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粉瘤と脂肪腫って何が違うの?見分け方から治療まで解説

 公開日:2024/12/26

ある日気づいてみたら、体に小さな「こぶ」のようなものができていた…。こんな経験はないでしょうか? それは「粉瘤(ふんりゅう)」かもしれません。粉瘤とは、袋状の中に老廃物がたまる病気のことを指します。また、これとは別に、「脂肪腫」という脂肪のかたまりがこぶ状になる病気も存在します。この記事では、粉瘤と脂肪腫の違いや、その見分け方、治療法などについてくわしく解説していきます。自分の体に「こぶ」を見つけて気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。

粉瘤とは

粉瘤とは 粉瘤とは、老廃物のたまったしこりのことを指します。では、粉瘤はどんな原因でできるのでしょうか? また、どのような症状があるのでしょうか?

粉瘤の定義と特徴

通常、皮膚の古い角質や皮脂は、垢や脂となって自然に剥がれ落ちます。ところが、皮膚の下に嚢胞(のうほう)と呼ばれる袋状のものができると、本来剥がれ落ちるはずの角質や皮脂がその中にたまり、1〜5センチほどの良性の腫瘍となります。これを粉瘤といい、別名アテローマともいいます。袋の中の老廃物は基本的に排出されず、たまり続けます。そのため、多くの粉瘤は放置しておくと、徐々に大きくなっていきます。中には数十センチにまで巨大化することもあります。 粉瘤は、皮膚のある場所であればどこにでもできる可能性がありますが、特に顔や首、耳周り、背中、腕、脇、太ももなどにできやすい傾向があります。

粉瘤ができる原因

粉瘤は袋状のものの中に老廃物がたまることをいいますが、この袋状のものができる原因についてははっきりとはわかってはいません。中には、ウイルス性のイボの感染をきっかけとしてできるケースや、打撲・外傷などの痕やニキビ痕にできるケースがあるとされています。また、遺伝的要因や肥満、加齢による肌の弛緩、摩擦などが関係しているとも考えられています。

ただ、ほとんどの粉瘤は発生原因がわからず、今だに解明には至っていません。 発生原因がわかっていないため、確実な予防法もありません。しかし、肌を清潔に保ったり、肌に余計な刺激を与えないといったことは、肌を良い状態に保つことにつながります。粉瘤の予防という観点だけでなく、その他の肌トラブルを予防する意味でも、毎日のスキンケアは大切です。 また、粉瘤ができてしまったら、いじったりこすったりしないように注意しましょう。触ることによって炎症が起きる可能性もあり、痛みや化膿の原因にもなります。

粉瘤の症状

粉瘤となった部分は、しこりがふにゃっとした感触で、一般的には痛みやかゆみを感じません。基本的には良性の腫瘍となるため、危険性も少ないとされています。ただし、放置しておくと、しこりが大きく膨らんでいくこともあり、中には細菌が入り込んで腫れたり、膿が出てくるといったリスクがあります。このような状態になった粉瘤は、炎症性粉瘤と呼ばれます。こうした症状が出た場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。 また、初期の粉瘤は小さく、白色から肌色をしていますが、悪化すると大きくなり、黄色、黒色、青色などに変色することもあります。

脂肪腫とは

脂肪腫とは 粉瘤と同じく、脂肪腫も良性の腫瘍です。では、脂肪腫とはどのようなものを指すのでしょうか?ここでは、定義や原因などについて解説していきます。

脂肪腫の定義と特徴

脂肪腫とは、脂肪細胞のかたまりが皮下腫瘍となったものを指します。成人の上肢、肩、背中にできることが多く、刺激の受けやすい部位に生じやすいとされています。これらは年齢が高くなるにつれて出現しやすくなり、40〜60代の人に多く見られ、特に肥満の人がなりやすいとされています。また、脂肪腫は一度形成されてしまうと、その大きさを自然に縮小することはほぼなく、長期間にわたって体内に留まる傾向があります。

