一度治療した粉瘤が再発することはあるのでしょうか。粉瘤は自力では治すことのできない病気です。しかし、そうとは知らずに自分で治そうとして、膨らみが無くなったように見えても時間が経てば元通りになってしまいます。また、手術をしても粉瘤の原因をしっかりと取り除かないと再発することがあるようです。今回は、そのような粉瘤が再発する原因や再発を防ぐための治療法について解説します。これから粉瘤を治療しようと思っている方や、自力で粉瘤を治そうと誤った考えをしている方はぜひ参考にしてください。
目次 -INDEX-
粉瘤とは
まずは粉瘤の基礎知識をおさらいします。粉瘤とは、皮下に袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が、袋の中にたまってしまってできた腫瘍(嚢腫)の総称です。粉瘤はそのまま放置していると、袋の中にどんどん角質や皮脂が溜まり、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。身体のどこにもできる可能性があり、特に顔、首、背中などにできやすい傾向があります。 通常、粉瘤は特に痛みを感じることなく存在することが多いです。しかし、大きくなると見た目が気になるだけでなく、痛みを伴う場合もあります。そのため、早期に治療することがおすすめです。
粉瘤の原因
粉瘤の原因は明確にはわかっていませんが、外傷などの刺激がきっかけでできることもあります。また、人によってできやすい体質とそうでない体質があるとも言われています。明確な原因が解明されていないため、有効な予防法もないのが現状です。 下記で原因の可能性がある要素をいくつかご紹介します。
・外傷
皮膚にダメージを受けると、その修復過程で粉瘤ができる可能性があります。特に繰り返し同じ場所に外傷がある場合、粉瘤ができるリスクが高まると考えられています。
・ウイルス感染
一部のウイルスが皮膚細胞に感染することで、粉瘤が形成される可能性も考えられています。
・毛の生え際の詰まり
毛穴や皮膚の油脂が詰まることで、皮膚下に嚢腫ができることがあります。特に毛が多い部位や、汗をかきやすい部位はリスクが高いです。
粉瘤の症状
粉瘤ができると、最初は小さなしこりとして皮膚の表面に現れます。先述のとおり、このしこりは多くの場合は特に痛みがありません。しかし、時間が経つと大きくなる可能性があり、大きくなると痛みを感じることがあります。 しこりの大きさはさまざまで、豆粒程度からゴルフボールほどのサイズまで拡大することがあります。大きくなると、皮膚が張りを感じて 痛みが生じる場合もあります。また、場合によっては皮膚が赤くなる、あるいは熱を持つこともあるため、早めの対処が必要です。 また、粉瘤の皮膚開口部から細菌が侵入したり、粉瘤の袋の外に漏れ出た皮脂や角質が皮膚と触れて異物反応を起こしたりすると、炎症が生じてしまい炎症性粉瘤と呼ばれる状態になります。炎症性粉瘤は、化膿しつつ痛みや腫れを伴うため、早期の適切な治療が必要です。
粉瘤の種類
粉瘤には複数の種類が存在し、それぞれ特有の特徴があります。
・表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)
この種類は、表皮組織が皮膚内に閉じ込められ、皮脂や角質が詰まる形で出来る粉瘤です。一般的に粉瘤と呼ばれるのはこの種類です。
・外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)
主に頭部に出現する粉瘤で、毛髪の成長に関わる毛根鞘(毛髪の根元を覆う部分)が関与していると考えられます。表皮嚢腫よりも固くなることが多いです。
・多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)
これは複数の粉瘤が同時に、または短期間で出現する状態を指します。内容物はマヨネーズのような物質で、黄色くドロっとしていますが臭いはありません。
粉瘤は再発するのか
一度治療した粉瘤が再発することはあるのでしょうか。再発する場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。本項ではそのような疑問を解説します。
