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【子どもの弱視】3歳児健診を受けた後でも眼科で視力を確認したい。弱視を見逃す可能性「大」

 更新日:2023/03/27
【子どもの弱視】3歳児健診を受けた後でも眼科で視力を確認したい。弱視を見逃す可能性「大」

眼鏡かけてもよく見えない弱視。視力は生まれてきたとき、0.1程度しかありません。通常は成長とともに自然に視力も向上し、3歳で1.0程度になるのですが、左右の度数差(不同視弱視)や過度な遠視や乱視(屈折異常弱視)、斜視(斜視弱視)など見えづらい条件があると視力の成長がうまくできず、眼鏡やコンタクトレンズを使っても「良く見えない状態」のまま、大人になってしまうそうです。そんな子どもの弱視を、普段の生活の中で見つけることはできるのでしょうか。「前橋みなみモール眼科」の高橋先生を取材しました。

高橋大樹医師

監修医師
高橋 大樹(前橋みなみモール眼科 院長)

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山梨大学医学部卒業。大学病院や民間医療機関での眼科診療を経た2019年、群馬県前橋市に「前橋みなみモール眼科」開院。土日祝日対応の「通いやすいクリニック」を心がけている。日本眼科学会認定眼科専門医。日本眼科医会、日本小児眼科学会、日本近視学会、日本弱視斜視学会、日本眼科アレルギー学会、日本網膜硝子体学会の各会員。

サインの出ない弱視は気づきようがない

サインの出ない弱視は気づきようがない

編集部編集部

ヒトの「見る力」は子どものうちに築かれると聞きます?

高橋大樹医師高橋先生

はい。「網膜に映った映像を解析する力」は、おおむね8歳までに身についていきます。なお、弱視は「3歳児健診」でもチェックしますが、その際、「各ご家庭で測定した結果」を参考にすることが多いようです。ただし、3歳のお子さんがふざけたり、目をふさいでいるはずの手の隙間からズル見したりする中、どこまで正確に測定できるかは疑問の残るところですね。

編集部編集部

すると、3歳児健診の後でも、眼科で視力測定をするべきですか?

高橋大樹医師高橋先生

そのほうが安全だと思います。知り合いで、視能訓練士という視力測定の国家資格者の方が、自分のお子さんの弱視に普段の行動からは気づかなかったことすらあります。お子さんが片目でも見えていると、普段の行動からはわからないものです。

編集部編集部

そうなると、インターネットに載っている「弱視のサイン」は、あながち参考にならない?

高橋大樹医師高橋先生

サインが出ていれば弱視を疑えます。その点で、「見えにくそうにしている/目を細めている/上目使いになっている/首を傾けて見ている」などの各種サインは有効でしょう。問題は、片目では見えていて、サインが出ない場合です。また、幼いお子さんなら「見える、見えない」ということ自体、良くわかっていないはずなので、「これが見える?」などと聞いても「見える」と答えてしまいがちですよね。やはり、眼科医のようなエキスパートに、判断してもらうべきではないでしょうか。

編集部編集部

「視力検査は正常でした」という結果だとしても、診てもらっていいわけですね。

高橋大樹医師高橋先生

そのとおりです。保護者のなかには、「異常がないのにいいのかな?」と心配する方がいらっしゃるものの、全く遠慮不要です。視力検査の結果、「視力が出ている」ということであれば、弱視の不安はなくなります。不安を取り去ることも受診の大きな目的で、治療と切り離して考えていただきたいですね。その際、「小児眼科」を受診すると確実でしょう。医師や検査員がお子さんに慣れています。

弱視の原因が斜視の場合もある

弱視の原因が斜視の場合もある

編集部編集部

ちなみに、斜視と弱視は違うのですか?

高橋大樹医師高橋先生

斜視は、両方の目の見ている方向がずれている状態のことです。なお、「斜視弱視」といって、弱視の原因が斜視の場合もあります。真っ直ぐ見ていないほうの目の「網膜に映った映像を解析する力」の成長が遅れているからです。その一方、斜視でも視力を獲得する子はいます。「解析する力」を獲得していれば、残るは、ずれの問題だけです。

編集部編集部

チェックすべき日常のサインがさらに追加されるわけですか?

