噛み合わせが悪くなる原因とは?症状や矯正治療についても紹介
歯の正常な噛み合わせは、歯や顎の健康にとって重要です。しかし、ストレスや歯並びの不良、歯の欠損など、さまざまな原因によって噛み合わせが悪くなることがあります。
本記事では嚙み合わせが悪いことについて、以下の点を中心にご紹介します。
・噛み合わせが悪くなる原因
・噛み合わせが悪いことで起こる症状
・悪い噛み合わせの治療法
嚙み合わせが悪いことについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
噛み合わせが悪くなる原因
噛み合わせが悪くなる原因は多岐にわたりますが、主な原因としては、歯並びの不正、歯の欠損や義歯の不適合、歯周病、虫歯、外傷や顎関節症などが挙げられます。これらの原因によって、歯や歯列が動いたり、歯や咬合面の高さが変わったりすることがあります。
また、歯並びの不正が顎の成長に影響を与え、顎の発育が妨げられることで噛み合わせが悪くなる場合もあります。噛み合わせが悪くなると、食べ物を十分に噛めなかったり、噛み合わせによる圧力が偏ったりすることで、歯や顎関節に負担がかかり、痛みや不快感、さらには顎関節症の原因になることもあります。
噛み合わせの悪さによってあらわれる症状
上下の歯が正しく噛み合わない状態を「不正咬合」と呼びます。
噛み合わせが悪くなると、歯や顎にさまざまな問題が生じることがあります。例えば、歯ぎしりや顎関節症などです。
ここでは、噛み合わせが悪くなる原因や、症状の種類について詳しく紹介していきます。
叢生(そうせい)
「叢生」とは、歯列の状態の1つで、歯が混み合って生えている状態を指します。これは、歯の大きさと口の中のサイズの不調和により起こることが多いです。
叢生が進行すると、歯並びや噛み合わせの美しさや機能が損なわれる可能性があります。また、歯の磨きにくさが増し、虫歯や歯周病のリスクも高くなります。
八重歯も叢生の1つですが、歯並びが整っているにもかかわらず、前歯の一部または全部が重なっている状態を指します。これは、前歯が大きく、歯列のスペースが十分でないために起こることがあります。八重歯は、歯並びの美しさに影響を与えることがありますが、噛み合わせや機能にはほとんど影響を与えません。
八重歯や叢生の治療法としては、抜歯を伴う矯正やセラミック矯正が考えられます。治療法は個人によって異なるため、医師への相談が大切です。
過蓋咬合(かがいこうごう)
「過蓋咬合(かがいこうごう)」とは、上下の歯の噛み合わせの状態の1つで、上顎の歯が下顎の歯に比べて大きくかぶさる状態を指します。これによって、下顎の歯が隠れて見えにくくなり、また噛み合わせの力が集中しやすくなるため、歯や歯肉に負担がかかり、痛みや歯周病などの原因になることがあります。
過蓋咬合によって起こる症状としては、前歯が出っ歯になったり、顎の形が変形することがあります。また、食べ物を噛みにくくなったり、咀嚼筋が過剰に発達することによって、顔の形や表情にも影響を与えることがあります。
治療法としては、矯正治療が一般的で、上顎の歯を後退させることで歯の被り具合を正常にします。歯が大きい場合は、歯を削ることもあります。また、歯周病などが進行している場合は、それらの治療も同時に行う必要があります。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
「上顎前突」とは、上顎(上あご)が前方に突き出した状態を指します。この状態は、下顎との噛み合わせが正常でなく、下顎が後退していることが原因となっている場合もあります。
上顎前突によって、口を閉じたときに前歯だけで噛めず、咀嚼(そしゃく)や発音に支障をきたすことがあります。また、歯並びや噛み合わせが悪くなり、口の中の機能や美容に影響を与えることがあります。
具体的な症状としては、出っ歯や、口を閉じたときに上下の歯が正しく噛み合わない、咀嚼時の不快感、口呼吸や鼻づまりなどが挙げられます。見た目の美しさにも影響を与えるため、治療を希望する人も多いようです。治療法には、矯正歯科や口腔外科手術があります。
開咬(かいこう)
「開咬」とは、上下の歯が咬み合わさっていない状態を指します。
通常、上下の前歯が咬み合わさっている状態が正常な咬合とされていますが、開咬の場合は前歯が接触していないため、食べ物を咀嚼することや発音に支障が出ることがあります。また、開咬が長期間続くと、顎関節の痛みや顔の形が変形することがあるとされています。