粉瘤は再発することがある
通常、粉瘤は手術によって摘出されますが、手術によって取り除かれた場合、再発することはほとんどありません。しかし、腫瘍が完全に摘出されていなかった場合、再発することがあります。
再発する原因について
粉瘤の手術を受けても再発を繰り返すのは、手術が不十分で皮下の袋組織が残っている可能性があります。再発のリスクを減少させるためには、手術が適切に行われ、腫瘍が完全に摘出されることが重要です。また、手術後の適切なケアやフォローアップも重要です。医師の指示に従い、定期的な検診を受けることが望ましいです。
粉瘤は自力で治せるのか
一見すると、塗り薬などで治りそうに見える粉瘤。粉瘤はニキビのように自力で治すことができるのでしょうか。粉瘤が自力で治すことのできる病気なのかどうか、その際のリスクなどについて解説します。
自力で治すことはできない
結論から言うと、粉瘤を自力で治すことはできません。粉瘤の元となるのは皮膚の表面下にある袋組織です。この袋組織を完全に取り除かないと、粉瘤を治すことはできません。袋組織は、自力で切除することは不可能で、手術をして取り除くことが必要となります。
自分で治そうとする行為のリスク
粉瘤を自力で治そうとして、皮膚に傷をつけたりすると様々なリスクがあります。粉瘤の治療は、通常は医療専門家によるものが適切です。もし粉瘤が気になる場合、なるべく早く専門家の診断と指導を受けることが重要です。自己治療は予測できない合併症を引き起こす可能性があり、健康に悪影響を及ぼすことがあります。無理に自分で取り除こうとせず、病院に相談をして適切な治療を受けましょう。
・細菌感染のリスク
粉瘤を自分で無理に絞り出したり、切ったりすることで、皮膚が傷つき細菌感染のリスクが高まります。
・炎症と悪化の可能性
自分で手を加えることで、炎症が引き起こされ、腫れや痛みが悪化する可能性があります。また、これが再発を促進する原因にもなります。
・組織の損傷
粉瘤はしばしば周囲の組織と密接に関連しています。無理に処理することで、健康な組織が損傷される可能性があります。
・悪性変化の見逃し
粉瘤が悪性に変化している場合、専門家の診断を受けないまま治療しようとすることで、悪性変化を見逃す可能性があります。
・再発のリスク
適切な方法で処理されなかった場合、粉瘤が再発する可能性が高まります。
・出血のリスク
粉瘤を切ったり絞り出したりすることで、出血が発生する可能性があります。
粉瘤は小さいうちに手術するのがおすすめ
粉瘤は自力で治すことができないことがお分かりいただけたと思います。当然ながら、自然治癒することもありません。放置すると、粉瘤が肥大化するリスクや、悪性化するリスク、内容物が出て悪臭を放つ心配があります。そのため、粉瘤は小さい状態でも放置せずに治療するのがおすすめです。小さいうちに適切な処置ができれば、傷跡も小さくすみます。
粉瘤の再発を防ぐ治療方法
ニキビなどと異なり、粉瘤は自然には治りません。残念かもしれませんが、まずはその事実をしっかりと認識することが大切です。病院での診断と治療が一般的に推奨されています。治療法は複数ありますが、今回は特に「くりぬき法」と「切開法」に焦点を当てて解説します。
切開法
切開法は、粉瘤自体を切り取って取り除く手術です。局所麻酔後、粉瘤ができている部分に小さな切開を入れ、中の膿や組織を取り出します。切開法では袋を破らないようにして全摘出するので、成功すれば再発の可能性が少ない点がメリットです。ただし、くりぬき法と比較すると傷跡が目立ちやすいです。
くり抜き法
くりぬき法では、粉瘤の表面に小さな穴を開け、中にある粉瘤の袋の内容物を取り出します。その後、内容物がなくなり小さくなった粉瘤の袋を取り出します。この方法の利点は、穴が小さく目立たないことです。一方で、切開法と比較すると再発の可能性が上がることがデメリットです。
治療後の注意点
術後には特に気を付けるべき点があります。主に出血、疼痛、感染には気をつけましょう。具体的には、手術後は激しい運動や飲酒、喫煙、入浴を避けるようにと医師から指示されることが多いです。
出血
手術後は血がにじむ可能性があるため、特に当日は激しい運動や飲酒、喫煙、入浴は避けましょう。翌日以降は、医師の指示に従ってください。
