在宅介護で食事を食べない場合はどうすればいい?対処法と注意点を解説します
公開日:2025/10/28

在宅介護では、「食事をなかなか食べてくれない」という悩みをお持ちの方も少なくありません。食事は、体力や健康維持に直結するため、早めの対応が大切です。
本記事では在宅介護で食事を食べないことについて以下の点を中心にご紹介します。
- 在宅介護で食事を食べてくれない原因
- 在宅介護で食事を食べない方への対処法
- 在宅介護で食事を食べられないときの注意点
在宅介護で食事を食べないことについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
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目次 -INDEX-
高齢の方に必要な栄養素と摂取量
高齢の方に必要な栄養素を教えてください
高齢の方の健康維持には、以下の栄養素が必要です。
1.炭水化物
身体を動かすために必要なエネルギーとなります。主に、ご飯やお粥から摂取できます。
2.たんぱく質
筋肉量の維持や免疫力の向上に不可欠です。主に、肉や魚、卵、大豆製品などから摂取できます。
3.脂質
細胞膜を守る膜となる栄養素です。摂取量に注意し、肥満の原因にならないよう摂取することが大切です。
4.ビタミン
ビタミンは、ビタミンAやC、D、E、K、B1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどがあります。
それぞれで働きは異なりますが、例えば、ビタミンCは、免疫機能を強化し、鉄分の吸収を助けます。柑橘類や野菜に含まれています。ビタミンDの場合は、血液中のカルシウム濃度を一定に保ちながら、丈夫な骨や歯を維持します。いわしやさけなどの魚類や、卵、きのこ類に含まれているほか、日光浴でビタミンDが合成されます。ビタミンB群の場合は、エネルギー代謝を助け、神経系の健康をサポートします。豚肉、魚、卵、緑黄色野菜に含まれています。
5.ミネラル
ビタミンと同様に、ほかの栄養素の機能を補います。ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンなどがあります。ミネラルはきのこや海藻類に豊富に含まれています。また、カルシウムの場合は乳製品や小魚に豊富に含まれており、骨密度を保ち、骨折のリスクを減少させます。
6.食物繊維
便通を改善し、腸内環境を整えます。野菜、果物、全粒穀物に豊富に含まれています。
高齢の方の健康維持のためには、これらの栄養素をバランスよく摂取することが大切です。
高齢の方には、1日にどのくらいの摂取カロリーが推奨されていますか?
高齢の方の1日に必要な摂取カロリーは、性別、年齢、身体活動レベル、健康状態などによって異なります。目安として、65歳以上の高齢の方の場合、以下のような摂取カロリーが推奨されています。
・男性(65〜74歳):1,800〜2,000 kcal
・男性(75歳以上):1,600〜1,800 kcal
・女性(65〜74歳):1,600〜1,800 kcal
・女性(75歳以上):1,400〜1,600 kcal
これらの目安は、日常生活で軽い活動を行っている場合の参考値です。身体活動が少ない場合や寝たきりの状態では、必要なカロリーはさらに低くなります。
高齢者の栄養管理では、カロリーだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどのバランスも大切です。食欲が低下している場合でも、少量でも栄養価の高い食品を摂ることが推奨されます。
また、個々の健康状態や生活状況に合わせたカロリー摂取を行うためには、医師や栄養士と相談しながら食事計画を立てることが重要です。
在宅介護で食事を食べない原因とリスク
食事を食べない原因を教えてください
在宅介護において、高齢の方が食事を食べない原因はさまざまです。
例えば、加齢による咀嚼や嚥下の低下、入れ歯や歯周病など口腔内の不調が食欲を減らすことがあります。また、認知症の影響で食べ物を認識できなかったり、食事の手順がわからなくなる場合もあります。
さらに、味覚や嗅覚の衰え、体調不良、薬の副作用なども原因となります。これらは複合的に作用することが多く、食事拒否が見られたら原因を確認し、適切に対応することが大切です。
また、精神・心理的な原因も考えられます。高齢の方のうつ病は食欲不振が前面に出ることが多いです 。
食事を食べない日が続くと、身体にどのような影響がありますか?
