【闘病】辛い症状の正体は「高安動脈炎」セカンドオピニオンで判明・始まった難病との闘い
あまり聞きなれない病名である「高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)」とは、大動脈やその他の大きな血管に炎症や狭窄、閉塞を生じ、脳、心臓、腎臓などの重要な臓器に損傷を与える危険な疾患です。2017年の調査によれば、国内に約5000名ほどの患者さんがいるといわれ、国の難病指定もされています。お話を聞いたふぅさん(仮称)は、最初の病院では「高安動脈炎」と診断されず、セカンドオピニオンによって判明したそうです。そこで今回は、発覚の経緯から治療、現在の状況についてお聞きしました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年12月取材。
体験者プロフィール:
ふぅさん(仮称)
夫と娘2人の4人で暮らす50代女性。2010年頃から倦怠感や労作時の左肩甲骨周囲の痛み、息切れを感じ始める。病院を受診するも「心因性」と診断。その後2年間の闘病の末、大学病院にて「高安動脈炎」と正式な診断名がついた。大学病院で冠動脈バイパス術を受けてから10年ほど症状は安定していたが、2022年に再び労作時の胸痛が出現。カテーテル検査の結果、バイパスした血管と冠動脈の狭窄が進行した心筋梗塞に近い状態となり、現在も治療を継続中。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
最初の大学病院では原因不明 ステロイド薬を処方されるが…
編集部
ふぅさんの経験した高安動脈炎について教えていただけますか?
ふぅさん
高安動脈炎は大動脈や主要な血管、肺動脈、冠動脈が炎症と肥厚(壁が厚くなる)をきたし、血管の狭窄、閉塞または拡張する原因不明の血管炎です。患者のほとんどは女性で、特に20歳前後が好発年齢とされています。国の指定難病にも入っており、進行すると脳や心臓、腎臓などの主要臓器への虚血障害を引き起こし、命に関わることもあります。若い女性の場合は妊娠・出産の多い年齢で発症するため、多くの問題につながる病気です。
編集部
ふぅさんの高安動脈炎が判明した経緯についても教えていただけますか?
ふぅさん
2010年頃から倦怠感、労作時の左肩甲骨周囲の痛み、息切れを感じるようになりました。看護師をしていたので、勤務先のクリニックや近くの病院を受診しましたが、「抗核抗体が高いが原因はわからない」と言われました。そこで、大学病院の膠原病内科を受診したのですが、こちらでも診断名はつかず。ステロイド薬を処方され、精神科受診をすすめられました。
編集部
検査をしても原因が全くわからない状態だったわけですね。
ふぅさん
はい。当時の私は特に精神的な問題を抱えていませんでしたが、結局その時は「線維筋痛症」「ベーチェット病」と診断されました。ですが、その後9か月ほど胸痛が続きました。
編集部
正しい診断がついたのは別の病院だったと聞いています。
ふぅさん
はい。当時、娘が別の大学病院の看護専門学校に在学しており、私の症状を心配して授業に来ていた医師に相談してくれたそうです。その医師は「紹介状は要らないからすぐに受診させなさい」と言ってくれました。
編集部
それからどのように進みましたか?
ふぅさん
膠原病内科を受診当日の検査ですぐに「高安動脈炎」と診断され、その日のうちに入院しました。高安動脈炎は炎症で全身の動脈が狭窄するとのことで、「大量のステロイド薬を用いた治療が必要」ということ、さらに放置期間が長く既に心臓の冠動脈のバイパス手術が必要なほど重度の狭心症を発症していました。
編集部
手術はいつ頃行われましたか?
ふぅさん
発症から2年近く経った2012年に冠動脈バイパス術を行い、無事に成功しました。
編集部
現在の病気の状態についても教えていただけますか?
