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【闘病】「できる時にやれることを」をモットーに全身性エリテマトーデスと向き合う

 更新日:2024/08/20
〜実録・闘病体験記〜 「できる時にやれることを」をモットーに全身性エリテマトーデスと向き合う

中学2年生の時に、関節痛や頭痛、長期の微熱に悩まされ、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の診断がつくまでに約半年を要したasamiさん(仮称)。彼女がどのようにSLEを発症し、これまで病気と向き合ってきたのか。詳しく語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。

asamiさん

体験者プロフィール
asamiさん(仮称)

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静岡県在住、1991年生まれ。2005年、中学2年生のときに関節の痛みや頭痛、長期の微熱などの症状があり病院を受診するも原因がわからず、約半年後に「全身性エリテマトーデス(SLE)」と診断される。現在はステロイド薬が徐々に減り、体調も安定。なお、母親もSLEを発症している。Instagramで同じ病気を抱える人へ向けた発信している。SLE患者・家族の会→@sle_s_fa、病気によって外見に出る副作用やコンプレックスがある方に向けた美容情報を発信→@p.beauty_ala(Alaパーソナルビューティー)

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

対症療法ばかりで快方に向かわず、診断までに半年を要した

対症療法ばかりで快方せず、診断がつくまでに半年を要した

編集部編集部

「全身性エリテマトーデス(SLE)」とはどのような病気なのでしょうか?

asamiさんasamiさん

難病であり膠原病の中の一つで、免疫機能が異常に働き、自分自身の身体を攻撃してしまう病気です。初期症状としては、発熱や関節痛が主ですが、腎臓機能やシェーグレン症候群などの合併症も発症しやすくなります。私自身は、発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、体力の低下といった症状が現れました。完治は難しいため、症状にかなり個人差があるので、自分なりに向き合っていく必要のある病気です。

編集部編集部

発症当初は学生だったそうですが、生活にはどのような変化がありましたか?

asamiさんasamiさん

診断前は体調が悪く学校に行けなくなってしまい、「今まで皆勤賞だった私がどうしたのだろう」と悔しかったです。だるさがひどく、移動教室の際も休み時間いっぱいかけて移動していました。診断がついてからは、日光を避けるために日傘をさして学校へ行ったり、外の体育は見学したりと制限がありました。また、免疫抑制剤の服用によって感染症にかかりやすいため、1年中マスクをしていました。

編集部編集部

診断がつくまでに約半年かかったそうですが、それまでの経緯を教えてください。

asamiさんasamiさん

2005年に関節の痛み、頭痛、長期の微熱、だるさなどの症状があり何件も病院を受診しましたが、対症療法ばかりで良くなりませんでした。ある日形成外科を受診し、血液検査をしたところ、肝臓の数値が悪いことが判明し、総合病院を紹介されました。そこで筋電図、肝生検、リンパ生検などの検査をしたところ、免疫機能や筋肉の数値も悪かったため、「混合性結合組織病」と診断され、後に「全身性エリテマトーデス(SLE)」と診断名がつきました。症状が出てから、約半年かかりましたね。

編集部編集部

診断までに何科を受診し、病院ではどのような検査を行いましたか?

asamiさんasamiさん

内科、眼科、消化器内科、膠原病科、産婦人科、形成外科、口腔外科を受診しました。血液検査、X線検査、筋電図、肝生検、リンパ生検、大腸カメラ、CTの検査を受けました。

編集部編集部

診断がついたときの心境について教えてください。

asamiさんasamiさん

正直ほっとしました。長期間検査が続き、その間も体調が悪くなる一方で、学校に行かなければという不安ばかり募っていたので、診断がつき、「後は治療するだけだ、学校も行かなくていいんだ」と不安から開放されました。

編集部編集部

お母様も「SLE」だと聞きましたが。

asamiさんasamiさん

はい。母が近くで治療している様子を見ていて、症状も落ち着いていたので、自分が患っても不安は少なかったです。何より母は明るい人なので、私もなんとかなるだろうという精神を保てました。

編集部編集部

「SLE」は遺伝するのでしょうか?

asamiさんasamiさん

遺伝によるものかは不明です。発症した当時はその関係は証明されてないと言われましたが、今どういう研究がなされているか私も知りたいですね。

パルス療法によって症状は快方へ向かったが外見に現れた変化に悩まされた

パルス療法によって症状は快方へ向かったが外見に現れた変化に悩まされた

編集部編集部

どのように治療を進めていくと説明がありましたか?

asamiさんasamiさん

医師からは、2〜3か月入院しパルス療法を行うと説明がありました。パルス療法については、点滴でステロイドの多量投与を行ったあと、ステロイドの服薬に移行し、25mgになったら退院、その後は免疫抑制剤やその他服薬での治療に切り替え、月1回程度の通院で様子を見ていくという説明がありました。

編集部編集部

治療を開始して、体調はよくなりましたか?

asamiさんasamiさん

治療が始まる1か月ほど前から、だるさで起き上がることもままならない状態になり、ほとんど登校できない状態でしたが、治療(パルス療法)が始まると2か月弱の入院で、みるみるうちにだるさや痛みが消失していきました。その代わり薬の副作用との戦いが始まり、食欲が増し、顔がパンパンになって見た目も変化してしまいました。

