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2×4(ツーバイフォー)装置を使った歯列矯正とは?適応年齢やメリット、費用相場を解説

 公開日:2025/12/23
小児歯科で診察台で笑顔の女の子

2×4(ツーバイフォー)装置は、乳歯と永久歯が混在する時期の子どもに使う部分的な矯正装置です。

小児矯正の第1期治療で使われ、適切な時期に行うことで将来の本格矯正がスムーズになるなどのメリットがあります。

ただし、使用に伴うリスクや注意点もあるため、治療を始める前にしっかり理解しておくことが大切です。

小田 義仁

監修歯科医師
小田 義仁(歯科医師)

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小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事

2×4(ツーバイフォー)装置を使った歯列矯正

歯列矯正の治療をしている女の子
2×4装置は、子どもの前歯が永久歯に生え変わった時期から使用できる部分的な歯列矯正装置です。ここでは、2×4装置の特徴と適応年齢を解説します。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正の特徴

2×4装置は、前歯にブラケットを装着し、ワイヤーで連結する固定式の装置です。取り外し式では難しい、精密な歯の配列を実現できる点が大きな特徴です。

少数の歯のみを動かす簡易な構造であり、主に混合歯列期における前歯のねじれや位置ずれの改善に用いられます。

さらに、これから生えてくる永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保するという重要な役割もあります。乳歯と永久歯が混ざっている時期に前歯の傾斜や重なりを改善することで、後から生えてくる歯が並ぶ余地を作ることが可能です。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正の適応年齢

2×4装置は、主に小学校低学年から高学年のお子さんが対象です。具体的には、上下の前歯4本ずつと第一大臼歯が永久歯に生え変わった時期、おおよそ7歳から10歳頃が適応年齢です。

この時期は乳歯と永久歯が混在する混合歯列期と呼ばれ、顎の成長が活発な段階にあります。

成長の力を利用することで、歯を動かしやすく、治療が可能です。前歯の重なりや出っ歯、受け口などの症状が見られる場合に、この装置が選択されることがあります。

ただし、適応年齢はあくまで目安であり、お子さんの歯や顎の発達状態によって治療の開始時期は異なります。身体の成長とともに症状が悪化する可能性がある場合は、早期の検査が望ましいとされているため、気になる症状があれば歯科医師に相談することが大切です。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正のメリット

男の子にポイントを説明する男性の医者
2×4歯列矯正は、成長期のお子さんに適した治療方法です。顎の成長を利用して歯並びを整えることで、将来的な負担を軽減できるという利点があります。

歯の位置を調整できる

2×4歯列矯正では、前歯の位置を適切に調整できます。上下の前歯4本と奥歯2本にブラケットと呼ばれる装置を装着し、ワイヤーの力を利用して歯を少しずつ動かしていく仕組みです。

乳歯から永久歯に生え変わる時期に治療を始めることで、永久歯が正常な位置に生えるスペースを確保できます。出っ歯や受け口などの歯並びの問題を早期に改善し、口元の見た目を整えることが可能です。

成長期の顎骨はやわらかく動きやすい特徴があるため、大人になってから治療するよりもスムーズに歯を移動させられる利点があります。

歯を抜くことなく歯列矯正を行える可能性がある

歯科治療を受ける子供
早い時期から2×4歯列矯正を始めると、将来的に永久歯を抜かずに済む可能性が高まります。顎の成長段階で治療を行うことで、永久歯が並ぶための十分なスペースを作り出せるためです。

歯が重なり合ったり、でこぼこに生えたりする叢生と呼ばれる状態を防ぎ、自然な歯並びへと誘導できます。永久歯列期に本格的な歯列矯正が必要になった場合でも、抜歯を回避できる可能性が高まります。

健康な歯を残しながら美しい歯並びを目指せる点は、お子さんの将来を考えると大きなメリットです。

顎の変形を避けられる

2×4歯列矯正は、顎骨の変形を防ぐ役割を果たします。成長期に骨格的な問題を早期発見し、適切な治療を行うことで、顎の過度な成長や左右のバランスの崩れを改善できるのです。

下顎が小さい場合は成長を促す治療を行い、上顎が出ている場合は成長を抑える治療が可能です。顎のバランスが整うことで、噛み合わせの機能が向上し、将来的に外科手術を伴う歯列矯正治療を避けられる可能性が高まるでしょう。

お子さんの健やかな成長をサポートする治療方法として注目されています。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正のデメリット

虫歯の治療をする子供
2×4装置による歯列矯正治療には、成長期に適した多くのメリットがある一方で、注意しておきたいデメリットもあります。治療を検討する際は、これらの点を十分に理解しておくことが大切です。

むし歯になりやすい

2×4装置を装着すると、歯の表面に歯列矯正器具が付くため、食べ物が溜まりやすくなります。装置の周りは歯ブラシが届きにくく、普段よりも丁寧に磨く必要があるでしょう。

