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寝たきりの方の清拭手順や準備、注意点などをわかりやすく解説!

 公開日:2025/12/13
寝たきりの方の清拭手順や準備、注意点などをわかりやすく解説!

寝たきりの方にとって、身体を清潔に保つことは健康維持において欠かせない要素です。入浴が困難な状況では、清拭が身体の清潔を保つための主要な手段となります。適切な清拭は皮膚トラブルの予防はもちろん、血液循環の促進や心理面でも快適感をもたらします。本記事では、清拭の基本的な知識や実際の手順、注意点を解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

清拭(せいしき)とは

清拭(せいしき)とは

清拭は、寝たきりの方や入浴が困難な方に対して行われる重要な介護技術の一つです。温かいタオルを使用して身体を拭き清めることで、清潔の保持だけでなくさまざまな健康効果をもたらします。ここでは清拭の基本的な概念と、その意義を解説します。

清拭の目的と効果

清拭とは、温かいタオルや清拭用の製品を用いて身体を拭き清める介護技術のことです。主な目的は以下のとおりです。

  • 皮膚の汚れや分泌物の除去
  • 血液循環の促進
  • 皮膚の健康状態の観察
  • 感染症の予防
  • リラクゼーション効果

清拭は単なる清潔保持だけでなく、皮膚への適度な刺激により血流を改善し、褥瘡の予防にも効果を発揮します。また、介護者と被介護者のコミュニケーションの機会ともなります。

入浴できないときに行うケアの重要性

寝たきりの方は自力での入浴が困難なため、清拭が身体の清潔を保つ唯一の手段となることが多くあります。入浴できない期間が長期化すると、以下の皮膚トラブルのリスクが高まります。

  • 皮脂や汗による皮膚炎の発生
  • 細菌の繁殖による感染リスクの増加
  • 褥瘡の発生や悪化
  • 体臭による心理的ストレス

定期的な清拭を行うことにより、上記のリスクを大幅に軽減できます。特に皮膚の弱い部分や圧迫されやすい部位では、清拭による清潔保持が褥瘡発生予防には必要です。

身体を清潔に保つことが心身に与える影響

身体の清潔は、身体的な健康だけでなく精神的な健康にも大きな影響を与えます。清拭による効果は多岐にわたります。

身体への影響 心理への影響
皮膚疾患の予防
血液循環の改善
筋肉の緊張緩和
体温調節機能の維持
爽快感の獲得
自尊心の維持
リラックス効果
睡眠の質の向上

清潔な身体状態を保つことは、年配の方の尊厳を守ることにもつながります。身だしなみが整うことで自己肯定感が向上し、積極的な生活意欲の維持にも寄与します。

清拭を実施する頻度

清拭の頻度は、個人の状態や季節、環境によって調整する必要があります。一般的な目安は以下のとおりです。

  • 全身清拭:週2〜3回
  • 部分清拭(顔・手・陰部):毎日
  • 発汗時の清拭:必要に応じて随時
  • 排泄後の清拭:その都度

夏季や発熱時は汗をかきやすいため、清拭の頻度を増やすことが推奨されます。また、皮膚の状態や本人の希望も考慮し、個別に頻度を調整することが重要です。

寝たきりの方に清拭を行う際の準備

寝たきりの方に清拭を行う際の準備

安全で効果的な清拭を行うためには、事前の準備が欠かせません。必要な道具の準備から環境整備、本人の状態確認まで、段階的に準備を進めることで、スムーズで快適な清拭が実現できます。ここでは清拭を行う前に必要な準備事項について詳しく確認していきます。

清拭に必要な道具

効率的で安全な清拭を行うために、あらかじめ必要な道具を準備しておきます。

  • 清拭用タオル(5〜10枚程度)
  • 洗面器またはボウル(2個)
  • 石鹸またはボディソープ
  • 保湿剤やローション
  • バスタオル(2〜3枚)
  • 使い捨て手袋
  • 防水シート
  • 清潔な寝具や衣類

タオルの材質はお肌に優しい綿素材を選び、適度な厚みがあるものが理想的です。また、清拭用と乾拭用のタオルは分けて使用し、衛生管理を徹底します。

清拭を行う前に確認すること

清拭を開始する前に、安全性と快適性を確保するための確認事項があります。

  • 本人の体調や気分の確認
  • 室温の調整(24〜26度程度)
  • プライバシーの確保
  • 皮膚の状態の観察
  • 医師からの指示事項の確認

体調不良や発熱がある場合は、清拭の方法・時間・範囲を調整する必要があります。また、皮膚に傷や湿疹がある部位は清拭後の軟膏処置などが必要となるため、事前の観察が欠かせません。

