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「腸重積(ちょうじゅうせき)」とは?症状や原因についても解説!

 更新日:2023/03/27
「腸重積(ちょうじゅうせき)」とは?症状や原因についても解説!

お腹の病気と呼ばれるものにはさまざまな種類があります。しかし、「腸重積(ちょうじゅうせき)」はあまり聞きなれない方も多いかもしれません。

腸重積は単なる腹痛とは違い、腸管の血流が低下するために、腸管が壊死をして、腸管破裂や腹膜炎などを起こすなどの重症化のリスクを伴います。その一方で、あまり広く知られていないのも事実です。

乳幼児に発症することが多い病気ですが、大人の場合でも、大腸がんなどを理由に腸閉塞となる場合があります。

この記事では、腸重積とはどのような病気なのか、原因・治療法・リスクなどを詳しく解説します。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

腸重積(ちょうじゅうせき)とは

お腹と聴診器

腸重積はどのような病気ですか?

  • 腸重積とは、腸管の一部が後ろ側に入り込んで重なってしまう状態を指します。腸閉塞の状態になってしまうため、放置すると重なった腸管が腐って壊死してしまい、細菌感染や腹膜炎を起こすなどの危険を伴います。
  • 命を脅かす場合もあるため、注意が必要です。重篤な状態に発展することを防ぐためには、できる限り早期に発見・治療を行うことが大切です。
  • 0〜2歳の乳幼児に発症するケースが多く、小児救急を代表する病気の1つでもあります。

どのくらいの確率で発症するのですか?

  • 腸重積の発症率は、およそ1,000人中で2〜4人ほどです。全体のおよそ80%が2歳未満での発症といわれています。
  • 生後6ヶ月までの発症率は極めて低く、生後6ヶ月〜2歳頃が最も腸重積を発症しやすい年齢です。3歳を過ぎると徐々に発症率が下がっていくものの、5歳以降でも確率はゼロにはなりません。
  • 早期の治療が大切なため、特に子どもの体調の変化には周囲の大人が注意を払う必要があるといえます。
  • また、男児の発症率が女児に比べておよそ2倍と、やや高い傾向にあります。しかし、なぜ男児の方が発症しやすいのか医学的には解明されていません。

具体的な症状にはどのようなものがありますか?

  • 腸重積の主な症状には、腹痛・嘔吐・血便があります。しかし、この3つの症状が全て揃うとは限らず、腹痛だけなどのケースもあります。
  • いちごゼリーのような粘血便も腸重積の特徴的な症状のため、粘血便が確認されたら速やかに受診してください。腸重積の症状は間欠的な痛みとしてあらわれる場合も多いです。
  • 10〜15分おきに激しい腹痛を訴え、かと思えば痛みの間隔の合間はなんともなくなり元気に過ごせているという場合も少なくありません。
  • 症状をうまく言葉で表せない乳幼児の場合には、声をあげて泣く・原因不明の不機嫌・顔面蒼白・ぐったりしているなどの様子がみられます。

基本的に子どもの病気と考えてよいのでしょうか?

  • 腸重積を発症する全体のおよそ80%が2歳未満というところからも、基本的には子どもがなりやすい病気だといえます。しかし、大人が腸重積を発症する可能性もゼロではありません。
  • 大人の場合でも、腹痛や血便などの症状があらわれます。放置してしまうと腸閉塞になり、腸管が壊死してしまうなどの重大な問題につながる可能性があります。
  • その結果、細菌感染や腹膜炎が引き起こされてしまうと命が脅かされるおそれもあるため、注意が必要です。

腸重積の原因と治療法

赤ちゃんの診察

腸重積の原因はなんですか?

  • 乳幼児にみられる腸重積の多くは、風邪などのウイルス感染が原因で引き起こされる突発性のものです。
  • 腸壁のリンパ組織が肥大してしまう・腸の蠕動運動に異常が起こるなどの原因が考えられます。ロタウイルスワクチンの接種後などにも腸重積を発症する可能性があるため、注意が必要です。
  • 大人が発症した場合にも同じように突発性のケースが確認されていますが、かなり稀です。大人の腸重積は、小腸ポリープ・悪性リンパ腫・メッケル憩室・重複腸管などの疾患によって引き起こされている可能性があります。
  • また、何らかの理由で開腹手術を行った場合、腸の蠕動運動に異常が生じて腸重積の原因になるケースもあります。

検査方法について教えてください。

  • 腸重積の検査は、まずは問診・触診を行います。10〜15分おきの間欠性の腹痛の有無や、嘔吐・血便の有無を確認することが大切です。
  • 触診で腸にソーセージ状の腫瘤が確認できる場合もあります。また、超音波検査・注腸X線造影検査・CT検査などの画像検査によって診断することも可能です。
  • 治療も兼ねて、非観血的整復とも呼ばれる高圧浣腸を行うケースもあります。

腸重積の治療は手術が必須でしょうか?

