要支援と要介護の違い|認定基準や利用可能サービスの違い、認定の流れを解説

介護保険制度には、心身の状態に合わせて要支援と要介護という2つの区分があり、それぞれで利用できるサービスや支援内容が変わります。区分の違いを理解しておくことは、ご本人やご家族が今後の生活を考えるうえで役立ちます。日常生活の一部に手助けが必要な段階なのか、継続的な介助を必要とする段階なのかを、公的な基準に沿って整理する手続きが要介護認定です。認定を受けることで、介護予防サービス、訪問介護、デイサービスなど、暮らしを支える多様な支援を利用できるようになります。申請は市区町村が窓口となり、認定調査や主治医意見書を踏まえて区分が決定されます。
この記事では、要支援と要介護の違い、認定基準、利用できるサービス、申請から認定までの流れを整理し、介護保険制度を理解するために役立つ情報を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
要介護認定制度の基礎知識

要介護認定制度は、心身の状態を客観的に評価し、どの程度の支援や介助が必要かを判断するための仕組みです。区分によって利用できるサービスが変わるため、制度の目的や対象者を理解しておくことが大切です。
要介護認定制度の目的
要介護認定制度は、生活動作のしづらさが生じている方に、必要な支援量を正確に把握するための基盤として位置づけられています。加齢や病気によって食事、排せつ、移動などの日常生活に負担が生じると、ご本人やご家族の工夫だけでは対応がむずかしくなる場面が増えてきます。そのような状況を公的な基準で評価し、支援の必要度を段階的に整理することで、適切な介護保険サービスへつなげることが目的です。
評価は、生活動作の状況、認知機能、行動の変化、健康状態など、多方面からの情報を組み合わせて行われます。区分を決めることが目的ではなく、生活のなかにある困りごとを把握し、継続しやすい生活につなげるための仕組みとして位置づけられています。
要介護認定制度の対象者
対象者は介護保険の被保険者で、40歳以上の方が該当します。65歳以上の方は病気の種類を限定せず、心身の変化によって生活に支援が必要となった場合に認定の対象です。40〜64歳の方は、加齢と関連のある病気(特定疾病)が原因で生活のしづらさが生じている場合に対象となります。特定疾病には、認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患、慢性関節リウマチ、脊髄小脳変性症、閉塞性動脈硬化症、糖尿病による重い合併症、末期がん、筋萎縮性側索硬化症など、加齢との関連が強い16の病気が含まれています。
この考え方により、若い年代でも加齢に関係する病気で生活動作が難しくなった場合には介護保険を利用できますが、外傷や加齢と関連しない病気では対象外となる点が特徴です。対象者の枠組みを理解しておくことで、適切なタイミングで認定申請につなげやすくなります。
要支援と要介護の違い

要支援と要介護は、心身の状態に応じて支援の必要度を示す区分です。どちらに該当するかによって利用できるサービスや支援内容が変わるため、それぞれの定義と違いを理解しておくことは、ご本人やご家族が今後の生活を考えるうえで役立ちます。
要支援の定義
要支援は、基本的な生活動作は保たれているものの、日常生活の一部で見守りや軽い手助けが必要な状態を指します。食事、着替え、移動などの動作は自分で行えることが多い一方、体力の低下や軽度の認知面の変化によって生活のリズムが乱れやすくなることがあります。また、家事の段取りや外出時の移動に負担を感じる場面が増えると、日常生活の維持に影響が出ることがあり、早めの支援が生活の安定につながります。要支援は、生活機能の低下を予防し、状態の悪化を防ぐことを目的とした支援が中心で、生活を整えるための介護予防サービスを選択しやすい点が特徴です。
要介護の定義
要介護は、日常生活動作に一定の介助が必要な状態を指し、食事、排せつ、移動、更衣など基本的な動作に手助けを要する場面が増えている状態です。身体機能の低下だけでなく、認知面の変化によって判断や記憶が難しくなることもあり、誤った行動を避けるための声かけや見守りが必要になる場合もあります。生活の多くの場面で継続的な支援が求められるため、利用できるサービスの選択肢が広く、訪問介護やデイサービス、福祉用具の活用など、生活の基盤を支える支援が中心です。要介護は支援の量が大きくなる点が特徴で、段階に応じた介助の組み合わせが求められます。
要支援と要介護の違いを比較
要支援と要介護の違いは、支援の必要度と生活動作の自立度にあります。要支援は自立が保たれているが時々手助けが必要、要介護は基本的な生活動作の多くで継続的な介助が必要という位置づけです。要支援は状態の維持や改善を目指す介護予防が中心である一方、要介護は生活全般を支える継続的な支援が中心です。また、利用できるサービスの範囲も異なり、要支援では地域の支援体制と連携した介護予防サービスが主となり、要介護では身体介護も含む多様なサービスが選択できます。
要介護状態区分の認定基準