安全で快適に行うための環境づくり

清拭を行う環境の整備は、被介護者が安全かつ快適に清拭を行う上で重要です。

  • 室温:24〜26度で風が直接当たらない場所
  • 照明:皮膚の状態が確認できる適度な明るさ
  • プライバシー保護:カーテンやついたてで外部からの視線を遮る
  • 床面:滑らない材質、水はねに対する対策

適切な環境設定により、被介護者のストレスを軽減し、介護者も安全に作業を進めることができます。特に冬季は室温の管理に注意し、身体の冷えによる状態の悪化を防ぐことが重要です。

参照:『褥瘡の予防について』(一般社団法人 日本褥瘡学会)

清拭の基本手順

清拭の基本手順

清拭を効果的に行うためには、正しい手順と順序を守ることが重要です。ここでは清拭の基本的な流れと部位別の具体的な手順について詳しく記載します。
 

清拭の順番

清拭は衛生的な部位から不潔な部位へと順番を守って行うことが基本です。以下の順番での対応により感染リスクを軽減できます。

  • 顔(目、鼻、お口の周り)
  • 首・耳の後ろ
  • 上肢(腕・手指)
  • 胸部・腹部
  • 背部
  • 下肢(太もも・ふくらはぎ・足)
  • 陰部(清拭用タオルを新しく交換)

部位ごとにタオルを替えるか、同一タオルでも清潔な面を使用することで、細菌の拡散を防止します。特に陰部の清拭では、必ず新しいタオルを使用することが重要です。

部位別の清拭手順

各部位には適した清拭方法があり、皮膚の特性や清拭の目的に応じて清拭の方法を変えていくことが効果的です。
顔面の清拭は目頭から目尻に向かって優しく拭き取り、口元は食べかすや唾液を丁寧に除去してください。上肢の清拭は指の間や爪の周りも忘れずに清拭し、関節の可動域を意識しながら進めてください。胸部は心臓への負担を考慮し、優しく円を描くように清拭をしてください。腹部は腸の蠕動運動を促進する目的で時計回りに清拭をしてください。下肢は太ももから足先に向かって、静脈還流を促すように下から上へ向かう動きも取り入れます。

いずれの部分も、本人に負担にならないように進めてください。

清拭後の保湿ケア

清拭後の皮膚は水分が失われやすい状態にあるため、適切な保湿ケアが必要です。

  • タオルドライ後、すぐに保湿剤を塗布
  • 皮膚の状態に応じた保湿剤の選択
  • 圧迫部位への重点的な保湿
  • マッサージ効果も兼ねた塗布方法

保湿剤の塗布は皮膚のバリア機能を回復させ、外部刺激から皮膚を守る効果があります。特に関節部分や骨突起部分は乾燥しやすいため、重点的に保湿を行ってください。

清拭を行うときの注意点と工夫

清拭を行うときの注意点と工夫

清拭を安全かつ効果的に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。皮膚トラブルの予防から心理的な配慮まで、被介護者の状態と尊厳に配慮した工夫を取り入れることで、より質の高いケアを提供できます。

皮膚トラブルを防ぐためのポイント

寝たきりの方の皮膚は健常者に比べて脆弱であり、配慮が必要です。

  • 過度な摩擦を避ける
  • 皮膚の赤みや異常の早期発見
  • 湿潤部位の十分な乾燥
  • 清拭用品の清潔管理

皮膚観察は清拭の重要な目的の一つです。発赤、腫脹、傷、湿疹などの異常を発見した場合は、速やかに医療従事者(訪問看護・訪問診療時など)に報告し、適切なアドバイスと処置を受けてください。

参照:『褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)』(一般社団法人 日本褥瘡学会)

お湯の温度と拭き方の強さのポイント

お湯の温度と拭き方の強さは、被介護者の快適性と安全性に大きく影響します。

  • お湯の温度:40〜42度に設定して介護者の手で確認。
  • 拭き方の強さ:軽く押し当てる程度で皮膚を引っ張らず摩擦を避ける。
  • タオルの絞り方:水滴が落ちない程度。過度に湿ったタオルは体温を奪う。

