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介護の終末期サインを見逃さないために|知っておきたいこと、最期に家族ができること

 公開日:2026/01/30
介護の終末期サインを見逃さないために|知っておきたいこと、最期に家族ができること

人生の最期が近づくと、身体や心には少しずつ変化が現れます。体重の減少や食事量の低下、眠っている時間の変化などは、介護をしている家族が日常のなかで気付きやすいサインです。一方で、こうした変化が何を意味するのかわからず、不安を抱えたまま過ごしている方も少なくありません。終末期のサインを知っておくことは、残された時間を穏やかに過ごすための助けになります。家族が慌てず、本人の気持ちに寄り添いながら関われるよう、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、介護の終末期にみられるサインと臨終が近づいた際の変化、家族にできる関わり方を解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

介護の終末期にみられるサイン

介護の終末期にみられるサイン

介護の終末期には、特定の臓器だけでなく、身体全体の働きが少しずつ低下します。その変化は段階的に現れるため、ある日を境に急変したように感じる場合もあれば、振り返って初めて気付く場合もあります。こうしたサインは、治療や介護が足りないことを示すものではなく、人生の最終段階に向かう過程で多くの方にみられる自然な変化です。あらかじめ特徴を知っておくことで、家族は慌てることなく、本人にとって穏やかな時間を支えやすくなります。

体重の減少

終末期には、これまでと同じように食事をしていても体重が減っていくことがあります。病気の進行により代謝の仕組みが変化し、摂取した栄養を身体が十分に活用できなくなるためです。筋肉量が落ち、腕や脚が細くなったり、顔つきが変わったように感じられたりすることもあります。体重の減少は、食事内容や介護方法を見直せば必ず改善するものではなく、身体が静かに変化しているサインとして受け止めるようにしましょう。

食事量と水分摂取量の減少

食事や水分をとる量が減ることは、終末期に多くの方でみられます。噛む力や飲み込む力の低下に加え、空腹感や喉の渇きを感じにくくなることが影響します。無理に量を増やそうとすると、むせ込みや息苦しさにつながることがあります。少量ずつゆっくりとお口に含む、口腔内を湿らせるといった心地よさを優先した関わりが、本人の負担を抑える助けになります。

睡眠時間の変化や活動性の低下

終末期には、日中でも眠っている時間が長くなり、起きて活動できる時間が短くなっていきます。身体のエネルギーが低下し、覚醒を保つ力が弱まるためです。以前は自分でできていた動作が難しくなり、横になって過ごす時間が増えることもあります。無理に生活リズムを戻そうとせず、目が覚めている時間を大切にし、静かな声かけや見守りを行いましょう。

体温の変化

体温が低下しやすくなったり、日によってばらつきが出たりすることも終末期の特徴です。血流が末梢まで届きにくくなり、手足が冷たく感じられることがあります。毛布をかける、衣類を調整するなど、寒さを和らげる工夫を行いましょう。一方で、体温の変化が大きい場合や発熱が続く場合には、感染などほかの要因が関係することもあります。

排泄機能の低下

尿や便の回数が減ったり、排泄のタイミングがわかりにくくなったりします。腎臓や腸の働きが弱まり、水分や老廃物を処理する力が低下するためです。失禁がみられることもありますが、本人の意思とは関係のない変化です。清潔を保ち、皮膚への刺激を抑えることで、不快感を軽減しやすくなります。

呼吸パターンの変化

呼吸が浅くなったり、早くなったり、不規則になったりする様子がみられます。息の間隔が不安定になると、家族は苦しそうに感じることがありますが、必ずしも強い苦痛を伴っているとは限りません。周囲を静かに整え、楽な姿勢を保つことで、落ち着いた時間を支えやすくなります。

皮膚の変化

血流の低下により、皮膚の色が青白くみえたり、乾燥しやすくなったりします。皮膚が薄くなり、わずかな刺激でも傷つきやすくなることもあります。体位を整える、保湿を行うなどの基本的なケアが、皮膚トラブルの軽減につながります。