さらに、開咬になる原因として、指じゃぶりや舌の癖、よく噛まないこと、あごの成長異常、前歯の欠損、親知らずの影響などが挙げられます。治療法としては、矯正治療や手術などがあります。
空隙歯列(くうげきしれつ)
「空隙歯列」とは、歯と歯の間にある隙間が広く、歯がずれて配置された状態を指します。歯並びが乱れたり、歯と歯の噛み合わせが悪くなったりすることがあります。
この状態が続くと、咀嚼の機能低下、歯や歯茎のトラブル、口臭、言葉の発音の障害などが生じることがあります。また、見た目にも影響が出るため、コンプレックスを持つ人もいます。
下顎前突(かがくぜんとつ)
「下顎前突」とは、下顎が前方に突出した状態を指します。下顎の骨格が異常発達するために生じることが多く、上下の顎の大きさの不均衡が原因となります。
この状態では、上下の歯が正しく噛み合わず、咀嚼機能が悪化したり、発音障害や口呼吸などの問題を引き起こすことがあります。また、口元の外観が不自然になるため、コンプレックスを持っている方も多く、精神的な負担となることもあります。
治療法としては、矯正歯科や口腔外科による手術などがあります。治療期間は、症状の程度や治療法によって異なりますが、数か月から数年かかることがあります。
噛み合わせが悪いことによるリスクやデメリット
歯医者に行くのが億劫、時間がなかなか取れないという方も多いと思われますが、噛み合わせが悪いまま放置するとどうなるのでしょうか。以下に、噛み合わせが悪いままだと起こるリスクやデメリットについて紹介します。
虫歯・歯周病になりやすい
噛み合わせが悪いと、歯に過度の力がかかり、歯の摩耗や歯肉炎、歯周病、さらには虫歯になるリスクが高まります。噛み合わせが正常であれば、上下の歯が適切に接触し、噛む力が分散されるため、歯にかかる負担が均等になります。
しかし、噛み合わせが悪い場合、特定の歯に負担が集中し、その部位の歯の劣化が進行します。また、噛み合わせの悪さにより、歯の根元に歯垢がたまり、歯周病の原因になることもあります。
噛み合わせが悪い場合は、矯正治療により改善が期待できます。しかし、放置していると、治療が難しくなり、歯を失ってしまう可能性が高まります。定期的な歯科検診を受け、早期に対処することが重要です。
顎関節症になりやすい
噛み合わせが悪いと、歯ぎしりや食いしばりの原因になることがあります。歯ぎしりや食いしばりは、歯に対する過剰な力の加わりによって引き起こされます。
噛み合わせが悪い場合、歯同士の接触が不十分または不均一であるため、歯にかかる負荷が偏ってしまいます。その結果、歯ぎしりや食いしばりが起こりやすくなります。
また、歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎関節にダメージを与えることがあります。
長期間にわたって続く場合は、歯が削れたり、欠けたり、顎関節症を引き起こすこともあります。そのため、噛み合わせが悪い場合は、早期に治療を受けることが大切です。
噛み合わせの治療には、矯正治療や審美的な治療があります。矯正治療は、歯の位置を整えることで噛み合わせを改善する治療法です。また、審美的な治療は、歯の形や大きさを変えることで噛み合わせを調整する方法です。医師とよく相談し、自身に合った治療を受けましょう。
歯ぎしりや食いしばりの原因になる
噛み合わせが悪いと、歯ぎしりや食いしばりの原因になることがあります。噛み合わせが合わないと、歯の負担が偏り、その結果、歯ぎしりや食いしばりの原因となります。
また、噛み合わせが悪いと、歯や歯茎の磨耗、歯並びの乱れ、歯の動揺や抜け落ちなど、歯の健康に悪影響を与えることがあります。特に、歯ぎしりや食いしばりの症状がある場合は、歯科医師への相談をお勧めします。
歯ぎしりや食いしばりの症状が軽度であれば、マウスピースを装着することで、歯の負担を軽減できます。しかし、症状が重度である場合は、歯の噛み合わせを改善するための矯正治療が必要となることがあります。
定期的な歯科検診を受け、噛み合わせの異常に気づいた場合には、早期に医師へ相談することが大切です。
外見上のデメリットがある
噛み合わせが悪いと、歯や歯茎の健康に悪影響があることは上述しましたが、見た目にもデメリットがあります。
