介護保険の要支援1とは?具体的な状態や受けられるサービス、手続き方法を解説

要支援1の認定を受けたものの、具体的な状態や利用できるサービスがわからず、今後の生活に不安を感じる方もいるでしょう。特に、離れて暮らす家族や親族の状態が気になりながらも、頻繁に会いに行けないもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、要支援1の定義や認定基準に加え、利用可能なサービスや手続きの流れを解説します。あわせて、費用の目安や要介護との違いも取り上げます。
公的な支援を賢く活用し、住み慣れた自宅で自立した生活を長く続けられるよう、ぜひ参考にしてください。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
介護保険制度の要支援とは

介護保険サービスを利用するには、自治体から要介護(要支援)認定を受ける必要があります。しかし、どのような基準で判定されるのか、仕組みがわかりにくいと感じる方もいるでしょう。
ここでは、認定の仕組みや要支援の定義、要介護との違いを解説します。
介護保険制度で要介護度が決まる仕組み
要介護度は、病気の重さではなく介護にどのくらいの手間(時間)がかかるかを基準に判定されます。認知症や麻痺などの症状があっても身の回りのことが自分でできれば、認定は軽くなる傾向があります。
具体的な判定の流れは次のとおりです。
- 一次判定
- 二次判定
一次判定では、調査調査員による訪問調査の結果と主治医意見書をもとに、コンピュータが介護時間を推計します。
続く二次判定では、医療・保健・福祉の専門家による「介護認定審査会」が、一次判定の結果や特記事項、主治医意見書をもとに審査を行い、最終的な要介護度を決定します。
判定結果は、自立、要支援1と2、要介護1から5のいずれかに区分されます。公平な審査を行うため、全国一律の基準で実施されています。
要支援とは
要支援とは、基本動作はほぼ自分でできるものの、一部の手助けや見守りが必要な状態です。適切な支援により、状態の維持や改善が見込める段階といえます。
区分は以下の2つです。
- 要支援1
- 要支援2
要支援1は、立ち上がりなどにふらつきがあり、掃除や洗濯などの家事に見守りや支援を要する状態です。
要支援2は、さらに下肢筋力が低下し、歩行が不安定な状態を指します。身の回りの動作にも一部介助が必要になることがあります。
この段階で適切なリハビリテーションや生活環境の調整を行えば、身体機能の悪化を防ぎ、自立した生活を長く続けられる可能性が高まります。
要介護と要支援の違い
要支援は“現状よりも悪化させないこと(介護予防)”を目的とするのに対し、要介護は“日常生活のケア(介護給付)”を主目的としています。それぞれの主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 要支援(1・2) | 要介護(1〜5) |
|---|---|---|
| 状態 | 基本動作は自立、一部支援が必要 | 運動・認知機能低下、介護が必要 |
| 目的 | 介護予防サービス 状態の維持・改善 |
介護サービス 生活を支える直接的な介護 |
| 計画作成 | 地域包括支援センター | 居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) |
| 福祉用具 | 手すりやスロープなど一部に限られる | 車椅子や介護ベッドも対象(要介護2以上) |
要支援では利用できるサービスやレンタルできる福祉用具に制限があります。しかし、ご本人の残された能力を活かし、自立心を尊重する支援が受けられる点は大きなメリットです。
介護保険制度における要支援の認定基準

要支援の認定には、身体の状態に加え“要介護認定等基準時間”という客観的な指標を用います。これは、毎日の介護にどのくらいの時間(手間)を要するかを推計したものです。
ここでは、各区分の基準時間と具体的な状態の目安を解説します。
要支援1の認定基準
要支援1の要介護認定等基準時間は“25分以上32分未満”、またはそれに相当すると認められる状態です。
具体的な状態の目安は以下のとおりです。
- 動作の不安定さ
- 家事の支援
立ち上がりや歩行などの動作にふらつきがみられ、転倒のリスクがあります。食事や排泄などの身の回りの動作は自分で行えますが、掃除や買い物などの生活に必要な動作の一部に見守りや手助けを要します。
社会的な支援を活用することで、現在の生活機能を維持できるレベルと判断されます。
要支援2の認定基準
要支援2の要介護認定等基準時間は“32分以上50分未満”、またはそれに相当すると認められる状態です。
要支援1よりも下肢筋力が低下しており、状態の目安は以下のようになります。
- 移動機能の低下
- 身の回りの介助
歩行時に何らかの支えを必要とする場面が増えます。立ち上がりも不安定になりやすいため、入浴時の洗身や爪切りなど、身の回りの世話の一部に介助を要することがあります。
なお、基準時間は要介護1と同じですが、認知機能の低下がみられず、心身の状態が安定している場合に要支援2と判定されます。
要支援の状態

