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おしりの穴が痛い!原因や痛みを和らげる方法、根本的な治療まで幅広く解説

 公開日:2024/12/20

おしりの穴に痛みを感じた際、生活に支障をきたすことから一刻も早く痛みを取り除きたいと考える方が多いかと思います。しかし、その原因によって痛みを和らげる方法は異なります。間違った応急処置をすることで、痛みを悪化させてしまうということもあります。

そのようなことを防ぐため、この記事ではおしりの穴に痛みを感じた場合の、考えられる原因や対処法を解説しています。ぜひ参考になさってください。

おしりの穴が痛い時に考えられる症状と病気

おしりの穴が痛い時に考えられる症状と病気 おしりの穴が痛い場合、いくつかの病気が考えられます。どのような原因があり、それはどのような病気なのかを解説していきます。

肛門の筋肉痛(肛門挙筋症候群 )

おしりの穴の痛みの原因として考えられる病気の一つに、肛門挙筋症候群があります。これは、何らかの原因で肛門付近の筋肉が攣縮(れんしゅく)して起こる痛みです。すぐに治まる場合もあれば、数時間ほど続く場合もあり、治療は主に鎮痛剤の服用や座浴によって行います。

また、骨盤まわりの理学療法を行う場合もあります。別の疾患の可能性もあるため、すぐに治まるからといって放っておくのではなく、医療機関で診断を受けることが大切です。

きれ痔(裂肛)

次に考えられるのが、切れ痔です。切れ痔は、肛門まわりの皮膚が切れた状態のことを指し、便秘により便が硬くなり排便時に肛門に負担がかかることや、強くいきむこと、下痢の際に勢いよく排便してしまうことなどで起こります。

便秘は、ダイエットなどで十分な食事をとっておらず便の量が少なかったり、食物繊維や水分が不足したりすることで起こることが多く、便秘が改善されないと切れ痔が慢性化しやすいため、食生活の改善が予防のカギとなります。また、肛門まわりの筋肉の緊張や狭窄、クローン病などの炎症性腸疾患が原因で肛門付近に炎症が生じた場合も、裂肛が起きることがあります。

いぼ痔(内痔核・外痔核)

いぼ痔は、肛門まわりの血管がうっ血することによって生じる痔です。三大痔疾患である切れ痔、いぼ痔、痔ろうの中で、症状に悩む方が多いのがいぼ痔といわれています。便秘や下痢、座りっぱなしや排便時のいきみなどにより血流が滞ることで起こり、そのできる場所によって二つの種類に分けられます。

直腸と肛門の境目にある歯状線の内側にできたものが内痔核、外側にできたものが外痔核です。初期の内痔核の場合には痛みを感じることはあまりありませんが、排便時の出血やいぼの脱出といった症状が現れます。外痔核の場合には痛みを感じることが多く、炎症を起こすとさらに強い痛みとなります。また、内痔核はいぼの脱出状態によって、進行度合いが4段階に分けられており、症状がひどくなるとおしり全体にまで痛みが及ぶこともあります。

痔ろう

痔ろうは、肛門の周辺が細菌感染し膿がたまる「肛門周囲膿瘍」が、悪化することで起こる疾患です。たまった膿を排出しようと、外につながる管が形成されることで「痔ろう」と呼ばれる状態になります。肛門周囲膿瘍も痔ろうも、痛みや腫れ、発熱といった症状が現れることがあり、生活に大きな支障をきたします。

おしりの穴が痛い時に考えられる原因

おしりの穴が痛い時に考えられる原因 肛門挙筋症候群や痔といった病気のほかにも、おしりの穴が痛い時に考えられる原因があります。

生理前後の肛門の炎症

女性の方の場合に考えられるのは、生理が原因となって肛門が炎症を起こしている場合です。はっきりとした原因はわかっていませんが、ホルモンバランスの変化や経血により、肛門まわりの肌が炎症を起こしやすい状態になり、痛みを伴うことがあります。

また、生理前後は便秘や下痢になりやすくなることもあります。これらが原因で排便時に痛みがあるという場合には、生理周期を予測し、生理が始まる少し前から食物繊維を含んだ食材や水分を多くとり、刺激物やアルコールは控えることで便秘や下痢を予防しておくことが大切です。また、生理用品をこまめに変えたり、入浴の回数を増やしたりして、デリケートゾーンを清潔に保つことも炎症の予防につながります。