高橋大樹医師高橋先生

斜視は、サインというより「両目のずれ」を見て判断します。ヒトは寄り目ができるので、外側に外れている状態からでも視線はそろえられるのです。問題なのは、内側にずれている内斜視ですね。心配であれば、外斜視でもお気軽にご相談ください。

編集部編集部

先般と同じく、安心材料を得るための受診でも構わない?

高橋大樹医師高橋先生

そういうことです。視力の成長が遅れている「斜視弱視」なのか、視力の獲得はできていてずれの問題だけなのか、まったくの加療が不要なのか、その確認を早めにしておきましょう。

弱視の治療方法は?

弱視の治療方法は?

編集部編集部

仮に弱視と判明した場合、どのように治療していくのでしょう?

高橋大樹医師高橋先生

弱視用の眼鏡で「見る」トレーニングを続けていきます。目に入った映像は、脳で認識するために、通常自然にピントが合わされます。これが「見る力」ですね。ところが弱視の場合、そもそもピントが合わせられないので、目も脳も鍛えられません。ですから、眼鏡で矯正して、ピント合わせをしていきます。

編集部編集部

片目と両目の弱視で、治療に違いはありますか?

高橋大樹医師高橋先生

両目が弱視の場合は、眼鏡が有効です。ところが片目の弱視の場合、どうしても「視力が良い方の目」だけを使おうとしてしまいますので、目薬やアイパッチなどを用いて、あえて「苦手なほうの目」だけで物を見るトレーニングが欠かせません。アイパッチは見える方の目をふさいでしまうので、見た目の問題も含めて子供にストレスが大きくなります。目薬は見えづらくなるだけで、見た目は普通なので比較的ストレスが少なくなります。

編集部編集部

目薬とアイパッチ、どのように使い分けているのですか?

高橋大樹医師高橋先生

当院では普段の治療では、基本は目薬で、状態が悪くしっかり治療しなければいけない場合は、アイパッチを使うことにしています。片目の弱視の治療には「オクルパッド」という機械が使われることもあります。これは特殊な眼鏡をかけ、弱視の目だけで画面が見えるようにした状態でトレーニングを行う方法です。

編集部編集部

治療のゴールは、両目ともに視力1.0が出ているかどうかですか?

高橋大樹医師高橋先生

そうです。ただし、眼鏡をかけて1.0なのか、裸眼で1.0なのかは、医師によって考え方が異なります。また、条件によって眼鏡を外せないこともあり、たとえば乱視による弱視の場合、将来的にも眼鏡は必要になることが予想されます。なお、度数の差があると弱視の再発リスクになるほか、遠近感を取りにくいので、スポーツや運転がしにくくなります。ですから、両目の度数差をできる限り減らすことが求められます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

高橋大樹医師高橋先生

8歳を過ぎると、弱視の治療が難しくなります。片目でも視力が出ていれば、ご本人は「そういうものだ」と思っているので、特段のサインを出さないでしょう。そして将来、視力の出ている目になにかが起きると、とたんに生活しづらくなります。このリスクを3歳児健診が終わった後でも確認しておいてください。

編集部まとめ

弱視を見逃さないためのサインは、インターネット上に多く出回っています。しかし、「サインを出さない弱視」があるとしたら、気づきようがありません。一部の自治体で3歳児健診に「スポットビジョンスクリーナー」という弱視発見のスクリーニング検査を導入しているものの、別途、視力検査を受けさせたほうが良さそうです。このときの視力検査の目的には、「問題なく正常だったことを確認する」意味もあります。

医院情報

前橋みなみモール眼科

前橋みなみモール眼科
所在地 〒379-2143 群馬県前橋市新堀町1047 前橋みなみモール
アクセス 前橋南I.Cすぐ
主要駅「前橋」「高崎」「伊勢崎」
診療科目 眼科、小児眼科、アレルギー科

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