寝たきりによる筋力低下を防ぐリハビリとは?注意点も併せて解説します
公開日:2025/10/28

高齢の方や長期入院の患者さんなど、身体を動かす機会が著しく減少し寝たきりの状態が続くと、筋力や関節の動きが低下します。日常生活の自立度が下がるだけでなく、褥瘡や肺炎のリスクが高まったり、精神面に影響したりすることもあります。
本記事では寝たきりによる筋力低下について以下の点を中心にご紹介します。
- 寝たきりと筋力低下の関係について
- 寝たきりによる筋力低下を防ぐリハビリ
- リハビリを行うときのポイント
寝たきりによる筋力低下について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
監修
目次 -INDEX-
寝たきりと筋力低下の関係
寝たきりによって筋力低下が進むとどうなりますか?
寝たきりの状態が続くと、筋力は急速に低下し、日常生活の自立度が大きく損なわれます。歩行や立ち上がりが困難になるだけでなく、姿勢保持が難しくなるため転倒や骨折のリスクも高まります。
また、筋力低下は呼吸や循環機能にも影響を与え、肺炎や褥瘡などの合併症を引き起こす可能性があります。
さらに、身体を動かす機会が減ることで関節の可動域も狭くなり、関節拘縮や痛みを伴う生活障害が生じることもあります。
こうした悪循環を防ぐためには、早期からのリハビリや体位変換、筋力維持を意識した運動が重要です。寝たきりによる影響は身体だけでなく、生活の質や精神的健康にも及ぶため、総合的なケアが求められます。
寝たきりが原因で起こる筋力低下の種類を教えてください
寝たきりの状態が長引くことで生じる筋力低下には、いくつかの段階や名称があり、それぞれが身体機能の低下に深く関係しています。
寝たきりによって起こりうる筋力低下の主な種類は、次に解説する3つがあります。
1. 廃用症候群(はいようしょうこうぐん)
廃用症候群は、長期間にわたって身体を動かさない生活不活発状態が続くことで、全身の機能が衰えていく現象です。筋力の低下や関節の可動域制限、さらには心肺機能や消化機能、精神的意欲の低下にまで影響を及ぼします。寝たきりである期間が長くなるほど進行しやすく、筋萎縮や関節拘縮などが顕著に現れるのが特徴です。
また、身体面だけでなく、うつ症状や孤立感など精神面への影響も大きく、自立心の喪失につながることも少なくありません。廃用症候群は一度進行すると回復に時間がかかるため、リハビリや気分転換などを早期に取り入れることが重要です。
2. サルコペニア
サルコペニアは、加齢に伴って骨格筋量や筋力が減少し、身体機能が低下した状態を指します。特に、立つ、歩くといった動作に必要な抗重力筋が衰えることで、日常生活の動作が困難になり、転倒のリスクも高まります。
原因は主に加齢ですが、栄養不足、慢性的な疾患、そして運動不足なども発症要因とされています。寝たきりによる運動機会の減少がサルコペニアを加速させることもあります。
3. フレイル(虚弱)
フレイルとは、加齢に伴って身体的、精神的、社会的な活力が低下した”虚弱な状態”を意味します。健康と要介護の中間に位置する段階で、ストレスに対する抵抗力が弱まっています。
フレイルには、前述のサルコペニアや廃用症候群を内包する概念としての側面があり、筋力低下だけでなく、認知機能や社会的関わりの低下など、複数の側面で衰えが見られます。早期にフレイルを見つけ、体力と筋力の維持や社会参加の機会を取り戻すことで、介護予防につなげることができます。
このように、寝たきりによる筋力低下には、廃用症候群、サルコペニア、フレイルといった異なる視点や段階の名称が使われ、それぞれが心身の衰えと深く関係しています。なかでも、高齢の方の場合は、これらの状態が連鎖的に進行することが多いとされているため、早期発見と予防的介入が何より重要です。
寝たきりによる筋力低下を防ぐリハビリ
寝たきりによる筋力低下を防ぐためのリハビリを教えてください
寝たきりによる筋力低下を防ぐには、日常的なリハビリの継続が重要です。
まず、ベッド上で行えるストレッチや関節可動域運動で筋肉を柔軟に保ち、拘縮の予防を行います。
次に、腕や脚の筋力を維持するための軽い抵抗運動や筋力トレーニングを取り入れ、立ち上がりや座位の安定性を支えます。
また、可能であれば起き上がりや座位、短時間の歩行訓練を取り入れることで、体幹や下肢の筋力低下を効果的に防げます。
さらに、呼吸筋や嚥下筋のリハビリも組み合わせると、誤嚥や肺炎のリスクを減らせます。これらを医療従事者の指導のもと、無理のない範囲で継続するのが、寝たきり状態でも筋力を維持し、生活の自立度を保つポイントです。
リハビリを行う前にチェックした方がよいことはありますか?