編集部編集部

退院後はどのような生活を送られましたか?

asamiさんasamiさん

その後の学生生活は入院を何回か繰り返しましたが、周りの方のおかげで大学卒業まで楽しく過ごすことができました。卒業後は正社員として就職し、働いている間に入院もしましたが、薬の調節をしながら3年ほど働くことができました。

編集部編集部

退院後は服薬に切り替えたとのことですが、具体的にどのような薬を飲まれていたのでしょうか?

asamiさんasamiさん

プレドニン(ステロイド)、ビタミンD剤、中性脂肪の薬、抗骨粗鬆症薬(ビスホスホネート系製剤)、胃薬です。

編集部編集部

正社員としてお仕事されるまで、体調が安定していたのですね。

asamiさんasamiさん

しばらくは安定していました。しかし、大学卒業後に就職した職場から転職したあとに、腹膜炎にかかってしまい1か月ほど入院しました。その後も同じような症状が現れ、1年に1~3回ほど入院しました。SLEもくすぶっていたので2020年4月に検査入院をすることになりました。脱毛や皮膚が荒れるなどの症状が現れ、SLE治療の強化を行うことになり、免疫抑制剤を増薬しました。現在はステロイド薬を徐々に減らし、体調も落ち着いています。

編集部編集部

腹膜炎はSLEの合併症なのでしょうか?

asamiさんasamiさん

当時は不明で、ストレスや疲れが溜まった時に感染症にかかりやすいのもあって、発症したのではないかということでした。その後、腸の辺りが調子の悪いことが多かったため、2020年の検査入院のときに血液検査、造影CT、大腸カメラ検査、婦人科系の検査をした結果、「SLEの合併症によるものではないか」という結論になりました(直接的に原因が見つかったわけではなく、薬の副作用やほかの病気によるものということを排除した結果)。医師からは、「腸の血流が悪くなってしまったのかもしれない」とも言われました。免疫抑制剤(ベンリスタとセルセプト)を再開したことによって現在は数値も腸の調子も良くなっています。

体に少しでも違和感を感じたら病院受診を

体に少しでも違和感を感じたら病院受診を

編集部編集部

病気と向き合っていく上で心の支えになっているものは何ですか?

asamiさんasamiさん

家族や友達です。診断がつく前は母がいろいろな病院に連れて行ってくれましたし、辛くて気持ちが溢れてしまったときは一緒に泣いてくれました。母は相当辛かったと思いますが、それでもマイナスなことは言わないんです。家族が皆明るいので、私も前向きでいられます。友達は、遅すぎる私の歩幅に合わせて歩いてくれました。学校を休んだ日は毎日ノートを家に届けてくれました。その恩返しをする為に私は生きています。経済力や体力は人より劣りますが、せめて笑顔で生きることで家族を安心させたいと思っています。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

asamiさんasamiさん

新しく始めた薬が合っているのか、検査の数値も良くなっており、体調も良いです。午前中に不調なことが多かったため、夜勤の仕事をしているのですが、午前中の体調も落ち着いてきたので、日中の仕事に復帰しようかなと考えられるようになりました。さらに病気の方を支える側の活動も少しずつ始めています。

編集部編集部

SLEを意識していない人に一言お願いします。

asamiさんasamiさん

いつ誰がなってもおかしくない病気です。SLEの初期症状は風邪に似ているため、病院を受診するのが遅れ、合併症が出てしまう方も多いようです。少しでも変だなと思ったら怖がらず病院へ行ってみてください。何もないことが一番ですが、何かあっても早く見つかって良かったと思えるはずです。あなたのことを思ってくれている方のために行動してみてください。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

asamiさんasamiさん

担当医が何度か変わりましたが、皆さんが本当に優しく接して下さり、心身ともに何度も助けられました。この病気は同じデータでも患者さんによって感じ方が大きく変わります。これからも会話や診察の時間を大切にしていただけたらと思います。

編集部編集部

最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。

asamiさんasamiさん

病気の方も健康の方も、辛い時、前を向けない時もあると思います。そんな時に自分を奮い立たせる何かがあると、前を向けるきっかけになるのかなと思います。できないことを悲観するのではなく、できることを探すと前を向ける気がします。私は「できる時にやれることを!」をモットーにしています。病気になったからこそ分かることもあります。近年はSNSも普及し仲間との交流や情報交換も以前よりしやすくなりました。自分だけで抱え込まず、周りに目を向けると明るい気持ちになれるかもしれません。

編集部まとめ

全身性エリテマトーデス(SLE)は多くの研究が行われていますが、今のところはっきりとした原因はわかっていないようです。発症している人の男女比は、1:9で圧倒的に女性に多い病気であり、すべての年齢に発症します。子供を産むことの出来る年齢、特に20-40歳の女性に多いとされています。倦怠感や発熱など、風邪症状と似ていることから受診が遅れてしまう危険性があるので、asamiさんが言うように、身体に違和感を感じたら早めに病院を受診することが大切だと感じました。

この記事の監修医師