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要介護者が不眠になる原因とリスクは?対処法や負担を軽減するサービスも解説

 公開日:2026/04/24
要介護者が不眠になる原因とリスクは?対処法や負担を軽減するサービスも解説

要介護者の夜間の不眠は、ご本人の健康状態を悪化させるだけでなく、支えるご家族にとっても大変切実な問題です。夜中に何度も起こされて十分な睡眠がとれない、このままでは共倒れになってしまう、と限界を感じている方も少なくないでしょう。

高齢の方が不眠となる理由は、加齢による生理的な変化だけに留まりません。病気や薬剤、環境といった要介護者特有の複雑な原因が絡み合っている場合もあります。

本記事では、要介護者が不眠になる原因とリスク、家庭でできる対処法について整理しました。また、夜間の介護負担を軽減するための、公的サービスについても紹介します。

記事を読み終える頃には、不眠の正体を理解し、介護者自身の生活を守るための具体的な一歩が見えてくるはずです。

高山 哲朗

監修医師
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)

プロフィールをもっと見る
【経歴】
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長

要介護者が不眠になる原因とリスク

介護ベッドに横たわるシニア女性

不眠とはどのような状態ですか?

不眠とは単に睡眠時間が短い、夜中に目覚めるといった夜間の症状だけを指すものではありません。十分な睡眠がとれなかったり、睡眠の質が低下したりすると、日中の心身の機能に支障をきたします。具体的な症状として、身体のだるさや意欲の低下、集中力の欠如などです。こうした日中の機能低下を伴う状態を不眠と呼びます。

高齢の方に多い不眠症のタイプを教えてください。

不眠の症状は、以下の3つのタイプに大きく分類されます。
  • 入眠困難
  • 中途覚醒
  • 早朝覚醒
入眠困難は床についてもなかなか寝付けない状態、中途覚醒は睡眠中に何度も目が覚める状態のことです。早朝覚醒は希望する起床時間より2時間以上早く目覚める状態を指します。加齢に伴い、メラトニンと呼ばれる睡眠を促すホルモンの分泌が減少したり、深い睡眠が減ったりする生理的な変化が起こります。そのため高齢の方では特に、中途覚醒や早朝覚醒の割合が高くなるのが特徴です。

要介護者が不眠になる原因を教えてください。

要介護者の不眠は、加齢による生理的な変化に加えて、複数の要因が影響しあって引き起こされます。主な原因は以下の4つに分類されます。
  • 身体的要因
  • 精神的要因
  • 環境的要因
  • 薬剤的要因
身体的要因として関節痛や夜間頻尿など、精神的要因として病気への不安や認知症に伴う不穏などが挙げられます。また、環境要因には騒音や施設入所による環境の変化など、薬剤的要因にはステロイド薬や利尿薬の副作用などがあります。これらの要因は単独ではなく、複数が影響し合うことが少なくありません。例えば、身体的な苦痛が精神的な不安を増大させ、さらなる不眠を招くという悪循環も起こりえます。日々の生活を詳しく観察し、どの要因が強く影響しているかを見極めることが、適切なケアや治療につながります。

不眠が続く場合に生じるリスクを教えてください。

不眠が長期化すると、要介護者本人だけでなく、介護する家族にも大きなリスクをもたらしかねません。睡眠不足は心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めるといわれています。また、認知症の発症や悪化に関連することも示唆されています。さらに、夜間のふらつきによる転倒や骨折は、要介護度を一気に進行させる大きな要因です。一方、介護する家族にとっても、慢性的な睡眠不足は切実な問題です。夜間の見守りが長引くと、身体的な疲労だけでなく、介護うつなどの精神的な不調に直結します。心のゆとりを失うことで、不適切なケアや介護離職を引き起こし、家族全体の生活が成り立たなくなるおそれがあります。

要介護者の不眠への対処法

公園・旅行先を話しながら歩く高齢者夫婦

要介護者の不眠への対処法を教えてください。

不眠への対処として、まずは薬に頼らず生活習慣を改善することが推奨されています。ここでは、家庭で取り組める主な対策を以下に挙げます。
  • 日中の適度な運動や日光浴
  • 規則正しい食事と排泄の習慣
  • 寝室環境の調整
  • 就寝前の刺激物の制限
具体的には、散歩やデイサービスでの活動への参加、生活リズムの維持などがあります。適切な室温や照明の明るさを工夫したり、カフェインやアルコールの摂取を控えたりすることも有効です。日中に太陽の光を浴びることで、夜間のメラトニン分泌が促進され、自然な眠りに入りやすくなります。また、介護者がよかれと思って勧める早寝が、かえって中途覚醒や早朝覚醒を招くこともあります。ご本人が眠くなってから布団に入る、遅寝早起きの意識を持つことも大切です。

