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寝たきり介護を支える便利グッズの種類や選び方、使用する際の注意点を解説

 公開日:2025/12/13
寝たきり介護を支える便利グッズの種類や選び方、使用する際の注意点を解説

寝たきりの方は、食事や排泄、入浴のサポートなど、日常生活のすべてにケアが必要であり、介護をする方にとっては大きな負担となりかねません。
そこで本記事では、負担が大きいケアをサポートする便利グッズの種類や介護保険の利用方法、グッズを選ぶ際の注意点を解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

寝たきり介護を支える便利グッズとは

寝たきり介護を支える便利グッズとは

寝たきりの方は自力で動けないため、家族が入浴や排泄などをサポートしなければなりません。介護を担う方の心身の負担は大きく、なかには介護が原因で心身の健康を害してしまう方もいらっしゃいます。そこで役立つのが、寝たきりの方の介護をサポートする便利グッズです。

便利グッズには、入浴を補助する機械や、ベッド上で排泄物を自動で吸引する装置などがあります。こういった便利グッズを活用することでケアのなかで大きなウエイトを占める入浴や排泄の介護の負担を大幅に軽減することができます。

さまざまなケアのシーンに合わせた便利グッズが販売されていますので、介護される方、する方のニーズに合わせて、適切なグッズを選択しましょう。

寝たきりの介護に役立つ便利グッズの種類

寝たきりの介護に役立つ便利グッズの種類

食事や入浴、排泄など介護する方の負担が大きいシーン別に、介護に役立つ便利グッズについて解説します。

食事をサポートする便利グッズ

経口で食事を摂れる方、ご自身で食事を食べられる寝たきりの方は、下記のような便利グッズを用意しておきましょう。

  • 扱いやすいスプーンやフォーク、箸
  • 重みがあり仕切りが高い食器

持ちやすさや、すくいやすさが工夫されたスプーンやフォーク、箸などを用意しておきましょう。曲げられるスプーンや、握りやすい形状のスプーンフォークや軽いものなど、さまざまなアイテムが販売されています。また、食器は重みがあり、仕切りが高いものが扱いやすいです。

入浴をサポートする便利グッズ

自宅で寝たきりの方が入浴には大変な労力がかかります。一般的には自宅では清拭や部分浴で済ませ、介護保険サービスで入浴をするケースが多いでしょう。ここでは、ある程度ご自身で身体を動かせる寝たきりの方が入浴する際に役立つ便利グッズについて解説します。

自宅での入浴をサポートする代表的な便利グッズは介護用の入浴用椅子とバスアシストです。寝たきりでご自身での歩行が難しい方は、浴室で座っている姿勢を維持することが難しいため、背もたれがあるタイプの入浴用椅子を用意しておくとよいでしょう。座面が回転するタイプや手すりがあるタイプですと、より入浴介助が楽になります。

バスアシストとは、浴槽に設置した椅子型の機械に座り、自動で入浴できる機械です。シャワーの水圧で座面が上昇する仕組みになっているため、充電や電気工事なども不要です。
椅子には手すりと背もたれも付いているため、寝たきりの方のでも姿勢が保ちやすくなります。

排泄をサポートする便利グッズ

寝たきりの方は、オムツを装着することが多い傾向ですが、頻回のオムツ替えは介護をする方の大きな負担になります。そこで役立つのが、排泄をサポートする装置やアイテムです。
排泄をサポートする代表的な便利グッズは、自動排泄処理装置と装着式集尿器(男性用)です。

自動排泄処理装置は、ベッド上で尿や便を自動的に吸引する装置です。排泄物を受けるタンクが付いており、寝たまま排泄が可能です。

自動排泄処理装置の種類は以下の3つです。

  • レシーバータイプ(排尿):尿を受ける部分を陰部に装着し、センサーが排尿を感知して吸引する
  • おむつタイプ(排尿):尿吸引パッドに内蔵されたセンサーが排尿を検知し、尿を自動吸引する
  • おむつタイプ(排尿・排便):パッドに内蔵されたセンサーが排尿や排便を自動吸引する

