「以前より髪のボリュームが減った気がする」「床に落ちている抜け毛の量が増えたように感じる」などと気づいてはいても、特に対処をしていないという方も多いのではないでしょうか。しかし、抜け毛が増えている原因によっては、早めに対処をしないとさらに抜け毛が増えていってしまう可能性があります。この記事では、正常な抜け毛と異常な抜け毛の見分け方から、抜け毛が増える原因、予防法まで、抜け毛に関する情報をまとめています。ぜひ参考にしてください。
目次 -INDEX-
抜け毛が増えた気がする?正常・異常な抜け毛の見分け方
正常な頭皮・頭髪でも、毎日髪の毛は抜けています。肌がターンオーバーを繰り返すように、髪の毛が生え変わるのは自然な現象です。では、予防や早めの対策が必要となる「異常な抜け毛」とは、どのようなものなのでしょうか。まずは、正常な抜け毛と異常な抜け毛の見分け方から説明します。
正常な抜け毛の本数
健康な頭皮・頭髪の場合でも、1日に50本から100本程度は髪の毛が抜けています。そのくらいの抜け毛があっても、本数的には問題ないと考えていいでしょう。ただし、後述する毛根の形や毛の太さは、正常か異常かの見極めポイントになるので、併せて確認するようにしてください。
異常な抜け毛の本数
正常な抜け毛の本数が「50本から100本程度」でしたので、それを超える本数が抜けている場合は、何か異常が起きていると考えましょう。抜けた毛の本数を数えるのは難しいかもしれませんが、お風呂場の排水溝部分に髪の毛を絡めとるネットをつけるなどすると、大体の抜け毛の本数を把握しやすくなります。また、朝起きたときに枕を確認し、枕に落ちている髪の毛の本数を確認するのもおすすめです。「これまでは数本程度の抜け毛だったのに、最近その量が増えた」という場合には異常な抜け毛を疑いましょう。
正常な毛根の形と毛の太さ
正常な毛根は、ふっくらと丸みを帯びており、色は白っぽいことが特徴です。しかし、異常な抜け毛になると、そのふくらみがなくなり、ギザギザしていることがあります。また、毛自体も細くなっていくことが特徴です。正常な抜け毛の場合、個人差や年齢差はありますが、0.08~0.1mmほどが太さの目安です。これよりも明らかに細い毛が何本も抜けているという場合には、異常な抜け毛の可能性があります。
抜け毛が増える9つの原因
異常な抜け毛の場合、1日に抜ける本数が正常な場合よりも多くなることをご説明しました。では、そのように抜け毛が増えてしまう原因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここからは、抜け毛が増える9つの原因について説明します。
①生活習慣の乱れ
抜け毛が増える原因としてまず考えられるのが、生活習慣の乱れです。睡眠時間が減っていたり就寝時間が不規則になっていたりといった睡眠習慣の乱れや過度な飲酒などは、髪の成長に欠かせない成長ホルモンの分泌低下や亜鉛の大量消費を招き、抜け毛を増やします。また、運動不足も正常なヘアサイクルに悪影響を与えます。
②加齢の影響
加齢とともに抜け毛が増えるのは、ある程度は仕方のないことです。これは、加齢によって毛母細胞の機能が低下するためです。前述した髪の毛の太さの平均に関しても、40代、50代と年を重ねるにつれ、0.07mm、0.065mmと細くなっていきます。ただし、すべてを「加齢だから」と考えてしまっては、適した時期に正しい対処ができなくなる可能性があります。あまり気にしないことと同時に、何か違和感があれば「念のために医療機関で診てもらう」ことが大切だといえます。
③過度のストレス
ストレスが多くかかっている状態は、頭皮環境を悪化させ、抜け毛をはじめとしたヘアトラブルを増加させます。これは、ストレスにより自律神経が乱れ、それに伴ってホルモンバランスが悪化し、過剰な皮脂分泌が促されてしまうためです。皮脂が多い状態は、頭皮のべたつきはもちろんのこと、フケや抜け毛を増やす要因になります。
④季節の変わり目による抜け毛
