ボトックスとはどんな注射?得られる効果や副作用・デメリットはある?
ボトックスとはどのようなイメージをお持ちでしょうか?おそらく、シワや張っているエラを解消する美容医療の印象を持つ方が多いのではないかと思います。
自由診療であると、費用や効果、副作用が気になるために、検討段階である方も少なくないと思います。そのような方のために、ボトックス治療の効果やメリット・デメリットなどをについて説明します。
なお、ボトックスは美容目的の自由診療だけではなく、保険適応のある神経や筋肉の病気なども多く、注目すべき治療薬の一つです。当記事では、保険診療での治療についても紹介します。
この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)
目次 -INDEX-
ボトックスとは
ボトックスは、どんな治療薬か知っていますか?ボトックスは、ボツリヌス菌によって産生されるボツリヌス毒素を有効成分とした製剤です。ボツリヌス毒素は、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質の放出を抑える効果があります。
神経伝達が途絶えることで、筋肉を一時的に麻痺させる作用や、汗の分泌を促す神経を抑える作用などをもたらします。
美容分野では自由診療として、表情シワの解消や、エラ張りを抑える小顔効果、ふくらはぎを細くする美脚効果、ワキガ・多汗症などの治療が行われています。
ボトックスは自由診療だけでなく保険診療にも使われる
ボトックスは、上記のような美容医療にのみ使われる薬ではありません。保険診療でも幅広く使われている治療です。有効性が示されている病気は増えています。
1977年にアメリカで、初めて斜視(右目と左目の方向にズレがある)に対して臨床応用されて以来、頭頚部領域で使われることが多く、眼瞼けいれん(まぶたのピクつき)や片側顔面けいれん(顔のピクつき)、痙性斜頸(首周囲の筋肉の緊張による異常姿勢)への治療にも用いられるようになりました。
頭頚部領域以外にも治療対象は広がっており、上肢・下肢の痙縮(手足のつっぱり)、重度の原発性腋窩多汗症(ワキにみられる多量の汗)、頻尿や尿失禁の分野でも治療に用いられています。
また、現時点で国内では保険診療として認められなくても、欧米のガイドラインや文献で有効性を認める病気は多くあるため、今後ボトックスの治療範囲は広まっていく可能性があります。
- 保険適応済の疾患:斜視、片側顔面けいれん、上肢・下肢の痙縮、脳性麻痺、痙性斜頸、原発性腋窩多汗症
- 文献などで有効性が示されている疾患:慢性頭痛、片頭痛、三叉神経痛、ジストニア、震戦などの不随意運動、花粉症、神経因性膀胱など
ボトックス注射の効果
頭頚部では、筋肉の緊張がほぐれるために、肩や首のコリを減らすこと、しわが減ること、小顔効果を得ることなどが期待できます。
また、汗の分泌を減らすことで、大量の汗をかかなくて済むようになるため、ワキや手、足、頭などからの多量の汗やにおいを抑えることができます。
その他にも、ボトックスを鼻の粘膜に浸透させると鼻水や目のかゆみといった花粉症症状を改善させることも知られています。
ボトックスの効果はいつから出るの?
注射自体は15分程度で終わります。当日からすぐに効果は認めずに、数日後から効果が現れ出し、2週間後から安定していくことがきます。
シワを減らす効果は3ヶ月程度持続します。制汗効果は4-9ヶ月間程度持続します。また、ボトックス注射を繰り返すことで効果が持続します。効率的にシワ改善の効果を持続させるためには、筋肉の収縮抑制の効果がなくなる前に次の注射をしていくことです。
注射を繰り返し行うことで、シワが元に戻りにくくなり、次の注射の期間も長くなっていく傾向があります。
注射してすぐに効果が出るわけではないので、結婚式などの大事な用事がある方は、1ヶ月間程度余裕をみておいた方が良いでしょう。
ボトックス注射の副作用やデメリットとは?
