要支援から要介護へ移行するのはいつ?違いと変化の兆し、区分変更申請について解説

要支援と認定された家族がいる場合、今は何とか暮らせていても、今後の生活がどう変わるのか不安になりやすいものです。介護保険の認定は一度決まったら終わりではなく、心身の状態に応じて変わる可能性があります。要支援と要介護は名前が似ている一方で、意味合いも受けられる支援の幅も異なります。
だからこそ、今の状態を正しく理解し、変化の兆候に早めに気付き、必要な手続きを迷わず進められるようにしておくことが大切です。本記事では、要支援と要介護の違い、要支援から要介護に変わる時期の考え方や具体的なサインなどを解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
要支援と要介護の違い

介護保険の区分は受けられる支援の範囲に直結するため、要支援と要介護の違いを制度の考え方から整理します。
要介護認定制度の仕組み
介護保険制度は、加齢や病気などで日常生活に支援が必要になった方が、必要なサービスを受けながら暮らせるようにするための制度です。サービスを利用するためには、市区町村へ申請し、要介護認定を受ける必要があります。
申請の窓口は自治体の介護保険担当課が基本で、本人だけでなく家族が申請することもできます。申請後は調査員が自宅や入院先などを訪問し、下記のような項目を確認します。
- 起き上がりや歩行
- 食事、排泄、入浴、着替えの様子
- 意思疎通
- 理解力
さらに主治医が意見書を作成し、病気や治療状況、認知機能の状態、医療的な管理の必要性などが整理されます。これらをもとに一次判定と二次判定が行われ、介護認定審査会が総合的に判断して、要支援または要介護の区分が決まります。
この仕組みで押さえておきたいポイントは、認定が生活の困りごとそのものではなく、日常生活動作や認知機能などから推定される介護の手間を基準にしている点です。
家族が感じる大変さと、認定の結果が必ずしも一致しない場合があります。だからこそ、訪問調査の際には、普段の状態をできるだけ具体的に伝えることが大切です。調子がよい日の姿だけでなく、調子が悪い日の様子や、困っている場面を説明することが、実態に合った認定につながります。例えば以下のように、時間帯や場面によって困りごとが生じる場合は補足して説明するとよいでしょう。
- 日中は何とか歩けても夕方以降は疲れてふらつきやすい
- 夜間のトイレで転びそうになる
- 段取りがわからず入浴が進まないなど
もう一つのポイントは、認定には有効期間があり、更新が必要になる点です。状態が変われば、更新のタイミングだけでなく、途中でも区分変更を申請できます。また、認定結果に納得できない場合は、所定の手続きにより不服申立てを行える仕組みがあります。
要支援の状態とは
要支援は、今すぐ常時の介助が必要というより、生活の一部で支えがあったほうが安全に暮らせる状態を指します。食事や排泄などの基本的な身の回りのことは自分でできる場合が多い一方で、買い物や調理、掃除、洗濯、外出の段取り、薬の管理など、生活を回す力が落ちてきて、見守りや手助けが必要になることがあります。
要介護の状態とは
要介護は、日常生活の中で介助が必要な場面が増え、継続的に支援が欠かせない状態を指します。
要介護の段階になると、食事、排泄、入浴、着替え、移動などの基本的な動作において、見守りだけでは安全を保ちにくく、実際の介助が必要になることが増えます。また、認知機能の低下が進むと、身体の動きは保たれていても、段取りがわからなくなったり、危険を回避できなくなったりして、生活全体に手助けが必要になります。
要介護の認定を受けると、利用できるサービスの種類や量が広がり、訪問介護、通所介護、短期入所、訪問看護、訪問リハビリテーションなど、状況に応じて組み合わせやすくなります。
要支援から要介護に変わる時期の目安

要支援から要介護へ変わる時期には、決まった年数はありません。状態が安定して長く要支援のままの方もいれば、病気やけがをきっかけに短期間で要介護に移行する方もいます。目安を考えるうえで役に立つのは、年齢そのものよりも、フレイルという心身の弱りがどの程度進んでいるか、そして生活の中で転倒や入院につながる出来事が増えていないかという視点です。フレイルは、筋力や体力の低下、体重減少、疲れやすさ、活動量の低下、外出の減少などが重なり、放置すると要介護に近づきやすい状態です。要支援の方のなかには、すでにフレイルが進み始めている場合があり、ここでの支え方がその後の経過に影響します。
家族が気付く変化の兆候と要介護になる具体的なサイン

