介護のキーパーソンとは?役割や決め方、よくある悩みも解説します

介護の現場では、キーパーソンと呼ばれる存在がとても重要な役割を果たします。キーパーソンとは、介護を受けるご本人に代わって家族や医療、介護関係者との連絡や調整を行い、介護方針や今後の生活への意思決定をサポートする中心的な人物のことです。介護サービスの契約やケアプラン作成の際にも、キーパーソンが主に説明を受け、必要な情報を家族全体に伝えるなど、介護の流れを円滑に進めるための重要な役割を担います。しかし、実際に誰がその役割を担うべきか、また責任の範囲がどこまでなのか悩むご家庭も少なくありません。本記事では、キーパーソンの具体的な役割や決め方、よくある悩みをわかりやすく解説し、介護に向き合うためのヒントをお伝えします。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
目次 -INDEX-
介護のキーパーソンとは

介護のキーパーソンとは、介護を受けるご本人に代わって家族や医療、介護関係者との間で連絡や調整を行う中心的な存在のことを指します。介護保険制度では明確な法律上の定義はありませんが、現場では主な相談や連絡窓口として位置づけられており、介護の方針を決めたり、ケアマネジャーや施設職員、医療機関などと情報共有を行ったりする役割を担います。
例えば、介護サービスを利用するときの契約や、ケアプランの作成と変更の際の同意、緊急時の対応連絡などもキーパーソンが担当し、ご本人と関係者をつなぐ要の存在です。
一般的には、同居している家族や介護に関わる機会が頻繁な方がキーパーソンになることが少なくないですが、家族でなければならないわけではありません。遠方に住む親族が担う場合や、信頼できる友人、成年後見人が務めることも可能です。大切なのは、介護を受ける本人の意思や希望を尊重しながら、関係するすべての方と円滑にコミュニケーションを取れるかどうかです。
また、キーパーソンは一人ですべてを背負う必要はなく、家族間で情報を共有しながら協力して支える体制をつくることが望ましいです。介護が長期化すると、キーパーソンの負担が大きくなり、ストレスや孤立感を抱くこともあります。
そのため、家族やケアマネジャー、地域包括支援センターなどと協力し、定期的に状況を話し合うことが大切です。キーパーソンは、介護の中心に立つことで責任を感じやすい立場ですが、同時に本人の思いを伝え、支える存在として重要な意味を持つ役割です。介護を円滑に進めるためのパートナーとして、周囲の理解とサポートを得ながら無理なく関わることが、よりよい介護の実現につながります。
介護でキーパーソンが必要な状況と役割

介護でキーパーソンが必要な場面は、本人の意思決定が難しい場合や緊急時の連絡調整です。主な役割は意思決定の支援や医療・介護関係者との連絡役となることです。
介護のキーパーソンが必要になる状況
介護のキーパーソンが必要になる状況は、ご本人の判断力や意思決定能力が低下し、自分で介護サービスの契約や医療と生活に関する重要な選択が難しい場合です。また、緊急時や治療方針の決定、入院、施設入所などで家族や関係者との連絡や調整が必要な際にも、キーパーソンの存在が重要です。
さらに、手続きや金銭管理、急な入院時の身元引受人が求められるときにも必要です。これらの場面では、キーパーソンがご本人や家族、医療・介護関係者との間で意思確認や意向調整、情報の共有を行い、介護を円滑に進める役割を果たします。
介護のキーパーソンの役割
介護のキーパーソンの役割は、ご本人の意思決定を支援し、家族や医療、介護関係者との連絡と調整役となることです。具体的には、治療方針や介護サービス利用に関する決定の助言、サービスや施設との契約手続き、緊急時の連絡や意思確認、介護計画(ケアプラン)作成時の同意や説明への対応などが挙げられます。また、家族内や親族間の意見を調整し、代表者として関係者への情報提供や伝達を行います。キーパーソンは実務上、トラブル予防や円滑な介護の進行に欠かせない存在です。
参照:『誰がなる? 介護の「キーパーソン」』(けんぽれん[健康保険組合連合])
介護のキーパーソンを決める方法と適性

