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自宅介護で必要なものは?生活・衛生用品や介護用品リストと役立つ制度とは

 公開日:2025/12/13
自宅介護で必要なものは?生活・衛生用品や介護用品リストと役立つ制度とは

自宅で介護を始める際、「何が必要なの?」「どのような制度が使えるの?」と悩む方は多いでしょう。そこで本記事では、自宅介護に必要なものや環境作りの方法、役立つ制度やサービスについて解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

自宅介護を始める前に知っておきたいこと

自宅介護を始める前に知っておきたいこと

自宅介護を開始するにあたって知っておきたい在宅介護と施設介護の違いや準備、介護保険サービスを利用する方法を解説します。

在宅介護と施設介護の違い

在宅介護と施設介護の大きな違いは、介護を受ける場所と体制です。在宅介護は自宅で生活しながら、必要に応じてデイサービスなどの介護サービスを使います。

一方、施設介護は職員が常駐し、24時間体制でサービスを提供するのが特徴です。看護師や介護士などを中心とした、充実した専門的なケアが受けられます。

家族だけで抱え込まないための準備

自宅介護では家族だけで抱え込まないように、介護サービスを利用して家族の負担を減らしましょう。介護は長期化しやすいため、家族の負担が心身ともに大きくなり、疲弊してしまう場合があるからです。

在宅介護を続けるためには家族だけで頑張らず、ケアマネジャーなどの介護の専門家へ相談し、サービスを使える環境を整えましょう。

ケアマネジャーなどに相談し、デイサービスや訪問ヘルパーなど、必要なサービスを活用しましょう。介護用品のレンタルや手すり設置などのリフォームも介護保険で補助が受けられます。

ケアマネジャーについては、お住まいの市町村の福祉課や地域包括支援センターに尋ねてみてください。居宅介護支援事業所(ケアマネジャーがいる事業所)についての情報提供が受けられます。

介護保険サービスの上手な活用

介護保険サービスは、在宅介護をサポートしてくれる制度です。ケアマネジャーに早めに相談し、利用できるサービスを上手に取り入れましょう。
利用できる主なサービスは以下のとおりです。

  • 福祉用具のレンタルと購入:ベッド、杖、入浴補助用具など
  • 通所介護(デイサービス):自宅から施設に通い、食事、入浴、機能訓練などを行う
  • 訪問介護:介護士が訪問し、食事、排泄、入浴、掃除、洗濯などの支援を行う
  • 訪問入浴:看護師と介護士が訪問し、持参した浴槽によって入浴介助を行う
  • 訪問看護:看護師が訪問し、服薬管理、在宅酸素の管理、在宅での看取りなどを行う
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):施設に短期間に入所し、入浴、食事、機能訓練などを行う

ケアマネジャーに相談すれば、デイサービスや福祉用具レンタルなど、状態に合ったサービスを選択してもらえます。

自宅介護に必要な環境づくり

自宅介護に必要な環境づくり

自宅で介護をするためには、介護する側もされる側も快適に過ごせる環境が大切です。ここでは自宅介護に必要な環境をつくる方法を確認しておきましょう。
 

介護しやすい部屋づくりの基本

自宅介護では、介護する方がスムーズに動けるような部屋づくりを意識してください。動線を意識したレイアウトにすると、介助が安全かつ効率的に行え、介護される方の負担も減ります。

ベッドや車いすの周囲は十分なスペースを取り、通路に家具や物を置かないようにしましょう。また、ベッドサイドにワゴンを置いたり、ベッド柵にポケットを付けたりして必要なものを入れておけば、使うときにすぐに取り出せて便利です。

