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在宅医療で介護保険は使える?適用範囲や医療保険との違い、利用できるサービスを解説

 公開日:2025/12/19
在宅医療で介護保険は使える?適用範囲や医療保険との違い、利用できるサービスを解説

在宅医療とは、病院ではなく自宅で医療や介護を受ける仕組みのことです。高齢化が進むなかで「できるだけ家で過ごしたい」という方が増え、医療と介護を組み合わせて支援する体制が広がっています。とはいえ、どの場面で介護保険が使えるのか、医療保険との違いは何かなど、制度の仕組みは少し複雑ですよね。この記事では、在宅医療で介護保険が使える範囲や手続きの流れを解説します。

小田村 悠希

監修社会福祉士
小田村 悠希(社会福祉士)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

在宅医療における介護保険と医療保険

在宅医療における介護保険と医療保険

ここでは、在宅医療を受ける際に介護保険と医療保険のどちらが適用されるか、その違いや利用条件を解説します。

在宅医療では介護保険と医療保険のどちらが適用されますか?

在宅医療においては、原則として医療保険が適用される診療行為(医師の診察、処置、検査、薬の処方など)と、介護保険が適用されるケア・支援的サービスが混在します。具体的には、医師が定期的に訪問して診療を行う訪問診療や、急な出張診療である往診は、保険診療の枠組みで医療保険が適用されます。

一方、介護保険では、日常生活の支援や看護・リハビリといった生活を維持するためのケアに該当するサービスが主に対象になります。例えば、訪問看護や訪問リハビリ、訪問介護などが該当します。

制度上、介護保険と医療保険の両方で給付対象となるサービス(訪問看護、訪問リハビリなど)がある場合、要介護・要支援認定を受けている方は、原則として介護保険が優先適用されます。

在宅医療で介護保険を利用する条件を教えてください

在宅医療の場面で介護保険を使うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 介護保険の被保険者であること
  • 前提として、介護保険の対象者である必要があります。65歳以上の方(第1号被保険者)はすべて対象となり、40歳から64歳の方(第2号被保険者)は特定疾病と呼ばれる加齢が原因の病気(例:がん末期、脳血管疾患、パーキンソン病など)がある場合に限り介護保険を利用できます。

  • 要介護・要支援認定を受けていること
  • 介護保険サービスを使うには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の申請後、市町村の調査や主治医の意見書をもとに判定され、要支援1・2や要介護1~5の区分、非該当(自立)がつけられます。認定を受けていない段階では、介護保険による在宅医療サービスは利用できません。

  • 主治医の指示・ケアマネジャーの関与があること
  • 介護保険を利用して訪問看護やリハビリを受ける際は、主治医の訪問看護指示書が必要です。また、サービス内容を決めるために、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけられることも条件となります。

  • 医療保険との重複がないこと
  • 医療保険と介護保険のどちらにも該当するサービスがある場合、原則として介護保険が優先されます。例えば、訪問看護は両方の制度に含まれますが、要介護認定を受けている方は介護保険での利用が基本です。

介護保険で利用できる在宅医療サービス

在宅医療の現場では、医療的ケアと生活支援が混在しています。介護保険でカバーできるサービスにはどのようなものがあるのか、代表例を交えて解説します。

介護保険で利用できる在宅医療サービスにはどのようなものがありますか?

介護保険で使える在宅医療サービスのなかには、医療保険と重なる領域を含むものもあります。例えば、訪問介護や訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、特定福祉用具販売などが該当します。

特に、在宅医療との関係が深いのは、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師・歯科医師などの指導も含む)などです。また、訪問介護(食事、排泄、入浴などの日常生活支援)も介護保険の枠組みで利用できます。

ただし、すべての訪問医療行為が介護保険でカバーされるわけではなく、医師の直接診療は医療保険扱いとなります。

訪問看護は介護保険の対象になりますか?