介護のキーパーソンは、本人や家族の合意をもとに、信頼関係や責任感、調整力を考慮して選びます。適切な方を選ぶと同時に、キーパーソンの負担を分担しながら役割を担うことが望ましいです。
介護のキーパーソンの決め方
介護のキーパーソンを決める際は、まず介護されるご本人の意思を確認したうえで、家族全体で話し合い合意を図ります。信頼関係があり、責任感や調整力を持つ方が適任とされますが、負担が一人に偏らないよう家族で役割分担や協力体制を整えることも重要です。また、決定が難しい場合やトラブルを避けるためにケアマネジャーや介護の専門家への相談が効果的です。適切なキーパーソンの選出には、家族間の協議と周囲のサポートが不可欠です。
介護のキーパーソンの適性
介護のキーパーソンに求められる適性は、ご本人や家族からの信頼が厚いことです。介護や医療に関する知識がある、もしくは積極的に学ぶ意欲を持っている方が適しています。また、冷静に状況判断ができる責任感や調整力、関係者とのコミュニケーション力も欠かせません。緊急時に感情的になりすぎず、適切な選択を考えられる冷静さが求められます。さらに、主に介護サービスの契約・手続きや、治療方針の決定に関わるため、物理的・精神的な負担を無理なく担えるかも考慮されます。家族間の橋渡し役となり、ほかの家族とも良好な関係を築けることも大切です。実際の生活や健康状態も加味し、周囲の協力体制のもとでキーパーソンに過度な負担が偏らないことも大切です。
介護のキーパーソンを決められないときの相談先

介護のキーパーソンを家族内で決められない場合や、意見がまとまらず困ったときは、まず外部の公的な相談先の活用が大切です。利用しやすい相談先は地域包括支援センターです。
地域包括支援センターには、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍しており、家族それぞれの状況やご本人の意思を踏まえて、適切なアドバイスや調整役を担ってくれます。
相談を通じて、家族会議のサポートや第三者視点からの助言、必要に応じてほかの関係機関やサービスの紹介も受けられます。 また、すでに介護サービスを利用中であれば、担当のケアマネジャーへの直接相談が有効です。ケアマネジャーは介護計画の専門家であり、家族間の調整や制度の活用方法など、現場に即した助言や支援を提供できます。市区町村の介護保険課や高齢者福祉担当窓口も、相談受け付けや専門機関への橋渡し役を担ってくれるので、悩みが深い場合は役所の窓口に足を運んでみるのもよいです。
さらに、社会福祉協議会や医療機関の相談室などにも相談が可能です。これら複数の窓口を上手に活用すると、第三者を含めた冷静な話し合いや家族会議の進行、必要時の制度利用につなげやすいです。一人で抱え込まず、早めに専門家や公的機関への相談が、円満なキーパーソン選びと介護負担の軽減につながります。
参照:
『介護サービスの利⽤のしかた 地域包括⽀援センターとは 介護の相談窓⼝等について』(厚生労働省)
『社会福祉協議会とは』(全国社会福祉協議会)
介護のキーパーソンになったときに求められる姿勢

介護のキーパーソンには、ご本人の意思や希望を尊重しながら、冷静かつ誠実に対応する姿勢が求められます。まず、介護される方との信頼関係を築き、その人権や尊厳を守ることが重要です。そして、医師やケアマネジャー、介護スタッフなどの専門職と情報を共有し、適切な判断をするために、積極的に学び知識を深めていく姿勢も大切だといわれています。
家族や関係者の意見が異なる場合でも、感情的にならず、関係者の立場やご本人の状況を踏まえた調整役の意識が求められます。必要に応じて、第三者による相談や役割分担を遠慮なく活用し、一人で抱え込みすぎない姿勢も大切です。また、介護方針や緊急対応では素早い判断が必要となる場面も少なくないため、冷静で責任感のある決断力が求められます。
日々の介護では、ご本人の気持ちに寄り添いながら精神的なサポートも行い、家族内のコミュニケーションを円滑に進める役割も果たします。家族だけで抱えず、専門職や地域の支援を活用しながら、周囲と協力して介護を進める積極的な姿勢が、よりよい介護生活につながります。このような姿勢がキーパーソンとして円滑な介護環境を生み、大切な方の安定した生活支援につながります。
介護のキーパーソンが抱えがちな悩みと解決法

