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地域包括支援センターとは?業務内容や相談事例、利用方法を解説

 公開日:2025/12/13
地域包括支援センターとは?業務内容や相談事例、利用方法を解説

高齢化が進むなか、地域で暮らす高齢の方を支える仕組みの重要性がますます高まっています。地域包括支援センターは、高齢の方が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、多職種が包括的な支援を行う拠点です。介護予防や権利擁護、総合相談といった幅広い業務を担い、保健・医療・福祉といった制度の枠を超えて支援を提供する役割も果たしています。本記事では、地域包括支援センターの概要から具体的な役割・業務内容、相談事例、利用方法までを解説します。

小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

地域包括支援センターの基礎知識

地域包括支援センターの基礎知識

まず、地域包括支援センターとはどのような機関なのかを確認しておきましょう。本章では、地域包括支援センターの果たす役割や創設された経緯、設置場所や数、そしてセンターで働く専門職について解説します。

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターは、高齢の方が住み慣れた地域で自立した生活を維持できるよう総合的にサポートする公的機関です。介護や福祉・医療・生活支援などさまざまな分野の相談窓口となり、ご本人や家族、地域住民からの相談を受け付けています。

地域包括支援センターは、相談内容に応じて必要なサービスや制度につなげる窓口としての役割を担っており、「どこに相談すればよいかわからない」という場合でも、たらい回しにされないよう関係機関につなぐ調整役を果たします。

対象となるのは地域に住む65歳以上の高齢の方とその家族、および高齢の方を支える地域の方々です。センターでは保健師・看護師、社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)といった専門職が協働し、保健・医療・福祉の分野を横断した包括的支援を提供しています。

地域包括支援センター創設の経緯

地域包括支援センターが誕生した背景には、高齢化に伴う介護ニーズの増大と介護予防重視への転換があります。そもそも地域包括支援センターの前身は、1989年に整備が始まった在宅介護支援センターです。当時は高齢の方や家族が身近な地域で相談や援助を受けられる体制づくりの一環として設置され、高齢の方の自立生活を地域で支えることを目的としていました。

その後、2005年の介護保険法改正に伴い地域包括ケアシステムの構築が提唱されるなかで、新たに地域包括支援センターの設置が定められます。この改正では介護予防に重きを置いた制度転換が図られ、高齢の方の自立支援と介護度の重度化防止が地域包括支援センターの主な目的として掲げられました。

つまり、高齢の方が要介護状態になっても可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、予防から相談支援まで一体的に担う拠点として創設されたのが地域包括支援センターなのです。

地域包括支援センターの設置場所と設置数

地域包括支援センターは市区町村が設置主体となり、各自治体内でいくつかの担当エリアに分けて配置されています。多くの場合、公立の中学校区ごとに担当エリアが設定されており、各エリアに1か所ずつ設けられます。

原則として地域の高齢の方(65歳以上)おおむね3,000~6,000人に対し1か所のセンターを配置することが目安とされ、人口規模によって市町村ごとに複数設置されます。なお、センターの運営自体は市町村から委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが担っている場合もあります。

全国的にみると、地域包括支援センターの数は年々増加しており、令和5年4月時点で全国に5,431か所設置されています。基本的に各市町村に少なくとも1か所は設置されており、大都市では区や地区単位で複数配置されています。

参照:
『地域包括ケアシステム』(全日本病院協会)
『介護保険制度の創設から現在までの動き~地域包括支援センターの役割と期待~』(厚生労働省)

地域包括支援センターで働く人

地域包括支援センターには高齢の方を支援する専門職が配置されています。中心となる職種は以下の3つです。

  • 主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
  • 社会福祉士
  • 保健師または地域ケアの経験がある看護師

主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、ケアマネジャーのなかでも、一定の実務経験と専門研修を修了した主任格の職員です。介護サービスの相談対応やケアプラン作成の支援を行い、要介護認定の申請支援、サービス利用の調整など介護支援全般をマネジメントします。

社会福祉士は福祉の専門職として、高齢の方やその家族の生活支援を担当します。生活上の困りごとや経済的な悩みの相談に応じ、必要に応じて在宅介護サービスや行政の支援制度、医療・福祉機関などへつなぐ役割を担います。

そして、保健師または地域ケアの経験がある看護師は、保健・医療の専門職として、高齢の方の健康管理や介護予防を支援します。健康状態のチェックや生活習慣・衛生指導を行うほか、介護予防教室や地域健康イベントの企画運営などを通じて、高齢の方の心身の健康維持をサポートします。