夜間排尿が頻回な方、便や尿失禁がある方には、自動排泄処理装置の導入を検討してもよいでしょう。

装着式集尿器とは、ベッドに寝たまま排尿ができる介護用品です。シリコンでできた受尿器を陰部に直接装着し、排尿するとタンクに尿が溜まります。排尿の温感やかゆみなどを感じることも少ないため、排尿後の違和感の訴えが強い方などにおすすめです。

生活をサポートする便利グッズ

続いて生活全般のケアをサポートする便利グッズについて解説します。
口腔内をケアするスポンジブラシと、床ずれの防止効果が期待できる床ずれマットは、寝たきりの方のケアに欠かせないアイテムです。

スポンジブラシとは、口腔内の汚れを取る介護用品です。細いプラスチックの棒の先に付属しているスポンジで、主に食べかすや痰を除去します。口腔内は細菌が多く繁殖するため、口腔ケアをしなければ肺炎を起こす可能性が高くなります。寝たきりの方は、うがいや歯磨きがうまくできないことが多いですが、スポンジブラシであれば介護をする方が無理なく口腔ケアを行えます。

床ずれ防止マットは、寝たきりの方の床ずれを防止するためのマットレスです。床ずれ防止マットには、体圧を分散できる素材が使用されているものや、自動で空気圧を調整するものなどがあります。

介護保険で費用補助を受けられる便利グッズと手続き方法

介護保険で費用補助を受けられる便利グッズと手続き方法

介護保険を利用すると、さまざまな介護用品が原則1割(所得によっては2~3割)でレンタル・購入できます。ここでは、その種類と手続き方法を解説します。

介護保険の対象になる便利グッズとは

介護保険の費用補助の対象となる介護用品は、要介護認定の区分によって異なります。区分別に対象になる便利グッズを確認しておきましょう。

要介護1~5の方が対象になるもの

要介護1から5に該当する方が介護保険を利用してレンタルできる介護用品は下記のとおりです。

種類 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
特殊寝台
(ベッド)
-
特殊寝台の付属品 -
床ずれ防止用具 -
体位変換器
(寝返りを介助する機器)
-
手すり
スロープ
車いす -
車いすの付属品 -
歩行器
歩行補助杖
(T字杖など)
移動用リフト -
徘徊感知機器
(ドアや玄関を通過すると音が鳴る)
-
自動排泄処理装置
(ベッド上で尿や便を自動的に吸引する装置)
- - -

要介護1では4種類、要介護4~5では全種類のレンタルが可能です。購入する場合は、要介護度の区分に関わらず、すべての介護用品で介護保険を利用できます。

参照:『介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム 特定福祉用具販売』(厚生労働省)

要支援1と2の方が対象になるもの

寝たきりの方が要支援1や2に該当するケースは多くはありません。要支援の方は自分でできることが多いため、介護保険を利用してレンタルできる介護用品は限られます。要支援1と2の方が介護保険を使用してレンタルできる介護用品は下記のとおりです。

  • 手すり
  • スロープ
  • 歩行器
  • 歩行補助杖

要支援1と2の方が介護保険を使用して購入できる介護用品は以下の9品目です。

  • 腰掛便座(ポータブルトイレ)
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 排泄予測支援機器(膀胱内の尿が一定量に達すると通知が来る)
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部品
  • 固定用スロープ
  • 歩行器 ※歩行車は除く
  • 歩行補助つえ ※松葉杖は除く

介護保険を使用するためには、事前に認定手続きなどが必要になります。次の項目で手続き方法を解説しますので、確認しておきましょう。

参照:『介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム 特定福祉用具販売』(厚生労働省)

介護保険で費用補助を受けるための手続き

介護保険を利用して介護用品をレンタル、購入する場合は、要介護1~5または要支援1~2の介護認定を受ける必要があります。要介護認定の申請手続きは、市区町村役所でも行えますし、近隣の地域包括支援センターでも相談に乗ってもらえます。地域包括支援センターにはケアマネジャーや看護師などの介護の専門職が在籍していますので、まずは相談をしましょう。

介護認定申請書を提出すると認定調査(聞き取り調査)が行われます。聞き取り調査の内容や主治医意見書(心身の状況を記載した書類)などの情報を総合的に考慮して、要介護度が決定されます。