介護のキーパーソンは、負担の大きさや家族間の調整で悩みがちです。解決法は、一人で抱え込まず家族や専門家と協力し、公的相談窓口や支援サービスを積極的に活用することです。
介護のキーパーソンが抱えやすい悩み
介護のキーパーソンが抱えやすい悩みには、多くの側面があります。まず家族や親族、関係者との間で意見が合わない場合、調整役としてのストレスや孤独感を強く感じやすいです。
実際に自分が中心となって手続きや連絡、意思決定を続けているにも関わらず、ほかの家族が具体的な協力をせずに批判や意見だけを述べてくることも少なくありません。その結果、「なぜ自分だけが苦労を背負うのか」と不満を感じ、精神的な負担が増大するケースがあります。
また、介護には突発的な体調悪化や緊急事態も多く、判断や対応に迷う場面も多々あります。認知症介護では夜間の徘徊や暴言、繰り返しの質問などの行動に対し、適切な対応が取れず心身の疲労や眠れぬ夜が重なることもあります。
さらに、ほかの家族が多忙や遠方住まいを理由に協力できない場合、物理的・精神的な孤立が進み、社会的なつながりが薄れることも悩みの一因です。こうした悩みが重なることで、うつ状態に陥ったり、自分のケアがおろそかになったりするリスクも高まります。役割の偏りや家族間の連携不足は、介護そのものの質や家族関係にも大きく影響します。
介護のキーパーソンの悩みを解決する方法
介護のキーパーソンが悩みを抱えたときに解決する方法として、大切なのは一人で抱え込まない姿勢です。まず家族や親族内での役割分担、チーム制の導入があります。連絡調整や意思決定はキーパーソンが中心ですが、日常の見守りや買い物、手続きなどはほかの家族の協力で、負担やプレッシャーを分散できます。特に離れて暮らす家族もオンラインや電話で情報共有を行い、協力体制を作ることが現実的な解決策です。
また、困ったときは地域包括支援センターやケアマネジャーなど外部の専門家に相談することが重要です。公的窓口は費用がかからず気軽に利用でき、悩みや疑問を第三者の立場で整理してもらうことができます。
介護保険サービスなどの利用方法の提案や、状況に応じた具体的な解決策の提示などの実務的なサポートも受けられます。
さらに、同じ立場の家族とコミュニケーションできる家族会やコミュニティなどを活用し、悩みの共有が有効です。自分の趣味や小さな楽しみの時間を確保して、精神的な余裕を持つ工夫も負担軽減の一つです。自分自身をいたわりながら、必要なときは早めに支援を求めることが、キーパーソンとして長く無理なく介護に関わるための大切なポイントです。
参照:『介護サービスの利⽤のしかた 地域包括⽀援センターとは 介護の相談窓⼝等について』(厚生労働省)
まとめ

介護のキーパーソンとは、介護を受けるご本人や家族、医療・介護の専門職と連絡や調整を担う中心的な存在です。主な役割は、介護サービスや治療方針などの意思決定支援、ケアプランの承認や契約手続き、緊急時の連絡や対応、家族間の意見調整や情報共有です。キーパーソンは本人・家族の話し合いや信頼関係をもとに選ばれますが、責任の偏りや孤独感、家族間の調整難、膨大な負担など悩みも多くなりがちです。キーパーソンに負担が偏らないようにするためには、家族や関係者と協力し役割分担、公的な相談窓口や専門職への相談の積極的な活用が大切です。介護現場ではキーパーソンを支える体制づくりが、質の高い介護と負担軽減につながります。
参考文献