まず、上下の歯並びが揃っていないと、口を閉じたときに前歯が目立ち、口元がふくらんで見えます。また、上下の歯並びが揃っていないと、顔の輪郭が不自然になることがあります。たとえば、下顎が前に突き出ている場合、顔が長く見えたり、口元が強調されたりすることがあります。
さらに、歯並びが悪いと、歯と歯の間に隙間ができたり、歯が重なったりすることがあります。このような状態は、歯並びの美しさだけでなく、歯磨きのしにくさや虫歯・歯周病の原因になることがあります。
そのため、噛み合わせが悪い場合は、早期に歯科医院で相談し、自身に合った治療を受けることが大切です。
噛み合わせの悪さを解消する方法
ここでは、噛み合わせの悪さを解消する方法をいくつか紹介します。ぜひ今後の治療の参考にしてください。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、歯列矯正の方法の1つで、マウスピースと呼ばれるプラスチック製の装置を使って、歯並びを調整する方法です。マウスピースは、歯科医師によって作成され、歯列の現状に合わせて形状が設計されます。矯正前後の模型を作成し、矯正に必要な力学的な計算を行い、精密な装置を作り上げます。
マウスピースは、一日20時間以上装着することで、歯の動きを促進します。通常は、週に1度から2週間ごとに、新しいマウスピースに交換することで、徐々に歯を動かします。歯の矯正期間は、個人差がありますが、約6ヶ月から1年程度です。
マウスピース矯正は、歯列矯正の中では安価とされるため、矯正を考えている方にとっては、手軽な選択肢の1つです。また、マウスピースは、取り外し可能であるため、歯のケアや歯磨きがしやすく、食事の制限もありません。ただし、自分でマウスピースを装着したり外したりできるため、着用時間を守らない場合、効果が得られないことがあります。
マウスピース矯正の効果については、個人差がありますが、正しい装着方法と着用時間を守ることで、歯並びの改善が期待できます。しかし、重度の歯並びの問題や噛み合わせの問題には、効果が得られにくいことがあるため、矯正方法を選ぶ際は、歯科医師と相談することが重要です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯列矯正の中でも最も一般的な方法の1つです。この方法は、金属製のワイヤーを使用して、歯を正しい位置に移動させることで歯列を整えます。
ワイヤーはブラケットに取り付けられ、歯に力を加えることで、徐々に歯を移動させます。この方法は、重度の歯列不正や噛み合わせの問題を解決するのに有効です。また、ワイヤー矯正は、治療期間が比較的短いとされ、正しいケアをすることで長期的な効果を保つことにつながります。
一方で、矯正期間中に口内炎や歯の痛みなどが生じることがありますが、症状は軽度であることが多く、痛みを和らげる方法がいくつかあります。
歯列矯正は、美しい歯並びだけでなく、噛み合わせの改善や、口腔内の健康にも大きく関わっているため、医師の診断やアドバイスを受けることが重要です。
手術(外科的矯正治療)
外科的矯正治療は、重度の歯並びの問題や顎の骨格異常が原因で、矯正装置だけでは改善できない場合に行われます。
主に成長期が終わった大人向けの治療で、口腔外科医が手術を行い、顎骨を切除・伸長・縮小などの操作を行います。手術後は矯正治療を併用し、理想的な噛み合わせや美しい歯並びを目指します。
治療期間は、手術の内容や患者さんの状態によって異なりますが、一般的には手術と共に矯正治療を約2年程度行います。また、手術後には腫れや痛みがあるため、安静に過ごす必要があります。
手術後の経過観察も重要で、定期的に歯科医院を受診する必要があります。外科的矯正治療は手術としてのリスクもあるため、歯科医師とよく相談し、自身に合った治療法を選ぶことが重要です。
噛み合わせの悪さまとめ
ここまで、悪い嚙み合わせについてお伝えしてきました。嚙み合わせが悪いことの要点をまとめると以下の通りです。
・噛み合わせが悪くなる主な原因は、歯並びの不正、歯の欠損や義歯の不適合、歯周病、虫歯、外傷や顎関節症などである。
・噛み合わせが悪いことで起こる症状として、叢生、過蓋咬合、上顎前突、開咬、空隙歯列、下顎前突がある。
・悪い噛み合わせの治療法として、マウスピース矯正、ワイヤー矯正、外科的矯正治療がある。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献