せん妄

時間や場所がわからなくなる、落ち着きがなくなる、普段と異なる言動がみられる状態をせん妄と呼びます。終末期には珍しいものではなく、身体の不調や環境の影響が関係します。照明や音を整え、関わる人をできるだけ固定することで、安心感を保ちやすくなります。言動を否定せず、穏やかに受け止める姿勢が、本人の心の安定につながります。

臨終間近のサイン

臨終間近のサイン

終末期がさらに進行すると、いよいよ最期が近いことを示す変化が現れてきます。これらのサインは、身体の働きが段階的に低下し、生命活動が静かに終わりへ向かう過程でみられるものです。突然起こったように感じられることもありますが、多くの場合はそれまでの終末期の変化が積み重なった結果として現れます。あらかじめ特徴を知っておくことで、家族は強い動揺や恐怖を抱えにくくなり、落ち着いてその時間に寄り添いやすくなります。

下顎呼吸

臨終が近づくと、下顎を大きく上下させるような呼吸がみられることがあります。これは胸や腹の筋肉が十分に働かなくなり、呼吸を維持するために顎や首周囲の動きが目立つ状態です。呼吸のたびに顎が動く様子は、初めて目にすると苦しそうに感じられやすく、家族にとって精神的な負担となることもあります。しかし、この呼吸そのものが強い苦痛を意味しているとは限りません。周囲を静かに整え、安楽な姿勢を保つことが、穏やかな時間につながります。

死前喘鳴

喉の奥に痰や唾液がたまり、ゴロゴロ、ゼロゼロといった音を伴う呼吸が聞こえることがあります。これを死前喘鳴と呼びます。飲み込む力や咳をする力が低下することで、分泌物が自然にたまりやすくなります。音が大きいと家族は不安を強く感じがちですが、意識が低下している場合、本人が音を不快に感じていることは少ないと考えられています。上半身を緩やかに起こす、身体の向きを少し変えるなどの工夫で音が和らぐこともあります。音を消すことよりも、落ち着いた空気を保ち、そばで静かに見守るようにしましょう。

意識レベルの低下と応答の消失

臨終が近づくにつれて、呼びかけへの反応が次第に弱くなり、目を開けている時間が短くなります。やがて声をかけても返事がなくなり、深く眠っているような状態が続くことがあります。このような変化がみられると、家族は意思疎通ができなくなったと感じ、寂しさや不安を抱きやすくなります。ただし、聴覚は保たれやすいと考えられています。返答がなくても、名前を呼ぶ、そばにいることを伝える、感謝やねぎらいの言葉をかけるといった関わりは意味を持ちます。家族の声や存在は、最期の時間を穏やかに過ごすための安心感につながります。

介護の終末期をどこでどのように迎えるか

介護の終末期をどこでどのように迎えるか

終末期をどこで、どのように過ごすかは、本人の人生観やこれまでの暮らし方、家族の介護体制によって大きく異なります。医療や介護の支援体制が整っていても、すべての方に同じ選択が合うわけではありません。選択肢ごとの特徴を理解し、本人の思いと家族の現実の両方を踏まえて考えることが、後悔の少ない終末期につながります。

最期を迎える場所の割合

最期を迎える場所は、病院、自宅、介護医療院や老人ホームなどの介護施設に分かれています。2023年の状況では、病院が約68%占めており、現在も医療機関で看取りが行われるケースが中心です。一方で、自宅は約17%介護施設は約16%であり、医療と介護の支援を受けながら自宅や施設で過ごす選択も広がっています。

この割合は社会全体の傾向を示すものであり、どの場所がよいかを一律に決めるものではありません。それぞれの場に特徴があることを知ったうえで、次にどのような視点で選ぶかを考えていくことが大切です。

参照:『人口動態調査 人口動態統計 確定数 死亡』(厚生労働省)

