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介護費用を抑える方法|各種制度の基本と自己負担を減らすポイント

 公開日:2026/01/29
介護費用を抑える方法|各種制度の基本と自己負担を減らすポイント

介護が始まると、日々のケアに対する不安だけでなく、毎月かかる費用の負担に頭を悩ませる方は少なくありません。
「貯蓄が減っていくのが怖い」「将来、施設に入居できるのか」と漠然とした不安を抱えながらも、複雑な制度を前に何から手をつければよいか迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、介護保険や税金の控除制度を活用して、介護費用を抑える方法を解説します。
また、自己負担を減らすための具体的な申請手続きや、費用の負担を考慮した今後の選択肢にもあわせて触れます。
利用できる仕組みを正しく理解し、無理のない計画で介護と向き合うために、ぜひ参考にしてください。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護費用の平均

介護費用の平均

介護にかかる費用は、大きく一時的な費用月々の費用の2つに分類されます。
公益財団法人生命保険文化センターの2024年度の調査結果に基づく平均額は、以下のとおりです。

  • 一時的な費用(住宅改修や介護ベッドの購入など)
  • 月々の費用(介護サービス利用料や医療費、消耗品費など)

一時的な費用の平均は47.2万円、月々の費用は平均9.0万円です。
また、同調査における介護期間の平均は55.0ヶ月(4年7ヶ月)となっており、これらをもとに算出した総額の目安は約542万円です。
ただし、これらはあくまで平均値です。在宅介護か施設入居か、あるいは本人の要介護度によって金額は大きく変動するため、個別の状況に合わせて備える必要があります。

参照:『2024(令和6)年度 生活保障に関する調査』(公益財団法人 生命保険文化センター)

介護費用を抑える各種制度

介護費用を抑える各種制度

介護にかかる費用は、公的制度を正しく活用することで大幅に抑えられます。
しかし、多くの制度は対象者であっても自ら申請しなければ適用されない申請主義をとっています。
知らずに高い費用を払い続けてしまうことがないよう、どのような負担軽減の仕組みがあるのかを把握し、利用できるものは漏れなく申請しましょう。
ここでは、特に押さえておきたい主要な7つの制度を解説します。

介護保険

日本の公的介護保険制度は、原則として費用の1割から3割の自己負担でサービスを利用できる仕組みです。
まずはこの基本ルールを活かし、定められた区分支給限度基準額の範囲内でサービスを組み合わせることが、費用を抑える基本です。
1ヶ月あたりに保険適用で利用できる金額の目安は、以下のとおり要介護度によって異なります。

  • 要支援1~2:約5万円~約10万5千円
  • 要介護1~5:約16万7千円~約36万2千円

参照:『介護報酬ハンドブック』(シルバー産業新聞社)記載の単位数に1単位10円を乗じて算出

例えば、要介護1の認定を受けている場合、月額約16万7千円までのサービスを1割負担(約1万6千円)で利用可能です。
しかし、この限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担(10割負担)になります。

体調の変化などでサービスの追加が必要な際は、限度額を超えないようケアマネジャーと相談し、プランを調整することが賢明です。

高額介護サービス費

1ヶ月に支払った介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。
同じ世帯で複数の人が利用している場合は、全員分の負担額を合算できます。
所得区分ごとの上限額(月額)の目安は次のとおりです。

  • 現役並み所得者(年収約383万円以上):44,400円〜140,100円
  • 一般世帯:44,400円
  • 市町村民税非課税世帯など:15,000円〜24,600円

一般的な所得区分の世帯では上限額が44,400円とされており、これを超えた分が後から戻ってきます。

対象者には自治体から申請書が届くのが一般的ですが、申請期限を過ぎると受け取れなくなるため、郵便物の確認を怠らないようにしましょう。

参照:『高額介護サービス費の負担限度額が見直されます』(厚生労働省)

高額医療・高額介護合算療養費制度

医療費と介護費用の両方が高額になり、家計の負担が重くなった場合に利用できる制度です。

毎年8月から翌年7月までの1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、基準額を超えた金額が支給されます。

主な基準額(年額)は以下のとおりです。

  • 70歳未満:約34万円~212万円(所得による)
  • 70歳以上:約19万円~67万円(所得による)

70歳以上の一般世帯であれば、年間の上限額は56万円です。
医療費が高額になりがちな高齢世帯にとって、年間数万円から十数万円が戻ってくる可能性があるため、見落とさないよう確認したい制度です。

参照:『高額介護合算療養費制度について』(厚生労働省)

公的介護保険料の減免制度

災害や失業、事業の不振などで収入が著しく減少し、介護保険料の支払いが困難になった場合に、保険料が減額または免除される制度です。
対象となる主なケースは以下のとおりです。

