介護保険で利用できるサービス|在宅、施設、地域支援の内容と利用の流れ解説

介護保険は、高齢の方や要支援・要介護状態になった方が自立した生活を続けられるよう支援する制度です。利用できるサービスは、在宅サービス、施設サービス、そして介護予防や地域での交流を支える地域支援サービスに大きく分かれます。これらのサービスを受けるには、まず要介護認定を申請し、ケアマネジャーとともに介護サービス計画(ケアプラン)を作成する流れが基本です。本記事は、それぞれのサービス内容と利用までの具体的な手続きをわかりやすく解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護保険で利用できるサービスとは

介護保険で利用できるサービスとは、高齢の方や要介護者の自立支援を目的に提供される支援のことです。訪問介護や通所介護、施設入所、地域での支援活動など、多様な形で生活を支えます。
介護保険サービスの基本的な考え方
高齢の方が要支援・要介護状態になっても、尊厳を保ちながら自分らしい生活を続けられる支援です。そのために、介護そのものを肩代わりするだけでなく、心身の状態や生活環境に合わせて残された能力を活かし、できることを維持・向上させる自立支援が重視されます。また、利用者本位の視点から、本人や家族の希望を尊重しつつ、必要な保健医療サービスや福祉サービスを総合的に組み合わせての提供が重要とされています。さらに、介護を家族だけに任せるのではなく、社会全体で支え合う社会保険方式を通じて、持続可能で公平な仕組みとして運営されている点も大きな特徴です。
参照:
『介護保険制度の概要』(厚生労働省)
『介護保険制度』(一般社団法人日本医療・病院管理学会)
介護保険の利用対象者
まず第1号被保険者の65歳以上の方で、要介護認定または要支援認定を受けた場合に、原因を問わずサービスを利用できます。一方、40〜64歳の方は第2号被保険者となり、加齢に伴って発症しやすい特定疾病が原因で要介護・要支援状態となった場合、介護保険サービスの対象です。
自己負担割合と支給限度額の考え方
介護保険サービスの自己負担割合は、原則として利用者の所得に応じて1〜3割となり、残りは公費と保険料から給付されます。負担割合は、市区町村から交付される介護保険負担割合証に記載され、前年の所得や世帯状況などをもとに判定されます。一方、支給限度額は要支援・要介護度ごとに1ヶ月あたりの区分支給限度基準額が定められており、この範囲内であれば定められた自己負担割合でサービスを利用できます。限度額を超えてサービスを利用した分は、介護保険の給付対象外となり、超過分が全額自己負担になる仕組みです。
介護保険サービスの利用開始手続き
まず住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターで要介護認定の申請を行います。申請後は、認定調査員による聞き取り・訪問調査と、主治医意見書などの医療情報をもとに、介護認定審査会による審査が行われ、要支援または要介護の区分が決定されます。しかし、区分判定には非該当(自立)もあり、この場合は、原則として介護保険サービスの利用ができません。要支援1・2と判定された場合は地域包括支援センターで、要介護1〜5と判定された場合は居宅介護支援事業所のケアマネジャーと話し合いながら、心身の状態や生活環境に合ったケアプラン(介護サービス計画)を作成します。そのうえで、利用者や家族の希望を踏まえてサービス事業者と契約を結び、具体的な介護保険サービスの利用が始まります。
参照:『高齢者向け住まいでの介護保険サービス利用にあたって確認したいポイント』(厚生労働省)
在宅で利用できる介護保険サービス