要支援から要介護に移行する前には、生活のなかに小さな変化が積み重なります。家族がその変化に気付けると、対応の選択肢が広がります。ここでは身体機能、生活機能、認知機能の三つの側面から、注意したいサインを整理します。重要なのは、一つの出来事だけで判断するのではなく、頻度が増えているか、以前より回復しにくいか、本人の生活の自由度が下がっていないかを観察することです。気になる変化があれば、メモとして残しておくと、相談や申請の際に説明しやすくなります。
身体機能の低下が示す兆候
身体機能の低下は、まず歩き方に表れやすくなります。歩幅が小さくなり、足が上がりにくくなって、すり足のようになる場合があります。以前より歩く速度が遅くなり、横断歩道を渡り切るのが不安になることもあります。家の中では、椅子から立ち上がるときに勢いがなくなり、手すりや机に手をついて体を押し上げるようになります。布団から起き上がるのに時間がかかったり、夜間のトイレでふらついたりする場合もあります。このような変化は、筋力やバランス能力の低下を示している可能性があります。
生活機能の低下が示す兆候
生活機能の低下は、家の中の様子や生活の段取りに表れます。具体的な兆候は下記のとおりです。
- 以前は整っていた部屋が散らかりやすくなる
- ゴミ出しができずに溜まる、洗濯物が片付かない
- 冷蔵庫の中に期限切れの食品が増える
このように、生活の管理が難しくなるのも大きな変化のサインです。本人が疲れやすくなって家事が後回しになることもありますし、物の場所がわからなくなって探し物が増える場合もあります。こうした変化は、身体機能の低下だけでなく、認知機能や気力の低下が関わっていることもあります。
認知機能の変化が示す兆候
認知機能の変化は、家族にとって心配になりやすい部分です。まず現れやすいのは記憶の変化です。同じ話を繰り返す、さっき聞いたことをまた質問する、約束を忘れる、物を置いた場所がわからなくなる、といった出来事が増える場合があります。
加齢による物忘れでも似たことは起こりますが、生活に支障が出るかどうかが一つの目安になります。例えば、薬を飲んだこと自体を忘れて重複して飲む、火の始末を忘れる、外出先で帰り道がわからなくなるなど、安全に関わる問題が出ている場合は早めの受診が必要です。
要支援から要介護への変化がみられたときの対処法

変化の兆候に気付いた場合、何から始めればよいかわからず、つい様子を見る方向に傾きがちです。しかし、支援の調整には時間がかかる場合があり、いざ困ってから動くと家族の負担が急に増えます。ここでは、現実的に動きやすい二つの対処法を整理します。
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する
要支援の方であれば、まず地域包括支援センターに相談することが出発点です。地域包括支援センターは、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などが連携し、高齢の方の暮らしを支える総合窓口として機能しています。
介護サービスの相談だけでなく、医療との連携、権利擁護、虐待の予防、家族の支援など幅広い相談が可能です。要支援の方は介護予防ケアプランをこのセンターが作成する場合も多く、日頃の変化を伝えることで、サービスの調整や追加、医療機関受診の提案につながります。
要介護認定の区分変更申請を検討する
状態の変化がはっきりしており、現行の要支援の枠では必要な支援が足りない場合は、区分変更申請を検討します。区分変更申請とは、認定の有効期間の途中でも、心身の状態が変わった場合に再度認定を受け直す手続きです。例えば、転倒による骨折で退院後に歩行が不安定になった、認知機能の低下が進み火の始末ができない、排泄の介助が必要になったなど、生活の支え方が変わった場合が該当します。申請は本人または家族が自治体の窓口で行えますし、委任を受けたケアマネジャーが支援する場合もあります。
要支援から要介護に移行した場合の介護保険サービスの変化

