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介護用の手すりの種類|介護保険のレンタル制度と自宅に設置する流れ・費用相場も解説

 公開日:2025/11/25
介護用の手すりの種類|介護保険のレンタル制度と自宅に設置する流れ・費用相場も解説

高齢になり足腰が弱ってくると、日常生活の動作や移動時にふらつきや転倒のリスクが高まります。自宅に介護用の手すりを取り付けることは、歩行や立ち座りといった動作を支え、転倒予防につながり身体の負担軽減や事故防止につながります。しかし、どのような種類の手すりを選べばよいのか、介護保険を利用したレンタル制度や住宅改修による設置方法など、わからない点も多いでしょう。本記事では、そんな介護用手すりが必要な理由と役割から設置までの流れと費用相場までを解説します。
小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

自宅に介護用手すりが必要な理由とその役割

自宅に介護用手すりが必要な理由とその役割 介護が必要な方が自宅で安全に快適な生活を送るために、手すりは欠かせない設備です。本章では、なぜ自宅に介護用の手すりが必要とされるのか、その理由と手すりが果たす主な役割を解説します。

手すりが必要な理由

加齢や病気により筋力やバランス感覚が低下すると、家の中での立ち座りや移動も大きな負担がかかります。支えとなる手すりがないと、小さな段差や立ち上がり動作でさえ転倒の危険が高まります。転倒による骨折は寝たきりや車いす生活につながるおそれがあり、高齢の方にとって重大なリスクです。

こうした事故を未然に防ぎ、介護を受ける方の安全を確保するために、自宅への手すり設置が必要です。また、手すりは介護者の負担軽減にもつながります。手すりがあれば介助なしでも本人が動作しやすくなるため、介護する家族の肉体的負担や心配事を減らす効果も期待できます。

手すりの役割

介護用手すりが果たす主な役割は、大きく分けて次の3つです。

まずは歩行をサポートするという役割です。手すりにつかまりながら歩くことで、体重の一部を腕で支えることができます。筋力低下や麻痺がある方でも、手すりによって身体への負荷が分散され、バランスを保ちやすくなるため、自力歩行への不安が軽減します。

次に、日常動作をサポートするという役割です。起き上がりや立ち上がり、姿勢の保持といった日常的な動作を支援するのも手すりの重要な役割です。ベッドから身体を起こす、椅子やトイレから立ち上がるといった動作は高齢の方にとって大きな負担ですが、手すりを握ることでこれらの動作が楽になります。

加えて、手すりには転倒・転落の防止という役割があります。つまずきやふらつきは転倒や転落につながります。玄関の上がり框や浴室の段差、ベッドの脇、廊下や階段など、転倒の危険がある場所に手すりがあれば、身体の姿勢を保ちやすくなり、事故を未然に防ぐことができます。

以上のように、介護用手すりは移動の補助と安全の確保の両面で高齢の方の生活を支える重要な役割を担っています。

介護用手すりの種類

介護用手すりの種類 一口に手すりといっても、設置場所や用途に応じてさまざまな種類・形状のものがあります。ここでは主な介護用手すりの種類と、その特徴や適した設置場所について解説します。

水平型|廊下・玄関・トイレなど

水平型手すりは、床と平行に横向きに取り付ける一直線の手すりです。廊下や玄関、トイレ、階段の壁面などに設置され、つかまりながら歩行したり姿勢を保持したりするための支えとなります。廊下では移動の際の支えに、玄関では上がり框での立ち座りや方向転換の補助に、トイレでは立ち上がる際の姿勢保持に役立ちます。また、階段の上下端部には短い水平手すりを付け足すことで、階段の上り下り開始時および終了時の安全性を高めることができます。

縦型|ベッド脇・トイレ・浴室など

縦型手すりは、床と垂直方向に設置する縦向きの手すりです。壁や柱に固定して使い、立ち座り動作や段差の上り下りの補助に適しています。例えば、トイレでは便座から立ち上がるとき、玄関では上がり框の段差を上がるときに縦手すりがあると身体を引き上げやすくなります。また、ベッドの脇に縦手すりを設置すれば、寝起きの際に体を起こす動作の補助になります。肩より少し上の高さまで手すりが伸びているとしっかり握って力を入れやすいため、壁付けの縦手すりの場合は利用者の肩の高さよりやや上端がくる位置に設置するのが一般的です。

L字型|トイレ・浴室など

L字型手すりは、水平手すりと縦手すりを組み合わせてL字型にした手すりです。一本で横方向と縦方向の両方の支えを提供できるため、トイレや浴室のように限られた空間で立ち座りと姿勢保持の両方を補助するのに適しています。適切な位置に設置することが重要で、一般的にはトイレの場合、便座に座った時に握りやすい位置から立ち上がり動作までフォローできるように配置します。L字型手すりは一つで二役をこなす便利な形状ですが、設置場所のスペースや向きによって使いやすさが左右されます。