在宅で利用できる介護保険サービスには、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、ショートステイなどがあり、心身の状態に沿って組み合わせて利用できます。
訪問介護
訪問介護は、ホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問し、日常生活を支援する介護保険サービスです。介護保険により訪問介護(ホームヘルプサービス)を受けることができる方は、要介護1以上の認定を受けている方です。主な内容は、食事・排せつ・入浴などを手助けする身体介護と、掃除・洗濯・調理・買い物などを行う生活援助、通院時の乗車・降車等介助の3つに大きく分かれます。利用者の心身の状態や生活環境に合わせてサービス内容や回数・時間を調整し、できることはできるだけ本人が続けられるよう自立支援の視点で関わることが重視されます。
訪問看護
訪問看護は、看護師などが自宅を訪問し、医師の指示に基づいて医療的ケアや療養上の支援を行うサービスです。病状や障害の状態を観察し、血圧・体温測定、服薬管理、点滴の管理や褥瘡(じょくそう)の処置、医療機器の管理などを行うほか、清拭や排せつ介助など日常生活の看護や、在宅でのリハビリ、終末期ケア、家族への介護方法の指導・相談支援も含まれます。介護保険では、要支援・要介護認定を受けた方で、主治医が訪問看護指示書を出した場合に利用できます。
訪問リハビリテーション
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職が利用者の自宅を訪問し、心身機能の維持・回復や日常生活動作の自立を支援するリハビリを行うサービスです。立ち上がりや歩行、トイレ・入浴・更衣などの動作練習、嚥下やコミュニケーションの訓練に加え、福祉用具の選定や住宅改修の助言、介護方法を家族への指導も含まれます。主治医が訪問リハビリの必要性を認めて指示書を出し、要支援・要介護認定を受けていることが利用の前提となり、ケアマネジャーがケアプランに位置づけることで定期的なリハビリが開始されます。
参照:
『どんなサービスがあるの?-訪問リハビリテーション』(厚生労働省)
『訪問リハビリテーションとは』(健康長寿ネット)
通所介護(デイサービス)、通所リハ(デイケア)、短期入所(ショートステイ)
通所介護(デイサービス)は、自宅から日帰りで通い、食事・入浴・排せつなどの日常生活支援やレクリエーション、機能訓練などを受けながら、心身機能の維持と生活リズムの安定を図るサービスです。通所リハビリテーション(デイケア)は、医師の指示のもと、理学療法士や作業療法士などによる専門的なリハビリテーションを中心に、日常生活動作の改善や社会参加の維持をめざして通う仕組みです。利用者は介護老人保健施設などを訪れてこれらのサービスを受けます。短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ)は、数日から数週間ほど施設に宿泊しながら、食事・入浴・排せつなどの介護や機能訓練を受けられるサービスで、家族のレスパイト(休息)や緊急時の受け入れにも活用できます。
参照:
『通所介護(デイサービス)とは』(健康長寿ネット)
『介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)とは』(健康長寿ネット)
『サービス編|介護保険の解説|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)
通所型の介護保険サービス

通所型の介護保険サービスには、通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)などがあります。
介護保険施設の種類と概要
介護保険施設は、公的な介護保険が適用される入所型の施設で、主に特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院の3種類があります。特別養護老人ホームは、重度の要介護状態で在宅生活が難しい方が長期的に生活し、日常生活全般の介護や健康管理を受ける場です。介護老人保健施設は、医師やリハビリ専門職が配置され、在宅復帰を目標に、医療管理やリハビリ、日常生活訓練を集中的に行う中間的な施設です。介護医療院は、長期的な医療管理と生活の場を一体的に提供する施設で、慢性期で医療ニーズが高い方が対象です。
短期滞在型のサービス
代表的なのは、短期入所生活介護・短期入所療養介護、いわゆるショートステイです。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などに数日から数週間程度入所し、食事・入浴・排せつなどの日常生活の介護や機能訓練(リハビリ)、必要に応じた看護や医療的ケアを受けることができます。利用目的には、家族の病気や冠婚葬祭、出張など一時的に在宅介護が困難な場面や、介護者の心身の負担軽減(レスパイトケア)が含まれ、在宅生活を続けるための重要な支援手段となっています。
長期滞在型のサービス
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設が中心です。特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の重度の要介護状態で在宅生活が難しい方が、生活の場として長期に入所し、食事・入浴・排せつなど日常生活全般の介護と健康管理を受ける施設です。介護老人保健施設は、在宅復帰を目標に、一定期間(原則3〜6ヶ月程度)入所しながらリハビリや日常生活訓練、医療管理を受ける中間的な施設で、その後も状態により長期利用となる場合があります。介護医療院は、慢性期で医療ニーズが高く、長期的な療養と生活支援を一体的に提供する場として位置づけられており、医療と介護の両面から生活を支える長期滞在型サービスです。
参照:
『特別養護老人ホーム(特養)とは 』(健康長寿ネット)
『介護老人保健施設(老健)とは 』( 健康長寿ネット)
地域密着型サービス

地域密着型サービスは、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、市町村を単位とした身近な圏域で提供される介護保険サービスです。
地域密着型サービスの概要
認知症高齢患者さんや中重度の要介護高齢の方などが、できるだけ住み慣れた地域で生活が続けられることを目的とした介護保険サービスです。小規模多機能型居宅介護や認知症対応型通所介護、認知症高齢者グループホーム、地域密着型特別養護老人ホームなどが含まれ、市区町村が事業者の指定・監督を行い、その市区町村に住む要支援・要介護認定を受けた高齢の方が主な対象です。
主な地域密着型サービスの種類
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などがあります。これらはいずれも、市区町村が指定・監督を行い、その市区町村に住む要介護高齢の方を対象として、少人数・顔なじみの職員によるケアを特徴とします。例えば、小規模多機能型居宅介護では通いを中心に訪問と泊まりを柔軟に組み合わせることができ、グループホームでは少人数で共同生活を営みながら、認知症の方がこれまでの生活に近い形で暮らし続けられるよう支援します。
福祉用具や住宅に関する介護保険サービス