認定基準の数字だけでは、実際の生活イメージが湧きにくいかもしれません。ご本人の日常生活を想像しながら、具体的な動作を確認しましょう。
ここでは、要支援1と2それぞれの段階で、どのような動作が可能で、どのような場面で支援が必要になるのかを解説します。
要支援1の方が一人でできること、できないこと
要支援1は、基本的な生活動作は自立しているものの、家事などの複雑な動きに不自由を感じる段階です。
一人でできる主な動作は以下のとおりです。
- 食事や排泄
- 着替えや洗顔
- 屋内での移動
身の回りのことはおおむね自分で可能です。屋内なら手すりがなくてもスムーズに動けることが多いでしょう。
一方、次のような動作には支援が必要です。
- 重い荷物を持つ買い物
- 風呂掃除や布団の上げ下ろし
- 立ったままでの靴下の着脱
足腰に負担がかかる作業や片足立ちは、バランスを崩しやすく困難です。転倒予防のため、家事の一部にサポートを取り入れましょう。
要支援2の方が一人でできること、できないこと
要支援1よりも下半身の筋力が低下し、動作の安定性が損なわれている状態です。
身体機能は低下していますが、以下のことは可能です。
- 食事の摂取
- 電話での会話や意思疎通
- 金銭管理
認知機能は保たれていることが多く、座った状態なら多くのことができます。自分の要望も的確に伝えられます。
しかし、次のような動作には支援が必要です。
- 立ち上がりや歩行
- 浴槽の出入り
- 足の爪切りや背中の洗身
移動時に杖や手すりなどの支えが必要になります。また、身体をひねったり、深くかがんだりする動作が難しくなるため、入浴や身だしなみの一部に介助が必要です。
要支援の方が介護保険で受けられるサービス

要支援の方が利用できるサービスは「介護予防サービス」と呼ばれます。状態の悪化を防ぎ、自立した生活の継続が目的です。
ここでは、自宅での生活を支える主なサービスや、環境を整えるための補助制度を解説します。
通所型サービス
施設に通い、食事や入浴の支援、機能訓練などを日帰りで受けるサービスです。他者との交流による孤立感の解消や、心身機能の維持に役立ちます。
主なサービスは以下の2つです。
- 介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
- 介護予防通所介護(デイサービス)
デイケアは医療機関などで専門的なリハビリを受けられるため、歩行機能などの改善を目指す方に適しています。
一方、デイサービスは生活支援やレクリエーションが中心です。地域ごとに特色あるプログラムが提供されています。定期的な通所により、離れて暮らすご家族も日中の見守りについて安心できます。
訪問型サービス
ホームヘルパーや専門職が自宅を訪問し、家事の支援や身体のケアを行うサービスです。
代表的なサービスには以下のようなものがあります。
- 介護予防訪問介護(ホームヘルプ)
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
ホームヘルプは、掃除・洗濯・調理などの家事を支援します。「買い物で重いものを持つのが大変」という場合でも、生活を維持する大きな支えとなります。
訪問看護は、看護師が訪問し、体調管理や健康状態の確認を行います。遠方に住むご家族への状況報告も可能なため、離れていても安心です。
訪問リハビリテーションは、理学療法士などが訪問し、自宅の環境に合わせたリハビリを行います。
短期入所型サービス
施設に短期間宿泊し、日常生活上の支援や機能訓練を受けるサービスです。
主に以下のような目的で利用されます。
- 利用者の心身機能の維持
- 家族の病気や冠婚葬祭時の対応
- 家族の休息(レスパイト)
数日から数週間程度の滞在が可能です。将来的に同居や施設入居を考えている場合の準備段階として、あるいは家族が介護から離れてリフレッシュするために活用することも一般的です。
福祉用具のレンタルや購入にかかる費用の補助・支給
自宅での生活を助ける用具を、1割から3割の自己負担で利用できる制度です。
例えば、工事を伴わない手すりや歩行を助ける用具などは、月額料金の1〜3割の負担でレンタルすることができます。要支援の方が利用できる主な用具には、以下のようなものがあります。
- 手すり(工事不要のもの)
- スロープ(工事不要のもの)
- 歩行器
- 歩行補助つえ
一方で、衛生面の理由からレンタルに適さない入浴や排泄に関する用具については、購入費用の7〜9割が支給される仕組みがあります。これは、指定事業所で購入し、所定の手続きを行うことで、年間10万円を上限に補助を受けることができます。購入の対象となる主な用具には、次のようなものがあります。
- 腰掛便座(ポータブルトイレなど)
- 入浴補助用具(入浴用いすなど)
住宅改修にかかる費用の支給
自宅で安全に暮らすための小規模なリフォーム費用が支給される制度です。
対象となる主な工事は以下のとおりです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 床材の変更(滑り防止)
- 扉や便器の取り替え
支給限度額は1人あたり生涯で20万円です。工事費用の1割から3割を自己負担し、残りが介護保険から支給されます。廊下や浴室に手すりを設置することで、転倒リスクを減らせます。工事前に自治体への申請が必要なため、ケアマネジャーなどに相談しましょう。
要支援で介護保険サービスを受けるまでの流れと手続き

