親の介護は何歳から始まる?平均年齢やきっかけ、準備すべきことを解説

親が年を重ねるにつれ、「介護はいつから始まるのだろう」と漠然とした不安を感じる方は少なくありません。この頃同じ話を繰り返すようになった、身だしなみが少し乱れてきたなど、些細な変化に気付くと、いよいよ自分の番かもしれないと焦りを感じる場合もあるでしょう。
この記事では、親の介護が始まる平均年齢やきっかけ、早めに準備すべき内容を解説します。また、年代別のサポート方法や見逃したくないサインもあわせて整理しています。
将来の見通しを立てて具体的な段取りを知ることで、見えない不安への安心感がある状態を目指せるよう、ぜひ参考にしてください。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
親の介護が始まる時期の目安

統計データによると、介護認定を受ける年齢には一定の傾向がみられます。ここでは、平均的な開始時期と認定を受ける前の段階で必要になるサポートの目安を解説します。
要支援・要介護認定を受ける方の平均年齢
介護が必要になる時期は、75歳を過ぎたあたりから急激に増加します。厚生労働省の調査では、後期高齢の方になると要介護認定を受ける割合が高まることが示されているためです。
認定を受けている方の割合は以下のとおりです。
- 65〜74歳:約4.3%
- 75〜79歳:約13.0%
- 80〜84歳:約27.4%
- 85歳以上:約59.1%
80歳前半では約4人に1人が何らかの支えを必要としています。親が75歳を迎える頃を一つの節目とし、将来の生活を話し合い始めるのが望ましいでしょう。
介護未満の生活支援や見守りが必要になる年齢の目安
公的な認定に至らなくても、日常生活の不自由を感じ始める時期は認定年齢より早く訪れます。加齢で活力が低下するフレイル(虚弱/きょじゃく)の状態になると、家事や外出の付き添いが必要になりやすいためです。
70代前半から現れやすい変化は以下のとおりです。
- 高い場所の掃除や重い買い物が負担になる
- 病院の受付や会計が難しく感じ通院を嫌がる
- 歩行速度が落ちて信号を渡りきるのが不安になる
こうした段階でご家族が関わることは、要介護状態への進行を遅らせる助けになります。70代に入ったら、親の小さな困りごとに気付くよう心がけましょう。
介護が始まる主なきっかけや原因

介護が必要になる背景には、身体的な衰えだけでなく事故や環境の変化も深く関わっています。ここでは、多くの家庭で介護生活の始まりとなっている主なきっかけを4つ解説します。
転倒や骨折
高齢の方にとって、転倒による骨折は寝たきりにつながる重大なきっかけです。加齢により骨密度が低下している場合、家の中のわずかな段差でも大きな怪我(けが)を負いやすいためです。
- 大腿骨(だいたいこつ)の骨折
- 脊柱(せきちゅう)の圧迫骨折
例えば、トイレへの移動中に滑ったり、絨毯の端に足を取られたりして転ぶ事例が多くみられます。骨折による長期入院で筋力が低下し、退院後に自立歩行が困難になるケースも少なくありません。住環境を整えるなど、転倒を防ぐ対策を講じることが大切です。
急性疾患
脳血管疾患(脳梗塞など)や心筋梗塞は、ある日突然、介護を余儀なくされる一因です。これらは一命を取り留めても、麻痺(まひ)などの後遺症が残る場合が少なくないからです。
- 脳梗塞や脳出血
- 心筋梗塞
- 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
前日まで元気だった親が、倒れた日から車椅子生活になる状況に戸惑うご家族もよくみられます。持病の管理や定期健診を促し、早期発見に努めることが安心感がある生活につながります。
認知症の発症や認知機能の低下
認知機能の低下は、身体は元気であっても見守りや介助を必要とするきっかけです。判断力の低下により、薬の服用や金銭管理が困難になるためです。
- 同じことを何度も聞き返す
- 料理の段取りが悪くなる
- 季節に合わない服装を選ぶ
ガスの消し忘れなどの症状が現れると、ご家族は常に神経をすり減らすことになります。親の行動にささいな違和感に気付く段階で専門医を受診することが、ご本人とご家族を支える一助です。まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。必要に応じて、脳神経内科や、もの忘れ外来などの適切な専門医を紹介してもらう流れがスムーズです。
配偶者の入院、死別など同居者の不在
同居する配偶者の不在は、介護が本格化する大きな転機です。これまで夫婦で支え合っていたバランスが崩れ、一人では生活が成り立たなくなることが少なくないためです。
- 配偶者の長期入院
- パートナーの急逝
- 同居家族の転勤や転居
配偶者が身の回りの世話をこなしていたため、周囲からは不自由なく見えていたケースでも、一人になった途端に生活が困難になる場面がみられます。万一の際に地域の相談窓口を頼れるよう、事前に情報を把握しておきましょう。
年代別|親に必要なサポートとは