季節が要因となって抜け毛が増える場合もあります。例えば春の場合、環境の変化によってストレスがかかることが多く、それにより抜け毛が増えてしまうことがあります。また秋は、夏に受けた紫外線ダメージの影響が出てくるために、「抜け毛が増えた」と感じる方が多くなります。さらに冬は、頭皮の乾燥や免疫力の低下などが原因で抜け毛が増えることがあります。
⑤栄養バランスの偏り
髪の毛の成長を助ける栄養素には、アミノ酸(タンパク質)、亜鉛、ビタミン、鉄分などがあります。食生活の乱れにより、これらの栄養素がバランスよくとれていないと、必要な栄養が足りず、抜け毛を増やしてしまいます。具体的には、ファストフードや油っぽい食事ばかりしている、塩分や糖分の多い食事が好みという場合には、髪の毛の成長に必要な栄養素が足りていない可能性があります。赤身肉や魚、貝類などを率先して取り入れることで、栄養バランスの偏りをなくしましょう。
⑥間違ったシャンプーやヘアケア
髪の洗い方やケア方法が間違っている場合にも、抜け毛を増やしてしまいます。例えば髪を洗う際に、汚れを落とそうと強く洗いすぎていたり、洗浄力が強すぎるシャンプーを使っていたりすると、頭皮にダメージを与えてしまうことがあります。 シャンプーやトリートメントがきちんとすすげていなかったり、髪の毛を洗う回数が多すぎたりといったことも、同じくダメージを与える原因になります。 また、洗髪後にぬれたままで長時間放置している、ドライヤーを長時間あてているといったことも、頭皮・頭髪のダメージにつながります。これらは頭皮の乾燥の原因になり、その状態をどうにかしようと皮脂が過剰に分泌される要因になります。
⑦ヘアスタイルやカラーリング
ヘアスタイルやカラーリングが原因で髪の毛が抜けることもあります。ヘアスタイルが原因で抜け毛が増えるのは、ポニーテールをはじめとした髪の毛をひっぱるようなヘアスタイルを長期間続けている場合です。このように、頭皮にダメージを与えるヘアスタイルを長く続けていることで、髪の毛が細くなったり弱くなったりし、抜け毛が増えてしまいます。カラーリングが原因となる抜け毛の増加は、主に薬剤の刺激によるものです。そもそもの頭皮環境に加え、強い薬剤などが刺激となることで、抜け毛を増やします。ただし、この場合の抜け毛は一時的なものなので、カラーリング剤やパーマ液といった刺激を控えれば、徐々に改善していくことがほとんどです。
⑧脱毛症によるもの
抜け毛は、脱毛症によって増えることもあります。中でも近年認知度が上がってきているのが、男性型脱毛症(AGA)による抜け毛・薄毛の増加です。そのほかに、女性型脱毛症や円形脱毛症、薬剤性脱毛症や休止期脱毛症などの種類があります。それぞれ原因や治療法は異なりますが、医師による脱毛症の原因検索が大切で、早めに適した治療を行うことで改善が見込めます。
⑨コロナによる後遺症
新型コロナウイルス感染症に罹患したことがある方の場合、その後遺症によって抜け毛が増えている可能性があります。新型コロナウイルス感染症の後遺症の場合、抜け毛が後遺症の一つであるということは認められているものの、治療法は確立されていないのが現状です。ただし、前述した脱毛症の際に用いられる薬を処方する医療機関も出てきており、治療法が確立されるまでにはそう多くの時間はかからないかもしれません。
代表的な脱毛症の種類
ではここからは、代表的な脱毛症について、その特徴や治療法などをご説明します。
男性型脱毛症(AGA)、女性型脱毛症
男性型脱毛症は、AGAと呼ばれることも多い脱毛症です。思春期以降の男性に見られる症状であり、頭頂部や前頭部の生え際から徐々に髪が薄くなっていきます。思春期以降であれば年齢にかかわらず発症する可能性があるため、「髪が薄くなってきた」と感じる場合は「加齢」だとあきらめず、医療機関を受診しましょう。治療は、内服薬の服用をメインに行います。一方で女性型脱毛症は、女性の方に起こる脱毛症であり、主に40代以降の女性に起こりやすいという特徴があります。また、前頭部の生え際が薄くなっていく男性型脱毛症に対し、女性型脱毛症の場合は頭頂部を中心に全体的に薄くなっていく傾向があります。
円形脱毛症