サービスを利用するには、専門家による計画作成や事業者との契約が必要です。
ここでは、利用開始までの流れと必要な手続きを解説します。
介護保険サービスの利用開始までの流れ
要支援の方の窓口は地域包括支援センターです。
利用までのステップは以下のとおりです。
- 地域包括支援センターへの相談
- 介護予防ケアプランの作成
- サービス担当者会議の開催
- 事業者との契約と利用開始
まずは、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに連絡します。遠方に住むご家族からの相談も受け付けており、電話やメールでの問い合わせも可能です。
職員(保健師や社会福祉士など)が自宅を訪問して本人の希望や課題を確認し、どのようなサービスを利用するかを定めた介護予防ケアプランを作成します。
その後、サービス提供事業者を交えた話し合い(サービス担当者会議)で具体的な内容を決定し、事業者と契約を結ぶことでサービスが開始されます。
介護保険サービスを利用するために必要な手続き
スムーズな利用のためには、以下の手続きや書類が必要です。
- 介護保険被保険者証の確認
- 介護保険負担割合証の確認
- 介護予防サービス計画作成依頼届出書の提出
介護保険被保険者証は、65歳になる月または要介護認定の結果通知と一緒に自治体から郵送されます。
介護保険負担割合証は、認定を受けた方に毎年7月頃、自動的に送られてきます。
介護予防サービス計画作成依頼届出書は、自治体の介護保険課窓口で受け取るか、自治体のWebサイトからダウンロードできます。地域包括支援センターでも用意してもらえることが多いでしょう。
ケアプランを作成する担当者が決まったら、自治体の窓口に「計画作成依頼届出書」を提出します。これは“誰にプランを作ってもらうか”を自治体に知らせるための手続きです。提出を忘れると、サービス費用がいったん全額自己負担になる場合があるため注意しましょう。
また、契約時には自己負担割合(1〜3割)を示す「介護保険負担割合証」も、サービス契約時に必要です。
まとめ

要支援1は、適切なサポートを受けることで、現在の自立した状態を維持・改善できる大切な時期です。利用できるサービスは、デイサービスや訪問介護、福祉用具のレンタルなど多岐にわたります。
遠方に住んでいても、地域包括支援センターへの電話相談や、定期的な状況報告を受けられる訪問サービスを活用することで、離れて暮らす家族や親族の生活を支えることは十分に可能です。直接会えない不安を抱えている方も、これらの公的支援を組み合わせることで、見守りの仕組みを整えられます。
手続きの窓口となる地域包括支援センターは、その地域独自のサービスにも精通した専門機関です。一人で不安を抱え込まず、相談してみてください。専門家の力を借りながら、ご本人とご家族にとって安心できる生活環境を整えていきましょう。