磨き残しがあると、むし歯や歯茎の炎症が起こるリスクが高まってしまいます。特にお子さんの場合、自分だけで完璧に磨くのは難しいため、保護者の方による仕上げ磨きや確認が欠かせません。

治療中は定期的に歯科医院でクリーニングを受け、口腔内を清潔に保つことが重要です。また、甘い飲み物や間食を控えるなど、食生活の見直しも必要になるでしょう。このように、装置を付けている期間は通常よりも丁寧なケアが求められます。

治療開始時期が特定されている

2×4装置は、主に6歳から10歳頃の成長期に使用される治療法です。この時期は上の前歯が生え変わった頃で、顎の成長を利用しながら歯並びを整えることができます。しかし、成長期を過ぎてしまうと、この装置では十分な効果が得られない場合があるでしょう。

お子さんの歯の生え変わりや顎の成長状態によって、適切な開始時期は個人差があります。早すぎても遅すぎても効果が限定されるため、歯科医師による診査・診断が必要です。

この時期を逃すと、将来的に本格的な歯列矯正(第2期治療)が必要になる可能性が高まります。そのため、お子さんの歯並びが気になったら、歯科医師に相談することをおすすめします。

費用が高い

指しゃぶりをする子供の横顔
2×4装置による歯列矯正治療は、基本的に保険適用外の自費診療です。医療機関によって料金は異なりますが、第1期治療の一般的な相場は300,000円(税込)から500,000円(税込)程度です。

さらに、診察ごとに処置料や調節料の費用がかかるでしょう。治療期間中は、月1回程度の通院が必要なため、総額の費用は高額になります。

また、治療後に第2期治療(本格的な歯列矯正治療)へ移行する場合は、その時点での治療費との差額を追加で支払う必要があるでしょう。

分割払いに対応している医療機関もありますが、家計への負担は小さくありません。そのため、治療を始める前に総額の見積もりを確認し、支払い計画をしっかり立てることが大切です。

治療期間が長くなる可能性がある

2×4装置を使った治療は、短くても1年から2年程度の期間を要します。お子さんの歯の生え変わりや顎の成長に合わせて治療を進めるため、予想以上に時間がかかる場合もあるでしょう。

歯の動き方には個人差があり、計画どおりに進まないこともあります。また、装置の使用状況やお子さんの協力度によって、治療期間が延びてしまう可能性も考えられます。

装置を外した後も、歯並びを安定させるための保定期間が2年以上必要です。さらに、第1期治療だけでは歯並びが完全に整わず、永久歯がすべて生え揃った後に第2期治療が必要になるケースもあるでしょう。

そうなると、トータルの治療期間は数年にわたります。長期間の通院が必要となるため、お子さんとご家族の根気強い取り組みが求められます。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正を行うときの注意点

病院で診察を受ける子どもとお母さん
2×4歯列矯正を成功させるためには、治療中に注意すべきポイントを理解しておくことが大切です。ここでは主な注意点を紹介します。

治療経験が豊富な歯科医院を選ぶ

お子さんの歯列矯正治療には成長期特有の技術が求められるため、小児歯列矯正の経験が豊富な歯科医院を選ぶことが重要です。成長期の顎や歯の状態は大人とは大きく異なり、今後の成長発育を見据えた治療計画を立てる必要があります。

公益社団法人日本臨床歯列矯正歯科医会でも、成長期の歯列矯正では経験を持つ歯科医師を選ぶよう推奨しています。初回のカウンセリング時には、これまでの症例数や2×4装置を用いた治療経験、治療方針の詳しい説明を受けましょう。

また、お子さんの歯並びの状態や成長段階に応じた適切な治療開始時期について、具体的なアドバイスをもらえるかどうかも確認するとよいでしょう。

説明が丁寧でわかりやすく、疑問や不安に対して真摯に答えてくれる歯科医院であれば、長期間の治療も任せられます。複数の歯科医院でカウンセリングを受けて比較検討し、信頼できると感じられる歯科医院を選ぶことが大切です。

口呼吸や指しゃぶりなどの悪習慣をなくす

歯列矯正治療と並行して、お子さんの口呼吸や指しゃぶり、舌で前歯を押すクセなどの悪い習慣を改善することも欠かせません。これらの口腔習癖は、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼす原因です。

口呼吸を続けていると、舌の位置が下がって上顎の発育が不十分になり、歯列が狭くなってしまいます。指しゃぶりや舌で前歯を押すクセは、前歯を前方に押し出して出っ歯や開咬(かいこう=上下の前歯が噛み合わない状態)を引き起こす要因です。