  • 災害により住宅や家財に著しい損害を受けた場合
  • 生計維持者の死亡や長期入院、失業などで収入が減少した場合

減免の基準や申請方法は自治体によって異なります。
保険料を滞納すると、将来的に介護サービスを利用する際の自己負担割合が引き上げられるなどのペナルティを受ける可能性があります。

支払いが厳しいと感じた段階で、早めに市区町村の窓口へ相談に行きましょう。

家族介護慰労金の制度

要介護4や5などの重度の要介護者を、介護保険サービスを利用せずに在宅で介護している家族に対し、自治体から慰労金が支給される制度です。

支給額は自治体により異なりますが、年額10万円程度が一般的です。
支給を受けるためには、主に以下のような要件を満たす必要があります。

  • 要介護4または5の認定を受けている
  • 過去1年間、介護保険サービスを利用していない
  • 世帯全員が住民税非課税

この制度は、サービスを使わずに家族だけで介護を担っていることが前提のため、デイサービスなどを利用している場合は対象外です。
経済的な支援ではありますが、無理をしてサービス利用を控えると共倒れになるリスクもあるため、慎重な判断が求められます。

参照:『家族介護慰労金』(広島市)

高齢者住宅改修費用助成制度

在宅での生活を安全に続けるために住宅の改修を行う際、その費用の一部が支給される制度です。
要支援または要介護の認定を受けている方が対象で、生涯で20万円を上限に、費用の7割から9割が支給されます。
対象となる工事の種類は以下のとおりです。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 床材の変更や扉の取り替えなど

基本は上限20万円ですが、自治体によっては独自の上乗せ助成を行っている場合があります。

例えば、介護保険の枠とは別に数万円〜数十万円の助成枠を設けていたり、要介護認定を受ける前の方でも利用できる制度を用意していたりするケースです。

リフォーム費用は高額になりがちですので、ケアマネジャーや役所の窓口で「市町村独自の助成金はないか」とあわせて確認することをおすすめします。

また、この制度を利用するうえで重要な点は、工事前の事前申請が必要であることです。先に工事をしてしまうと助成金が受け取れないため、施工前に市区町村の承認を得るようにしましょう。

参照:
『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)
『高齢者住宅改修費支援サービス事業』(千葉市)

負担限度額認定制度

介護施設に入居した際やショートステイを利用した際にかかる費用のうち、食費と居住費(滞在費)の負担を軽減する制度です。
介護サービス費(ケア代)は1〜3割負担ですが、食費と居住費は原則として全額自己負担です。

しかし、住民税非課税世帯や生活保護受給者などで、資産が一定以下の方は、負担の上限額が設定され、超過分が介護保険から支給(特定入所者介護サービス費)されます。
認定を受けるためには、以下の要件などを満たす必要があります。

  • 利用者負担段階(所得に応じた区分)
  • 資産要件(所得段階により単身500~650万円以下、夫婦1,500~1,650万円以下など。※第2号被保険者は単身1,000万円以下、夫婦2,000万円以下)

この制度が適用されると、例えば第1段階の方が多床室(相部屋)を利用した場合、居住費の自己負担は0円です。
施設入居時だけでなく、在宅介護中のショートステイ利用時にも適用されるため、要件を満たす場合は「介護保険負担限度額認定証」の交付申請を行いましょう。

参照:『介護保険制度における負担限度額認定証とは何ですか。』(横浜市)

税負担の面から介護費用を抑える方法

税負担の面から介護費用を抑える方法

介護費用は、サービスの利用調整だけでなく、税金の控除申請によっても負担を軽減できます。
特に親の介護費用を子どもが負担している場合、適用できる控除は意外と多いものです。ここでは、見落としがちな4つの制度を解説します。

医療費控除

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円)を超えた際、超過分を所得から差し引ける制度です。
病院の治療費だけでなく、介護に関連する以下の費用も対象です。

  • 医療系サービスの自己負担分
  • 福祉系サービスの自己負担分
  • 特別養護老人ホームの利用料
  • おむつ代

医療系とは訪問看護や老人保健施設などのことで、福祉系とは訪問介護やデイサービスなどを指します。
重要な点は、福祉系サービスは単独では対象外となることです。ケアプラン内で医療系サービスとセットで利用する場合に限り、合算して申告できます。

また、特養の費用は食費・居住費を含めた自己負担の半額相当が対象です。おむつ代は、かかりつけ医に依頼して「おむつ使用証明書」を発行してもらう必要があります(2年目以降は自治体の確認書で代用可能な場合もあります)。
生計を一にする家族の分も合算できるため、所得が高い人がまとめて申告すると効果的です。

参照:
『医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価』(国税庁)
『おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて』(国税庁)

障害者控除

障害者控除は、本人や扶養家族が障害者の場合に受けられる所得控除です。実は、障害者手帳を持たない方でも、要介護認定を受けていれば対象になる可能性があります。
自治体が発行する「障害者控除対象者認定書」があれば、手帳がなくても控除が適用されます。