階段用|屋内・屋外の段差・階段

階段用の手すりは、その名のとおり階段や段差の上り下りを安全にするための手すりです。屋内の階段では、可能であれば左右両側に手すりを設置するのが理想です。両手で支えられることで安定感が増し、上り下り時の負担軽減と転落防止につながります。階段用の手すりは家の中でも特に重要度が高い箇所なので、適切に設置して安全を確保しましょう。

据え置き型|工事不要で設置できるタイプ

据え置き型手すりは、床に置くだけで使用できる自立式の手すりです。壁や床にネジ止めする必要がなく、据え置くだけで使えるため設置工事が不要です。重量のある土台に手すりの支柱が固定されており、安定感を保ちながら移動や立ち座りを補助します。据え置き型の利点は、必要に応じて設置場所を移動できる点です。ただし、据え置き型は安定させるために土台部分が大きく作られているため、設置にはある程度のスペースが必要です。利用しないときは邪魔にならない位置に移動させるなど工夫するとよいでしょう。

折りたたみ型|スペースを有効に使えるタイプ

折りたたみ型手すりは、使わないときは折り畳んで壁際などに収納できる手すりです。狭い空間でも邪魔になりにくく、必要なときだけ手すりを起こして使えるため、スペースを有効に活用したい場面に適しています。代表的なのはトイレや脱衣所で見かける跳ね上げ式の手すりです。折りたたみ型手すりは省スペースと利便性を両立するタイプといえますが、可動部分があるぶん構造が複雑で耐荷重にも限界があります。取り付けには固定と定期的な点検が必要です。

介護保険を利用して自宅に手すりを設置できるケースと手続き

介護保険を利用して自宅に手すりを設置できるケースと手続き 手すりの設置には費用がかかりますが、公的な介護保険制度を利用すれば、その費用の大部分を賄うことができます。この章では、自宅に手すりを設置する際に介護保険を適用できるケースと適用外となるケースや、介護保険を利用して手すりを設置するための手続きの流れについて解説します。

自宅への手すり設置に介護保険を適用できるケース

介護保険が適用できるのは、要支援あるいは要介護認定を受けている方が自宅に手すりを設置する場合です。要支援1・2から要介護1~5まで、認定を受けた方であれば介護保険サービスを利用できます。適用されるサービスは、手すりの設置方法によって2通りに分かれます。

制度の種類 対象となる手すり 補助内容・自己負担
住宅改修(手すり取付工事) 壁や床に固定して取り付ける手すり(玄関・階段など) ・支給限度額は原則20万円まで ・費用の1~3割が自己負担となる
特定福祉用具販売(購入) 工事不要の小型手すりのうち、浴槽用手すりのみ対象 ・支給限度額は原則10万円まで ・費用の1~3割が自己負担となる

以上のように、介護保険の適用範囲は、工事が必要な手すりか工事不要の手すりかで分かれています。要支援あるいは要介護認定者であれば、状況に応じて住宅改修または福祉用具貸与のサービスを利用でき、手すり設置の費用負担を大幅に減らすことができます。

参照: 『介護保険における福祉用具』(厚生労働省) 『介護保険における住宅改修』(厚生労働省)

介護保険の対象外となるケース

介護保険が適用されないケースもいくつかあります。代表的なものを挙げると下記のとおりです。

  • 要介護認定を受けていない場合
  • 介護保険レンタルの対象外となる手すり
  • 介護保険の住宅改修が適用されない住宅・状況
  • 保険申請の手順を踏んでいない場合

以上のケースでは介護保険が使えないため、手すり設置費用を全額自己負担するか、自治体独自の助成制度などほかの支援策を検討することになります。適用できるか線引きが難しいケースもありますので、迷ったときは市区町村の介護保険担当窓口や担当ケアマネジャーに事前に確認するようにしましょう。

介護保険制度を利用する流れと必要な手続き

介護保険を使って自宅に手すりを設置する場合、その進め方は住宅改修で取り付ける場合とレンタルで設置する場合で少し異なります。以下に、それぞれのケースでの基本的な手続きの流れをまとめます。

住宅改修(手すり取付工事)を利用する場合の流れは下記のとおりです。

  • 要介護認定を受ける
  • ケアマネジャーに相談する
  • 施工業者を選定し見積もりを依頼する
  • 市区町村に事前に申請する
  • 審査・承認を受ける
  • 手すりの取付工事実施する
  • 工事代金を支払う
  • 給付申請および払い戻し手続きを行う

