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介護とは?介護が必要になる原因やサポート制度、困ったときの相談先を解説

 公開日:2025/11/26
介護とは?介護が必要になる原因やサポート制度、困ったときの相談先を解説
高齢化が進む現代社会では、介護が身近な問題になりつつあります。介護とはいったいどのようなものなのか、誰がどのように担っているのか、ご存じでしょうか。また、家族や身近な方に介護が必要になった場合に備えて、原因や準備すべきこと、利用できる支援制度について理解しておくことが大切です。この記事では介護の基本知識から介護が必要になる主な原因、介護を始める前の準備、そして介護を支える制度や困ったときの相談先までを解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

介護の基礎知識

介護の基礎知識 介護の基礎知識では、まず介護の定義を解説し、実際に介護を必要としている方がどの程度いるのかといった現状や、介護に似た用語との違いを解説します。

介護の定義

介護とは、老齢や障害などにより日常生活に支障がある方に対して、食事や入浴、排泄など身の回りの動作や家事、健康管理、社会活動への参加を継続的に援助することを指します。介護は単発の手助けではなく、24時間365日にわたる包括的なサポートであり、身体的な介助だけでなく精神面のケアも含まれます。

介護が必要な人の現状

日本では人口の高齢化に伴い、介護が必要な高齢の方の数が年々増加しています。厚生労働省の報告によれば、要支援・要介護認定を受けている高齢の方は2025年度7月時点で731万人にのぼり、65歳以上人口の約20.0%を占めています。要介護認定者数の増加に比例して、介護保険の給付費も年々増加しています。

参照:『介護保険事業状況報告(暫定)』(厚生労働省)

介護・介助・看護の違い

介護は生活全般にわたる継続的な援助を指し、介助はその一部である特定の動作の補助を指します。もう少し具体的に違いを整理すると、介護は長期的・包括的な支援であり、身体介護から生活援助、さらには心のケアまで含みます。それに対し介助は、食事の介助や入浴の介助、移動の介助といった特定の行為に限られた一時的支援であり、その行為が終われば介助も終了します。

一方、看護は医師の指示に基づき患者さんの治療や療養上の世話をすることです。介護が高齢の方や障害者の日常生活を支援する行為であるのに対し、看護は病気やケガの回復を目的として医療行為を伴うケアを含みます。具体的には、体温・血圧測定や投薬管理、点滴や傷の処置、医師の補助などが看護にあたります。看護は主に看護師などの医療従事者が担い、介護は介護福祉士やヘルパー、家族などが担うという職種上の違いもあります。

このように役割は異なりますが、実際の現場では介護職と看護職が連携し、高齢の方の生活と健康を総合的に支援しています。

介護の担い手

介護の担い手とは、実際に介護サービスを提供したり介護をする方のことです。大きく分けて家族介護者専門職による介護者がいます。日本では家族が介護を担う割合が高く、特に配偶者や子ども世代がその中心です。しかし、核家族化や共働き世帯の増加により、家族だけで介護を完結することが難しい場合もあります。

そのため、公的な介護サービス提供者が重要な担い手となっています。介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)、施設介護職員、看護師、ケアマネジャー(介護支援専門員)など、多職種の専門家がチームとなって要介護者を支える体制が整えられています。

要介護者はケアマネジャーと相談しながら、自宅で訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスを利用したり、特別養護老人ホームなどの介護施設に入所して専門職のケアを受けたりします。公的介護保険制度のもとでは、利用者は必要なサービスを選択して受けられるため、家族とサービス提供者が協力して介護を担うケースが一般的になりつつあります。

参照:『第1章 高齢化の状況(第2節 2)』(厚生労働省)

介護が必要になる原因

介護が必要になる原因 介護が必要になる主な原因は、高齢の方の場合は特定の疾病や障害によるものと、加齢に伴う心身の衰えによるものに大別できます。代表的なものに脳血管疾患(脳卒中)やがんなどの病気、認知症、高齢による衰弱(フレイル)などが挙げられます。それ以外にも骨折や関節疾患、心臓病などさまざまな要因が重なって要介護状態に至ります。ここでは主な原因について順に解説します。

脳血管疾患・がんなどの病気

脳血管疾患とは脳梗塞や脳出血など脳の血管に起因する疾患の総称です。脳卒中は高齢の方の要介護の大きな原因の一つで、発症すると半身の麻痺や言語障害など重い後遺症があり、寝たきり状態に至るケースも少なくありません。実際、介護が必要になった原因の統計では、脳血管疾患が全体の約15%を占めるというデータもあります。脳卒中による片麻痺で食事やトイレ動作が自力で困難になったり、構音障害で意思疎通に支援が必要になったりと、日常生活全般に介助が欠かせなくなることが多いのです。

