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訪問介護で医療行為はできる?できること・できないこと、医療との連携について解説

 公開日:2025/11/16
訪問介護で医療行為はできる?できること・できないこと、医療との連携について解説

訪問介護を利用する際、医療行為が必要な場合にどこまでヘルパーに対応してもらえるのか、不安に感じる方も少なくないでしょう。 訪問介護サービスでは、法律により医療行為が制限されているため、ヘルパーができることとできないことが明確に定められています。 本記事では、訪問介護における医療行為の範囲や、医療が必要になった際の対応方法について詳しく解説します。 在宅での介護生活を円滑に続けるために、訪問介護と医療の連携について理解を深めていきましょう。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

訪問介護で医療行為はできる?

立ち上がりの介助 訪問介護とは、ヘルパーが利用者の自宅を訪問して日常生活のサポートを行うサービスです。しかし、医療行為については法律による制限があり、実施できない行為も存在します。 そのため、医療と介護の役割分担を理解することが重要です。この章では、訪問介護における医療行為の基本的な考え方について説明していきます。

医療行為と介護サービスの違い

医療行為とは、医師や看護師など医療従事者が行う専門的な処置のことを指します。一方、介護サービスは日常生活の援助を中心としたサポートです。 医師法第17条および保健師助産師看護師法第31条により、医師や看護師の免許を持たない者が医行為を行うことは原則として禁じられています。 医行為とは、医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為と定義されます。訪問介護のヘルパーは医療従事者に該当しないため、点滴や注射といった医療行為の実施は不可能です。 ただし、一部の行為については条件を満たせば実施可能な場合もあります。この区分により、利用者の健康が守られる仕組みとなっており、専門性に応じた適切なケアが提供されます。

法律で定められた制限について

面談をする 訪問介護における医療行為の制限は、医師法や保健師助産師看護師法による厳格な規定です。これらの法律は、利用者の健康を守るために存在します。医療行為には専門的な知識と技術が必要であり、不適切な処置は健康被害のリスクを伴います。 厚生労働省は原則として医行為ではない行為についてガイドラインを定める内容です。このガイドラインにより、介護職員が問題なく実施できる行為の範囲が明確になります。 このガイドラインでは体温測定や血圧測定、軽微な切り傷の処置など、日常生活のなかで家族が行える程度の行為が示されます。訪問介護事業者は、この法的枠組みを遵守しながらサービスを提供することが義務です。 法律違反となる行為をした場合、事業者や従事者に対して罰則が科される可能性もあり、適切な業務範囲の理解が重要です。

訪問介護でできること・できないこと

介護士とシニア女性 訪問介護で提供できるサービスには明確な範囲があります。日常生活の支援を中心としたサービスが提供可能です。ただし、医療的な処置については制限があります。 ここでは、ヘルパーが実施できる行為とできない行為について詳しく説明していきます。利用者とご家族がスムーズにサービスを利用するために、訪問介護の業務範囲を正しく理解することが大切です。

訪問介護でできること

笑顔の女性たち 訪問介護では入浴や排せつ、食事などの身体介護と調理や洗濯、掃除などの生活援助が提供されます。身体介護には、体位変換や移動の介助、着替えの手伝いなどが含まれます。 起床と就寝時の介助、トイレやポータブルトイレへの移乗支援、おむつ交換なども身体介護の範囲です。生活援助では買い物代行や食事の準備、居室の清掃、洗濯、衣類の整理、ゴミ出しなどを行います。 通院時の乗車や降車の介助も訪問介護の範囲に含まれます。服薬の声かけや見守り、体温測定などの健康管理に関する基本的な支援も実施可能です。これらのサービスは、利用者の自立支援と日常生活の質の向上を目的としています。 ヘルパーは利用者の残存能力を活かしながら、必要な部分のみを支援することで、自立した生活の継続を支える役割です。訪問介護計画に基づき、利用者一人ひとりの状態に応じた個別のケアを提供します。