本人にとって最善の終末期を過ごす場所選びのポイント

場所を考える際には、本人がどのような時間を過ごしたいかを軸にします。自宅では、慣れ親しんだ環境のなかで生活を続けやすい一方、家族が担う役割が増える場合があります。介護施設では、日常生活の支援を受けながら過ごせますが、医療対応の範囲は施設ごとに異なります。病院では医療的な対応が行いやすい反面、生活の自由度は限られます。本人の思いと家族の体力や生活状況をすり合わせ、無理なく続けられる環境を選ぶ視点が重要です。

延命治療の是非

終末期には、延命を目的とした治療を行うかどうかを考える場面があります。人工的な栄養補給(胃瘻や経鼻胃管)や呼吸管理は生命を支える方法ですが、身体への負担が大きくなることもあります。一方で、苦しさを和らげる医療やケアは、どの選択をした場合でも続けられます。延命治療を行わない選択は、医療やケアをやめることではありません。本人が大切にしてきた価値観を尊重し、穏やかな時間を支えるという考え方としてとらえることが大切です。

介護の終末期のサインに気付いたとき家族ができること

介護の終末期のサインに気付いたとき家族ができること

終末期のサインに気付いたとき、家族は戸惑いや不安を強く感じやすくなります。何か特別な対応をしなければならないと考えがちですが、実際には日々の関わり方を整えることが、本人にとっての穏やかさにつながります。できることを無理なく続け、本人の状態や気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

精神的に寄り添う

終末期には、不安や寂しさを抱えやすくなり、気持ちが揺れ動くことがあります。言葉でのやり取りが少なくなっても、そばにいること自体が心の支えになります。本人の言葉や表情を否定せず、その時々の感情を受け止める姿勢が安心感につながります。落ち着いた声で話しかけ、慌ただしい雰囲気を避けることで、心が安らぎやすくなります。

タッチケアを行う

手を握る、腕や背中にそっと触れるなどの優しい触れ合いは、言葉を交わさなくても安心感を伝える手段です。終末期には皮膚が乾燥しやすく、刺激に弱くなることがあるため、力を入れすぎず、短い時間で行う関わりが適しています。触れることで体温の変化や呼吸の様子にも自然と目が向き、見守りのなかで状態の変化に気付きやすくなります。触れた際に表情が和らぐ、呼吸が落ち着くなどの反応がみられることもあります。無理に続ける必要はなく、その時々の様子を感じ取りながら行うことが、本人にとって心地よい関わりにつながります。

積極的に声をかける

反応が乏しくなった場合でも、声かけには意味があります。今日の日付や時間を伝える、天気や周囲の様子を伝える、これまでの思い出を静かに語るなど、穏やかな内容を選ぶとよいでしょう。返事がなくても、聴覚は保たれると考えられており、家族の声は安心感につながりやすいとされています。声をかけることに正解はなく、話し続ける必要もありません。沈黙の時間も含めて、その場の空気を共有するような関わりが、穏やかな時間を支えます。

本人の意思を尊重する

治療や過ごし方について、本人の希望が確認できている場合は、その内容を尊重した関わりが基本です。はっきりとした意思表示が難しい場合でも、これまでの生活の様子や大切にしてきた考え方、日常の選択を振り返ることで、意向をくみ取る手がかりがみえてくることがあります。家族だけで判断を抱え込まず、医療や介護の担当者と情報を共有しながら進めることで、迷いや精神的な負担を減らせます。こうした関わりを重ねることで、本人の考えに沿った時間を過ごしやすくなります。

まとめ

まとめ

介護の終末期には、体重や食事量の変化、眠る時間の増加、呼吸や意識の変化など、これまでと異なるさまざまなサインが現れます。これらは病状の進行に伴い身体の働きがゆっくりと弱まっていく過程で起こる自然な変化であり、家族の関わり方によって生じたものではありません。変化に気付くたびに不安を感じることもありますが、サインの意味を知っておくことで、落ち着いて向き合いやすくなります。

最期を迎える場所や治療の考え方は一つではなく、本人の価値観と家族の状況に合わせて選ばれます。特別なことをしようとするよりも、そばにいること、穏やかに声をかけること、触れて安心感を伝えることが、終末期の時間を支える大きな力となります。

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