寝たきりの方がリハビリを行う際は、まず体調や健康状態の確認を行うことが大切です。
体温や血圧、呼吸や脈拍の安定性をチェックし、体調に変化がないか確認します。
また、痛みや倦怠感、吐き気の有無も事前に確認し、無理のない範囲で行うことが重要です。さらに、関節や筋肉の状態、床ずれや皮膚の異常がないかもチェックし、リハビリ中に悪化させないよう注意します。
リハビリの内容や強度は、医療従事者の指導に基づき、本人の体力や状態に合わせて調整し、安全性を重視しながら筋力維持や機能回復を進めましょう。
寝たきり予防とリハビリ実施時の注意点
寝たきり状態にならないためにはどうすればいいですか?
寝たきり状態を防ぐためには、日常的に体を動かす習慣を持つことが重要です。
先に述べたように、軽いストレッチや歩行、椅子での体操など、無理のない運動を継続して筋力や関節の柔軟性を維持できます。
また、バランスのよい食事や十分な水分摂取も、体力低下や脱水を防ぐうえで欠かせません。加えて、定期的な健康チェックで病気や痛みを早期に発見し、必要な治療を受けることも大切です。
居住環境においては、生活環境を整え、手すりの設置や滑りにくい床材など安全対策を講じることで、転倒や事故のリスクを減らせます。
こうした対策を組み合わせて、寝たきりを予防しましょう。
寝たきりの方にリハビリを行うときの注意点を教えてください
寝たきりの方にリハビリを行う際は、無理をせず、体調に合わせて進めることが重要です。
過度な運動や急激な負荷は、筋肉や関節を痛めるだけでなく、疲労や体調不良の原因にもなるため避けましょう。運動前には体調や痛みの有無を確認し、必要に応じて休息をとることが大切です。
リハビリは短期間で結果を求めず、長期的な視点で継続すれば効果が期待されます。介助者は声かけや姿勢のサポートを行い、安全で安心できるような環境を整えながら進めましょう。
また、リハビリ運動と併せて、食事内容にも留意することもポイントです。バランスの取れた食事が基本ですが、筋肉の材料となるたんぱく質をしっかりと摂取することで寝たきり予防や筋力維持につながります。
リハビリ実施時に介護者が気をつけることはありますか?
リハビリを行う際、介護者が注意すべきポイントは大きく分けて安全確保と残存能力の活用です。
まず、安全面では、運動中に転倒や負傷が起こらないよう、周囲の環境を整えることが欠かせません。床に物を置かない、滑りやすい場所にはマットを敷く、手すりや安定した椅子を活用するなどの工夫が有効とされています。
また、残存機能を活用することも大切です。できることとできないことを評価したうえで、腕や脚などの動きを介助なしで行うことで、残っている筋力や関節の可動域の維持を目指します。介護者は必要以上に手を出さず、本人の力を引き出す声かけや誘導を意識するとよいでしょう。
さらに、リハビリの負荷や時間にも配慮リハビリの負荷や時間にも配慮が必要です。無理に長時間行ったり、強い負荷をかけたりすると、筋肉や関節を痛めるだけでなく、疲労や体調不良を引き起こす原因につながります。こまめに休憩を挟み、表情や呼吸、声のトーンなどから疲れや痛みのサインを見逃さないことが重要です。
最後に、心理的なサポートも忘れてはいけません。リハビリ中に「大丈夫」「頑張れているよ」と声をかけたり、できた動作をほめたりして、安心感や達成感を与えられます。こうした配慮で、リハビリへの意欲を保ち、継続的に取り組めるよう支援することも大切です。
編集部まとめ
ここまで寝たきりによる筋力の低下についてお伝えしてきました。寝たきりによる筋力の低下の要点をまとめると以下のとおりです。
- 寝たきりは、四肢や体幹の筋力低下、呼吸機能の低下、嚥下筋の衰えや関節拘縮などのリスクが高まる
- 寝たきりによる筋力低下を防ぐためには、ベッド上でのストレッチや関節運動、軽い筋力トレーニングを無理なく継続することが大切
- 寝たきりの方のリハビリを行うときは、無理をせずに、そのときの体調に合わせて安全に行い、継続することが重要
寝たきりの方へのリハビリは、日々の小さな取り組みが、筋力低下の予防や生活の質向上につながります。無理のない範囲で継続し、安全に配慮しながらリハビリを行っていきましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