また、高齢の方ではがんも介護が必要になる一因です。進行したがんにより体力が著しく低下したり、治療による副作用で身の回りのことが困難になったりする場合があります。特に終末期のがん患者さんは痛みの管理や日常生活動作の補助が必要となり、在宅緩和ケアや施設での介護ケアを利用することもあります。

参照:『第1章 高齢化の状況(第2節 2)』(厚生労働省)

認知症

認知症は記憶や判断力などの認知機能が低下し、徐々に日常生活に支障をきたす病気です。認知症にはアルツハイマー型認知症や血管性認知症などのいくつかのタイプがありますが、いずれも進行するとご本人がご自身の障害を認識できないことがあり、安全な生活のために継続した見守りやサポートが必要です。認知症は介護が必要となった原因のなかで最も割合が高く、全体の約18%を占めるとされています。これは要介護者の5人に1人程度は認知症が主な原因で介護サービスを利用していることを意味します。

参照:『第1章 高齢化の状況(第2節 2)』(厚生労働省)

高齢による衰弱

高齢による衰弱とは、特定の病気がなくても加齢に伴って心身が脆弱化した状態を指します。年を重ねると筋力や骨密度が低下し、食欲不振や口腔機能の低下による栄養不足、外出機会の減少による認知機能の低下などが生じます。その結果、転倒しやすくなったり、着替えや入浴といった日常動作に支障が出たりして、徐々に介助が必要な場面が増えていきます。 厚生労働省の統計では、高齢による衰弱が介護が必要になった原因の約13%を占めるとされています。これは脳卒中や認知症に次ぐ高い割合で、要介護認定の大きな理由の一つです。このように、特に大きな病気はしなくても年齢とともに介護が必要になるケースは珍しくありません。

参照:『第1章 高齢化の状況(第2節 2)』(厚生労働省)

そのほかの原因

上記以外にも、骨折や転倒は高齢の方を要介護状態に陥らせる大きな要因です。特に大腿骨頸部骨折などは長期入院や手術を経ても歩行が困難になり、その後の生活で車椅子や介助が必要となるケースもあります。また、変形性膝関節症や股関節症なども、痛みや可動域制限によって歩行や立ち座りが難しくなり、結果として介護ベッドや車椅子での生活を余儀なくされる場合があります。

介護の事前準備と始め方

介護の事前準備と始め方 家族の介護が必要になったときに慌てないためには、事前の準備と段取りが欠かせません。ここでは、介護を始めるにあたってまず行うべき要介護認定の申請手続き、介護に必要な用品や住環境の整備、家族や親族間での役割分担や費用負担の話し合いなど、スムーズに介護を始めるためのポイントを解説します。

要介護認定の申請手続き

介護保険サービスを利用するためには、お住まいの市区町村で要介護認定(要支援認定を含む)を受ける必要があります。まずは市区町村役所の高齢者福祉窓口や地域包括支援センターで申請手続きを行いましょう。

申請は基本的に介護を受けるご本人や家族が行いますが、代理人としてケアマネジャーや施設職員が代行することも可能です。申請時には介護保険被保険者証(65歳以上の場合)や主治医の氏名を書いた書類などが必要になるので、事前に市区町村の案内にしたがって準備してください。

申請書を提出すると、市区町村から委託を受けた調査員がご本人の自宅や入院先を訪問して調査(面接)を行います。同時に、市区町村はご本人の主治医に対して意見書の作成を依頼し、医学的な所見(病気の診断や心身の状態)を提出します。

これら調査結果と医師意見書をもとに、市区町村の介護認定審査会で要介護度(自立、要支援1・2、要介護1~5)が判定されます。原則として申請から30日以内に認定結果が通知され、要支援・要介護と認定された場合は介護保険被保険者証に要介護度が記載されます。

介護用品・住環境の準備

介護が必要になったら、ご自宅を安心かつ安全に過ごせる環境に整えることが重要です。まず、介護用ベッドや車椅子、歩行器など、必要な福祉用具を準備しましょう。要介護度に応じて借りられる用品が異なりますが、介護ベッドや車椅子・歩行器など、多くの用品が対象です。ケアマネジャーに相談すると、状態に合った福祉用具を業者と連携して手配してくれます。