便秘・下痢(排便の異常)

前述したように、便秘や下痢は肛門の痛みにつながることがあります。硬い便を出そうといきんだ際に粘膜を傷つけてしまったり、下痢で細菌感染を起こしてしまったりするためです。

便秘や下痢にならないように食生活の見直しをしたり、温水洗浄を使って排便後の肛門を清潔に保ったりしましょう。また、便秘や下痢は切れ痔やいぼ痔、痔ろうなどの原因にもなるため、注意が必要です。

身体の疲労やストレス

疲れがたまっていたり、ストレス状態が続いていたりすることも、肛門の痛みにつながることがあります。これは、疲れやストレスにより免疫力が低下し、肛門が炎症しやすい状態になるためです。

排便という働きがあることからもわかるように、もともと肛門は、おびただしい数の細菌と接している場所です。免疫力の低下は、風邪や腹痛といった身近な症状だけでなく、肛門の痛みにもつながると覚えておきましょう。

おしりの穴の痛みを和らげる方法

おしりの穴の痛みを和らげる方法 では、おしりの穴に痛みを感じた場合は、どのような方法で和らげることができるのでしょうか。ここでは、二つの対処法をご紹介します。

お風呂で身体を温める

まずは、お風呂で身体を温めるという方法があります。これは、肛門にいぼができる外痔核や、肛門が切れる切れ痔などが痛みの原因の場合に有効です。血流をよくすることで、痛みの改善が見込めます。

もし、お風呂に入るのが難しい状況の場合には、ホットタオルやカイロなどで患部を温めるのがおすすめです。ただし、患部が熱を持っている場合などは、温めることは逆効果になることがあります。その場合は冷やすなどして、化膿を悪化させないことが大切です。

適度な運動をする

また、いぼ痔や切れ痔などに対しては、適度な運動をすることも予防や症状の改善につながります。これは、運動をすることで血流が良くなり、痔の発症や進行を予防しやすくなるためです。また、適度な運動をすることは便秘や下痢を予防することにもつながります。

便秘や下痢は、痔や肛門まわりの炎症などの原因になりますので、適度な運動をして正しい排便習慣を身に付けることは、おしりを清潔に保ち健康を守ることにもつながるといえるでしょう。具体的には、座りっぱなしを避けて1時間ごとに立ったり歩いたりするといった習慣を持つほか、肛門をキュッと引き締めたり緩めたりするのを繰り返す肛門のストレッチもおすすめです。また、肛門を含めた全身の血流を改善するためには、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動が適しています。ただし、乗馬やサイクリングといった腹圧がかかりやすい運動は、いぼ痔の原因につながりやすいので注意しましょう。

おしりの穴が痛い時にできるセルフケア

おしりの穴が痛い時にできるセルフケア 切れ痔やいぼ痔になってしまった場合の応急処置として、ご自宅でできるセルフケアを解説します。

切れ痔の時のセルフケア

切れ痔になってしまった場合、痛みがあることから、排便を我慢してしまうことも多いかもしれません。しかし、排便を我慢して便秘が悪化するのは逆効果です。規則正しい生活や適度な運動を心がけ、適切な排便習慣を取り戻すようにしましょう。便秘を防ぐために、1日に20gほどの食物繊維をとったり、朝食をしっかり食べて大腸に刺激を与えたりすることも大切です。

また、水分や発酵食品も便秘改善につながります。ヨーグルトや納豆などを積極的に摂取しましょう。ただし、傷が深い場合には、少しのいきみで再発したり、症状を繰り返したりしてしまうこともあります。慢性化しやすいという特徴がありますので、セルフケアだけで対処が難しい場合は早めに治療を開始しましょう。また、便秘ではなく下痢で切れ痔になっていることもあります。その場合は、胃酸の分泌を高める刺激物や味の濃い食事は避けましょう。また、何らかの病気が原因で下痢が続いていることも考えられるため、医師の診断を受けることも大切です。

いぼ痔の時のセルフケア

いぼ痔になってしまった場合も、切れ痔と同様に適切な排便習慣を心がけることが大切です。また、そのほかにもいくつかの対処法があります。まずは、うっ血を起こさないようにするために、排便時に強くいきむのは控えましょう。長くいきむことも控えたほうが良いため、便が出ない場合には一度切り上げるなど臨機応変に対処することが必要です。