転倒を防ぐレイアウトや照明、段差対策

高齢の方は筋力や視力の低下により、わずかな段差や照明が暗い場所でも転びやすくなるため、事故を防ぎ、安全な生活が送れるように配慮しなければなりません。

転倒事故を防ぐためのレイアウトや照明のポイントは下記のとおりです。

  • 家具は動線を妨げない配置にし、通路幅を十分に確保する
  • 足元灯やセンサーライトを設置する
  • 段差は取り除くかスロープを設置する

このように、高齢の方が安全に動けるよう、段差や照明などに配慮しましょう。

ベッドやトイレまでの動線のポイント

自宅介護では、ベッドからトイレまでの動線を安全かつ短くしましょう。高齢の方はトイレが頻回な方が多く、移動に時間がかかると転倒の危険が高まります

トイレの近くの部屋を用意する、トイレまでの動線に物を置かないなど工夫すると、高齢の方の移動もスムーズになり、介護する側の負担も減るでしょう。

清潔と快適を保つための工夫

室内を清潔に保つ環境づくりは、在宅介護を行ううえで欠かせません。不衛生な環境は、感染症や皮膚トラブルを引き起こし、ストレスや不眠にもつながります。

部屋の換気をこまめに行い、湿気や臭いを防いでください。寝具や衣類は定期的に洗濯し、清潔なものを身につけられるようにしましょう。

ベッド周りにはゴミ箱やウェットティッシュを置いて、汚れたら清掃できる環境を作っておくのもおすすめです。

自宅介護に必要なもの【生活・衛生編】

自宅介護に必要なもの【生活・衛生編】

自宅介護では、清潔と快適さを保つことが重要です。おむつの臭いを消すポリ袋や防水シーツなどを活用し、衛生的な環境を整えましょう。 

毎日のケアに使う基本用品

毎日のケアに使う主な基本用品は、消臭剤入りポリ袋と防水シーツです。

消臭剤入りポリ袋とは、使用済みのおむつを入れ、密閉して臭いを閉じ込めるものです。臭いによる不快感を軽減し、部屋の空気を清潔に保ちます。

特に、厚手で密閉性の高いタイプは臭い漏れをより抑えられるため、排便時の処理にむいているでしょう。個包装タイプなら、外出時のおむつの処理にも便利です。

消臭剤入りポリ袋は排泄物の臭いを軽減し、環境を衛生的に保ちます。臭いが気になる方は、利用を検討してみてください。

防水シーツとは、ベッド上で失禁をした際に、マットレスなどへの汚れを防いでくれる介護用品です。マットレスの交換や乾かす手間を減らし、ベッドを衛生的に保ちます。

吸水性と通気性を兼ね備えたタイプを選ぶと、蒸れづらく快適です。洗濯機で丸洗いできるため、お手入れも難しくありません。

衛生を保つためのグッズ

衛生を保つための代表的なグッズは、大人のおしりふきと介護用手袋です。

大人用のおしりふきは、介護の清潔ケアに欠かせないアイテムです。入浴が難しい場合でも、排泄後の皮膚を清潔に保ち、臭いや皮膚トラブルを軽減します。お肌が弱い方には、ノンアルコールタイプや保湿成分入りがおすすめです。

介護用手袋は、安全で衛生的な介護を行うために欠かせない道具です。排泄介助や口腔ケアなど直接体液に触れる場面で付けると、介護者を感染症から守り、清潔も保持できます

使い捨てタイプのため作業ごとに捨て、次の介助の際は新しいものを使ってください。ゴム製やプラスチック製など種類が複数あるため、着脱しやすく手に合う素材を選びましょう。

自宅介護に必要なもの【介護用品編】

自宅介護に必要なもの【介護用品編】

自宅で介護をすると、介護が必要な方の衣食住すべてをサポートしなければなりません。ここでは、自宅介護におすすめの介護用品を解説します。

介護ベッドと体位変換をサポートする用品

介護を始めるにあたっては、普段は布団で寝ていた方も特殊寝台に変更した方がよいでしょう。また寝返りが打てない方には、体位変換器も必要です。

特殊寝台は、一般的には介護ベッドまたは電動ベッドと呼ばれます。背部や脚部の傾斜角度や、ベッドの高さが調整できる機能があります。

ベッドの高さが調整できるタイプは、ベッドからの立ち上がりが楽になり、介助する方の腰の負担も軽減できます

体位変換器とは、床ずれ予防のため体位交換を補助してくれる用具です。
身体の下に挿入し、空気圧やてこの原理を用いて身体とベッドの摩擦抵抗を少なくすることで、体位変換がしやすくなります。

自分で寝返りが打てずに長時間同じ姿勢で寝ていると、体重がかかっている部位が圧迫されて床ずれの原因となります。適宜体位を変えることにより圧を軽減し、床ずれ予防に役立ちます。

排泄をサポートする用品

排泄のサポートには差し込み便器と自動排泄処理装置が役立ちます。

差し込み便器は、ベッド上で寝たままの状態で殿部(おしり)の下に置き、排泄できる道具です。男女ともに肛門部が差し込み便器の中央にくるようにセットし、羞恥心に配慮して手際よく行いましょう。

排泄が終わったら速やかに便器を洗浄する、部屋の空気を入れ替えて臭いがこもらないようにするなど、清潔保持に努めてください。

自動排泄処理装置は、ベッド上で自動で尿や便を吸引できる装置です。オムツや陰部に取り付けたセンサーが排泄を感知して、自動的に排泄物を吸引してくれます。夜間も排泄物を自動で吸引しタンクに貯留できるため、トイレ介助の頻度を減らせます。

移動をサポートする用品

一人での歩行が難しい方、危険が伴う方には歩行器や歩行補助杖も用意しましょう

一人で歩くのが困難な方によく使われるのが歩行器です。ピックアップ式(固定型・持ち上げ型)、交互式、車輪(キャスター)付きなどの種類があります。
身体機能や生活環境に合わせ、適切なものを選びます。