要介護状態区分は、心身の状態に応じて必要な支援量を段階的に示すための仕組みです。特に重要なのが、介護に必要と推計される時間を基準として区分を決める方法です。基準時間は客観的な判断材料となり、要支援から要介護までの違いを明確に示す指標として用いられています。
要介護状態区分が決まる流れ
要介護状態区分は、生活動作や認知面の状況をもとに必要な介助の量を整理し、支援内容を検討するための前提として設定されています。区分は要支援1・2、要介護1〜5の7段階で構成され、数字が上がるほど支援量が多い状態を示します。
判断には客観的な基準が用いられ、日常生活のどの場面で手助けが必要になるのか、どの程度の頻度で支援が必要かなどが確認されます。こうした段階づけによって、生活で補うべき部分が明確になり、介護保険サービスを選ぶ際の土台が整えられます。区分が示されることにより、支援の量や範囲を計画的に調整しやすくなる点が特徴です。
要支援の認定基準
要支援1・2は、生活動作の多くが自立しているものの、一部で見守りや軽い手助けが必要な状態を指します。判断の基準となるのが介護に必要な推計時間で、要支援1は25分以上32分未満、要支援2は32分以上50分未満とされています。これは、生活動作や身の回りの支援に必要な手間を時間に換算したもので、実際の支援提供時間とは異なります。要支援に分類されることで、生活機能の維持や悪化予防を目的とする介護予防サービスを中心に利用でき、生活の安定を図る支援につながります。
要介護の認定基準
要介護1〜5は、生活動作に必要な介助の量に応じて区分されます。基準時間は次のとおりです。要介護1は50分以上70分未満、要介護2は70分以上90分未満、要介護3は90分以上110分未満、要介護4は110分以上130分未満、要介護5は130分以上が目安です。支援が必要な場面が増えるほど基準時間が長くなり、生活全体を支える介助の必要性が高まります。要介護では、身体介護を含む多様な支援が求められるため、福祉用具の活用や訪問介護、デイサービスなどの組み合わせが重要です。基準時間による整理は、状態に応じた支援量を過不足なく組み立てるための根拠となり、生活の継続を支えるために欠かせない指標です。
要支援/要介護と認定された方が受けられる介護保険サービスの違い

要支援と認定された場合に利用できるサービスは、主に介護予防を目的とした内容です。介護予防訪問介護や介護予防通所介護、生活支援を組み合わせたサービスなどがあり、体力の維持や生活リズムの安定を図りながら、できる限り自立した生活を続けることを目指します。地域の支援体制と連携し、自宅での暮らしを保つための取り組みが中心になる点が特徴です。
一方、要介護と認定された場合は、生活全般を支えるための支援が幅広く選択できます。訪問介護による身体介護、通所介護による生活支援や機能訓練、短期入所生活介護、福祉用具の貸与や住宅改修など、日常生活を補うための多様なサービスが提供されます。生活動作に介助が必要な場面が多くなるため、支援量の調整やサービスの組み合わせが重要です。
また、要支援では原則として介護予防に特化したサービスが中心であるのに対し、要介護では身体介護を伴う支援が含まれる点が大きな違いです。これにより、同じ在宅生活であっても必要な支援内容が大きく変わり、生活の組み立て方にも影響が出ます。自身の状態に合ったサービスを選ぶことで、生活の安心感につながりやすくなります。
要介護認定の必要書類と流れ

要介護認定を受けるには、市区町村へ申請を行い、必要書類の提出と一連の手続きを進める必要があります。どの書類が必要なのか、どのような順序で認定まで進むのかを把握しておくと、滞りなく手続きを進めやすくなります。申請から認定までの流れを理解しておくことは、ご本人やご家族にとって大切です。
要介護認定に必要な書類
申請に必要な書類は大きく分けて三つです。
一つ目は、申請者の状況を記載する要介護認定申請書です。氏名、生年月日、住所、連絡先、主治医名などが記載され、窓口での基本情報の確認に用いられます。二つ目は、介護保険の被保険者であることを確認する介護保険被保険者証です。保険者番号や被保険者番号が記されており、認定手続きの前提です。三つ目は、状態を医学的に把握するための主治医意見書です。これは主治医が作成し、病気の経過、心身の状態、日常生活で困りやすい場面などがまとめられます。
書類としては申請者自身が用意するもの、医療機関が作成するものに分かれますが、市区町村が主治医へ意見書を依頼するため、申請時には主治医名を正確に伝えておく必要があります。これらの書類が揃うことで、認定に必要な情報が一通り整い、次の手順へ進むことができます。
要介護認定の申請から認定までの流れ
申請後は、まず市区町村の職員または委託された調査員が訪問し、生活動作や認知面の状況を確認する認定調査が行われます。食事や更衣、移動といった日常生活動作だけでなく、記憶、理解、コミュニケーション、日常の行動に関する項目も細かく確認されます。調査内容は統一された基準に基づき記録され、心身の状態を把握する材料です。
調査結果と主治医意見書をもとに、コンピューターによる一次判定が行われます。一次判定では、生活動作に必要な支援量が推計され、その結果が区分の基礎となります。続いて、介護・医療に関する専門職が参加する審査会(二次判定)が開かれ、一次判定の結果に加えて調査時の特記事項や医師の意見を踏まえながら、最終的な区分が決定されます。審査会では、生活の実情をどのように支援へつなげるかという視点が重視され、個別の状況に応じた判断が行われます。
最終的な認定結果は要支援・要介護・非該当のいずれかとなり、市区町村から通知されます。認定の有効期間は状態によって異なり、期間終了前には更新手続きが必要です。
まとめ

要支援と要介護の違いは、生活のどこにどれだけの支援が必要かという点を明確に示す指標であり、利用できる介護保険サービスの内容にも大きく影響します。要支援は生活機能の維持や悪化予防を目的とした支援が中心となり、要介護は生活全般を補うための継続的な介助が必要な状態として位置づけられます。また、要介護状態区分は、介護に必要な支援量を時間で表した基準によって決められており、基準時間が上がるほど生活に必要な介助が広範囲に及ぶことを示しています。こうした区分は、介護保険サービスを適切に組み合わせ、生活を続けるための基盤となります。
さらに、認定を受けるためには申請書や被保険者証、主治医意見書などの書類が必要となり、認定調査や一次・二次判定を経て区分が決定されます。日常生活で感じる困りごとがある場合には、早めに相談し、適切な支援につながるよう準備しておきましょう。
参考文献



