安につながる可能性

介護離職をすると、これまで得ていた収入が途絶えたり、大きく減少したりします。介護は短期間で終わるとは限らず、数年単位で続く場合もあり、貯蓄を切り崩しながら生活せざるをえない状況に陥ることがあります。さらに、離職によって社会保険や年金の加入形態が変わることで、将来の年金額が少なくなることもあります。

キャリアの中断や再就職の難しさ

介護離職をすると、それまで築いたキャリアが中断されます。そして、離職期間が長くなるほど再就職が難しくなったり、年齢や社会のニーズの変化によって希望する仕事が見つかりにくくなったりするリスクが生じます。実際に、介護離職後に再就職できている方の割合は、全体の約3割です。介護離職は、一時的な選択のつもりでも、その後の働き方に長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。

参照:『介護離職の現状と課題』(総務省)

介護者の心身への疲労や介護うつ

厚生労働省の調査によると、在宅で介護を行っている方の半数以上が精神的ストレスを感じているとされています。
介護は、身体的な負担だけでなく、先の見えない不安や緊張が続くことによる精神的疲労も大きくなります。こうした負担が積み重なると、慢性的な疲れや睡眠障害、不安感が強まり、介護うつのような健康問題に発展する可能性もあります。

参照:『同居者の主なストレスの悩みやストレスの原因』(厚生労働省)

社会的な孤立につながるリスク

介護を中心とした生活が続くと、他者との関わりが減り、社会的に孤立しやすくなる点も見逃せません。介護離職によって職場とのつながりが途切れると、相談相手や気軽に話す相手がいなくなり、孤独感が強まることもあるでしょう。

介護と仕事を両立させるための制度

介護と仕事を両立させるための制度

国や自治体、職場には、介護と仕事を両立するためのさまざまな制度や支援の仕組みが用意されています。ここでは、介護離職を防ぐために知っておきたい代表的な制度について解説します。

介護保険サービス

介護保険サービスは、日常生活で支援や介護が必要な方やその家族が利用できる公的な支援制度です。要介護(要支援)と認定された方が対象となり、自宅や施設での生活を支えるためのサービスを受けられます。

介護サービスにはさまざまな種類があり、以下のようなものがあります。

サービス名 内容
訪問介護 介護職員などが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄などの生活支援を行う。
通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、入浴やリハビリテーションなどのサービスを受けられる。
通所リハビリテーション 専門職によるリハビリや、機能訓練を中心に受けられる。
短期入所(ショートステイ) 一定期間だけ施設に滞在でき、介護者が休息をとるための利用も可能。
福祉用具の貸与・購入支援 歩行器や車椅子、介護ベッドなどの福祉用具を利用・購入するための支援が受けられる。

介護保険サービスは、介護する側の負担を減らし、仕事と介護を両立するための支えになります。例えば、仕事の日はデイサービスを利用したり、訪問介護を組み合わせたりすれば、家族の介護負担を分散できます。こうしたサービスをうまく活用することで、無理なく日常生活を支えながら、働き続ける選択肢が広がります。

介護保険サービスを利用するには、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターでの要介護認定の申請が必要です。認定後、ケアプラン(介護支援計画)を作成して、サービス利用が始まります。

参照:
『仕事と介護両立のポイント』(厚生労働省)
『介護保険制度の概要』(厚生労働省老健局)

介護休業制度

介護休業制度とは、家族の介護が必要になったときに、一定期間仕事を休むことができる制度です。

対象となるのは、ケガや病気、心身の障害などにより、2週間以上にわたって継続的な介護が必要な状態にある家族です。介護休業制度の対象となる家族は、次のとおりです。

  • 配偶者(事実婚を含む)
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

対象家族一人につき、通算93日まで、3回まで分けて介護休業を取得できます。
また、雇用保険に加入している方が一定以上の条件を満たしている場合、休業中は介護給付金を受け取れます。給付額は、休業前の賃金のおよそ67%です。

なお、入社して1年未満の場合や、パート・契約社員の方は、勤務条件によって介護休業を取得できない場合もあります。

介護休業制度を取得するには、休業開始予定日の2週間前までに、事業主に申し出る必要があります。会社の就業規則で申請方法が定められている場合もあるため、早めに人事・総務担当者へ相談しておきましょう。

参照:『介護休業について』(厚生労働省)

介護休暇制度

介護休暇制度とは、家族の介護が必要なときに、仕事を休んで対応できる短期的な休暇制度です。対象となる家族は、介護休業制度と同様です。対象家族が一人の場合は年に5日まで、二人以上の場合は年に10日まで取得できます。

休暇は1日単位だけでなく、時間単位で取得することも可能です。そのため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ、介護サービスの調整など、短時間の用事にも柔軟に活用できます。

参照:『介護休暇について』(厚生労働省)

時短勤務や柔軟な働き方の制度

育児・介護休業法では、介護を行う労働者に対して、短時間勤務や所定外労働の制限、深夜労働の制限などの措置を講じるように事業主に求めています。これにより、フルタイム勤務が難しい時期でも、勤務時間を短縮したり、残業の免除を受けたりすることが可能になります。

また、企業によっては、在宅勤務やフレックスタイム制、時差出勤といった柔軟な働き方を導入している場合もあります。制度の内容や利用条件は会社によって異なるため、まずは就業規則や社内制度を確認して、早めに上司や人事担当者に相談しておきましょう。

参照:『短時間勤務等の措置』(厚生労働省)

介護離職を防ぐために自分でできること

介護離職を防ぐために自分でできること

介護離職を防ぐためには、制度や支援の仕組みを知るだけでなく、早めに行動し、周囲とつながっておくことが大切です。ここからは、介護が必要になったときに、自分でできる対策を解説します。

介護を一人で抱え込まない体制を整える

介護が始まると、「自分がやらなければならない」「ほかの人に迷惑をかけられない」と、介護を一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。しかし、介護を一人で続けることは、心身の負担となり、仕事との両立を難しくする原因にもなります。
家族内や外部の力を借りて、協力体制を整えることが、介護離職を防ぐ第一歩になるでしょう。

家族や親族と役割分担や協力体制について話し合う

家族や親族と役割分担や協力体制について話し合うことも大切です。通院の付き添いや金銭面の支援など、それぞれの事情や得意分野に合わせた役割分担を考えましょう。
また、仕事の繁忙期や体調の変化などにより、これまでの分担が難しくなることもあります。そのような場合には無理をせず、その都度話し合いの場を持ち、役割分担を見直すことが大切です。

早めに相談窓口や専門家とつながっておく

地域包括支援センターケアマネジャーなどの相談窓口は、介護が始まる前の段階から利用できます。介護保険制度の仕組みや、利用できるサービス、仕事と介護を両立するための工夫などについて、状況に応じたアドバイスを受けることが可能です。

また、「何を相談してよいかわからない」という状態でも問題ありません。困りごとや不安を言葉にすれば、必要な支援や制度を整理してもらえることもあります。相談窓口と早めにつながっておくことで、いざというときにスムーズに支援を受けられるでしょう。

まとめ

まとめ

介護離職の原因には、制度を十分に活用できないことや、介護の負担を一人で抱え込んでしまうことが挙げられます。介護が始まる前から制度について知り、家族や職場と早めに話し合い、介護と仕事を両立できるように備えておきましょう。無理せず、周囲の支援をうまく活用することが、介護離職を防ぐ第一歩になります。

この記事の監修社会福祉士