これら3職種がチームを組み、それぞれの専門性を活かしながら高齢の方を包括的に支援している点が特徴です。必要に応じて弁護士や行政書士といった専門家とも連携し、高齢の方の権利擁護や成年後見制度の活用支援なども行います。

地域包括支援センターの業務内容

地域包括支援センターの業務内容

地域包括支援センターが担う業務は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の6つに分類できます。それぞれの業務が密接に連携し合いながら、高齢の方の地域生活を支える仕組みを形成しています。

総合相談支援業務

地域包括支援センターの基本となる業務が総合相談支援です。センターは地域のご本人や家族、近隣住民などからのあらゆる相談を受け付ける一次相談窓口となっています。介護や医療、福祉に関する相談はもちろん、住宅の困りごとや金銭管理、独居生活や家庭内の悩みまで幅広く対応します。

相談内容に応じて適切なサービスや専門機関につなぐことが役割であり、「どこに相談すべきかわからず何度もたらい回しにされる」という事態を防ぐ調整役を果たします。センター職員は地域のさまざまな機関とのネットワークを構築し、必要に応じて連携を図りながら相談者を支援します。

介護予防ケアマネジメント業務

介護予防ケアマネジメント業務では、要介護状態になる前の段階から高齢の方を支援します。具体的には要支援認定を受けていないが生活機能の低下がみられる方、今後介護が必要になるおそれがある方に対して、介護予防の観点から支援計画(ケアプラン)を作成する業務です。

センターの保健師や主任ケアマネジャーが中心となり、高齢の方一人ひとりの心身の状態や生活状況を把握したうえで、筋力向上トレーニングや栄養改善、社会参加の場への参加など介護予防プログラムへの参加を促します。早期に介入し適切なサービスにつなぐことで、要介護認定を受けずに済むよう支援することが目的です。

介護予防支援業務

介護予防支援業務は、介護保険制度における要支援認定を受けた高齢の方を対象に、適切なサービス利用を支援する業務です。要支援1・2と認定された方は介護保険のなかで、介護予防サービス(予防給付)や市町村の総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)を利用できます。

地域包括支援センターでは、こうした要支援者について介護予防サービス利用のためのケアプランを作成し、そのプランに基づいてサービス提供事業所や関係機関との連絡調整を行います。また、サービス利用開始後も定期的に見直しを行い、状況の変化に応じてプランを調整します。

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務とは、地域全体で行われるケアマネジメントの質を高めるために、地域包括支援センターが中心となって担う重要な支援活動です。高齢の方が安心して暮らし続けるためには、ケアマネジャー、主治医などの多職種、そして介護サービス事業者や行政などの関係機関、ボランティアなどの連携が欠かせません。

センターでは地域ケア会議を開催し、困難事例の共有や支援体制の改善を進めます。また、経験の浅いケアマネジャーへの助言・相談や、虐待など支援が難しいケースへの対応支援も行います。さらに、医療・福祉・行政など関係機関とのネットワークを構築し、医療と介護、在宅と施設の連携を強化することで、切れ目のない支援体制を実現しています。

権利擁護業務

権利擁護業務では、高齢の方の権利と安全を守るための支援を行います。具体的には、下記のような活動です。

  • 高齢の方の虐待の防止
  • 早期発見と対応
  • 悪質商法や消費者被害の防止
  • 認知症などで判断能力が低下した方への成年後見制度の利用支援

これらの活動を通じて、高齢の方が安心して尊厳ある生活を送れるよう、法律面・権利面から専門的な支援を提供しているのです。

多機関連携(制度横断的な支援の展開)

多機関連携とは、複数の機関・制度にまたがる連携支援のことです。高齢の方の生活上の課題は介護だけでなく医療や福祉、住宅、地域活動など多岐にわたるため、一つの制度内だけでは解決できないケースも少なくありません。

そこで、地域包括支援センターでは、制度の垣根を超えた包括的な支援を展開できるよう地域の関係者と広く連携しています。また、介護者である家族の負担が限界に達して、介護疲れや介護うつに陥るケースでは、地域の家族会や介護者支援の仕組みと連携することが求められます。

