10年以上の長期介護に役立つ制度やサービス、向き合い方をわかりやすく解説
公開日:2025/10/28

介護が10年以上続くと、身体的・精神的な負担に加えて経済的な心配も大きくなります。長期介護を支えるためには、介護保険制度やさまざまなサービスを知り、正しく活用することが大切です。
本記事では10年以上の長期介護に役立つ制度やサービスについて以下の点を中心にご紹介します。
- 介護が長期化する原因
- 長期の介護は、精神面にどのような影響を及ぼすのか
- 介護がつらいと感じたときの相談先とは
10年以上の長期介護に役立つ制度やサービスについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修
介護の期間と費用
介護が10年以上続くことはありますか?
介護の期間はケースによって大きく異なりますが、10年以上に及ぶことも少なくありません。厚生労働省の統計をもとに、平均寿命と健康寿命の差を目安として考えると、男性でおよそ9年前後、女性では13年前後が介護を必要とする期間と推計されています。さらに70歳時点の平均余命と健康寿命の差を基準にすると、男性で約14年、女性で約16年という結果になります。
介護が長期化する原因にはどのようなものがありますか?
介護が長引く背景には、社会構造や健康状態の変化など、複数の要因が関係しています。代表的な要因の一つは“平均寿命と健康寿命の差”です。平均寿命が延びる一方で、健康に生活できる年数には限りがあり、この差が数年から十数年に及ぶことで、介護を必要とする期間が長くなります。
また、近年は高齢者の認知症が増加していることも大きな要因です。厚生労働省の調査でも、要介護となる主な原因のなかで認知症が多いとされており、今後も高齢化の進展とともに介護期間の長期化が見込まれています。
さらに、核家族化の進行により、子どもや孫が近くに住んでいない世帯が増えている点も挙げられます。家族による支援が得にくい状況では、高齢の配偶者同士で介護を担う“老老介護”が増加し、長期間の介護生活へつながりやすくなっています。
介護費用の目安はどのくらいですか?
介護にかかる費用は、介護期間や利用するサービスの内容によって変わります。公益財団法人生命保険文化センターの調査では、介護が始まってからの平均期間は4年7ヶ月とされており、この間に必要となる介護費用の総額はおよそ540万円前後と試算されています。内訳としては、一時的な支出が平均47万円、毎月の費用が約9万円というデータがあります。
長期介護で生じやすい心身の負担
介護を10年以上続けると、介護者にどのような身体的負担がかかりますか?
介護が長期にわたると、夜間の見守りや、移動・排泄の介助、体位を変える動作などは、腰や肩、腕に強い負荷をかけるため、慢性的な腰痛や肩こりを引き起こしやすくなります。また、休養が取りにくい状況が続けば疲労が抜けにくくなり、睡眠不足や免疫力の低下によって体調を崩すリスクも高まります。
10年以上という長い期間にわたり介護を担うと、単なる一時的な疲れではなく、体力そのものが削られていくのが特徴です。こうした状態を放置すると、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、介護を続けること自体が難しくなることもあります。
長期の介護は、精神面にどのような影響を及ぼしますか?
介護が長く続くと、日々の介助による疲れや睡眠不足に加え、外出の機会が減ることで社会とのつながりが薄れ、孤独感を抱きやすくなります。
また、精神的な負担が強まると、家族関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。ストレスから要介護者との関係がぎくしゃくしたり、兄弟姉妹との間で介護の分担や費用を巡る対立が起こることもあります。
介護うつはどのようなサインで気付けますか?
家族などの身近な人の介護を続ける中で、心身の負担が蓄積し、うつ病のような症状が現れる状態を介護うつと呼びます。
介護は体力を使うだけでなく、孤独感や将来への不安、責任感などの精神的ストレスも大きいため、心の健康を崩してしまうことも少なくありません。
介護うつは、強い責任感や完璧さを求める姿勢、あるいは相談できる相手がいない孤立した状況などによって発症しやすいとされています。特に「私がやらなければ」と思い悩んでしまう方や、経済的な不安を強く感じている方は注意が必要です。
症状としては、慢性的な疲労感や身体のだるさが続き、食欲や睡眠のリズムが乱れることがあります。また、気分の落ち込みや意欲の低下、何も楽しめない感覚が強まるのも特徴です。誰かと会うことが億劫になったり、外出を避けたりするのもサインのひとつでしょう。さらに、感情の起伏が激しくなり、些細なことで怒ったり、逆に無気力になったりすることもあります。
介護のつらさを放置すると、どのような問題が起こりますか?
