高齢者の一日の過ごし方は?健康的に過ごすための工夫とスケジュールの考え方

年齢を重ねても充実した毎日を送るためには、一日の過ごし方に気を使ってください。規則正しい生活リズムと適切な活動のバランスは身体的・精神的健康の維持だけでなく、生きがいや社会とのつながりを保つうえでも欠かせません。本記事では高齢の方が健康的で充実した一日を過ごすための具体的な工夫、スケジュールの考え方を解説します。

監修医師:
小田村 悠希(医師)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
高齢の方の一日の過ごし方の基本

高齢の方の理想的な一日の過ごし方とはどのようなものですか?
- 起床時刻を一定にする
- 朝の光を浴びて体内時計をリセットする
- 栄養バランスの取れた朝食を摂取する
- 日中に軽い運動や家事を取り入れる
- こまめな水分補給を心がける
- 服薬や血圧測定などを固定時間に実施する
- 趣味や人との会話の時間を確保する
- 午後は短時間の休憩にとどめる
- 夕食は就寝の数時間前に済ませる
- 入浴と就寝前のルーティンを決める
昼と夜の区別をつけることで、夜間の良質な睡眠と日中の活動的な時間が確保できます。特に朝の過ごし方が一日全体のリズムを決めるうえで重要です。
高齢の方の生活リズムが崩れると、どのような影響がありますか?
- 夜間の中途覚醒や日中の眠気が増加する
- 食欲不振や体重の変動が起きやすくなる
- 便秘や脱水症状が発生しやすくなる
- 血圧や血糖値のコントロールが困難になる
- 転倒リスクやせん妄の発症リスクが高まる
- 意欲低下や不安感が強くなる
- 介護する家族の負担が増大する
生活リズムの乱れは、身体機能・精神機能の両者に深刻な影響を与えます。特に睡眠障害は免疫力の低下や認知機能の悪化につながるため、規則正しい生活習慣の維持が健康寿命の延伸に直結します。
自宅と施設での一日の過ごし方の違いを教えてください
| 項目 | 自宅 | 介護施設 |
|---|---|---|
| 起床・就寝 | 本人と家族で時間調整が可能 | 施設の規則的な時間割に従う |
| 食事 | 個人の好みや体調に合わせた献立 | 栄養管理された定時の食事 |
| 運動・リハビリ | 自主的実施・訪問サービスの活用 | 集団体操や個別リハが組まれる |
| レクリエーション | 個人の趣味中心、地域活動参加 | 施設の日替わりプログラム |
| 見守り・安全 | 家族や機器による見守り | スタッフによる常時見守り |
| 医療・服薬管理 | 家族と医療機関の連携 | 専門スタッフによる管理 |
自宅では個人の自由度が高くなりますが、規則正しい生活や見守り、服薬管理、安全面を重視する場合には施設管理の方が推奨されます。上記表は施設によって異なる部分がありますが、どちらの環境でも本人の状態や希望に応じた適切な過ごし方を選択することが重要です。
【高齢の方の一日の過ごし方】健康的に過ごすための工夫

一日の過ごし方によって将来の健康にどのような影響を与えますか?
- 日中の活動習慣は筋力低下やフレイルの予防に寄与する
- 人との交流は気分の安定と認知機能の維持に関わる
- 規則的な睡眠は免疫機能と代謝機能を整える
- バランスのよい食事は体重や血圧の安定に役立つ
- 適切な清潔保持は感染症の予防につながる
毎日の生活習慣の積み重ねが、長期的な健康状態に大きな差となります。生活習慣の維持が生活習慣病(高血圧症・高脂血症・糖尿病など)の悪化防止、認知症の発症リスク軽減、筋力維持により転倒・骨折の予防につながります。
一日のなかで身体を動かす時間はどのくらい必要ですか?
- 1日40分の身体活動(目安は1日6,000歩)
- 筋力トレーニングを週2回以上実施する
- バランス訓練を週3回程度行う
- 長時間の座位を避け、こまめに立ち上がる
体調に合わせて歩行・体操・軽い筋力トレーニングなどを組み合わせることが重要です。安全に配慮し、痛みや息切れが強い日は運動強度を調整します。日常生活動作も身体活動に含まれるため、家事や買い物なども有効な運動となります。
健康に悪い影響を与える可能性がある過ごし方はありますか?
- 長時間の座りっぱなしや寝たきり状態
- 朝遅くまで寝て朝食を抜く習慣
- 日光を浴びない室内だけの生活
- 夕方以降の長時間の昼寝
- カフェインやアルコールの夜間摂取
- 不規則な就寝時刻
- 水分摂取の不足
- 運動や外出の機会が極端に少ない生活
- 社会からの孤立状態
これらの過ごし方は筋力低下、生活習慣病の悪化、認知機能の低下やうつ状態などの精神的な不調を招く可能性があります。
【高齢の方の一日の過ごし方】スケジュールの考え方

自宅介護の場合、どのようなスケジュールで過ごすのがよいですか?
| 時間帯 | 活動例 |
|---|---|
| 起床~朝 | 同じ時刻に起床、朝日を浴びる、整容、朝食、服薬、排便習慣 |
| 午前 | 散歩や体操、家事、リハビリ、買い物、会話の時間 |
| 昼~午後早め | 昼食、口腔ケア、短時間の昼寝、水分補給 |
| 午後 | 趣味活動、訪問リハやデイサービス利用、入浴準備 |
| 夕方~夜 | 入浴、夕食、服薬、明日の準備、就寝前ストレッチ |
| 就寝前 | 読書や音楽でリラックス、同じ時刻に就床 |
介護者である家族と介護サービスの時間を先に決めてから、運動・趣味・休憩の時間を計画していきます。食事、服薬、趣味、入浴、口腔ケアなどは場所と順番を決めて習慣化することで生活リズムを構築できます。
夜眠れない場合や昼夜逆転している場合はどうすればいいですか?
- 起床時刻を毎日一定にする
- 朝の光を10分以上浴びる
- 日中に歩行や体操を実施する
- 昼寝は短時間で遅い時間は避ける
- カフェインは午前中までに制限する
- 夕食は就寝の数時間前に済ませる
- 入浴は就寝の1〜2時間前までにする
- 寝室の照明・音を適切に調整する
- 内服薬や持病の影響を医師と確認する
生活リズムの調整には起床時刻と朝の過ごし方が大切です。これらの対策を実施しても改善が見られない場合は睡眠障害やうつ状態を考えて、医療機関の受診を検討してください。
お昼寝や休憩の取り方で気を付けるべきポイントを教えてください
- 昼寝の時間は30分以内に制限する
- 午後の早い時間(13〜15時)に実施する
- 横にならず椅子で軽く目を閉じる
- 夕方以降の昼寝は避ける
- 起床後は日光と軽い体操で覚醒を促す
- 夜間頻尿がある場合は午後の水分量を調整する
- 床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する
短時間の仮眠は集中力の回復に効果的ですが、長すぎると夜間の睡眠を妨げます。生活全体のリズムを優先して、昼寝の時間と頻度を調整してください。
編集部まとめ

高齢の方の健康的な一日の過ごし方は、小さな規則正しい生活習慣の積み重ねが重要です。体調や天候に合わせて活動強度を調整し、無理のない範囲で継続することが健康寿命の延伸につながります。気になる症状が続く場合はかかりつけ医に相談して、個人に適した生活リズムを見つけることが大切です。

