在宅介護の始め方|介護保険の手続きや流れ、注意点を解説

「親の介護が必要になったけれど、何から手をつければいいのか分からない」と、突然の事態に不安を感じる家族は少なくありません。住み慣れた自宅で介護を続けるには、介護保険制度を正しく理解し、公的なサポートを賢く利用することが不可欠です。
本記事では在宅介護の主な流れについて以下の点を中心に紹介します。
- 在宅介護とは
- 在宅介護の主な流れ
- 在宅介護を続けるうえでの注意点
ぜひ最後までお読みください。

監修作業療法士:
稲木 康平(作業療法士)
経歴:回復期病棟で約9年ほど、患者様やご家族様のニーズに合わせたリハビリテーションを実施する。また、数多くの患者様に対して、退院後に快適な生活を過ごされるための自宅の環境調整や、介護サービスの提案、家族指導も行ってきた。
資格:作業療法士免許、医療経営士3級
目次 -INDEX-
在宅介護を始める前に確認しておくこと

在宅介護とは何ですか?
高齢や病気、けがなどで介護が必要になっても、「できる限り自宅で暮らし続けたい」と考える被介護者は少なくありません。長年過ごしてきた家や地域での生活は、精神的な安心感につながり、QOL(生活の質)の維持という点でも好ましいといえるでしょう。
一方で、在宅介護は家族が中心となって支える傾向があり、介護を担う側の負担が大きくなりがちです。介護費用を抑えやすく、必要な介護サービスを選んで利用できる自由度の高さはメリットですが、休みが取りにくく、心身の疲労やストレスが蓄積する恐れもあります。
在宅介護で受けられる主な介護保険サービスを教えてください
①訪問型サービス
専門職が自宅を訪問し、身体介助や生活援助、医療的ケア、入浴支援などを行います。訪問介護や訪問看護、居宅療養管理指導などがあります。
②通所型サービス
日中に施設へ通い、介護や機能訓練を受けるサービスです。デイサービスや通所リハビリなどがあり、生活リズムの維持につながります。
③短期入所型サービス(ショートステイ)
一時的に施設へ宿泊し、介護や医療的ケアを受けられます。家族の負担軽減に役立ちます。
④小規模多機能型サービス
訪問や通い、宿泊などを組み合わせて利用でき、医療ケアに対応するタイプもあります。
⑤福祉用具貸与や住宅改修
介護保険では、車いすや手すりなどの福祉用具や、手すりの取り付けや段差解消といった住宅改修が提供され、これらを利用することで自宅での生活の質が向上します。
在宅介護を検討すべきサインは何ですか?
①入院中の場合
退院後に介助が必要と予想されるときは、退院の約1〜2ヶ月前が検討のタイミングです。遅すぎると、在宅生活に必要な支援が間に合わない可能性があります。
②在宅生活で変化が出てきた場合
身の回りのことが一人でできなくなった、家族の介助を頼る場面が増えた、夜間も見守りや介助が必要になったときは注意が必要です。
③認知症状が見られる場合
物忘れが増える、トイレの失敗が増える、被害妄想や気分の落ち込みが見られる場合は、家族の負担が急激に大きくなりやすい傾向があります。
家族で事前に決めておくべきことは何ですか?
疎遠になっている場合でも、食事や体調を気遣う会話など、ささいなやり取りを重ねることで、介護の話題にも向き合いやすくなるでしょう。
話し合いでは、被介護者の健康状態や生活リズム、住環境についてお互いに理解しておきましょう。これらを把握していないと、いざ介護が必要になった際に具体的な判断ができず、家族間で役割や負担を巡る行き違いが生じやすくなります。
また、経済状況についても細かく詮索するのではなく、就業状況や安定した収入があるかどうかなどの範囲で共有しておくのがおすすめです。
在宅介護を始めるまでの流れ