介護保険の手続きにおいては自治体によって細かな手順や必要書類が異なる場合がありますので、ケアマネジャーや役所窓口の指示にしたがって手続きを進めてください。

福祉用具貸与(手すりのレンタル)を利用する場合の流れは下記のとおりです。

  • 要介護認定を受ける
  • ケアマネジャーに相談しケアプラン作成
  • 福祉用具レンタル事業者を選ぶ
  • 手すりの種類・設置場所を決定する
  • ケアマネジャーへ連絡・契約手続きを行う
  • 手すりの設置・レンタルを開始する

介護保険制度の福祉用具貸与制度を活用する場合は、必ずケアマネジャーを通して手続きをすすめましょう。ケアマネジャーを経由せずに事業者と契約を締結すると、介護保険適用外(全額自己負担)になるおそれがあります。

介護用手すりが必要な場所やシーンを見極めるポイント

介護用手すりが必要な場所やシーンを見極めるポイント 自宅のどこに手すりを設置すれば効果的かは、利用者の身体状況や生活動線によって異なります。手すりが必要な場所やシーンを見極めるポイントとしては、以下のような点に着目するとよいでしょう。

  • 要介護者が一日のなかでどのような経路を移動し、どこで立ち座りなどの動作を行っているかを確認する
  • 起き上がりや立ち上がり、段差の昇降、方向転換など、利用者が特に苦労している動作に注目する
  • 利用者本人に実際につかんでもらい、力を入れやすい高さ・角度になっているか確認する
  • 手すりを付けることでほかの設備の使い勝手が悪くならないか、事前に確認する

以上のポイントを踏まえ、手すりが必要な場所を洗い出していきます。判断に迷う場合は、ケアマネジャーや福祉住環境コーディネーターなど専門家の意見を仰ぐとよいでしょう。

介護用手すりを設置するまでの流れと費用相場

介護用手すりを設置するまでの流れと費用相場 介護用手すりを自宅に設置するまでの基本的な流れと費用の目安について整理します。上記で介護保険の申請手順に触れましたが、実際に手すりを設置する際の一般的な進め方と費用感を解説します。

介護用手すり設置の基本的な流れ

介護用手すり設置までの一般的な流れは次のとおりです。この流れに沿って介護用手すりの設置を行います。

  • 設置方法(工事かレンタルか)を検討する
  • 業者選定と見積もりを行う
  • 契約および申請手続きをする
  • 手すりの設置
  • 費用を支払う

以上が、介護用手すり設置までの一般的な流れです。ケアマネジャーや専門業者と連携しながら進めることで、スムーズかつ的確に設置を進めることができます。なお、自治体によっては介護保険以外に高齢者住宅改修費助成など独自の補助金制度を設けている場合もあります。お住まいの地域によって特別なそのような制度がないか、事前に確認しておくとよいでしょう。 参照:『高齢者自立支援住宅改修給付』(港区)

介護用手すりの設置にかかる費用の目安

手すり設置の費用は、手すりの種類や設置場所、本数や工事の有無によって大きく異なります。ここでは代表的なケースごとの費用相場を紹介します。実際の費用は住宅の構造や業者の料金設定によって変動しますが、目安として参考にしてください。

区分 費用相場 保険利用時の自己負担
手すり取付工事 (住宅改修) 2~20万程度 ※設置する場所や手すりの種類によって異なります。 ・介護保険の住宅改修制度を利用すれば、最大18万円(20万円の90%)が給付対象です。 ・20万円を超える分は全額自己負担です。
手すりのレンタル (福祉用具貸与) 月額2,000~8,000円程度 ・介護保険を利用すれば自己負担1~3割です。

手すりの取付工事や設置にはある程度の費用がかかりますが、介護保険を上手に活用することで費用負担を大幅に軽減できます。加えて、前述の自治体助成などが利用できれば自己負担分がさらに補助されるケースもあります。実際に手すり設置を検討する際は、各種制度を活用しつつ信頼できる業者から見積もりを取り、納得のいく形で導入するようにしましょう。

まとめ

まとめ 介護用の手すりは、高齢の方や要介護者の日常動作を支え、転倒・転落を防止する上で欠かせない役割を担う重要な設備です。手すりを適切な場所に設置することで、本人の移動や立ち座りが格段に楽になり、安全性が高まります。一方で手すりにはさまざまな種類があるため、利用者の身体状況や住宅環境に合わせて適切な種類と設置位置を選ぶことが大切です。住宅改修や福祉用具レンタルを活用しながら、ご家族が安心して暮らせる住まいを整えていきましょう。手すりを上手に取り入れることで、高齢の方の自立度向上と介護する側の負担軽減の両面に大きな効果が期待できます。ぜひ本記事の内容を参考に、安全で快適な在宅介護環境づくりを進めてみてください。

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