介護のつらさを放置すると、介護者がうつ病を発症して心身ともに限界を迎え、結果的に介護を続けられなくなる“共倒れ”を引き起こす場合があります。
また、強いストレスを発散できないまま介護を続けると、暴言や冷たい態度、介助の放棄など、虐待的な行為につながることがあります。本人が望んでいなくても、精神的な余裕を失った結果として起きてしまう場合があります。
10年以上の長期介護に役立つ制度やサービス、工夫とは
介護がつらいと感じたときの相談先を教えてください
介護がつらいと感じたときは以下の相談先へ相談するのがいいでしょう。
1.市区町村の窓口
要介護認定の手続きに加え、介護に関する悩みや疑問も相談できます。自治体によっては電話相談も行っているため、直接訪問が難しい場合にも活用できます。
2.地域包括支援センター
高齢の方や家族を支える総合的な拠点です。介護・医療・福祉などの専門職が在籍しており、生活全般の悩みを幅広く相談できます。
3.ケアマネジャー
介護サービスの利用計画(ケアプラン)の作成や、事業者との調整を行う方のことです。担当者がいない場合でも、居宅介護支援事業所を通じて相談できます。
4.医療機関・医療ソーシャルワーカー(MSW)
病院などの相談窓口では、医療と福祉の観点からサポートを受けられます。制度や地域資源の紹介など、専門的なアドバイスを受けることが可能とされています。
長期介護で利用できる介護サービスや制度を活用するコツはありますか?
長期の介護では、利用できる制度やサービスを上手に組み合わせることが負担軽減につながります。例えば、認知症の方を支援するサービスでは、通所介護(デイサービス)や訪問介護などを利用することで、家族が休息を取れる時間を確保できます。
また、介護保険外でも使える自治体独自の支援や助成制度があるため、地域包括支援センターに相談し、情報を整理しておくことが大切です。さらに、費用面の負担を軽減するためには、介護保険の自己負担割合や高額介護サービス費制度について理解しておくとよいでしょう。
10年以上の長期介護で利用できる介護保険サービスはありますか?
介護保険で利用できるサービスは、大きく“居宅サービス”と“施設サービス”、“地域密着型サービス”に分かれています。居宅サービスには訪問介護や訪問看護、通所リハビリなどがあり、自宅での生活を支援してくれます。
長期介護が見込まれる場合には、ショートステイや特別養護老人ホームといった施設系サービスを活用することも検討されます。さらに、グループホームなどの地域密着型サービスは、認知症の方の長期的な生活支援におすすめです。これらは要介護度に応じて選択でき、10年以上の介護でも継続的に活用できる体制が整えられています。
地域包括支援センターはどのようなサポートをしてくれますか?
地域包括支援センターは、高齢の方や家族のための総合相談窓口です。介護や医療、保健、福祉など幅広い分野に対応し、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう支援しています。
介護サービスや予防サービスの利用相談、生活支援や権利擁護の制度案内、さらには介護保険の申請窓口としての役割も担っています。市町村が設置主体となり、専門知識を持つ職員が常駐しているため、介護や生活に関する悩みを幅広く相談できるのが特徴です。
経済的な支援制度について教えてください
介護には金銭的な負担も伴うため、公的な支援制度を活用することが重要です。
以下では経済的に役立つ支援制度について解説します。
・介護休業給付金
内閣府男女共同参画局の情報によると、雇用保険に加入している方が介護休業を取った場合、一定の条件を満たせば給与の67%が最長93日間支給されます。
・家族介護慰労金
要介護度の高い家族を在宅で介護している同居家族に、自治体から慰労金が支給される制度です。金額や条件は自治体ごとに異なります。
・住宅改修費補助
厚生労働省の情報によると、手すりの設置や段差解消などの介護リフォームに、上限20万円まで補助が受けられます。自己負担は1~3割で、分割申請も可能です。
編集部まとめ
ここまで10年以上の長期介護に役立つ制度やサービスについてお伝えしてきました。10年以上の長期介護に役立つ制度やサービスの要点をまとめると以下のとおりです。
- 介護が長期化する原因には、平均寿命と健康寿命の差や認知症の高齢の方が増加していること、そして、核家族化の進行がある
- 長期の介護は、日々の介助による疲れや睡眠不足に加え、外出の機会が減ることで社会とのつながりが薄れ、孤独感を感じやすくなる
- 介護がつらいと感じたときの相談先には、市区町村の窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関・医療ソーシャルワーカー(MSW)がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。