疼痛
麻酔が切れた後に痛みが出る場合があり、その場合は痛み止めが処方されることが多いです。
感染
手術した部分が細菌に感染するリスクもあり、抗生物質が処方されることがあります。
術後の経過
術後3~5日で血がにじむ量が減少し、 2~4週間で傷口が閉じることが多いです。しかし、個々の状況によってはもう少し時間がかかる場合もあります。 以上のケアと注意事項を守ることで、術後のリスクを抑えることができますので参考にしてください。
粉瘤ができやすい人の特徴
粉瘤は誰にでもできる可能性がありますが、特定の条件や生活習慣によって、できやすい人もいます。ここでは、その特徴について解説します。
男性
男性は女性よりも粉瘤ができやすいといわれています。男性ホルモンは皮脂の生成を促進するため、皮脂が過剰になると毛穴が詰まりやすく、粉瘤ができやすくなっている可能性があります。
汗をかきやすい人
汗をかきやすい人も、粉瘤ができやすい傾向にあります。汗と皮脂が混ざることで、毛穴が詰まりやすくなります。特に、暑い季節や運動をした後は注意が必要です。
ホルモンバランスの乱れている人
ホルモンバランスの乱れは、皮膚の状態にも影響を与えます。特に、女性ホルモンと男性ホルモンのバランスが崩れると、皮脂の分泌が不規則になり、粉瘤ができやすくなります。生理周期や更年期、ストレス、睡眠不足などがホルモンバランスを崩す一因となることがあります。
粉瘤の原因を作らないための予防方法
粉瘤ができる原因ははっきりしていないため、直接的な予防方法はありません。ここでは、ホルモンバランスと皮膚のターンオーバーに影響を与える要素に注目して、一般的な皮膚疾患の予防方法を説明します。
十分な睡眠時間
睡眠は体全体の回復とリフレッシュに非常に重要な時間です。それは皮膚にとっても同様で、特に夜は新陳代謝(ターンオーバー)が活発に行われる時間帯でもあります。長い睡眠時間を確保することで、皮膚の健康を維持し、結果的に粉瘤ができるリスクを減らせる可能性があります。 また、短時間の睡眠や不規則な生活は、ホルモンバランスを崩す可能性があります。その結果、皮脂の分泌が不規則になり、粉瘤ができやすくなるかもしれません。目安としては、一晩に7〜8時間の睡眠を確保することが理想です。
適度な運動
運動は健康維持には欠かせない要素であり、皮膚に対しても多くのメリットがあります。適度な運動によって、血行が良くなります。これによって皮膚の新陳代謝が促され、健康な皮膚を維持することができます。 しかし、運動には注意点もあります。たとえば、汗をかくことで皮膚の表面に皮脂が溜まりやすくなる場合があります。そのため、運動後はしっかりとシャワーを浴びるなどして皮膚を清潔に保つことが重要です。
バランスのとれた食生活
バランスのとれた食生活を心がけることで、皮膚の健康を促し、粉瘤のリスクを低減するかもしれません。たとえばビタミンAやビタミンC、鉄分などは皮膚の健康に直接関わっているため積極的に接種すると良いでしょう。また、高脂質、高糖質の食事は皮脂の分泌を促すことがあり、それが粉瘤の原因になる可能性があるため気をつけましょう。
清潔な皮膚作り
皮膚の清潔さは、皮膚疾患を予防する上で非常に重要な要素です。特に、毛穴が詰まると、皮膚内部で細菌が増殖しやすく、粉瘤のリスクが高まります。 日々の洗顔はもちろん、定期的にピーリングを行うなどして、毛穴の汚れをしっかりと取り除くことが大切です。また、メイク道具も定期的に清潔にするなど、細かいところにも注意を払いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。粉瘤は再発する可能性があることがお分かりいただけたかと思います。手術の際に、しっかりと袋組織を取り除けていない場合には、再発する可能性があります。もし再発してしまったら、自力で治そうとはせずになるべく早く病院に相談しましょう。とはいえ、適切に手術をしていれば再発する可能性は低いです。初めての手術でしっかりと専門医に相談して適切な手術を施しましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献