区分 控除額(所得税) 対象者の目安
障害者 27万円 要介護1〜3程度
特別障害者 40万円 要介護4・5程度
同居特別障害者 75万円 寝たきりの親と同居など

※認定基準は自治体により異なります。要介護度だけでなく、日常生活自立度や認知症の程度なども考慮されるため、詳細は市区町村窓口にお問い合わせください。
この認定書は自動的には届きません。年末調整などの前に、自治体窓口への申請が必要です。

過去5年分まで遡って申告できるため、これまで制度を知らずに手続きしていなかった方は、一度確認してみましょう。

参照:『No.1160 障害者控除』(国税庁)

社会保険料控除

1年間に支払った社会保険料の全額が所得から控除される制度です。親の介護保険料などを子が支払うことで、子の所得から控除できる場合があります。
通常、親の保険料は年金から天引きされますが、親の収入が少ない場合は節税効果がありません。そこで、以下の変更を検討します。

  • 支払いを口座振替に変更する
  • 振替口座を子の名義にする

上記の手続きにより、子が実質的な負担者となり、自身の控除として申告できます。
ただし、介護保険料は原則として口座振替への変更が認められていません。一方で、75歳以上の方の「後期高齢者医療保険料」は変更できる自治体が多いため、まずはそちらの切り替えを相談してみましょう。

参照:『No.1130 社会保険料控除』(国税庁)

扶養控除

扶養控除は、養っている家族がいる場合に適用される所得控除です。同居していなくても、生活費の送金などを行い「生計を一にしている」と認められれば、別居の親も対象です。

親を扶養に入れるための要件は、年間の合計所得金額が48万円以下であることです。年金収入(公的年金などに係る雑所得)のみの場合、以下の金額が目安です。

  • 65歳未満:年金収入108万円以下(合計所得48万円以下)
  • 65歳以上:年金収入158万円以下(合計所得48万円以下)

また、控除額は親の年齢や同居の有無で変わります。親が70歳以上の場合、別居であれば48万円ですが、同居している場合は58万円に増額されます。将来的に同居を検討する際は、この節税メリットも考慮に入れるとよいでしょう。
遺族年金や障害年金は非課税のため、判定に含まれません。見かけの収入が多くても、老齢年金が少なければ扶養に入れる可能性があるため、親の年金通知書をチェックしてみましょう。

参照:
『No.1180 扶養控除』(国税庁)
『No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除』(国税庁)

介護費用を抑えるための今後の選択肢

介護費用を抑えるための今後の選択肢

将来、身体機能の低下や認知症の進行により費用負担が増すことに備え、あらかじめ選択肢を知っておくことが大切です。ここでは、将来の備えとして知っておくべき3つのポイントを解説します。

公的な介護施設に入居する

施設への入居が必要になった場合、有料老人ホームなどの民間施設ではなく、公的施設を選ぶことで費用を大幅に抑えられます。公的施設は、所得に応じた負担軽減制度が充実しているためです。
主な公的施設は以下のとおりです。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)

特養は原則として要介護3以上が入居条件ですが、民間施設に比べて月額費用が安価です。人気が高く待機者が多い地域もあるため、早めにケアマネジャーへ相談し、申し込みのタイミングを確認しておきましょう。

介護施設の多床室を利用する

施設に入居する際、部屋のタイプ選びは月額費用に直結します。個室は快適ですが費用が高くなるため、予算を優先する場合は以下の居室タイプを検討してください。

  • 多床室(相部屋)
  • 従来型個室

多床室はカーテンで仕切られており、個室に比べて月々の支払いを数万円単位で節約できます。施設を探す際は、パンフレットや見学時に多床室の空き状況を確認するようにしましょう。

ケアプランを見直す

要介護度が上がっても、支給限度額いっぱいまでサービスを使う必要はありません。漫然とサービスを継続するのではなく、定期的に内容を見直すことが重要です。

  • 家事援助の回数を減らす
  • 保険外のサービスを活用する

家族が訪問できる日はサービスを休止したり、ネットスーパーなどを活用したりすることで、支出を抑えられる場合があります。ケアマネジャーに「費用を抑えたい」と率直に伝え、代替案がないか相談してみましょう。

まとめ

まとめ

介護費用は、公的制度や税金の控除を賢く組み合わせることで軽減できます。特に「高額介護サービス費」や「障害者控除」などは、自ら申請しないと適用されないため、忘れずに手続きを行うことが重要です。
制度は複雑で、個々の状況によって適用条件も異なります。一人で悩まず、ケアマネジャーや自治体の窓口へ相談しながら進めることが大切です。利用できる仕組みを活かし、無理のない計画で介護と向き合っていきましょう。

この記事の監修社会福祉士