歩行補助杖は身体を支えて歩行をサポートする道具です。身体のふらつきを抑える、足腰の負担を軽減するなどの役割を持っています。T字杖、折りたたみ杖、2本杖などの種類があります。

食事をサポートする用品

食事をする際は食事用エプロンや介護用スプーンがあると便利です。

介護食用エプロンは、食べこぼしが多い方におすすめです。撥水加工、防水加工がされており、衣服の汚れを防ぎます。首の後ろでマジックテープで止めると使えるため着脱もスムーズで、洗濯をすれば繰り返し使えます。

介護用スプーンは、手が動きづらい、握力が低いなどの理由でスプーンなどをうまく持てない方に適しています。種類は、持ち手を自由に曲げられるもの、噛んでも割れづらいシリコン製のものなど、複数あります。

入浴をサポートする用品

入浴時に役立つ代表的なアイテムはシャワーチェアと簡易浴槽です。シャワーチェアとは、自宅で入浴をする際に、 座ったまま身体を洗える道具です。一般的な浴室用の椅子より座面が高く、足の筋力が低下している方でも座りやすいのが特徴です。

椅子の脚ゴムは十分な幅があり、床が濡れた状態でも滑りづらくなっています。

簡易浴槽とは、自室などで入浴をするための浴槽です。浴室まで行けない方や、浴室の浴槽に入れない方でも入浴しやすくなります。

浴槽のほかに排水用ホースやエアーポンプ、シャワーなども備えており、洗髪も可能です。

自宅介護で役立つ制度やサービス

自宅介護で役立つ制度やサービス

介護保険制度では自宅で介護をしている方をサポートする、さまざまなサービスが受けられます。ケアマネジャーと相談しながら、適切なサービスを利用していきましょう。
 

介護保険で利用できる在宅サービス

介護保険を利用すると、自宅介護で使えるさまざまなサービスが受けられます。主なサービス内容は以下のとおりです。

  • 訪問介護(ホームヘルプ):入浴、排泄、食事などの介助や生活支援を行う
  • 訪問看護:看護師が服薬管理や医療的ケアを行う
  • 通所介護(デイサービス):自宅から施設に通い、入浴、食事、リハビリなどを行う
  • 短期入所(ショートステイ):一時的に施設に宿泊し、介護を受ける
  • 福祉用具貸与・購入:ベッド、車いすなどをレンタル、購入できる
  • 住宅改修:段差解消や手すりの設置などができる

これらのサービスを利用するためには、要介護認定の申請手続きが必要です。まずはお住まいの地区の地域包括支援センターや市区町村役場に相談をしましょう。

福祉用具の貸与や住宅改修制度の活用

福祉用具の貸与住宅改修制度を活用すると、自宅での介護が安全で快適になります。身体の状態に合わせて必要なものを活用すれば、転倒などの事故や介助時の負担を減らせるでしょう。

ベッド、杖などは、原則1割負担(所得により2〜3割の場合あり)でレンタルや購入ができます。自宅にスロープや手すりを設置する住宅改修も、最大20万円まで補助があります。

参照:
『福祉用具・住宅改修 介護保険における住宅改修』(厚生労働省)
『介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム 特定福祉用具販売』(厚生労働省)
『介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム 特定福祉貸与』(厚生労働省)

ケアマネジャーへの相談と支援の受け方

自宅介護をスタートする際は、要介護認定の申請を行いましょう。申請の方法や受けられるサービスの概要などがわからない場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談をします。介護認定の結果が出たら、お住まいの市区町村の居宅介護支援事業所へ連絡し、介護保険サービスを利用したい旨を伝えましょう。

その後、担当のケアマネジャーが決まるとサービス利用の計画書を作成し、サービスが開始されます。サービスの手配もすべてケアマネジャーが行ってくれるため、心配なことは相談しながら決めてください。

レンタル・購入を上手に使い分けるポイント

福祉用具はレンタルと購入を使い分けることで、費用を抑えられます。一見レンタルの方が安いと思われがちですが、用具を使う期間や状態の変化によっては購入したほうが安くなる場合もあるでしょう

レンタルのメリットは、身体の状態に合わせて交換できる、初期費用が安く済むなどが挙げられます。反対に購入のメリットは、長期間利用する場合は割安になることもある、新品を気兼ねなく使えるなどです。

レンタルか購入か迷ったら、ケアマネジャーに相談してみてください。

まとめ

まとめ

自宅介護では、清潔を保つ生活用品や介護ベッドなど福祉用具を揃えることで、安全で快適な環境をつくれます。さらに介護保険制度を活用すれば、費用を抑えながら必要なサポートを受けることも可能です。家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや専門職と連携して、無理のない自宅介護の環境を整えていきましょう。

参考文献

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