センターはこうしたさまざまなニーズに対し、下記のような資源を組み合わせて、支援を行います。

  • 医療
  • 介護保険
  • 福祉
  • 行政サービス
  • 地域ボランティア活動

制度ごとの縦割りを超えて必要な支援につなげることで、高齢の方の自立と尊厳を守る包括的支援を実現しようという取り組みです。

地域包括支援センターの相談事例

地域包括支援センターの相談事例

地域包括支援センターには日々さまざまな相談が寄せられます。ここでは、どのような相談内容がありセンターがどのように対応しているか、代表的な事例をカテゴリごとに解説します。

介護に関する相談

介護についての相談は多い相談内容の一つです。例えば、「脳梗塞で倒れた母の介護をどうしたらよいかわからない」「自宅での介護が難しくなってきたが、何かサービスは利用できないか」といったケースです。これらの相談に対して、センターでは介護サービスの利用開始までの道筋を丁寧に案内し、必要に応じて手続きを代行するなど、介護にまつわる不安や悩みに包括的に対応します。

高齢者・家族の困りごとの相談

高齢の方やその家族の困りごとに関する相談も多く寄せられます。ご本人の生活上の悩みや、介護する家族の心理的・実務的負担の相談などが代表的です。例えば、高齢の親が遠方から引っ越してきたものの新しい地域になじめず引きこもりがちで困っている、などの相談があります。ご本人だけでなく、支える家族の困りごとも含めて相談に応じ、必要な支援策につなげていくのが地域包括支援センターの役割です。

認知症に関する相談

認知症に関する相談も寄せられます。「親の物忘れがひどく、金銭管理や火の始末に不安がある。認知症かもしれないが、まずどこに相談すればいいかわからない」という家族の相談などが考えられます。センターではまず専門職(保健師や社会福祉士など)がご本人の生活状況を確認するため自宅訪問し、現在の様子を評価します。そのうえで、必要と判断すれば医療機関の受診を促し、認知症の診断がつけば介護サービスや見守りサービスの利用につなげます。

また、認知症の方を介護する家族からは「徘徊や夜間の不眠にどう対処したら?」といった具体的な相談もあります。センターではケアマネジャーなどと連携し、徘徊する高齢の方の見守りネットワークへの登録や、福祉用具(見守りセンサーなど)の活用提案、家族へのレスパイトサービス紹介など総合的にサポートします。

介護保険制度に関する相談

介護保険制度に関する相談もセンターでは受け付けています。介護保険の仕組み自体がわからない、要介護認定の申請方法を知りたい、サービス利用時の自己負担はいくらになるのか、といった制度面の疑問は珍しくありません。

地域包括支援センターは市町村の介護保険窓口と密接に連携しており、介護保険申請の代行やサービス利用調整も担っています。介護保険制度は複雑ですが、地域包括支援センターを利用すれば制度の説明から申請手続き、サービス選択までワンストップで支援を受けることができます。

地域包括支援センターの利用方法

地域包括支援センターの利用方法

地域包括支援センターの利用方法は下記のとおりです。

項目 内容
相談の申し込み方法 ・お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに電話または窓口訪問で相談
・担当センター不明時は、市区町村の高齢福祉課、自治体のホームページの地域包括支援センター一覧で確認可
・来所が難しい場合は電話相談可
・必要に応じて職員が自宅訪問してくれる場合もある
相談にかかる費用 ・地域包括支援センターでの相談は無料
・介護予防教室や特定サービスの利用料が発生する場合は、事前説明がある
利用対象者 ・65歳以上の高齢の方
家族・近隣住民・地域で支援に関わる方

このように地域包括支援センターは、地域の高齢の方に関するあらゆる相談に応じ、必要な支援につなげてくれる身近で心強い存在です。困りごとがあるときは、一人で抱え込まずにまずセンターに連絡してみるとよいでしょう。

まとめ

まとめ

地域包括支援センターは、高齢の方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう支援するために設けられた総合相談窓口です。介護予防支援から介護サービス利用支援、権利擁護やネットワークづくりまで幅広い業務を担い、多職種チームによる包括的な支援を提供しています。

「どこに相談したらよいかわからない」という介護や高齢の方の悩みを抱えたとき、地域包括支援センターを利用すれば解決するかもしれません。高齢社会が進む今、地域包括支援センターの存在意義はますます大きくなっています。地域の高齢の方とその家族が安心して暮らし続けられるよう、ぜひ身近な地域包括支援センターを積極的に活用してみましょう。

この記事の監修医師