また、入浴で肛門を温めたり、応急処置として市販薬を使ったりするのもおすすめです。有酸素運動を行ったり、前述した肛門ストレッチをしたりすることも、血流の改善につながります。

手術を回避するために

痔の種類や症状の度合いによっては、手術が必要になります。しかし、身体への負担やスケジュールの調整、費用など、手術に対して不安や心配を抱える人は多いのではないでしょうか。

できるだけ手術を避けて症状を改善するためには、おしりの痛みに気づいた段階で医療機関を受診することが大切です。前述した応急処置やセルフケアで改善しない場合には、できるだけ早く専門の医師の診断を受けましょう。

おしりの穴が痛い時の病院での治療法

おしりの穴が痛い時の病院での治療法 おしりの穴の痛みで医療機関を受診する場合、何科を受診すればいいのか、どのような治療法があるのかなど、わからないことが多いかと思います。ここでは、そのような疑問にお応えして、痔の基本的な治療法について解説します。

何科を受診すれば良いか

おしりの穴に痛みや腫れがある場合は、肛門外科を受診するのが良いでしょう。スケジュールの都合が合わない場合や、自宅の近くに肛門外科がない場合には、外科や消化器外科に行ってみることをおすすめします。

また、それでもちょうどいい医療機関が見つからないという場合には、かかりつけの内科などで症状を説明し、適した医療機関を紹介してもらうのもいいかと思います。

いぼ痔の治療法

いぼ痔の治療は、症状の進行度によって方法が異なります。症状が軽い場合は、軟膏や座薬による治療で経過を観察します。これらの外用薬とともに、排便時にいきまない、座りっぱなしを防ぐといった生活習慣の改善も必要です。内痔核が脱出する場合や、外痔核で強い痛みがある場合には、手術や注射による治療が適応となります。

手術は結紮切除法というものであり、医療機関によって日帰りで行う場合と入院して行う場合があります。注射による治療は、ALTA注射療法と呼ばれるものであり、痔核を硬く小さくさせる方法です。こちらも、日帰りで行う場合と入院して行う場合があり、結紮切除術と併用して行われる場合もあります。

切れ痔の治療法

切れ痔の治療は、傷が浅い場合には塗り薬や座薬で自然治癒を試みます。整腸剤や下剤といった便秘を改善する飲み薬を併用する場合もあります。硬い便や太い便が肛門を通ることで起こる場合が多いため、食物繊維や水分をバランスよくとるなど、食生活の改善も大切です。

肛門が狭くなり排便が困難になっている場合や、排便時に関わらず痛みが持続している場合には、手術を選択することになります。手術には、裂肛根治術、肛門狭窄形成術、側方内括約筋切開術といった方法があり、括約筋を一部切除することで狭窄を改善します。

痔ろうの治療法

肛門周囲膿瘍が悪化して痔ろうになっている場合には、薬や生活習慣の改善では治療ができません。そのため、切開開放術、瘻管くりぬき術、シートン法といった手術を行うことになります。痔ろうができている場所によって適する方法が異なり、それぞれにおける再発リスクの度合いや治療にかかる時間も異なります。

切開開放術は管が肛門の後方にできている場合、瘻管くりぬき術は管が前方や側方にできている場合に適しています。シートン法の場合は、肛門まわりの筋肉の損傷が少ないというメリットがありますが、管が開放されるまでには数カ月かかるというデメリットがあります。そのため、瘻管くりぬき術とシートン法を併用するといった選択がとられることもあります。完治までの一般的な期間は、単純痔ろうの場合は2、3カ月、管が枝分かれしているなど複雑痔ろうの場合は3~6カ月ほどです。

まとめ

まとめ おしりの穴に痛みがある場合の原因や対処法、医療機関での治療法について解説しましたが、参考になったでしょうか。単なる炎症の場合には、患部を清潔に保つことで症状の改善が見込めますが、中には痔などの手術が必要になる疾患が原因の場合もあります。自己判断で対処すると症状を悪化させてしまうこともありますので、痛みがある場合はぜひ医療機関を受診してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

甲斐沼 孟医師(上場企業産業医)

平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医 平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員 令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長 令和5年(2023年) 上場企業産業医

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