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シャントやカテーテルとは? 人工透析にはあらかじめ手術が必要って本当?

 更新日:2023/03/27

腎機能の低下を医療機器によって補う人工透析。その方法には、血液透析と腹膜透析という2種類の選択肢がある。ひらくクリニックの吉田啓先生によると、いずれの場合でも、事前に手術が必要とのこと。どのような手術を、どこへ、何のためにおこなうのだろう。それぞれの方法ごとに整理してみた。
吉田 啓

監修医師
吉田 啓(ひらくクリニック 院長)

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東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学附属病院腎臓・高血圧内科勤務、同大学附属第三病院腎臓・高血圧内科勤務をへた2014年、東京都世田谷区にひらくクリニック開業。2018年には透析センター併設のため隣接地へ移転・増床。患者さんが未来を「ひらいて」いけるよう、日々の診療に努めている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、慈恵医大第三病院非常勤診療医員。

血液透析は「腕」、腹膜透析は「おなか」に手術

血液透析は「腕」、腹膜透析は「おなか」に手術

編集部編集部

人工透析には2種類あると聞いたことがあるのですが?

吉田先生吉田先生

はい。人工透析には医療機関でおこなう血液透析と、自宅や職場でおこなう腹膜透析の2種類の方法があります。一般的なのは血液透析で、国内では95%以上が血液透析を選択しています。

編集部編集部

血液透析と腹膜透析はどう違うのでしょう?

吉田先生吉田先生

血液透析は静脈から血液を取り出し、透析器を介して老廃物や余分な水分を取り除き、また血管に戻します。腹膜透析は透析装置として、自分の腹膜を使う方法です。

編集部編集部

その際、事前の手術が必要と聞きましたが?

吉田先生吉田先生

はい。血液透析では、腕に「シャント」と呼ばれる透析専門の血管をつくる手術が必要になります。元からある自分の静脈に針を刺しても透析に十分な血流量はとり出せないため、血流が豊富な血管を手術で作製する必要があるのです。このシャントには、自分の静脈を使うケースと、人工血管を埋め込むケースがあります。腹膜透析では、あらかじめ腹部へ「カテーテル」を埋入して、古い透析液と新しい透析液の交換をします。

編集部編集部

人工血管について、詳しく教えてください。

吉田先生吉田先生

テフロンやポリウレタン素材を使用していて、5ミリ程度の太さがあり、つぶれにくいようになっています。そのほうが、血液を十分に取り入れられるからです。なお、針を刺した箇所は、すぐにふさがってきます。ただし、感染症のリスクがあるため、第一優先はご自身の静脈です。ご自身の静脈が細くて適していない場合に、人工血管を用います。

編集部編集部

血液透析でシャント手術をしないとどうなるのでしょう?

吉田先生吉田先生

手術をしなくても血液透析をするのに十分な血液を体外にとり出す方法として、首の太い静脈にカテーテルを留置する方法や、肘の動脈に直接刺す方法もあります。しかし、前者の静脈カテーテルは血栓ができやすいという欠点があり、後者についても動脈は皮膚よりも深いところを走っているため、針が刺しにくいという欠点があります。皮膚の浅いところに透析専用のシャントを作っておくことで、利便性や安全性が増します。

シャント手術の流れ(血液透析の場合)

編集部編集部

シャント手術では、どの血管をどうつなぐのですか?

吉田先生吉田先生

腕の動脈と静脈をつなぐことで静脈の血流量を増やすことができます。静脈は皮膚の近くにあって採血しやすい反面、血液の流れが緩やかで十分な血流量を確保できません。そこで、流量の多い動脈から血液を持ってきて、静脈の血流量を増やして透析に必要な血流量を確保する。それがシャントの仕組みです。

シャント手術

編集部編集部

シャント手術から透析開始までの流れについてお願いします。

吉田先生吉田先生

シャント手術自体は日帰りでおこなえます。ただし、自分の静脈の場合、静脈に流れる血流量が増えるまで待つ必要があります。シャントが使えるようになるまで、2週間程度はかかるでしょう。よほどの緊急性がある場合は、人工血管を埋めて、翌日から透析するケースもあります。

編集部編集部

シャントについて、生活する上での注意点はありますか?

吉田先生吉田先生

感染症対策がメインになります。透析をおこなった日は、とくに注意してください。シャワーなら構いませんが、入浴は控えるようにします。なお、シャントが細くなってきたら、細くなった箇所を内側からバルーンでふくらませることでシャントを太くすることもできます。

カテーテル手術の流れ(腹膜透析の場合)

カテーテル手術の流れ

編集部編集部

腹膜透析の仕組みについて、簡単な説明をお願いします。

吉田先生吉田先生

腹膜とは、胃腸周辺の内臓をすっぽり覆っている膜のことです。膜自体は閉じていて、ここに透析液をためることができます。内臓の表面には血管が走っているため、これを利用して、体の中で透析をおこなうことができるのです。汚れた透析液はカテーテルを通じて排出し、再びきれいな透析液を入れておきます。

編集部編集部

こちらも、カテーテル手術から透析開始までの流れを教えてください。

吉田先生吉田先生

カテーテルを埋入したときの傷がくっつくまで、早い人で1週間といったところでしょうか。なお、腹膜透析はご自宅や職場などでおこなえるため、月1回の通院で済みます。1日4回、決められたタイミングで透析液の交換をしてください。

編集部編集部

腹膜透析の注意点はありますか?

吉田先生吉田先生

何にも増して、自己管理が必要ということです。このとき「ドライウェイト」という指標を目安にしていきます。「ドライウェイト」とは、体内の水分が適切なときの目標体重です。現体重からどれだけかけ離れているかをチェックして、なかなか近づかないようなら、医師へ相談しましょう。透析液の中身など、透析条件を変更します。また、おなかが痛くなったら、感染による腹膜炎が考えられます。すぐに受診してください。

編集部まとめ

シャントに使う人工血管や腹膜透析のカテーテルを見せていただきましたが、いずれもしなやかで丈夫なことに驚きました。これだけ軟らかければ、手術を受けても、そんなに違和感は覚えないでしょう。また、初診から透析開始までの期間は最短で1日、長くて約2週間とのこと。人によっては「短い」と感じるかもしれませんが、余裕をもって、多くの選択肢が選べるようにしておきましょう。

医院情報

ひらくクリニック

ひらくクリニック
所在地 〒157-0065 東京都世田谷区上祖師谷5丁目18−9
アクセス 京王線「仙川駅」から徒歩約12分
成城学園前駅、狛江駅、調布駅より「若葉町二丁目」バス停下車、徒歩約1分
診療科目 内科・腎臓内科・糖尿病内科・シャント手術・人工透析・各種健診・がん検診

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