親の年齢により、心身の状態や必要な支援は段階的に変化します。ここでは、年代ごとに検討すべき具体的なサポートの目安を解説します。
60代|介護は不要なケースが多いが、将来に備えて予防したい
60代は多くの方が自立して過ごしていますが、将来に向けた準備を始める時期です。急な体調変化に備えて親の意向を確認し、健康を維持する習慣を整えることが有効なためです。
60代の親に対して意識したい行動をまとめました。
- 現在の健康状態やかかりつけ医の情報を共有する
- 介護が必要になった際の希望(自宅や施設など)を話しておく
- 自治体の検診や適度な運動を促す
元気なうちに片付け(生前整理)を一緒に進めることも、将来の負担軽減につながります。早めに話し合いを重ねることで、いざというときにご家族が迷わず動ける状態を築けます。
70代|買い物や家事、通院が負担になり始める方が多い
70代に入るとできないことが少しずつ増え、ご家族の支援が必要になる場面が多くみられます。75歳を過ぎる頃から認定を受ける割合が上昇するため、日常のささいな変化に気付く意識を持ちましょう。
70代の親に現れやすい変化は以下のとおりです。
- 重い買い物や高い場所の掃除が負担になる
- 薬の飲み忘れや重複が増える
- 病院での説明を理解したり伝えたりすることが難しくなる
この段階では、家事代行や通院の付き添いなどの生活支援が中心です。無理にすべてをご家族で担おうとせず、地域のサービスを調べ始めることが大切です。
80代|要介護認定者が増え家族のサポートが必要になりやすい
80代は身体機能や認知機能の変化が顕著になり、公的な介護サービスを本格的に利用する方が増える時期です。
80代で必要になりやすい具体的なケアを整理しました。
- 入浴や着替えなどの身体介助
- 認知症に伴う見守りや声かけ
- 車椅子への移乗サポート
食事や排泄(はいせつ)の介助が必要になると、仕事との両立に悩むご家族も多くみられます。この年代ではケアマネジャーなどの専門職と密に連携し、介護サービスを活用する体制を整えましょう。
親の介護サインとは

親の介護が必要になる際の変化は、日常の些細な場面に現れます。自分では「大丈夫」と言っていても、生活の細部を観察することで見逃しがちなSOSに気付くことができます。ここでは、代表的な4つのサインを解説します。
室内が乱れている
部屋の整理整頓が行き届かなくなるのは、心身の活力が低下している証拠です。掃除機をかけたり洗濯物を畳んだりといった家事全般が、足腰の痛みや意欲の減退により負担に感じるようになるためです。
チェックすべきポイントを整理しました。
- 床に物が散乱している
- 洗い物がシンクに溜まっている
- 郵便受けに新聞が溜まっている
体力が衰えると、重い掃除機の操作や片付けが困難になります。以前に比べて汚れが目立つようになったときは、特定の動作に支障が出ていないか確認しましょう。
身だしなみが崩れている
外見への関心が薄れることも、重要な変化です。手指の細かい動作が難しくなり、ボタンを留めたり髪を整えたりすることが億劫になります。
外見に現れやすい変化は以下のとおりです。
- 同じ服を何日も着続けている
- 季節に合わない服装をしている
- 髪が乱れていたり無精髭が伸びていたりする
清潔な状態を保つ衛生管理が難しくなると、皮膚トラブルを招くリスクもあります。ご本人の自尊心を傷つけないよう配慮しながら、さりげなく手助けを申し出ることが大切です。
物忘れが増えた
単なる加齢による物忘れと、認知症の兆候を見極めることが重要です。約束を忘れるだけでなく、忘れた事実自体を覚えていない場合は、脳の機能が低下している疑いがあるためです。
注意が必要な症状をまとめました。
- 同じ質問や話を何度も繰り返す
- 直前に何をしていたか思い出せない
- 使い慣れた家電の操作ができなくなる
「年のせい」と見過ごすと、症状が進行する可能性があります。ご家族が違和感を覚えた段階で相談を行うことが、その後の生活の準備を整える一歩です。
食事や生活が不規則になっている
生活リズムの乱れは、栄養バランスの偏りや体調不良に直結します。買い物や調理の段取りを立てる実行機能が低下すると、食事の質が急激に落ちるためです。
不規則になっているサインには以下のようなものがあります。
- 冷蔵庫の中に期限切れの食品が増えている
- 同じものばかりを大量に買ってくる
- 寝たり起きたりの時間がバラバラになる
特に食事の乱れは脱水や低栄養を招きやすいため、早期の対応を検討しましょう。
親の介護が始まるかもしれないときの対処法