食事摂取量の少ない日が続くと、栄養不足から筋力や免疫力が低下し、日常生活の自立度も下がります。また、血糖値や血圧のコントロールが難しくなり、生活習慣病の悪化につながることもあります。
先に述べたように、高齢者の栄養管理では、カロリーだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどのバランスも大切です。
食欲が低下していても、少量ずつ栄養価の高い食品を摂ることが推奨されます。健康状態や生活状況に応じて、医師や栄養士と相談しながら食事計画を立てることが重要です。
在宅介護で食事を食べない場合の対処法や注意点
食欲がないときにはどのような食事がおすすめですか?
食欲がない場合は、以下のポイントを意識してみましょう。
1.食べやすい形態
咀嚼や嚥下が難しい場合は、食材を細かく刻んだり、ペースト状にすると摂取しやすくなります。また、食事を小分けにして回数を増やすことで、1回の食事に対する負担を軽減できます。
2.温度や食材の工夫
温かいスープや冷たいゼリーなど、食欲を引きやすい温度や食材を選ぶとよいでしょう。また、味付けを工夫して、食欲を刺激するのも大切です。
これらの工夫を取り入れることで、食欲がない時でも栄養を摂取しやすくなります。
食欲がないときにはどのような食事方法がいいでしょうか?
食欲がない場合は、食事方法も工夫してみましょう。
1.食事環境を整える
食事をする場所の明るさや清潔さを保ち、落ち着ける雰囲気を作ることで、食事への意欲が高まります。
2.食器や盛り付けの工夫
色鮮やかな食器や盛り付けを用いることで、視覚的に食欲を刺激します。
3.温度や食材の工夫
食べやすい温度や食材を選ぶことで、摂取しやすくなります。温かいスープや冷たいゼリーなどもおすすめです。
これらの方法を取り入れることで、食欲がないときでも食事を摂りやすくなります。ただし、長期間食事が摂れない場合は、医師に相談することが重要です。
食欲を高めるためにほかにできることはありますか?
食欲を高めるためには、適度な運動を取り入れることや口腔ケアを徹底すること、生活リズムを整えることも大切です。
まず、軽いウォーキングや体操などの適度な運動は、食欲を刺激する効果が期待できます。無理のない範囲で身体を動かすことを心がけましょう。
また、口腔内の清潔を保つことで、食事の際の不快感を減らし、食欲に働きかけます。歯磨きやうがいを習慣化しましょう。清潔に保つことは、誤嚥性肺炎を予防するためにも役立ちます。
そして、 規則正しい生活を送ることで、身体の調子が整い、食欲が増進します。毎日の生活リズムを見直してみましょう。
これらの方法を取り入れることで、食欲を高める助けになります。無理なく生活に取り入れて、健康的な食生活を維持しましょう。
食欲がないときに気をつけるべきことはありますか?
食欲がない方には、以下の点に気を付けましょう。
1.無理に食べさせない
少しでも食べてほしいとの思いから無理に食事を勧めることは、かえって拒否感を強める可能性があります。認知症やうつ病の方には、強制的な食事提供は逆効果となることがあります。
2.本人のペースを尊重する
食事の時間や量を強制せず、本人のペースで進めることが大切です。食べられるときに少しずつでも摂取できるよう、柔軟な対応を心がけましょう。
3.食事の楽しみを提供する
食事は栄養補給だけでなく、楽しみの時間でもあります。家族や友人と一緒に食事をして、食事への関心が高まることがあります。
これらの点を踏まえ、本人の状態や気持ちに寄り添った支援を行うことが、食欲回復への第一歩です。
編集部まとめ
ここまで在宅介護で食事を食べないことについてお伝えしてきました。在宅介護で食事を食べないことの要点をまとめると以下のとおりです。
- 高齢の方が食事を拒否する原因は、咀嚼や嚥下機能の低下や認知症、味覚、嗅覚の衰え、体調不良や薬の副作用などがある
- 対処法として、食べやすい形態にする、温度や食材の工夫や食べたいときに食べるなどがある
- 注意点は、無理に食べさせないや本人のペースを尊重する、食事の楽しみを提供するなど
在宅介護において、なかなか食事を摂取できないと不安になりますよね。ここまで述べたさまざまな対処法を、無理のない範囲で試してみながら、どうしても難しい場合は一人で悩まずに医療機関や介護施設に相談をしましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。