こうした習慣があると、せっかく歯列矯正装置で歯を動かしても効果が妨げられたり、治療後に歯並びがもとに戻る後戻りの原因になったりします。

第1期治療では、舌や口唇のクセの改善も治療目標の一つとされています。装置の力だけに頼るのではなく、必要に応じて口腔筋機能療法(MFT)などの訓練を取り入れ、正しい舌や唇の使い方を身につけることが望ましいでしょう。

保護者の方もお子さんの日常の癖に目を配り、歯科医師や歯科衛生士の指導のもとで改善に取り組むことが大切です。

ガムやチューイングキャンディーは食べないようにする

笑顔でポイントを説明する看護師
歯列矯正装置の装着中は、硬い食べ物や粘着性の高い食べ物を避けることが基本です。特にキャラメルやガムなど粘り気のあるお菓子は、ブラケットに絡み付いて装置を壊したり外したりする原因となるため控えましょう。

実際の歯列矯正治療の指導でも、硬い物は避けて大きい物は小さく切り、粘着性の食品は控えるよう注意が促されています。装置が破損すると、修理のための受診が必要になり、治療期間が延びてしまう可能性もあります。

また、砂糖を多く含む飴類は長時間口のなかに残りやすく、むし歯のリスクを高める要因です。甘いおやつは時間と量を決めて摂取し、飲食後は丁寧な歯磨きを心がけることが大切です。

歯列矯正装置が付いていると歯ブラシが届きにくい部分ができるため、普段以上に念入りなケアが求められます。装置をよい状態で維持し口の中を清潔に保つためにも、歯列矯正期間中の食習慣には十分な注意が必要です。

子どもが歯列矯正に前向きになれるようにする

小児歯列矯正を成功させるには、お子さんの協力と前向きな意欲が欠かせません。お子さんのモチベーションが高いほど、装置の使用や定期通院をしっかり守り、治療効果も上がりやすいです。

逆に嫌がって歯列矯正を始めてしまうと、装置の使用を怠けたり、非協力的になって治療が長引いたりする可能性があります。歯列矯正治療は数年単位の時間がかかるため、お子さん自身が納得して取り組むことが何より大切です。

親御さんは歯列矯正の目的や必要性をわかりやすく説明して不安を取り除き、治療で得られた成果を一緒に喜んで励ますなど、お子さんがポジティブに取り組める環境づくりを心がけましょう。

装置に慣れない最初の時期は特に、お子さんの頑張りを認めて褒めることで、治療への前向きな気持ちを育てていくことが重要です。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正にかかる費用

歯にかかる費用
子どもの歯列矯正治療は保険が適用されない自費診療のため、治療費の総額を事前に把握しておくことが大切です。ここでは第1期治療と第2期治療にかかる費用の目安を解説します。

2×4装置を含む第1期治療の費用は、医療機関によって異なります。東北大学病院では、舌側弧線装置を用いた治療の場合、検査や診断、毎回の調整などをすべて含めて約500,000円(税込)が目安です。鹿児島大学病院では第1期治療が340,000円(税込)からとなっており、一般的な相場は300,000円(税込)から500,000円(税込)程度です。

第1期治療で歯並びの土台を整えた後、永久歯が生え揃ってから第2期治療へ移行する場合があります。東北大学病院では第2期治療の追加料金が2年間で約600,000円(税込)、鹿児島大学病院では310,000円(税込)からです。

第1期と第2期を合わせると、合計で600,000円(税込)から700,000円(税込)以上になるケースもあります。マルチブラケット装置を用いた全顎矯正治療では、検査や診断・毎回の調整・保定装置などをすべて含めると800,000円(税込)から1,000,000円(税込)程度です。

2×4(ツーバイフォー)歯列矯正の治療期間

男の子の歯科検診と歯科衛生士の手元
2×4装置を使った治療期間は、お子さんの歯並びの状態や歯の動き方によって異なります。一般的には、装置を付けて歯を動かす期間が1年から2年程度です。

この期間は、歯の生え変わりや顎の成長に合わせて進めていくため、短い場合でも1年以上かかる可能性が高いでしょう。

治療が終わった後も、動いた歯を安定させるための保定期間が必要です。通院は月に1回程度のペースで行い、装置の調整や経過の確認を続けます。

まとめ

ブラッシング指導を受ける女の子

2×4装置は、7歳から10歳頃の成長期の子どもが対象です。顎の成長を利用して歯並びを整えられます。

一方で、装置の装着中はむし歯のリスクが高まり、丁寧な歯磨きが必要です。治療期間は1年から2年程度で、費用は第1期治療で300,000円(税込)から500,000円(税込)程度が目安です。第1期治療後に第2期治療が必要になる場合もあります。

治療を成功させるには、口呼吸や指しゃぶりなどの悪習慣を改善することが大切です。お子さんの歯並びが気になる場合は、歯科医師に相談しましょう。

この記事の監修歯科医師