福祉用具や住宅に関する介護保険サービスには、車いすや介護用ベッドなどをレンタルできる福祉用具貸与、腰掛便座や入浴補助用具などを対象とした特定福祉用具販売、手すりの設置や段差解消などに対する住宅改修があり、自立支援と在宅生活の安全性重視を目的として利用できます。
福祉用具の貸与や購入に関する補助
福祉用具に関する介護保険サービスでは、貸与(レンタル)と特定福祉用具購入の2つの方法で費用の補助が受けられます。福祉用具貸与は、車いすや介護用ベッド、床ずれ防止用具、手すりなどの指定品目を対象に、利用者は原則1〜3割の自己負担でレンタルし、残りは介護保険から給付されます。一方、再利用が難しい腰掛便座や入浴補助用具などの特定福祉用具は購入が対象で、年間10万円を上限に、その9〜7割(自己負担1〜3割)が介護保険から支給されます。購入費の支給方法には、いったん全額を立て替えて後から払い戻しを受ける償還払いと、自己負担分のみを支払う受領委任払いがあります。
参照:
『福祉用具貸与とは』(健康長寿ネット)
『特定福祉用具販売・購入について』(健康長寿ネット)
住宅改修に関する支援
介護保険の住宅改修に関する支援は、在宅で安全性の高い暮らしを続けられるよう住環境を整えることを目的として行われます。対象となるのは、要支援1・2または要介護1〜5の認定を受け、自宅で生活している方です。支援の対象となる工事は、手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止や移動を円滑にするための床材・通路面の変更、開き戸から引き戸などへの扉の取り替え、和式から洋式便器への取り替えなどが代表的です。また、これらに付随して必要となる工事も含まれます。介護保険からは原則9〜7割が支給され、自己負担は1〜3割で、支給限度額は原則20万円(生涯または原則1回)までとされています。利用にあたっては、事前にケアマネジャーや市区町村窓口に相談し、見積もり書や改修理由書を添えて申請してから工事を行うことが必要です。
介護保険サービスを利用するまでの流れ

おおまかに申請、認定、ケアプラン作成、サービス利用開始の段階を踏みます。まず、住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請書を提出します。その後、職員による認定調査(心身の状態などの聞き取り・訪問調査)と、主治医意見書の作成が行われ、介護認定審査会で「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかが判定されます。要支援と判定された場合は地域包括支援センターが、要介護と判定された場合は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当となり、本人・家族の希望や生活状況を踏まえながらケアプラン(介護サービス計画)を作成します。そのケアプランに基づいて、訪問介護やデイサービス、福祉用具貸与などの事業者と個別に契約を結び、具体的な介護保険サービスの利用が開始されます。
参照:『サービス利用までの流れ|介護保険の解説|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)
まとめ

介護保険サービスは、在宅・施設・地域密着型など多様な形で、高齢の方の自立支援と介護者の負担軽減を目的に整備されています。利用には、市区町村への要介護認定の申請と、ケアマネジャーなどによるケアプラン作成が必要です。自宅での生活を支える訪問系や通所系サービス、長期入所施設、地域密着型サービスを組み合わせることで、その方らしい暮らしを続けやすいです。
参考文献
- 『介護保険制度の概要』(厚生労働省)
- 『介護保険制度』(一般社団法人日本医療・病院管理学会)
- 『介護関係情報』(日本認知症学会)
- 『給付と負担について(参考資料)』(厚生労働省)
- 『高齢者向け住まいでの介護保険サービス利用にあたって確認したいポイント』(厚生労働省)
- 『訪問介護とは』(健康長寿ネット)
- 『訪問看護とは』(健康長寿ネット)
- 『どんなサービスがあるの?-訪問リハビリテーション』(厚生労働省)
- 『訪問リハビリテーションとは』(健康長寿ネット)
- 『通所介護(デイサービス)とは』(健康長寿ネット)
- 『介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)とは』(健康長寿ネット)
- 『サービス編|介護保険の解説|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)
- 『介護保険3施設の概要』(厚生労働省)
- 『特別養護老人ホーム(特養)とは 』(健康長寿ネット)
- 『介護老人保健施設(老健)とは 』( 健康長寿ネット)
- 『地域密着型サービスとは』(健康長寿ネット)
- 『地域密着型サービスの概要』(関東信越厚生局)
- 『福祉用具貸与とは』(健康長寿ネット)
- 『特定福祉用具販売・購入について』(健康長寿ネット)
- 『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)
- 『サービス利用までの流れ|介護保険の解説|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』(厚生労働省)