  • 腸重積の治療は、早期発見であれば高圧浣腸とも呼ばれる非観血的整復法が用いられます。腸管の重なった部分を押し戻すために、空気や造影剤で肛門側から圧をかける治療法です。
  • 超音波・X線・内視鏡などを使用し、腸重積を起こしている箇所を確認しながら、適切に圧をかけ整復していきます。しかし、非観血的整復法を行えるのは、発症から24時間以内です。
  • 発症から24時間以上経過している、腹膜炎が疑われるなどの全身状態が不良である場合・非観血的整復法で治療ができなかった場合・原因となる病気を取り除く必要がある場合などには手術を行います。
  • 観血的整復法と呼ばれ、開腹手術や腹腔鏡下手術を用いた治療です。また、長時間経過したことによる腸管の損傷が大きければ、手術で腸管の切除を行うケースもあります。

再発する可能性はありますか?

  • 腸重積は、非観血的整復法による治療を行っても、およそ10〜15%は再発するといわれています。数時間〜数日のうちに再発するケースが多いです。
  • また、観血的整復法で手術を行った場合にも、およそ5%が再発する可能性があるといわれています。
  • 繰り返し腸重積が起こる場合、ポリープなどの病気が隠れているケースがおよそ10%ほどの確率でみられるため、注意が必要です。

腸重積を放置するリスクと対処法

女の子腹痛

腸重積を放置するとどのようなリスクがありますか?

  • 腸重積では、重なってしまった腸管部分が閉塞状態を起こします。すると腸管に血液が流れにくくなってしまい、長時間放置すると壊死してしまう可能性が高くなります。
  • 腸管が壊死や腐ったような状態になると、腹膜炎や細菌感染を起こすなど重症化するリスクが高いです。命にも関わるため、できるだけ早く受診して治療を受けることが大切です。
  • また、大人が腸重積を起こす場合は、小腸ポリープ・悪性リンパ腫・メッケル憩室・重複腸管、大腸がんなどの疾患による慢性的な進行が考えられます。
  • 腸重積の治療と併せて、原因となっている病気も早期に治療することが大切です。

早期発見・治療が大切なのですね。

  • 重症化してしまうと命にも関わるリスクがあるため、なるべく早期に発見・治療をする必要があります。
  • 発症から12時間を超えてしまうと、非観血的整復法での対処ができなくなる点にも注意が必要です。
  • 激しい腹痛・嘔吐・血便などの症状がみられた場合、悪化させないためにも放置せずにまずは医療機関を受診するようにしてください。

0~2歳だと言葉がうまく話せないので判断が難しそうです…。

  • 0〜2歳の乳幼児は特に発症率が高いです。まだ言葉で症状を伝えることが難しい場合も多いため、大人が注意深く様子をみてあげる必要があります。
  • それまで機嫌が良かったはずの乳幼児が突然激しく泣き出し、10〜15分おきに繰り返されるなど間欠的である場合には、腸重積が原因となっている可能性が高いです。
  • 激しく泣く・原因不明の不機嫌が続く・顔面蒼白になっている・ぐったりしているなどの様子がみられたら、腸重積を起こしている場合があります。しかし、様子だけでは腸重積かどうかの判断に悩んでしまうケースも少なくありません。
  • 放置するリスクの高さを考えても、まずは医療機関を受診しておくと安心です。また、いちごゼリーのような粘液性の血便も腸重積の特徴です。もしも粘液性の血便が確認されたら速やかに受診してください。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • 腸重積は原因が不明なケースも多い一方で、早期の発見・治療がとても重要です。重症化すると死亡するケースもある恐ろしい病気ですが、乳幼児の発症の割合が高く、不安を抱える保護者の方も少なくありません。
  • 機嫌の悪さや泣き方など、「いつもとなんだか違う」という保護者の方の感覚もとても重要です。腸重積が疑われると感じたら、医療機関を受診しましょう。
  • また、大人が発症する場合には重篤な疾患が隠れているケースが多いです。異変を感じたら放置せず、なるべく早期に受診・治療を行ってください。

編集部まとめ

お母さんと赤ちゃん
腸重積とはどのような病気なのか、原因・治療法・リスクなどを解説しました。

腹痛は日常的に経験するものでもあり、つい我慢したり見過ごしたりしやすい症状でもあります。

嘔吐・血便がなくても腸重積が起こっている可能性もあるため、頭の片隅に置いておくことで対処できる確率が上がります。

大人の体調の変化ももちろんのことですが、特に発症率の高い乳幼児は言葉でうまく表現できないため、大人がしっかりと見守ってあげましょう。

重症化を防ぐためにも早期発見・治療できるよう、異変を感じたら放置せずに受診することが大切です。

この記事の監修医師