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粉瘤(アテローム)は自然治癒する?粉瘤の原因や治療法について解説

 公開日:2024/12/27

粉瘤(アテローム)という言葉そのものは知らなくても顔や背中のグリグリといえばあれのことかと理解できる人は少なくないでしょう。

そのくらい粉瘤というのはありふれた疾患です。ただ、患部が化膿するなどしない限り症状があまりないので、詳しいことは知らない人も少なくないかもしれません。

では、粉瘤とは一体どのような病気なのでしょうか。粉瘤の原因・症状・できる部位・自然治癒の有無・治療法・対応する診療科などについて、簡単に説明していきましょう。

粉瘤の原因や症状

女性

粉瘤はどのような症状ですか?
粉瘤とは皮膚にできる良性腫瘍の一種です。
皮膚に袋のような構造物ができ、その中に垢や皮脂などが溜まっていきます。袋の中身が増えると、粉瘤はどんどん大きくなっていくでしょう。野球のボールぐらいになることもあるそうです。
粉瘤の真ん中あたりには小さな穴が開いており、黒い点のように見えます。粉瘤の周辺を押すと、この穴から臭いを発する内容物が出てきます。形状は周囲の皮膚より盛り上がっており、触るとやや硬めです。
腫瘍ができる以外、基本的に症状はありません。発生した部位が固くなり、触ると隆起が感じられるくらいです。
粉瘤が背中や臀部に生じた場合には、座ると圧迫を感じることもあります。また、粉瘤に細菌が感染して炎症を起こすと痛みが出てくることもあるでしょう。
このときに溜まった膿を出そうとすると皮膚が破れ、臭いをともなった内容物が噴き出します。粉瘤が化膿するとおできと間違われることもありますが、こちらは膿や内容物が大量に噴き出して周囲に付着するようなことはありません。
粉瘤ができる原因を教えてください。
粉瘤の多くは、発生する原因が判明していません。ただ、打撲や外傷の後・ニキビの痕にできるケースがあることはわかっています。足の裏や手のひらの粉瘤は外傷が原因で皮膚が内部に陥入してできるケースが多く、外傷性表皮嚢腫とも呼ばれるものです。
また、粉瘤の発生にはイボの原因であるパピローマウイルスが関係しているともいわれています。不潔にしていると粉瘤ができるといわれますが、これは誤りです。
粉瘤はどのような部位にできやすいのですか?
粉瘤は基本的にどこの皮膚にでもできるものです。特に、以下の場所にはできやすいとされています。

  • 背中
  • 顔面

粉瘤のうち、この3カ所にできるものが6割を占めています。これは、粉瘤には皮脂の分泌が関係しているからだという説があります。
耳の周辺・足の付け根・脇にできることもあるでしょう。外傷性のものは手のひらにもできます。足の裏にできることもあるのですが、この場合は20歳前後の若年層が多いようです。

粉瘤は自然治癒する?