円形脱毛症は、頭皮の一部分、または複数箇所の毛が抜け落ちてしまう症状です。大きさは数cm程度から10cm程度と幅があり、頭だけでなく、身体に症状が出ることもあります。免疫異常が原因で発症する自己免疫疾患の一つであり、感染症やストレス、ほかの自己免疫疾患が誘因となって発症すると考えられていますが、免疫に異常が起こるはっきりとした原因はわかっていません。治療は、主に塗り薬や注射などによって行います。また近年、円形脱毛症の治療にはオルミエントという内服薬も適応がとれています。
薬剤性脱毛症
服用している薬が原因で抜け毛が起こることを、薬剤性脱毛症といいます。よく知られているのは抗がん剤の服用による脱毛ですが、そのほかの薬でも起こることがあります。「抜け毛が増えた」と感じた際は、その1~3カ月前までに何か新しく薬を服用し始めていないかを思い出してみましょう。抗がん剤の服用が抜け毛の原因だった場合、抗がん剤の使用をやめることで脱毛症の改善は見込めますが、残念ながら抗がん剤の使用を続けながら脱毛を食い止めるための方法は現在はありません。
休止期脱毛症
休止期脱毛症は、休止期の髪の毛が何らかの原因で増えることで抜け毛が増えてしまう症状です。急性休止期脱毛症・慢性びまん性休止期脱毛症・慢性休止期脱毛症という3つに大別することができ、それぞれで原因や治療法が異なります。例えば急性休止期脱毛症は、不規則な生活や過度なストレス、出産や疾患などが原因となって発症するのに対し、慢性びまん性休止期脱毛症は貧血や過度なダイエット、甲状腺疾患や肝機能障害などが原因となり、半年間ほどの時間をかけて進行します。このようにそれぞれ原因や治療法が異なるため、医師の診察を受けることが大切です。
抜け毛の対策・予防法
最後に、抜け毛を増やさないための対策・予防法を説明します。
生活習慣を見直す
生活習慣が乱れている自覚がある方は、それを正すことが大切です。栄養バランスを考えた食事をとる、十分な睡眠時間を確保し質のいい睡眠をとれるようにする、適度な運動習慣を持つなど、食事・睡眠・運動の3つの観点から生活習慣を整えていきましょう。また、ストレスを感じている場合には、そのストレスを減らすために対策をとることも大切です。
頭皮マッサージをこまめに行う
頭皮の血行をよくすることは、髪の毛に必要な栄養素を行きわたらせることにつながります。シャンプーの際やドライヤー前などに頭皮マッサージをすることで、血行を促進させましょう。
紫外線から頭皮を守る
「夏場に受けた紫外線のダメージで秋に抜け毛が増加する」と前述したように、紫外線は頭皮に大きなダメージを与えます。そのダメージを軽減するために、紫外線が強い日は帽子をかぶったり、頭皮用日焼け止めスプレーを使用したりするのがおすすめです。また、頭皮用の冷却スプレーやローションを使って、受けた紫外線ダメージから頭皮を守るケアをするのもいいでしょう。
シャンプーの仕方を見直す
シャンプーの仕方を見直すことも、抜け毛を増やさないためには大切です。お風呂に入る前にブラッシングをして頭皮の汚れを浮かす、シャンプー前にはぬるめのお湯で予洗いをする、シャンプー時は指の腹で優しく洗うといった点に気をつけ、頭皮へのダメージを抑えながらも汚れをしっかり取りのぞける洗い方を身に付けましょう。また、自然乾燥はダメージの原因になります。髪を洗った後はドライヤーでしっかり乾かしましょう。
医師に相談し、AGA治療をする
男性型脱毛症が抜け毛の原因となっている場合、何もしないでいると症状は進行してしまいます。少し違和感を持った段階で医師に相談し必要な治療を受けることが、症状の悪化を防ぎ、早期改善をするためには大切です。そのほかの原因がある場合も、自己判断ではなく専門家の診察・アドバイスを受けることが、症状改善の近道になります。
まとめ
抜け毛が増えた場合の原因や対策などについて説明しましたが参考になったでしょうか。抜け毛の原因は複数ありますが、その多くはセルフケアや医療機関での治療で改善できます。「年をとったから」とあきらめず、早めに対処することで、髪の毛で悩まない生活を手に入れましょう。
参考文献