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下肢静脈瘤は運動で予防できる?症状・治療・予防のための体操をご紹介します

 公開日:2024/12/27

静脈の疾患のなかでも、多いとされているのが下肢静脈瘤です。

命に関わるような深刻な病気ではありませんが、そのまま放っておくと、ふくらはぎの表面に血管が浮き出たり、足のむくみ・こむらがえり・かゆみといった症状が現れたりします。

この疾患を未然に防ぐためには、その原因を知り、予防策を取ることが大切です。

発症の原因として挙げられているものに、長時間同じ体勢でいることによる血行の悪さがあります。それでは下肢静脈瘤の発症は、運動によって予防できるのでしょうか。

この記事では、下肢静脈瘤の症状や治療法と併せて、具体的な予防法を紹介します。

下肢静脈瘤の症状や原因

診察

下肢静脈瘤の症状について教えてください。
かなり高度の下肢静脈瘤でも、特に自覚症状を示さないケースもあります。しかし多くの場合、最初に現れるのは、すねやふくらはぎに静脈が拡張・蛇行・こぶ状となって浮き出てくる症状です。健康な静脈は蛇行するようなことはありません。
進行すると足のむくみ・痛み・重だるさ・こむらがえりを引き起こします。さらに長期間放置すると皮膚に炎症が起こり、以下のような症状が現れるので注意が必要です。

  • 色素沈着
  • 湿疹
  • 皮膚炎
  • 血栓性静脈炎

悪性の病気ではありませんが、慢性かつ進行性の疾患であるため気をつけましょう。末期症状として、皮膚が崩れ潰瘍を生じることもあります。
少しでも気になる症状がみられた場合、早い段階で医師の診察を受けることをおすすめします。

原因について教えてください。
動脈によって心臓から全身に送り出された血液を、心臓に戻す役割を持つのが静脈です。しかし、人が立っている状態では重力によって逆流してしまいます。
足から遠い位置にある心臓に静脈の中の血液を戻すためには、重力に逆らって上昇させる必要があります。その役割を担っているのが、静脈弁とふくらはぎの筋肉です。
静脈弁が逆流防止弁となり、足を動かした時にふくらはぎの筋肉がポンプの作用をして血液を押し上げてくれるのです。しかし何らかの原因で弁の機能が壊れてしまったり、筋肉のポンプ作用が弱まることで血液が心臓に戻れず逆流してしまう場合があります。
不規則な血流により停滞した血液は、静脈に溜まり膨れやすくなってしまいます。これが下肢静脈瘤と呼ばれるものです。
下肢静脈瘤になりやすいのはどのような人ですか?
発症の要因として立ち仕事や妊娠などが関係していることから、女性の方が男性よりも2~3倍発症率が高いといわれています。妊娠によって腹圧が上がることで静脈圧は高くなります。それによって静脈の壁がもろくなる・静脈圧が高くなる・弁の機能に障害が出るなどの理由で下肢静脈瘤を引き起こすのです。
また高齢者も筋力が落ちやすいことで症状が現れやすいでしょう。肥満の人も注意が必要です。腹圧の上昇で足からの静脈の血流が悪くなってしまいます。
立ち仕事に従事している以下の職業の人も、血流が悪くなってしまうことで罹患率は高いといえるでしょう。

  • 調理師
  • パティシエ
  • 美容師
  • 販売員

さらに遺伝的要素も無視はできません。家族のなかに下肢静脈瘤を罹患している・手術を受けた人がいる場合は、発症リスクが高いとされています。

下肢静脈瘤が自然に治ることはありますか?
下肢静脈瘤は自然治癒しない病気です。運動やストレッチなどで進行を遅らせることはできます。しかし進行性の疾患であるため、放っておけば足の血管に瘤が目立ちはじめたり、むくみ・だるさを感じるようになるのです。
さらに重症になると湿疹や潰瘍を引き起こしてしまいます。できるだけ軽症のうちに専門の医療機関で診察してもらいましょう。

下肢静脈瘤の治療や手術

看護師

下肢静脈瘤の治療方法について教えてください。
下肢静脈瘤は良性疾患のため、よほど重症でない限り、治療の選択は患者さんの希望に応じる場合が多いでしょう。軽い静脈瘤の場合は、メスも注射も使わない圧迫療法のみが取られることもあります。
これは医療用の弾性ストッキングを着用することで足を締めつけ、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を助けて静脈瘤の進行を予防するものです。根本的な治療とはいえませんが、下肢のむくみ・だるさなどの症状に効果的です。また、以下の治療を行った際には、この圧迫療法が並行して行われる場合が多いでしょう。