鏡を見る女性

粉瘤が自然治癒することはありますか?
粉瘤のなかには、あまり大きくならずに自然治癒するものもあります。
ただし症例としては多くないようで、基本的に粉瘤は自然治癒しないものと考えた方がよいでしょう。仮に粉瘤が小さくなったとしても、袋の内部は皮膚と同じ組織なので老廃物を出し続けています。
時間がたつと老廃物が増加していき、再び大きくなってしまうこともあるでしょう。粉瘤を根治させるためには、医療機関で適切な処置を受けることが大切です。
粉瘤を放置するとどうなりますか?
先述したように、粉瘤は放置しておくと袋の内部に垢や皮脂が溜まりどんどん大きくなっていきます。
ただ、粉瘤が大きくなっていくこと自体は大きな問題ではありません。問題となるのは内容物に細菌が感染するなどして、炎症を起こしてしまうことです。
これによって粉瘤内部の袋に膿が溜まり、大きなおできのようになります。内容物を絞り出すと膿だけでなく、おかゆのようになった内容物が噴き出してきます。
この時、無理に内容物を絞り出すようなことをしてはいけません。
膿などが周辺に散らばり、膿皮症を引き起こす危険性があるからです。こうなると症状が慢性化し、治るのに時間がかかってしまいます。膿が溜まったときに絞り出そうとする人は多いのですが、こと粉瘤に関しては手を触れずに医療機関に任せるのがベストだといえます。
粉瘤が悪性化することはありますか?
極めて稀なケースですが、粉瘤を放置しておくと悪性化するケースが確認されています。
ほとんどは皮膚の有棘層ががん化する有棘細胞癌ですが、表皮や毛包表皮に由来する基底細胞癌が発生することもあるのです。長期間放置したもの・炎症を繰り返しているもの・サイズの大きいものはがん化のリスクがあるとされています。
急速に大きくなる・表面に傷ができるなどした粉瘤は、がん化を疑う必要があるでしょう。転移については有棘細胞がんの方が基底細胞がんよりもリスクは大きいですが、いずれも表皮内にとどまっている限り転移はあまり起こりません。
ただしがん化のリスク自体はあることから、粉瘤とほかの腫瘍を見分けるためのエコー検査・CT検査・MRI検査を行うことがあるのです。

粉瘤の診療科や治療方法

診察を受ける女性

粉瘤は何科を受診すればよいですか?
粉瘤の診療科は、基本的に皮膚科となります。
粉瘤そのものが珍しい疾患ではないため、皮膚科ならば適切な処置をしてもらえるでしょう。粉瘤の根治には手術が必要となるため、傷跡が残ってしまうことが嫌だという人もいるでしょう。
粉瘤ができているのが背中のように人に見せることが想定できる部位ならば、なおさらです。そういう人は、形成外科も選択肢に入ってきます。
傷跡が可能な限り目立ちにくいように手術を行う技術を持っており、傷跡が目立ちにくいように手術することができるためです。
粉瘤の治療方法を教えてください。
炎症が起きていない場合、粉瘤の治療方法は手術が第一選択です。
術式としては切開法・くり抜き法の2種類があります。
切開法は皮膚を紡錘状に切開し、内部の嚢腫を取り取り出すものです。
くり抜き法では患部に小さな円筒状のメスを差し込み、袋状の構造物の一部をくり抜きます。その後、内容物は袋そのものも可能な限り外にもみ出していくのです。術式の時間はくり抜き法が切開法より短いですが、くり抜き法は傷の縫合を行わないため完治は切開法より遅くなります。
一方、炎症を起こしている場合にはすぐに手術を行うことはできません。炎症の治療が優先されるためです。
炎症が軽度ならばステロイド剤・抗生物質の投与で治癒する場合もありますが、重度の場合は効果が限定的です。患部を切開して膿を排出してしまう方が、治療法としては確かなものとなります。
粉瘤の治療は日帰りで行うことができますか?
粉瘤の根治法は手術が最良の選択肢ですが、手術そのものは局所麻酔で負担が小さいため日帰りは可能です。
切開術・くり抜き術とも粉瘤が大きいものでなければ、日帰り手術で対応することになります。特にくり抜き方は手術の時間が短いため、基本的に日帰り可能です。
切開術の場合はガーゼの交換や抜糸などのために通院が必要です。炎症が起きている場合には治療のために時間が必要となりますが、入院治療は基本的に必要ありません

編集部まとめ

ピースサイン

粉瘤はグリグリができる以外には無症状なので、炎症が起きて膿が溜まるようなことがなければ放置している人も多いかもしれません。

しかし、炎症を繰り返していればレアケースとはいえ皮膚がんにつながるケースもあります。長期間放置している粉瘤が急速に大きくなった場合、がん化を警戒しなければなりません。

がん化のリスクを完全に排除するためには、粉瘤を手術で除去することが望ましいです。手術そのものは日帰り可能なので、完治のために手術を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
勝木 将人医師(諏訪赤十字病院 こむぎの森 頭痛クリニック)

勝木 将人医師(諏訪赤十字病院 こむぎの森 頭痛クリニック)

2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

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