親の介護サインに気付くと、何をすべきか迷うものです。まずは焦らず、現状の把握と公的な相談窓口の活用から始めましょう。ここでは、介護が本格化する前に取り組むべき5つの対処法を解説します。
親の意思を確認する
介護の主役はあくまで親本人です。ご本人がどのような老後を過ごしたいかを尊重することが、その後の円滑なサポートにつながります。
確認すべき主な内容は以下のとおりです。
- 最期まで自宅で過ごしたいか、施設への入居も検討できるか
- どのような介護サービスなら受け入れやすいか
- 財産管理や延命治療に関する希望
遠方に住んでいる場合は電話や帰省時に少しずつ対話を重ねることが大切です。ご本人の本音を聞き出しておくことで、急な判断を迫られた際にも落ち着いて選択ができます。
最近ではこのような事前の話し合いを人生会議(ACP)と称し、公的にもその実践が推奨されています。
通院先や服薬などの情報を整理する
医療情報は、介護プランを立てるうえでの重要な基礎です。持病や現在の服薬状況を把握していないと、緊急時に適切な対応が遅れるリスクがあるためです。
整理しておきたい情報は以下のとおりです。
- かかりつけ医の氏名、診療科、連絡先
- お薬手帳の保管場所と、現在服用中の薬の名前
- 既往歴やアレルギーの有無
これらを一覧にまとめておくと、ケアマネジャーや医師との共有がスムーズです。
市区町村や地域包括支援センターに相談をする
一人で抱え込まず、地域の専門窓口を頼ることが持続可能な介護の鍵です。地域包括支援センターは、高齢の方の総合相談窓口として、介護保険外のサービスも含めたアドバイスをくれます。
窓口で相談できる主な内容は以下のとおりです。
- 介護保険の申請方法
- 地域で利用できる高齢の方向けサービス
- 介護に関する悩み全般
まずは電話で「親の様子が気になっている」と伝えるだけでも構いません。専門家への相談で、次にやるべきことが明確になります。
介護保険などの公的支援を調べる
介護には経済的な負担も伴うため、公的な制度を正しく理解しておく必要があります。要介護認定を受けることで、デイサービスや福祉用具のレンタルなどのサービスを1〜3割の自己負担で利用できるためです。
調べるべき制度のポイントを整理しました。
- 介護保険制度の仕組みと利用の流れ
- 高額介護サービス費などの家計負担を抑える制度
- 自治体独自の配食サービスや見守り支援などの特別給付
制度の全体像を知ることで、将来的な費用の不安を和らげることができます。
家族、親族間で情報を共有する
介護は家族チームで取り組むべき課題です。役割や情報の共有が不足していると、特定の誰かに負担が集中したり、後々に意見が食い違ってトラブルになったりしやすいためです。
共有しておくべき主な項目は以下のとおりです。
- 親の現在の状態と、将来的に想定されるリスク
- 誰がどの役割を担うか(窓口担当、金銭面、身体介助、事務手続きなど)
- 緊急時の連絡網
兄弟姉妹や親族と早めに情報を共有しておくことで、協力体制を整えやすくなります。
まとめ

親の介護は多くの場合で75歳を過ぎたあたりから本格化しますが、その前兆は70代前半の些細な変化に現れます。室内や身だしなみの乱れなどのサインに早く気付くことが、将来の負担を軽減する第一歩です。
いざサポートを検討する際は、親自身の気持ちやペースを尊重し、老化による変化を穏やかに受け入れる姿勢が求められます。地域の相談窓口や公的制度を事前に調べておくことで、ご自身の生活を守りながら、親にとっても安心感がある選択が可能です。できることから少しずつ、準備を進めてみてください。