訪問介護でできないこと

医療行為に該当する処置については、訪問介護での実施が認められていません。点滴や注射、採血などの医療器具を使用する処置は、医師や看護師のみが実施できる内容です。 傷の処置や褥瘡のケア、カテーテルの管理なども医療行為に該当し、ヘルパーが行うことは認められていません。 また、医師の診断や処方に関わる判断もヘルパーの業務範囲外です。服薬の介助は可能ですが、薬の選択や量の判断はできません。 さらに、利用者本人以外の家族のための家事や、ペットの世話なども訪問介護の対象外です。来客の対応や庭の草むしり、大掃除なども原則として訪問介護のサービスには含まれません。 これらの制限は、適切な医療と介護の役割分担を維持するために重要です。訪問介護サービスは介護保険制度に基づいて提供されており、保険給付の対象となるサービスが明確に定められています。 不明な点がある場合は、担当のケアマネジャーやサービス提供事業所に確認することをおすすめします。

訪問介護で受けられる医療的なケア

おしゃべりを楽しむ 一定の条件を満たした場合、訪問介護員による医療的ケアの実施も可能です。たんの吸引と経管栄養については、介護福祉士または一定の研修を受けた介護職員が、医師の指示の下で実施することが認められています。 社会福祉士および介護福祉士法の改正により、2012年4月からの制度です。実施にあたっては医師や看護師との連携体制の整備や対象者の同意取得、業務手順書の作成などの条件を満たす必要があります。 特別養護老人ホームや在宅などで、看護職員を必要数配置することが困難な状況に鑑み、医師や看護職員との連携の下で介護職員が行うことを許容する制度です。研修は基本研修と実地研修から構成され、適切な技術と知識を習得したうえで実施されます。 インスリン注射の実施に際しての声かけや見守り、未使用の注射器の手渡しなどの補助的な行為も、医師からの指示があれば実施可能です。 ただし、注射針の準備や注射そのものはヘルパーが行うことができない行為です。あくまで利用者本人が自己注射を行う際の補助に限定されます。

医療行為が必要なときの対応方法

元気を出す女性 利用者に医療行為が必要になった場合、適切な医療サービスにつなげることが重要です。訪問介護事業所には、医療機関との連携体制が求められています。迅速かつ適切な対応により、利用者の健康を守ることが可能です。 ヘルパーが訪問中に利用者の体調変化に気付いた場合、まず事業所の責任者に報告します。発熱や血圧の異常、食欲不振、意識レベルの変化などの普段と異なる様子が見られた際は速やかに連絡することが大切です。 責任者はケアマネジャーに連絡し、必要に応じて主治医や訪問看護ステーションへの依頼を行います。訪問看護サービスでは、看護師が利用者の自宅を訪問し、医師の指示に基づいた医療的ケアを提供します。 定期的な訪問により、利用者の健康状態を観察し、必要な医療処置を実施することが可能です。バイタルサインのチェックや服薬管理、医療機器の管理なども訪問看護師が行います。 緊急時には、迅速な対応が重要です。容態が急変した場合は、すぐに119番通報を行うことが必要です。同時に家族やケアマネジャーへの連絡も行います。意識がない、呼吸が停止している、激しい胸痛があるなどの生命に関わる状況では一刻を争います。 事業所では、緊急時の連絡体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。利用者の既往歴や服薬情報、主治医の連絡先などを記録し、緊急時に迅速に共有できるようにしておく必要があります。

医療と介護の連携について

医療従事者 在宅での療養生活を支えるには、医療と介護の緊密な連携が不可欠です。多職種が協働することで、利用者に包括的なケアを提供することができます。 それぞれの専門職が持つ知識や技術を活かし、チーム全体で利用者を支援する体制が重要です。医療と介護の連携が適切に行われることで、利用者はより質の高いケアを受けられるようになります。

医師・看護師との情報共有の重要性

訪問介護のヘルパーは、利用者の日常生活を身近で観察する立場にあります。日々のケアのなかで気付いた体調の変化や生活状況を、医師や看護師に正確に伝えることが重要です。 例えば、食事量の減少や皮膚の状態の変化、排せつパターンの変化などの情報は医療職が適切な判断を行ううえで貴重な資料です。 訪問看護ステーションとの連携では、看護師が医療的な観察を行い、ヘルパーは日常生活の支援を担当します。定期的なカンファレンスを通じて、利用者の状態や支援方針を共有することで、統一された質の高いケアを提供可能です。 情報共有の方法としては、連絡ノートやICTツールの活用なども有効です。タイムリーな情報交換により、状態の変化に迅速な対応ができます。