温度感覚は個人差があるため、清拭前に本人に温度の確認を取ることが推奨されます。また、季節や室温に応じて温度調整を行い、常に快適な状態を維持します。

プライバシーや羞恥心に配慮する

清拭時のプライバシー保護は、被介護者の尊厳を守るために欠かせない要素です。

  • 必要な部位のみを露出する
  • バスタオルを使用した適切な遮蔽
  • 声かけによる心理的なサポート
  • 同性による介護の検討
  • 表情や反応への配慮

適切な声かけにより、被介護者の不安を軽減し、協力的な態度を促すことができます。「今から足を拭かせていただきます」といった声かけがコミュニケーションの円滑化や信頼関係構築には重要です。

香りや音楽、マッサージを取り入れる

清拭をより快適で治療的な時間にするために、感覚に働きかける工夫を取り入れることができます。

  • ラベンダーなどのリラックス効果のある香り
  • 静かで落ち着いた音楽
  • 清拭と同時に行う軽いマッサージ
  • 温かいタオルによる温熱効果

感覚刺激の活用は、単なる清潔保持を超えた治療的効果をもたらします。ただし、個人の好みや体調を考慮し、無理に取り入れる必要はありません。

家族の負担を減らす方法

清拭は被介護者側だけでなく、介護を行う側にも身体的・精神的な負担がかかります。以下の設備やアドバイスを取り入れることで、介護の質を保ちながら負担を大きく軽減することが可能です。

  • 福祉用具の活用(電動ベッド、移動用リフトなど)
  • 清拭用品の効率的な準備方法
  • 短時間で効果的な清拭技術の習得
  • 家族間での役割分担
  • 専門職からのアドバイス

効率的な清拭手順を身につけることで、時間短縮と負担軽減を同時に実現できます。また、定期的に専門職からアドバイスを受けることで、技術の向上と介護負担感の軽減につながります。

介護サービスを利用した清拭ケア

介護サービスを利用した清拭ケア

家族だけでの清拭が困難な場合や、より専門的なケアが必要な状況では、介護サービスの活用が有効です。訪問介護や看護師による専門的なサポートを受けることで、安全で質の高い清拭ケアを継続できます。

訪問介護でのサポート内容

訪問介護サービスでは、専門的な知識と技術を持った介護職員が清拭を実施します訪問介護での清拭や入浴サポートを受ける際に必要な道具・準備は以下のとおりです。

  • 全身清拭の実施清潔なタオル類と交換用衣類
  • 適切な温度の湯(清拭・足浴用)
  • 石鹸・洗浄料、保湿剤(ワセリン等)
  • 室温の調整とプライバシーの確保
  • 安全に介助できるスペースの確保

専門的な清拭技術により、安全で効率的なケアを受けることができます。また、客観的な皮膚観察により、家族では気付きにくい変化を早期に発見して医療スタッフへの連絡・早期対応が可能となります。

医療的ケアが必要な場合の対応

皮膚トラブルや医療処置が必要な状況、あるいは胃ろう・気管切開・尿道バルーン留置中などの状況では、医療従事者による対応が必要となります。

  • 褥瘡の処置:看護師・医師による創傷処置や軟膏処置などの治療方針の決定
  • 皮膚疾患:医師による診断、治療薬の処方
  • 医療デバイスを使用中:訪問看護師による清拭対応

医療的判断が必要な症状を認識し、適切なタイミングで専門職に相談することが重要です。早期対応により重症化や全身感染を予防することが可能です。

介護職や看護師に清拭をお願いするタイミング

症状の悪化などがあり、介護士・看護師への専門職に対して清拭を検討すべき状況は以下のとおりです。

  • 皮膚に異常所見がある場合
  • 家族の介護負担が過重になっている場合
  • 被介護者が清拭を拒否する場合
  • 感染リスクが高い状況
  • 医療機器の管理が必要な場合

上記の場合は専門的な知識に基づく皮膚病変の評価が感染管理の観点からも必要です。このため医療的処置の必要性が高まるため、介護士や看護師の介入が求められます。

まとめ

まとめ

寝たきりの方への適切な清拭は皮膚トラブルの予防、血液循環の促進、心理的な快適性など多くの効果を得ることができます。

清拭を行う際は、被介護者の尊厳とプライバシーを尊重し、個々の状態に応じた配慮が必要です。家族による清拭では、基本的な知識と技術を身につけるとともに、専門職との連携により安全で効果的なケアを提供することが求められます。また、介護負担の軽減と継続可能なケアの実現のために、訪問介護などの社会資源を適切に活用することも重要です。清拭を通じて、被介護者の健康と尊厳を守り、家族全体の生活の質の向上を目指しましょう。

この記事の監修医師