要介護者の不眠に対して睡眠薬を使用する場合の注意点を教えてください。

生活習慣の改善だけでは不眠が解消されない場合、医師の診断のもとで睡眠薬の服用が検討されます。ただし、高齢の方が睡眠薬を服用する際には、特有の注意点があります。
  • 転倒や骨折のリスク
  • せん妄の発生
  • 持ち越し効果
  • 多剤併用による相互作用
それぞれの具体的な注意点として、薬の影響によるふらつきが招く転倒や骨折のリスク、頭がぼんやりして混乱するせん妄の発生が挙げられます。翌朝まで眠気やだるさが残る持ち越し効果や、持病の薬との飲み合わせで起こる相互作用にも気を付けましょう。高齢の方は、薬を分解して身体から出す力が弱くなっています。そのため少量でも、薬の効果や副作用が出やすいのが特徴です。特に、夜中に起きた際のふらつきによる転倒や骨折には注意が必要です。骨折は要介護度を一気に進行させる原因となりうるため、睡眠薬の服用後は周囲が丁寧に見守りましょう。

不眠の症状がひどい場合は何科を受診すればよいですか?

不眠の症状が続いて生活に支障が出ている場合は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。ご本人の持病や普段の服薬状況を把握している医師に相談することが、より適切な治療の第一歩となります。一般的な診察だけでは改善が難しい場合には、診断や治療方針についてより詳しい医師に意見を仰ぐことがすすめられています。まずは身近な医師に相談し、必要に応じて精神科や心療内科などの医療機関を紹介してもらうのがスムーズです。受診の際は、不眠の状況をメモして持参するとより的確な診断につながります。

不眠の要介護者の介護負担を軽減するサービス

散歩する介護士・理学療法士と高齢者女性

夜間の介護負担を軽減するサービスはありますか?

夜間の介護による睡眠不足は、介護者の心身を大きく消耗させます。そのため、公的な介護保険サービスを利用して負担を軽減することが重要です。具体的には、短期入所生活介護(ショートステイ)や夜間専用の訪問介護、複合的な居宅介護などから選択します。介護者が倒れてしまう前にプロを頼ることは、生活を安定して続けるための有効な手段です。

要介護者の不眠にはどのような介護サービスが受けられますか?

夜間に特化したサービスなどが提供されています。代表的な例が、定期巡回を行う夜間対応型訪問介護や、休息を目的としたショートステイなどです。夜間対応型訪問介護では、ヘルパーが巡回してケアを行う定期巡回のほか、緊急時に呼び出せる随時対応も備わっています。また小規模多機能型居宅介護であれば、通いや泊まり、訪問を一つの事業所で完結できるのが利点です。馴染みのスタッフが対応するため、環境変化に敏感な方の不眠対策にも適しています。

夜間の介護サービスの費用はどのくらいですか?

介護保険が適用されるため、自己負担額は一定の範囲内に収まる仕組みです。所得によりますが、費用の1割から3割の支払いで利用可能です。例えば、夜間対応型訪問介護を1割負担で利用する事例を考えてみましょう。この場合、1ヶ月の基本料金は数千円程度からの設定です。家族の睡眠と安心感の対価としては、検討しやすい金額といえます。具体的な費用については、早めにケアマネジャーなどに相談することをおすすめします。

編集部まとめ

敬老の日・花束を持つ高齢者女性と家族

要介護者の不眠は、ご本人の健康だけでなく、支えるご家族の心身をも削る切実な問題です。不眠の原因は身体の痛みや薬の影響など、一つではありません。まずは生活環境の見直しなど、薬に頼らない対策から始めましょう。

一方で、睡眠薬を使用する際は副作用のリスクも伴います。自己判断はせず、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。なにより大切なのは、介護をしている方が一人で抱え込みすぎないことです。

夜間対応の負担が限界に達する前に、公的サービスを積極的に頼りましょう。休むことは、介護を長く続けるために必要な、前向きな選択です。介護者自身の睡眠や健康を維持することは、穏やかな生活を送るうえで重要な役割を果たします。

この記事の監修医師