ケアマネジャーとの連携の重要性

ケアマネージャーとの話し合い ケアマネジャーは、介護サービスの調整役として中心的な役割です。利用者や家族の相談を受け、ケアプランを作成し、各サービス事業者との連絡調整を行います。 訪問介護事業所は、サービス提供の状況や利用者の変化をケアマネジャーに定期的に報告することが必要です。ケアマネジャーは、これらの情報をもとに必要なサービスの追加や変更を検討し、主治医やほかのサービス事業者と連携を図ります。 特に医療ニーズが高まった場合には、訪問看護の導入や医療機関との連携強化など、適切なサービス調整を行います。モニタリングを通じて利用者の状態を継続的に把握し、ケアプランの見直しを適宜実施することが大切です。 ケアマネジャーとの円滑な連携により、利用者のニーズに応じた柔軟なサービス提供が可能です。 訪問介護事業所は月に1回以上のモニタリング報告を行い、サービス提供の内容や利用者の様子を共有します。緊急時や状態変化時には速やかに連絡を取り、迅速な対応につなげることが重要です。

チームアプローチによる包括的な支援とは

在宅ケアにおけるチームアプローチとは医師や看護師、ヘルパー、ケアマネジャー、理学療法士など多職種が協働して利用者を支援します。 各専門職がそれぞれの専門性を活かしながら、共通の目標に向かってケアを提供します。定期的なケアカンファレンスで、利用者の状態評価や支援方針の検討を行い、チーム全体での情報共有が大切です。 この包括的なアプローチにより、医療と介護の連携が強化され、利用者の生活の質の向上につながります。在宅医療と介護連携推進事業では、地域における医療介護関係者の協働や連携を推進し、切れ目のないサービス提供体制の構築を目指しています。 地域の実情に応じた連携体制を整備することで、より効果的な在宅ケアの実現が可能です。チームアプローチでは、それぞれの職種が担う役割を明確にし、互いに尊重し合うことが重要です。 医師は医学的管理を行い、看護師は医療的ケアを提供し、ヘルパーは日常生活の支援を担当します。各職種が連携することで、利用者の心身の状態に応じた総合的な支援が可能です。

医療と介護のサービスを組み合わせるポイント

介護士 医療と介護のサービスを効果的に組み合わせるには、利用者の状態とニーズを正確に把握することが重要です。訪問介護と訪問看護を併用することで、日常生活の支援と医療的ケアの両方を在宅で受けることができます。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護というサービスでは、介護と看護が一体的に提供され、24時間365日の支援体制が整います。 サービスの組み合わせを検討する際は、介護保険の支給限度額や医療保険との関係も考慮することが必要です。要介護度に応じて1ヶ月あたりの支給限度額が定められており、その範囲内でサービスを組み合わせることが基本です。 限度額を超えた分は全額自己負担となるため、計画的なサービス利用が求められます。ケアマネジャーと相談しながら、利用者に適したサービスの組み合わせを見つけることが大切です。 医療ニーズの変化に応じて、柔軟にサービス内容を見直すことも重要です。定期的なモニタリングを通じて、サービスの効果を評価し、必要に応じて調整を行います。

医療行為が必要になった場合の費用

訪問介護サービスの費用は、介護保険により1~3割の自己負担で利用できます。所得に応じて負担割合が異なり、一定以上の所得がある方は2~3割負担です。 医療行為が必要になり訪問看護を利用する場合、医療保険または介護保険のいずれかが適用されます。介護保険で訪問看護を利用する場合も、基本的には1~3割の自己負担とされています。 ただし、要介護度に応じた支給限度額が設定されており、限度額を超えた分は全額自己負担です。要介護1の場合は月額約167,650円、要介護5の場合は月額約362,170円が支給限度額の目安です。 医療保険で訪問看護を利用する場合は、高額療養費制度の対象となることもあります。この制度により、1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。 費用負担が心配な場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、利用可能な制度について確認することがおすすめです。低所得者向けの負担軽減制度もあり、該当する場合は申請により負担を軽減できる可能性があります。

編集部まとめ

介護士とシニア女性の後ろ姿

訪問介護では、法律により医療行為が制限されており、ヘルパーができることとできないことが明確です。日常生活の支援は訪問介護で対応可能ですが、点滴や注射などの医療処置は医師や看護師が行います。 医療行為が必要な場合は、訪問看護サービスを組み合わせることで在宅での療養生活を継続できます。医師や看護師、ヘルパー、ケアマネジャーなどの多職種が連携しチームアプローチによる包括的な支援を行うことが重要です。 わからないことがあれば、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、適切なケア体制を整えていくことがおすすめです。

この記事の監修医師