要支援から要介護に移行すると、介護保険で使えるサービスの枠が広がります。ただし、使える枠が増えることは、必要な支援が増えたことの裏返しでもあります。大切なのは、制度の変化を理解したうえで、本人の生活の質と安全、家族の負担のバランスを取りながらサービスを組み立てることです。ここでは、利用限度額とサービス内容の二つの観点から変化を整理します。
介護保険サービスの利用限度額
介護保険では、認定された区分に応じて、1ヶ月あたりに利用できるサービス費用の上限が定められています。金額の目安として、1単位を10円で換算した場合の上限額は下記の通りです。
- 要支援1:50,320円
- 要支援2:105,310円
- 要介護1:167,650円
- 要介護2:197,050円
- 要介護3:270,480円
- 要介護4:309,380円
- 要介護5:362,170円
この上限の範囲内であれば、利用者は原則として費用の一部を自己負担し、残りを介護保険が給付します。自己負担割合は所得などに応じて変わり、一定以上の所得がある場合は負担が増える仕組みになっています。要支援から要介護に移行すると、この上限が大きく増えるため、訪問介護や通所サービス、リハビリなどをより柔軟に組み合わせやすくなります。要支援の枠で支援が足りないと感じていた家庭にとっては、生活を安定させる選択肢が増えることになります。
サービスの内容
要支援では介護予防の視点が中心で、生活機能の維持と改善を目指した支援が組み立てられます。要介護に移行すると、介助が必要な部分を具体的に支えるサービスが増え、訪問介護での身体介護、通所介護での入浴支援や機能訓練、短期入所での家族の休息支援などが利用しやすくなります。
例えば入浴が不安定になった場合、要支援では見守り中心で対応していたものが、要介護では介助や入浴設備のある通所サービスを増やすことで安全を確保しやすくなります。排泄の失敗が増えた場合も、訪問介護の時間を調整し、清潔を保つ支援を受けることで本人の負担を減らし、自尊心を保ちやすくなります。
要支援から要介護への変化に備えるための準備と心構え

ここでは、ケアマネジャーとの連携、サービスの把握、家族の役割分担という三つの観点から、具体的な準備と心構えを解説します。
ケアマネジャーとの連携を強化する
介護が長く続くほど、ケアマネジャーとの連携の質が生活の安定に直結します。連携を強化する第一歩は、困りごとを小さなうちに共有することです。転倒しそうになった、食欲が落ちた、夜間に不穏になる、薬の管理が難しいなど、些細にみえる変化が実は大きなリスクにつながる場合があります。早めに共有すれば、サービスの調整や医療機関受診、住環境の改善などで先回りできます。
受けられる介護保険サービスを把握しておく
介護保険サービスは種類が多く、初めての方にはわかりにくい部分があります。だからこそ、要支援の段階から、どのようなサービスがあり、どのように使い分けるかを少しずつ理解しておくと安心です。
理解のコツは、サービスを目的でとらえることです。身体の介助が必要なら訪問介護、日中の見守りや入浴支援が必要なら通所サービス、家族が休息を取りたいなら短期入所、医療的な管理が必要なら訪問看護、歩行や動作の改善を目指すならリハビリ、といったように、困りごととサービスを結び付けると整理しやすくなります。
家族や親戚などの役割分担を見直す
要介護への移行で最も影響を受けやすいのは、家族の生活です。介護を担う方が一人に偏ると、疲労やストレスが蓄積し、身体や心の不調につながりやすくなります。役割分担を見直すうえで大切なのは、完璧な分担を目指さず、できることを持ち寄る発想です。例えば、遠方に住む兄弟が定期的に電話で本人の様子を聞き、必要な手続きを手伝う、買い物や通院の付き添いを交代で担当する、金銭管理や書類整理を得意な方が引き受ける、といった形です。
まとめ

要介護に移行するとサービスの枠が広がり、支援を組み立てやすくなります。これは本人の生活を守り、家族の負担を減らすための仕組みです。要介護への移行をおそれすぎるよりも、必要な支えを得るための前向きな調整としてとらえることが、介護を続けるうえで大切です。日頃からケアマネジャーとの連携を強化し、利用できるサービスを把握し、家族の役割分担を見直しておくと、変化が起きた場合も落ち着いて対応できます。介護は家族だけで抱えるものではありません。制度と専門職を上手に使い、本人の安心と家族の生活を両立させる道を選んでいきましょう。
参考文献