介護度が要介護1~5の方は居宅介護支援事業所へ要支援1~2の方は地域包括支援センターへ連絡し、サービスの計画書を作成してもらえば費用補助が受けられます。

寝たきり介護の便利グッズを選ぶポイント

寝たきり介護の便利グッズを選ぶポイント

寝たきりの方の便利グッズを選ぶ際は以下のポイントを意識してみてください。

介護する人とされる人、両方の負担を減らせるか

まずは介護をする方が、どのようなことに困難さや負担を感じているのかを、一日の流れのなかで考えてみましょう。また、介護をされる方の心身への負担も検討します。例えば排泄介助は、介護をする方、される方双方の負担が大きいケアです。そういったケアを便利グッズでサポートすることで、双方のストレスが軽減されます。

安全性と衛生面、使いやすさをチェックする

介護用品は、安全性と衛生面、使いやすさを意識して選びましょう。
安全性の観点では、使用されている素材やトラブルの起きにくさを考慮します。衛生面においては、きれいな状態を維持しやすいかどうかという観点でチェックしてみましょう。
例えば、シリコン製のストローやコップなどは破損の心配が少ないため使いやすく、介護に適した素材といえるでしょう。煮沸消毒が可能なため、定期的に消毒して雑菌を取り除けば、食中毒の心配も少なくなります。

また、安全で衛生的であっても介護する方にとって使いにくければ便利グッズとはいえません。操作や使い方が複雑なものは、便利であっても使用頻度が落ちます。介護をする方が、無理なく楽に使えるアイテムを選びましょう。

介護保険や補助制度の対象かどうか確認する

原則として、介護用品を購入する場合は、いずれの要介護度であっても補助を受けられます。レンタルの場合は、要介護度によって対象となる品目が異なります。介護保険が使えるものでも要介護度によっては対象外になってしまいます。すでに要介護認定を受けている方は、ケアマネジャーに相談をしてみるとよいでしょう。まだ要介護認定を受けていない方は、地域包括支援センターや役所に相談することをおすすめします。

定期的に見直して合うものを選び直す

介護の便利グッズは定期的に見直し、介護される方の状態に合うものを選びましょう。身体の状態は変化するため、今まで使っていたグッズが合わなくなる可能性があるからです。

例えば、寝返りがうてなくなってくると床ずれができる可能性が高くなるため床ずれ予防のマットへ変更する、筋力低下が進んだら電動ベッドへ切り替えるなどの対応が必要です。

また、口腔内のケアに用いるスポンジブラシや吸い飲み、スプーンなどは永続的に使用できるものではありません。日々の使用によって素材が劣化しますので、定期的に状態を確認しておきましょう。

必要に応じてケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談する

介護用品選びで迷ったら、ケアマネジャーに相談しましょう。適切なものを選択し、レンタルや購入時の手続きも行ってくれます。

例えば、床ずれ予防のマットはどれが合っているか、入浴時は移乗ボードかバスアシストのどちらがよいかなど、専門家の視点で助言を受けられます。また、介護用品の提案だけではなく、必要なサポートも提案をしてくれますので、困ったときは抱え込まずに相談するようにするとよいでしょう。

寝たきり介護で便利グッズを使用する際の注意点

寝たきり介護で便利グッズを使用する際の注意点

介護用品を使う際は、介護される方の残っている機能を活かせるものを選びましょう。自分でできることは些細なことでも行わないと、機能は衰えていきます。

握力が弱くてスプーンが持てないなら柄が太いスプーンを選ぶ、浴槽をまたげるなら移乗ボードを使うなど、本人の機能を活かせる介護用品を選んでみてください。

まとめ

まとめ

寝たきりの方の介護は介護をする方にとっても大きな負担です。本記事で取り上げたようなさまざまな便利グッズを活用して、心身の負担を軽減しましょう。便利グッズを選ぶ際は、介護する側とされる側の負担を軽減するもの、本人の残存機能を活かせるものを選びましょう。

また、介護保険が適用されれば、介護度に応じてレンタルや購入の補助が受けられます。介護用品は定期的に見直し、ケアマネジャーと相談しながら適切なものを選ぶようにしましょう。

参考文献

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