脂肪腫ができる原因

脂肪腫の形成に対する明確な原因はまだ完全には明らかにされていませんが、肥満、高脂血症、糖尿病といった健康状態とその発生に関連があるとされています。これらの状態は、体内の脂肪細胞に異常を引き起こす可能性があり、その結果、脂肪腫が形成されると考えられています。さらに、遺伝的要因や生活習慣、特に過度のアルコール消費が脂肪腫の形成に影響を与える可能性が示唆されています。これらの因子は、体内での脂肪組織の振る舞いに変化をもたらし、脂肪腫の発生リスクを高めると考えられています。

脂肪腫の症状

脂肪腫は、皮膚に柔らかい腫瘍ができます。基本的に、自覚症状を引き起こさず、痛みやかゆみなどはありません。隣接する神経を圧迫してしびれなどの症状が出ることがありますが、かなりまれなケースです。複数の脂肪腫がある場合は、家族性多発性脂肪腫症やプロテウス症候群といった遺伝性疾患に関連する可能性があります。

粉瘤と脂肪腫の主な違い

粉瘤と脂肪腫の主な違い では、粉瘤と脂肪腫の違いはどこにあるのでしょうか? ここからは見分けるためのポイントについて見ていきましょう。

見分けるためのポイント

粉瘤と脂肪腫は、どちらもふくらみのある「こぶ」で、痛みやかゆみがないことも多く、見分けがつきにくいというのが現状です。粉瘤は、皮膚の比較的浅い層にできることが多く、内容物が透けて全体が青黒く見えるときがあります。また、放置すると巨大化して悪臭を発生させたり、炎症を起こすこともあります。さらに、真ん中あたりに開口部と呼ばれる黒い点があることもあり、これがあれば粉瘤であるとわかることもあります。

それに対し、脂肪腫は脂肪によるこぶで、皮下に発生することが多く、色や形に変化はありません。また、急激に大きくなるケースは少ないとされています。ただし、このような違いは発生部位や状態によっても変わりますので、目安に過ぎません。 なお、こぶ状のものには、粉瘤や脂肪腫の他にも、ガングリオンやニキビなどさまざまな可能性があります。ガングリオンとはゼリー状のこぶのことで、主に関節周囲に生じ、比較的若い女性の発症が多いとされています。また、ニキビは、毛穴に皮脂が詰まって炎症を起こし、赤く腫れたものを指します。10〜30代の顔、背中、胸にできやすいとされています。ただ、これらの年齢や部位に当てはまらない場合もありますので、自己判断はせずに、皮膚科医に相談することをおすすめします。

リスクと合併症

粉瘤は感染すると腫れや痛み、赤みを生じることがあり、最悪の場合、炎症や化膿を引き起こす可能性があります。また、脂肪腫は一般的に無害で、がん化するリスクは低いといわれていますが、大きくなり過ぎると周囲の組織に圧迫感を与えることがあるため、注意が必要です。

粉瘤と脂肪腫の治療方法

粉瘤と脂肪腫の治療方法 それでは、粉瘤や脂肪腫にはどのような治療法があるのでしょうか? それぞれの場合の治療法について見ていきましょう。

粉瘤の治療方法

粉瘤の治療法で一般的なものは、皮膚科での手術で袋を摘出するものです。手術といっても大掛かりなものではなく、局所麻酔を用いて行うもので、特に小さな粉瘤であれば傷痕も残らず簡単な摘出で終わるため、大きくならないうちに処置をしてもらったほうがよいでしょう。 粉瘤の手術には、「切除法」と「くり抜き法」の二つの方法があります。

「切除法」は、腫瘍と同じサイズかその2倍ほどの長さに皮膚を切開し、粉瘤を摘出した後、切開した皮膚を縫合して数日後に抜糸を行います。この方法では、腫瘍と同程度の傷痕が残ります。

「くり抜き法」は、粉瘤の上の皮膚に数ミリ程度の穴を開け、そこから摘出を行います。治療後に縫合する必要はなく、2〜3週間をかけて自然に穴が塞がるのを待ちます。こちらの方法では、傷痕が切除法よりも小さく、ニキビ程度の傷痕で済むというメリットがあります。