次に住環境の整備(住宅改修)です。高齢の方にとって段差や滑りやすい床は転倒の大きなリスクとなるため、玄関や廊下、浴室など要所に手すりを取り付けたり、段差解消のスロープを設置したりしましょう。介護保険には住宅改修費の支給制度があり、要支援・要介護認定者1人につき生涯20万円までの住宅改修が補助対象です。この制度を利用すれば、工事費20万円までなら1〜3割負担で済むため、負担を抑えて住まいをバリアフリー化することができます。

参照:『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

介護の役割分担の相談

家族や親族で介護に携わる場合、事前にしっかり役割分担を話し合っておくことが大切です。介護は長期間に及ぶことが多く、ひとりの家族に負担が集中しないようにします。兄弟姉妹がいる場合は特に、誰が主となって介護するのか、ほかの家族はどのような形でサポートするのかを明確に決めておきましょう。

役割分担を決める際は、介護されるご本人の意思も確認しながら、家族全員が納得できる形を模索します。一度決めた後も、介護の状況は時間とともに変化するため、定期的に話し合って柔軟に見直すことが大切です。

万が一、家族間で意見が食い違ったり不公平感が生じたりした場合は、第三者に相談することも有効です。地域包括支援センターや市区町村の家族介護教室や相談会では、ケアマネジャーなどからアドバイスをもらえます。同じ悩みを持つほかの介護家族との情報交換も役立つでしょう。

親族間での費用負担の明確化

介護には介護サービスの利用料やオムツ代、医療費などさまざまなお金がかかります。長期化すれば費用負担も大きくなりますので、親族間で事前に費用負担のルールを決めておくことが望ましいです。

公平感のある分担を心がけ、難しければ専門家に間に入ってもらうことも検討しましょう。社会福祉協議会では生活福祉資金貸付や福祉サービス利用援助などの相談も受け付けています。必要に応じて行政の福祉課やケアマネジャーにも相談し、公的制度や減免措置が利用できないか確認することも大切です。

介護のサポート制度と困ったときの相談先

介護のサポート制度と困ったときの相談先 介護する家族を支えるために、国や自治体にはさまざまな支援制度や相談窓口があります。ここでは代表的な介護支援制度と、介護で行き詰まったときに頼れる相談先について解説します。

介護を支える主な制度

介護の中心となるのが、2000年に施行された介護保険制度です。介護保険制度とは40歳以上の国民が保険料を納め、要支援・要介護と認定された際に介護サービス費用の一部が給付される仕組みです。65歳以上であれば原因を問わず利用でき、40~64歳でも特定疾病(初老期認知症や脳血管疾患など)が原因なら利用可能です。

介護サービスを利用する際は原則1割(所得によって2~3割)の自己負担で、訪問介護・通所介護(デイサービス)からショートステイ、福祉用具貸与、特養などの施設サービスまで多様なメニューがあります。介護保険制度のおかげで、要介護者の経済的負担を抑えながら専門サービスを受けられるようになりました。

介護保険以外にも、公的な高齢者福祉サービスが利用できます。例えば、自治体によっては独自に紙おむつの支給や配食サービス、見守りサービスを提供しているところもあります。また、低所得の高齢の方には介護保険利用料を減免する制度や、高額介護サービス費も設けられています。これら制度は各自治体の高齢福祉課などで案内されていますので、介護費用に不安がある場合は問い合わせてみましょう。

介護で困ったときの相談先

介護を続けていると、誰しも行き詰まったり不安になったりするものです。そんなときに頼りになるのが相談窓口です。状況に応じて適切な相談先を利用しましょう。

まず挙げられるのが地域包括支援センターです。地域包括支援センターは各市町村に設置された高齢の方の支援の拠点で、介護に関するあらゆる相談を受け付けています。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が常駐しており、介護サービスの紹介、公的制度の案内など総合的なサポートをしてくれます。

次にケアマネジャー(介護支援専門員)も頼れる存在です。ケアマネジャーは介護サービス利用者の相談窓口となり、必要に応じてサービス事業者や医療機関と連携して課題解決にあたってくれます。ケアマネジャーは介護保険の申請代行も行っているため、介護保険を使い始める段階から相談できます。

まとめ

まとめ 本記事では介護について、その基本から原因、始め方、制度や相談先まで包括的に解説しました。介護は誰にでも生じうる課題で、介護する側にも介護される側にもなりえます。公的な介護保険制度をはじめ、介護者を支える休業制度や地域の相談窓口など、多くの支援策があります。困ったときには遠慮せず地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、プロの力や制度を借りることが大切です。適切な準備と情報収集、そして周囲のサポートを得ながら、介護する側もされる側もできるだけ負担少なく、その方らしい生活を続けられるよう努めていきましょう。

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