はい、訪問看護は介護保険の対象になります。ただし、条件や例外があります。

訪問看護とは、看護師や保健師が自宅を訪れて、療養中の健康チェックや医療処置、医療機器の管理、家族への指導などを行うサービスです。原則として、要支援・要介護認定を受けた方は介護保険で訪問看護を利用します。介護保険給付は医療保険給付に優先されます。

ただし、例外的に医療保険の枠で訪問看護を受けられるケースもあります。例えば、末期がんや難病、または病状の急激な悪化時など、一定の条件を満たす場合には医療保険での訪問看護扱いとなることがあります。

訪問リハビリや訪問介護も介護保険の適用となりますか?

はい、訪問リハビリと訪問介護も、要件を満たせば介護保険が適用されます。

訪問リハビリテーションは、自宅で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが訪問して、身体機能や生活動作の維持、改善を支援するサービスです。このサービスは通常、要介護認定を受けている方が介護保険で利用できます。

ただし、要介護認定を受けていない方や、急性増悪期など医療的な必要性が特に高い場合は、医療保険の訪問リハビリを利用することになります。

訪問介護は、日常生活上の支援(排泄、入浴、食事、更衣、移動、掃除・洗濯などの家事援助)を訪問介護員が行うサービスです。これは医療行為を含まない部分であり、介護保険の枠組みで広く使われています。このサービスは、病気の処置などではなく、生活維持が目的の支援が中心になります。

在宅医療での介護保険と医療保険の併用

在宅医療での介護保険と医療保険の併用

ここでは、在宅医療の場面で介護保険と医療保険を同時に使えるかどうか、また自己負担額がどのくらいになるかを解説します。

在宅医療で介護保険と医療保険を併用することはできますか?

在宅医療では、介護保険と医療保険を併用できる場合もありますが、基本的にはサービスの内容によってどちらか一方が適用される仕組みです。

例えば、医師による訪問診療や薬の処方など治療行為にあたる部分は医療保険が使われます。一方、日常生活の支援や看護、リハビリなど生活を支えるケアにあたる部分は、介護保険が使われます。

このように、同じ在宅療養のなかでも行為の性質によって保険の種類が切り替わります。

介護保険を使った在宅医療の自己負担額はどのくらいですか?

介護保険を使う場合、自己負担額は1割もしくは2割、3割のいずれかになります。一般的には1割負担が多く、利用者の所得や年齢などによって変わります。

在宅医療で介護保険を利用する手続き

在宅医療を受ける際に介護保険を実際に使うまでの流れと、認定までの所要時間について解説します。

在宅医療で介護保険を利用するにはどのような手続きが必要ですか?

介護保険を使って在宅医療サービスを受けるには、まず、要介護(または要支援)認定を受ける必要があります。申請は、お住まいの市区町村の窓口で行い、職員が自宅を訪れて生活の様子を確認します。合わせて、主治医が病状などを記した意見書を提出します。なお、地域包括支援センターにて手続きを代行している場合もあるので、市区町村の窓口での申請が難しい場合は問い合わせてみてください。

その後、介護認定審査会による審査を経て、要介護度が決まります。認定結果が届いたら、ケアマネジャーが本人や家族と話し合いながら、どのようなサービスをどのくらい使うかをまとめたケアプランを作成します。プランができたら、訪問看護や訪問介護などのサービス事業所と契約を交わし、実際の支援が始まります。

介護保険が利用できるまでどのぐらいかかりますか?

介護保険の認定は、申請から結果が出るまでおおよそ30日程度が目安です。市区町村が調査や審査を行うため、時期によっては1ヶ月半程かかることもあります。

緊急で介護が必要な場合は、認定が下りる前でも、暫定ケアプランを使って一時的にサービスを利用できる場合があります。急な病状の変化があるときは、地域包括支援センターなどに早めに相談しておくとよいでしょう。

編集部まとめ

在宅医療では、医師による治療は医療保険、日常生活を支えるケアは介護保険と、目的によって使い分けられます。要介護認定を受ければ、訪問看護や訪問介護など多様なサービスが利用可能です。申請から利用開始まではおおよそ1ヶ月程かかるため、早めの準備が大切です。自宅での療養を希望する場合は、主治医やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談しながら、自分や家族に合った支援を整えていきましょう。

この記事の監修社会福祉士