在宅介護を始める前に準備しておくべきことはありますか?
まず確認しておきたいのが介護保険です。介護保険は自宅で介護を行う際にも利用でき、介護ベッドや車いすの貸与、手すりの設置など、住まいを使いやすく整えるための費用負担を軽減できます。
次に、被介護者が安全に生活できるよう住環境を整えましょう。段差の解消や動線の確保、浴室やトイレの使いやすさを見直すことで、転倒などの事故を防ぎやすくなります。介護ベッドや歩行器などの介護用品も、状態に合ったものを検討します。
さらに、家族間で役割分担や対応方針を話し合い、負担の偏りを防ぐことで、落ち着いて介護に臨める体制を整えましょう。
在宅介護を始めるまでの基本的な流れを教えてください
まずは被介護者が介護保険サービスを利用するために、要介護認定の申請を行います。申請後に調査や審査を経て、要介護1~5または要支援1・2などの認定結果が通知されます。
次に、ケアマネジャーを決めることが必要です。要介護と認定された場合は居宅介護支援のケアマネジャーが、要支援の場合は原則として地域包括支援センターの担当者が窓口です。
ケアマネジャーは、被介護者や家族の状況を確認しながら、居宅介護サービス計画書(ケアプラン)を作成します。
その後、ケアプランの内容に基づいて、訪問介護や通所介護などの在宅介護サービスの利用が開始されます。サービス開始後も、被介護者の心身の状態や生活状況に応じて、必要に応じた見直しが行われます。
在宅介護を続けるうえでの注意点

在宅介護で家族の負担が大きくなりやすいのはどのような点ですか?
なかでも負担となりやすいのが、排泄や入浴、食事、移乗といった日常的な介護行為です。これらは毎日繰り返し行う必要があり、「いつまで続くのか」「ほかの時間が持てない」などの不安やストレスが蓄積しやすくなります。苦手な介護行為を無理に続けることで、精神的な疲労や事故のリスクが高まる可能性もあります。
また、金銭面の負担も見過ごせません。介護には住宅改修や介護用品の購入といった一時的な出費に加え、月々の費用が継続的に発生します。こうした支出が家計を圧迫し、「誰がどこまで負担するのか」を巡って家族間のトラブルにつながるケースも少なくありません。
介護を一人で抱え込まないための工夫を教えてください
①周囲に頼る意識を持つ
介護は一人で完結させるものではありません。家族で役割分担をしたり、遠方の家族には金銭面など別の形で協力を求めたりすることで、負担の集中を防ぐことにつながります。
②私生活や時間を守る
短い時間でもリラックスできる習慣を持ち、ストレスの蓄積を防ぐことも大切です。仕事を続けることも、介護から距離を置ける大切な時間となり、精神的な安定につながります。
③外部サービスを上手に使う
デイサービスやショートステイなどのレスパイトケアは、介護者が休息を取るために必要な支援です。ケアマネジャーや専門職に相談しながら、無理のない体制を整えましょう。
介護は長期に及ぶことも少なくありません。周囲の力を借りながら続けることが、被介護者と介護者の双方にとって大切です。
在宅介護が難しくなったときの相談先と選択肢を教えてください
主な相談先
・市区町村の介護保険担当窓口
・地域包括支援センター
・居宅介護支援事業所
また、在宅介護以外の対応も検討しましょう。
①状況を共有する
不眠や体調不良を感じたら、ケアマネジャーや訪問スタッフに相談し、ケアプランの見直しを行います。
②介護サービスを活用する
デイサービスやショートステイなどのレスパイトケアで、介護者の休息時間を確保します。
③施設入居を検討する
在宅介護が難しい場合は、施設入居も視野に入れ、早めに情報収集や見学を進めましょう。
被介護者が安心して暮らせる環境を考えることは、介護者自身を守ることにもつながります。
編集部まとめ

ここまで在宅介護の主な流れについてお伝えしてきました。在宅介護の主な流れの要点をまとめると以下のとおりです。
- 在宅介護とは、老人ホームなどに入居せず、住み慣れた自宅で介護サービスを利用しながら生活を続けることで、介護保険サービスや外部支援を活用し、無理のない体制づくりが重要
- 在宅介護の主な流れは、要介護認定の認定後、ケアマネジャーと相談しながらケアプランを作成し、その内容に沿って訪問介護や通所介護などのサービスを利用していく
- 在宅介護は家族に大きな負担をかけるため役割分担や外部サービスを活用、限界を感じたら介護保険担当窓口や施設入居を検討する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献