  • 血管内焼灼術:超音波で確認しながら静脈を穿刺し、カテーテル(ファイバー)を挿入して血流が滞る原因となっている静脈を焼灼・閉塞させて血液の逆流を止める方法です。傷はほとんど目立たず、現在では主流の治療法となっています。焼灼方法にはラジオ波焼灼術と、レーザー焼灼術があります。
  • ストリッピング手術:足の付け根や膝上・膝下の内側の皮膚を2~3cm程度切開し、血流が滞る原因となっている静脈に特殊なワイヤーを通して、その静脈を引き抜きます。弁不全を起こしている静脈を引き抜いてしまうので、再発率が低い治療方法です。
  • 高位結紮術:脚のつけ根を数cm切開し、逆流のある静脈を糸でしばって切離し、血液の逆流を止める手術です。
  • 硬化療法:静脈瘤の中に硬化剤を直接注入し、血管を固めて徐々に吸収させ、血流が滞る原因となっている血管を消失させる方法です。
  • グルー治療:カテーテルからシアノアクリレートという一種の瞬間接着剤を血管内に注入し、静脈瘤を塞ぐ治療法です。
下肢静脈瘤で手術が必要になるのはどのようなケースですか?
だるさ・かゆみ・むくみ・痛み・こむらがえりなどの、つらい症状がある場合は、手術を含めた治療が検討されるでしょう。さらに進行すると皮膚が乾燥して黒ずみ、皮下脂肪が硬く変化して皮膚炎を起こしてしまいます。
このような場合や下肢静脈瘤による潰瘍がある場合には、手術が必要です。

下肢静脈瘤は運動で予防できる?予防のための体操について

ストレッチ

下肢静脈瘤を予防するためには積極的な運動が必要ですか?
ふくらはぎの筋肉は歩くことによって収縮し、静脈の中の血液を押し上げてくれます。そして途中にある静脈弁が血液を下に逆流させないように支えているのです。
したがって、下肢静脈瘤を予防するためには歩くことが大変大切になります。特別な運動をする必要はありません。毎日の生活のなかで、ふくらはぎの筋肉を意識しながら歩くようにしましょう。
その心がけによって下肢静脈瘤の発症を防ぐことができます。
下肢静脈瘤予防のための体操を教えてください。
立ち仕事や長時間同じ姿勢を取ることが下肢静脈瘤の原因となるので、以下のような簡単な体操を日常生活に取り入れることで発症の予防が期待できるでしょう。

  • つま先立ち体操:壁に手をついたり、何かにつかまりながら背筋を伸ばして立ちます。両足のかかとをゆっくり上げて、つま先立ちをして、また元の姿勢に戻します。これを10回繰り返しましょう。
  • 足をバタバタする体操:座ったままでできるので、デスクワークの方にはおすすめの方法です。背中は背もたれにしっかりつけて椅子に浅く腰かけ、足を肩幅に開いて軽く前に伸ばします。かかとを床につけたまま、ゆっくりつま先を手前に引いて、次に前へ伸ばします。これを10回繰り返して1セットとし、3セット行いましょう。余裕があれば同じ体勢で、つま先で円を描くように足首も回します。5回ずつ3セット行いましょう。
  • 寝たまま手足をあげてブルブル体操:仰向けに寝て、両手両足を天井に向けて上げ、両手両足をブルブルと小刻みに震わせて30数えます。これを3セット繰り返しましょう。昼、夜の1日2回行うと効果的です。

仕事などでやむを得ず同じ姿勢でいることが多い人は、足踏みや屈伸を1時間に一回行うといった習慣を身につけるとよいでしょう。

激しい運動は逆効果になりますか?
下肢静脈瘤の予防には、適度な運動を毎日続けることが大切です。体を動かすことによって血流がよくなり、足の筋力アップに効果が期待できます。
毎日続けていくためには、ウォーキングなどの無理のない運動がおすすめです。長距離のジョギングなど、足に負担がかかりすぎるような激しい運動は避けましょう。何よりも日常的に継続できることが大切です。
体操以外の下肢静脈瘤の予防方法はありますか?
弾性ストッキングを着用して足を圧迫することで、血液の逆流を減少させることができます。長時間の立ち仕事に従事する人、妊娠中の人はぜひ着用してください。もし静脈瘤用の弾性ストッキングがきつくて履けない場合は、市販のストッキングでも圧迫効果があります。
寝るときに、 クッションなどを使って足を高くして休むこともおすすめです。また、足のつま先から上に向かってマッサージを行うのもよいでしょう。血流改善・リンパ浮腫に効果が期待できます。

編集部まとめ

ジョギング

下肢静脈瘤は良性疾患ですが、自然に治ることはなく、一度できてしまうと根治は手術治療しかありません。したがって、静脈瘤にならないように予防することが重要になります。

血流をよくするためには、毎日無理なく続けられるウォーキングがよいでしょう。

また、下肢の筋肉を刺激してポンプ機能を働かせることも大切です。足首を回したり、仰向けに寝て両足を上にあげながら、小刻みに動かす体操をすれば血流が促進されます。

このように簡単な運動や体操を生活に取り入れることで血流は改善され、下肢静脈瘤の予防・進行の防止だけにとどまらず、健康的で明るい毎日を送ることができるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
勝木 将人医師(諏訪赤十字病院 こむぎの森 頭痛クリニック)

勝木 将人医師(諏訪赤十字病院 こむぎの森 頭痛クリニック)

2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

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