ふぅさん
術後10年間はステロイド薬と免疫抑制剤の内服のおかげで、高安動脈炎の大きな再燃はなく過ごしていました。しかし、2022年に労作性胸痛が出るようになり、循環器内科でカテーテル検査を行いました。その結果、バイパスした血管のほとんどが閉塞して冠動脈も狭窄が進行しており、心筋梗塞直前のような状態になっていました。現在も治療を続けています。
もっと早くセカンドオピニオンをしておけばと後悔している
編集部
病気が判明した時の心境を教えていただけますか?
ふぅさん
とにかくショックでした。早くセカンドオピニオンを受けておけばという気持ちと同時に、やっと診断がついて治療を開始できることに安堵しました。
編集部
病気の告知の際、医師からはどのようなお話があったのでしょうか?
ふぅさん
二回目に受診した大学病院で症状や経緯を話すと、すぐに「典型的な高安動脈炎の症状だ」といわれて、診断に必要な検査をしてくださいました。そして、まずは大量のステロイドで炎症を抑える治療を行い、徐々にステロイドを減量しながら手術ができる状態になるのを待つとの説明でした。
編集部
診断後の生活の変化についても教えていただけますか?
ふぅさん
入院して長期にわたるステロイド治療と手術が必要で、仕事は辞めて治療に専念しました。
編集部
長期入院は大変だったことが想像できますが、治療中の心の支えになったのは何でしょうか?
ふぅさん
なによりも家族の存在です。また、私自身が看護師ですから、いつか病気でこのような思いをした経験が、今後患者さんの心に寄り添い、助けになるのではないかということも大きいです。
編集部
ふぅさんがもし過去の自分、または同じように高安動脈炎で苦しむ患者さんに助言をするなら、どのようなことを伝えたいですか?
ふぅさん
私は看護師でしたから、もう少し症状について自分でも勉強しておけばよかったと思います。そして、早めにセカンドオピニオンをして、正しい診断をしてくれる医師に出会うべきだと言いたいです。
「何かおかしい」と感じたら、手遅れになる前に調べてもらうことが大切
編集部
現在の生活、楽しみなことなども教えてください。
ふぅさん
今も労作時の息切れや胸痛は若干あり、疲れやすさを感じています。ですが、娘の運営する生活介護事業所(障害者デイサービス)を手伝ったり、孫の成長を見たり、旅行をしたりするなど、楽しく充実した日々を送っています。
編集部
高安動脈炎について知らない方のためにメッセージをお願いします。
ふぅさん
高安動脈炎は日本に約5000人しかいない難病で、膠原病の一種です。膠原病の症状は疲れやすい・倦怠感が常にある・怠け病と言われがちですが、「自分も何かおかしい」と感じたら、手遅れになる前にきちんと調べてもらってください。
編集部
ふぅさんは大変な思いをされてきましたが、医療従事者に望むことは何でしょうか?
ふぅさん
患者さんの訴えに耳を傾け、真摯に向き合って一緒に考えてもらいたいです。医師からすると患者の一人に過ぎないかもしれませんが、それぞれに人生があり、大切な命です。もっと一人ひとりの不安な気持ちに寄り添ってほしいです。
編集部
今後の医療業界に期待することはありますか?
ふぅさん
難病の治療法の研究を進めてほしいこと、そして指定されていない難病を指定してほしいです。
編集部
ありがとうございます。最後に記事の読者向けにメッセージをお願いします。
ふぅさん
高安動脈炎は潜在患者数が2万人以上いると想定されているそうです。私のような思いをする方が一人もいないようになることを願っています。
編集部まとめ
高安動脈炎と10年以上の闘病生活を送り、現在も治療を続けながら充実した日々を過ごすふぅさん。高安動脈炎は一見すると倦怠感、息切れ、胸痛などの狭心症や心不全を疑う症状が現れます。また、膠原病は診断の難しさから、検査をしてもすぐに判明しない可能性もあります。しかし、ふぅさんも話していた通り、「何かおかしい」という感覚や自分の症状に違和感を覚えたら、すぐに総合病院や大学病院で精査してもらうことが重要です。早期発見・早期治療を行うためにも、自分が感じている異変は徹底して追求する意識を持ちましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。