「おたふく風邪の初期症状」はご存知ですか?受診の目安となる症状も解説!【医師監修】

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、主に幼児から学童期の子どもに多くみられるウイルス感染症です。耳の下にある耳下腺(じかせん)の腫れが特徴的ですが、その前に発熱やだるさなどの症状が現れることもあります。多くは自然に回復しますが、まれに合併症を起こすため、症状の経過や受診の目安について知っておくことが大切です。この記事では、おたふく風邪の初期症状や症状の進み方、注意するべきサインを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
おたふく風邪の初期症状や発症の兆候

おたふく風邪は何日程度の潜伏期間を経て発症しますか?
感染してもすぐに症状がでるのではなく、身体の中でウイルスが増殖した後に発症します。なお、おたふく風邪に感染しても、約30%の方は症状が現れない(不顕性感染)といわれています。
参照:
『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)』(国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト)
『流行性耳下腺炎 Mumps』(東京都感染症情報センター)
おたふく風邪には前兆症状はありますか?
おたふく風邪の初期症状を教えてください
参照:『ムンプスウイルス病原検査マニュアル』(国立感染症研究所)
おたふく風邪と似た症状を持つ病気はありますか?
反復性耳下腺炎も子どもに多くみられる病気で、免疫力が低下した際に、お口の中の常在菌などが原因で発症すると考えられています。耳下腺の腫れを何度もくり返すのが特徴です。腫れは数日ほどで自然とおさまります。微熱や軽い痛みを伴うこともありますが、おたふく風邪のような強い症状はみられません。多くの場合、思春期頃までに耳下腺の腫れはみられなくなります。
耳下腺の腫れがみられたときは、「おたふく風邪だ」と自己判断するのではなく、症状の強さや経過をみて、医療機関に相談することが大切です。
参照:『舌・口の疾患「反復性耳下腺炎」(日本福祉大学)』
おたふく風邪の初期症状が現れたときの対処法と受診サイン

初期症状が現れたらすぐに病院を受診してもよいですか?
おたふく風邪で緊急受診した方がよい症状を教えてください
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐がある
- 首のこわばり(首を前に曲げにくい)がある
- ぐったりとしていて反応が鈍い
- けいれんを起こした
- 睾丸の痛みがある
- 急に聞こえなくなった
- 強い腹痛がある
これらの症状は、無菌性髄膜炎や急性脳炎などの重篤な合併症と関連している可能性があります。「いつもと様子が違う」「明らかにぐったりとしている」と感じた場合は、迷わずに医療機関を受診してください。
おたふく風邪は病院でどのように治療しますか?
また、おたふく風邪の原因ウイルスを直接治す薬はありません。治療は症状を和らげる対症療法が中心です。発熱や痛みに対しては、解熱鎮痛剤が処方されます。
痛みのために食事がとれず、水分摂取も難しい場合には、必要に応じて点滴投与を行います。おたふく風邪は多くの場合、自宅で安静にしていれば自然に回復する病気です。ただし、症状が強い場合や合併症が疑われる場合には、追加の検査や入院による治療が行われることもあります。
参照:『流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)』(国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト)
おたふく風邪の症状の経過

おたふく風邪はどのような経過をたどって治癒しますか?
症状のピークを過ぎると、発熱は次第に下がり、腫れや痛みもゆっくりと軽くなっていきます。多くは、7~10日ほどで自然に軽快し、特別な治療をしなくても回復します。腫れが完全に引くまでに1週間以上かかることもありますが、時間とともに改善していくのが一般的です。
参照:『ムンプスウイルス病原検査マニュアル』(国立感染症研究所)
おたふく風邪による顔の腫れは何日程度で治りますか?
おたふく風邪の合併症や後遺症について教えてください
代表的な合併症には次のようなものがあります。
- 無菌性髄膜炎
- 難聴
- 急性脳炎
- 精巣炎・卵巣炎(思春期以降)
- 膵炎
- 流産(妊婦が感染した場合)
無菌性髄膜炎は、約100人に1人の割合でみられるといわれています。強い頭痛や繰り返す嘔吐、首のこわばりなどが主な症状です。多くは回復しますが、入院して経過をみることもあります。
難聴は、約1000人に1人の割合で起こるとされ、後遺症として残ることがあります。多くは片側だけに突然起こり、気付きにくいことが特徴です。「テレビの音量を以前より大きくしていたり、呼びかけに対する反応が鈍い」と感じたりした場合には、耳鼻科を受診しましょう。
急性脳炎は約3000~5000人に1人とまれではあるものの、けいれんや意識障害を伴う重篤な合併症です。ぐったりしている、反応が弱いといった様子があれば、すぐに医療機関を受診してください。
また、思春期以降に感染した場合、男性では精巣炎(20~30%前後頻度)、女性では卵巣炎(成人女性の7%)を発症することがあります。精巣炎は、精巣の腫れや強い痛みがみられ、まれに将来の不妊に影響する可能性があります。卵巣炎は、多くの場合不妊症にならないといわれています。
発症頻度はあまり高くないとされていますが、膵炎を引き起こすこともあります。発症すると、みぞおち付近の強い腹痛・吐き気・嘔吐などの症状が現れます。
なお、妊婦が感染した場合、流産の危険率が高くなるといわれています。妊娠中はワクチン接種ができないため、妊娠を希望している女性は事前に抗体の有無を確認し、必要に応じて接種の検討をしておくことも大切です。
参照:
『学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説』(日本小児科学会)
『おたふくかぜワクチン』(日本小児科学会)
編集部まとめ

おたふく風邪は、耳の下の腫れが特徴的な感染症で、多くは1週間ほどで自然に回復します。発熱やだるさが先にみられることもあるため、体調の変化に気付いたら様子をよく観察することが大切です。
ほとんどは軽症で済みますが、まれに髄膜炎や難聴などの合併症を起こすことがあります。強い頭痛や繰り返す嘔吐、ぐったりしている様子があれば、迷わず医療機関を受診しましょう。
参考文献