ただし、粉瘤の位置や内容物の硬さによっては、くり抜き法が適さない場合もあります。 粉瘤が炎症を起こし、赤く腫れて痛みがある場合や、化膿しているような場合は、すぐに手術はできません。これは、炎症を起こしている部分に手術を施すと、細菌感染を起こしやすくなったり、傷の治りが悪くなってしまったりするためです。そのため、まずは炎症を抑える目的で、粉瘤の内容物を出す処置を行い、同時に洗浄も行います。その後、炎症が静まり、患部が落ち着いた状態になったことを確認して、改めて摘出手術を行います。

脂肪腫の治療方法

脂肪腫は、比較的小さく、痛みがない場合には、経過観察をすればよいとされています。ただし、放置しておくだけでは自然治癒はしません。体の目立つ部分に発生した場合や、ある程度の大きさがある場合は、治療を施します。治療法は粉瘤と同じく、手術で取り除く方法が一般的です。小さいものであれば、ほとんどの場合、局所麻酔による日帰り手術が可能です。

ただし、脂肪腫と皮下脂肪の境界がはっきりしていない場合や、筋肉の中に脂肪腫が入り込んだりしている場合は、入院をして全身麻酔で摘出するケースもあります。 摘出方法としては、脂肪腫の直径に一致するように切開し、被膜を被らないように周囲組織から剥がして摘出します。その後、血腫を予防するために十分に止血します。この時、血液が空洞にたまらないように、ドレーンという管を入れることがあります。ドレーンは術後、1〜3日程度で抜きます。また、術後1〜2週間後には抜糸をします。その後、きれいな傷痕を目指すためにテーピングなどのケアを施す場合もあります。

粉瘤と脂肪腫に関連する生活習慣の注意点

粉瘤と脂肪腫に関連する生活習慣の注意点 粉瘤や脂肪腫ができた場合、どのような点に注意をすればよいでしょうか? ここからは、日常生活で気をつけるべき点などを解説します。

日常生活で気をつけるべきこと

粉瘤や脂肪腫は、放置しても直ちに危険な病気というわけではありません。ただし、気になるからといって何度も触ったりすると悪化することもあるので、あまり触れないように気をつけましょう。 また、決して自己判断でつぶしたり、切ったりしないようにしてください。特に、粉瘤から膿が出て、匂いがするような場合は、手で膿を出したり、針などを使って自己処置をしてしまおうと考えてしまうかもしれません。しかし、粉瘤は皮膚の内部にある袋を取り出さないと完治せず、一見治ったように見えても再発します。

細菌などが入り込んで感染を起こす可能性も高く、状態がさらに悪化することも考えられます。処置が必要な場合は、必ず医療機関を受診するようにしてください。 なお、粉瘤や脂肪腫の治療をした場合は、術後に患部から出血しないように気をつけましょう。手術当日は、体への負担を減らすため、飲酒や運動を控えるようにしてください。抜糸まではシャワーのみにとどめ、入浴は控えたほうがよいでしょう。また、重い荷物を持つなどの体に負担がかかる動作を避けることも大切です。

定期的な健康診断

健康を保つ上で異常や他の病気がないか、定期的な健康診断を受けることは非常に重要です。体内で進行している可能性のある疾患や健康上の問題を早期に発見し、対応することは、病気の進行を遅らせたり、治療の成功率を高めたりするために不可欠です。特に、脂肪腫などの良性腫瘍に限らず、様々な健康状態が初期段階で無症状であることが多いため、定期的なチェックが重要となります。

いつ医師の診察を受けるべきか

粉瘤は小さいものであれば、痛みやかゆみがないことも少なくありません。また、脂肪腫は、小さくて痛みもなければ、経過観察でよいとされています。ただし、どちらも自然治癒はしません。特に粉瘤は急激に大きくなることもあり、炎症を起こす可能性もあります。さらに、粉瘤や脂肪腫だと思っていたら、別の病変だったということも考えられます。気になるしこりが見つかったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

編集部まとめ

編集部まとめ いかがだったでしょうか? 粉瘤は放置しておくと大きくなったり、炎症を起こしたりする可能性があります。脂肪腫は小さければそのまま経過観察でも構いませんが、粉瘤との見極めが難しいところでもあります。気になるこぶを見つけたら、早い段階で医療機関を受診するようにしてください。どんな病気も早めの受診を心がければ、軽い処置で済む可能性が高まります。常日頃から、自分の体には十分に気をつけておきたいですね。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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