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排尿障害や陰部の違和感が増加中! コロナ禍で顕著な男性の「慢性前立腺炎」

 更新日:2023/03/27

新型コロナウイルス感染症の流行がはじまってから早くも2年が経過しました。「神楽坂泌尿器科クリニック」の室宮先生によると、1年前くらいから顕著に増加している病気があるそうです。その1つが、男性に起きる「慢性前立腺炎」とのこと。生活スタイルの変化によるものなのか、それともウイルスの悪影響なのか、最前線の現場を取材しました。

室宮 泰人

監修医師
室宮 泰人(神楽坂泌尿器科クリニック 院長)

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帝京大学医学部卒業。東京女子医科大学病院での研修後、同病院や一般医院にて泌尿器科を中心に臨床を重ねる。2020年、父親が営んでいた銭湯を建て替える形で、東京都新宿区に「神楽坂泌尿器科クリニック」を開院。対話を大切にした相談しやすいクリニックをめざしている。日本泌尿器科学会専門医。日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会、日本抗加齢医学会、日本性感染症学会、日本臨床腎移植学会、日本透析医学会の各会員。

慢性前立腺炎の原因

慢性前立腺炎の原因

編集部編集部

昨今、先生の専門である泌尿器科で顕著な動向はありますか?

室宮 泰人室宮先生

ちょうど1年前くらいから、「慢性前立腺炎」の患者さんが増えてきているように思います。男性に限られるのですが、一般的に考えられる罹患率より顕著に増加していて、陰部周辺の痛み、違和感、残尿感や頻尿などの自覚を訴える人が多い傾向にあります。

編集部編集部

前立腺は、男性にしかない器官ですよね?

室宮 泰人室宮先生

はい。前立腺は男性の尿道の周辺を囲むように位置しています。慢性前立腺炎というと「炎症」を起こしているように受けとられがちですが、「血流障害による不具合」がこの病気の本質で、炎症は起きません。そして、前立腺の血流障害が、感染症による自宅での“座り仕事”によって増加していると推測されます。また、肥満も慢性前立腺炎のリスク因子です。

編集部編集部

体重が増えると、座ったときの前立腺への負担が増えるということですか?

室宮 泰人室宮先生

そういうことです。そして、昨今の感染症による運動不足が体重の増加を招いています。また、運動不足そのものも血行を滞らせるので、悪循環と言えるでしょう。ところが、慢性前立腺炎は座っている姿勢を解除してあげれば予防できる病気です。そのため、対策として1時間に1回は、立ち上がるよう心がけてください。

編集部編集部

自覚の1つに頻尿がありますが、「自宅でついつい飲み物を飲み過ぎてしまうから起きる」ということはないのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

その可能性も含めて、一度クリニックで調べてみましょう。あるいは、「トイレが頻繁に目に入るから、それだけ尿意を催している」のかもしれません。もし、検査のうえ「正常だ」ということがわかれば、それも立派な受診動機です。医療機関が治療のためだけに存在しているとは限りませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

慢性前立腺炎になりやすい人の特徴

慢性前立腺炎になりやすい人の特徴

編集部編集部

一方の「陰部の違和感」はピンときません。どういう感じなのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

感じ方は人によって異なりますが、ムズムズした感じは受診のサインの1つです。また、自覚の中身を問わず「いつもと様子が変だな」と感じれば、それが受診動機になりますし、男性だけでなく女性にも起こり得ます。もちろん女性が慢性前立腺炎になることは考えられませんが、膀胱炎のようなほかの病気の可能性があるので、陰部の違和感を覚えたら医療機関で確認しておきましょう。

編集部編集部

今回は慢性前立腺炎に限定するとして、どう診断を付けるのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

慢性前立腺炎の診断には、お尻から指を入れて診察する「直腸診」が多用されています。ただし、デリケートな問題なので、当院ではあまりおこなっていません。尿検査で感染による炎症の可能性を排除するといった、「ほかの病気との診断が付かない場合」に慢性前立腺炎を疑います。

編集部編集部

慢性前立腺炎を疑って来院する患者層に特徴はありますか?

室宮 泰人室宮先生

まずは、男性であることです。そして、デスクワークの多い中間管理職というイメージがあったものの、感染症の流行で様変わりしました。比較的若い人でも慢性前立腺炎と診断が付く場合も増えています。また、日常的に自転車を使っていたり、車を長時間運転したりする人にも多い傾向にあります。とにかく「生活や仕事で長時間座っていること」がリスク因子なので、当てはまったら要注意です。

編集部編集部

ただ、自覚の中身によっては「泌尿器科を受診する」という発想が湧かなそうです。

室宮 泰人室宮先生

たしかに、オシッコの悩みなら泌尿器科を連想するでしょうが、お尻の近くの痛みとなると消化器科などが思い浮かぶかもしれませんよね。いずれにしても、医療機関を受診していただければ、その医院で適切な標榜科を教えていただけます。まずは、「リモートワークなどで座る時間が増え、そのことでお尻や陰のうが圧迫され、血流不足による不具合が起こり得る」ということを知っておいてください。

慢性前立腺炎の治療

慢性前立腺炎の治療

編集部編集部

慢性前立腺炎の治療では、血行促進が目的になるのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

はい。生活指導のほか、血行を促進する薬に保険が適用されています。ただし、薬をやめると再発する人が一定数いらっしゃいます。やはり、薬だけでなく、「座り続けている時間を少なくする工夫」が必須です。座っていること自体がダメなのではなく、1時間を目処に立ち上がる習慣をつけていただきたいです。

編集部編集部

慢性前立腺炎を放置していると、どうなるのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

症状として現れているとしたら、生活の質が下がります。また、「前立腺肥大症」という別の病気へ進行する可能性もあります。問題は、症状に現れないので血流障害に気づいていないこと、あるいは「一時的な症状だろう」と見過ごしていることでしょうか。この機に、慢性前立腺炎という病気があることを知っておいてほしいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

室宮 泰人室宮先生

慢性前立腺炎の自覚症状には、病気と認識しにくい「ムズムズしたなんとなくの違和感」も含まれます。もちろん、このサインは十分な受診動機です。感染症の影響もあって罹患率が高まっているため、心当たりがあればほかの病気の可能性も含めて、一度は調べることをおすすめします。

編集部まとめ

慢性前立腺炎は、お尻や陰部の圧迫により血流障害が起きることで発症するとのことでした。例えば、正座を1時間もすれば、足が痺れてきますよね。それと同じことが陰部に起こっていても不思議ではないということです。新型コロナウイルス感染症をきっかけに座る時間が長くなったことで、下腹部のムズムズ感があったり、トイレのタイミングが異なってきたりしたら、念のために受診しておきましょう。その変化は、もしかしたら病気のせいかもしれません。

医院情報

神楽坂泌尿器科クリニック

神楽坂泌尿器科クリニック
所在地 〒162-0804 東京都新宿区中里町13
アクセス 東京メトロ東西線 神楽坂駅 徒歩3分
東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅 徒歩7分
都営大江戸線 牛込神楽坂駅 徒歩9分
診療科目 泌尿器科・女性泌尿器科・内科

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