ボトックスは神経伝達を妨げる製剤であるため、重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症などの神経筋接合部に障害がある場合は、病態を悪化させる可能性があります。また、喘息などの慢性呼吸器障害がある場合も、症状を悪化させる可能性があります。
外国では、ボトックス注射による胎児死亡例が報告されており、妊娠や胎児への影響も認められています。そのため、妊婦や妊娠を予定している人、授乳中である場合にはボトックス注射はできません。
男性の場合も、精子形成期間への投与を避けるために、ボトックス投与後3ヶ月は避妊する必要があります。
ボトックス注射のよくある疑問
ボトックスをやめるとどうなるの?
ボトックスの効果は数ヶ月間持続するのであって、永久的ではありません。そのため、止めると元の状態に戻ります。
時間とともに効果が弱まることはデメリットに思われがちですが、一時的な効果を目的として利用する、あるいはシミュレーションとして利用する方法としても使う場合はメリットになります。
ボトックスは定期的に打ち続ける必要がある
ボトックスの効果は、初めての注射の場合、3-4ヶ月で弱くなりますが、2回目以降、その効果が長くなる傾向があります。
継続してボトックスを注射するかどうかは、その治療効果の満足度で変わると思います。どのような問題点を解決したいのか、事前に医師とよく相談して治療方針を決めていくのが良いでしょう。
ボトックスの注射は痛いの?
注射による痛みは、注射針の大きさが影響します。ボトックス注射では細い針を用いることで、痛みはかなり少ないです。
なお、注射針の太さはゲージ(G)という単位で表わされ、数字が大きくなるほど針の直径が細くなります。
医療機関で一般的に行われる採血や予防接種の針は、直径0.4-0.7mm(27G-22G)程度であるのに対して、ボトックス注射の針は直径0.2-0.3mm(32G-30G)程度と極細であることが多いため、痛みも少なくなります。
失敗することはあるの?
同じ量のボトックスを注射しても、患者さんによって、また同じ人でも繰り返す回数によっては同じ効果が得られるとは限らないことがあります。
顔面へボトックスを注射するときに、注入量が足りなかったり多すぎたりした場合に、表情を構成する筋肉の働きがアンバランスになり、筋肉が緩みすぎて不自然な表情になることがあります。
また、ほうれい線のシワ治療を行った際に、誤った部位に注入することで、口周囲の筋肉が動かず飲み物がうまく飲めなくなってしまう場合があります。見た目だけでなく、日常生活動作への支障がでることも問題となります。
なお、たとえ失敗してもボトックスの効果は、時間と共になくなっていくので、数ヶ月で症状は落ち着いていくことが多いようです。
ボトックス注射を受ける際の注意点
ボトックスは、筋肉に注射します。注射部位を揉む、強く擦ると痛みが出る場合があります。また、注射部位で内出血を起こす可能性があります。
ワキガ・多汗症については、「重度の原発性腋窩多汗症」と診断されれば、保険診療として治療を受けることが可能です。ただし、「重度の原発性」でない場合には、治療は自由診療になります。
不明点があれば担当医へ相談してください。
ボトックスはどのくらい費用がかかるの?
美容目的のボトックス治療は、自由診療であるため医療機関ごとに料金設定が異なること、施注部位や使う薬剤量によって費用は変動することから一概にはいえません。
上下振れ幅はありますが、費用としては5万円程度を中心に考えて、1万円〜20万円程度が大まかな目安になると思います。
保険診療範囲内で治療が可能な疾患では、医療費控除の対象になります。こちらも同様に疾患や部位によって費用が変わります。
なお、身体障害者認定されている場合には医療費が還付される可能性がありますので、医療機関にお問い合わせください。
まとめ
ボトックスについて説明しましたが、理解が深まりましたでしょうか?
ボトックスは、美容医療でも保険医療でも幅広く使われる薬で、今後さらに治療範囲が広がる可能性のある薬です。満足度は高い治療ですが、注意点もあることから、事前に医師と十分に相談することをおすすめします。