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「インフルエンザ脳症を疑う初期症状」はご存知ですか?救急車を呼んだ方がよい症状も解説!

 公開日:2026/03/02
「インフルエンザ脳症を疑う初期症状」はご存知ですか?救急車を呼んだ方がよい症状も解説!

インフルエンザ脳症は、インフルエンザ感染に伴って急速に脳の機能障害を起こす重篤な合併症です。特に小児に多くみられ、発熱や咳など通常のインフルエンザ症状に加えて、急な意識障害や異常行動などが現れることがあります。初期症状を見逃さず、適切なタイミングでの受診が命を守る鍵です。この記事は、インフルエンザ脳症の初期にみられるサインや、緊急で受診すべき症状、家庭で観察すべきポイントを解説します。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

インフルエンザ脳症の初期症状

インフルエンザ脳症の初期症状

インフルエンザ脳症とはどのような病気ですか?

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスに感染した後に、脳の働きに急激な障害が起こる重い病気です。インフルエンザそのものは多くが自然に治癒しますが、インフルエンザ脳症になると、脳が腫れることで意識がもうろうとしたり、呼びかけに反応しにくくなったり、けいれんや異常な言動・行動が突然あらわれたりします。

通常の発熱や咳、鼻水などの症状に比べて進行がとても早く、短時間のうちに命に関わる状態に陥ることもある危険な合併症です。特に小さなお子さんは発症に気付きにくいため、普段と様子が違う・言動がおかしいと感じたときには、インフルエンザ脳症の可能性を考えます。

参照:『インフルエンザ脳症について 』(荒尾市立有明医療センター)

インフルエンザ脳症の初期症状を教えてください

インフルエンザの高熱が出てから数時間〜1日以内に、急に「いつもの様子と違う」神経の症状が出てくることが特徴です。代表的には、呼びかけに反応しにくい・ぼんやりしているなどの意識の変化、意味不明なことを言う・急に怒り出す・泣き出す・怖がるなどの異常な言動や行動がみられます。また、けいれん発作、ひどい頭痛や繰り返すおう吐、ふらつきで歩けない、力が入らないなどの症状も重要なサインです。

参照:『インフルエンザ脳症について 』(荒尾市立有明医療センター)

インフルエンザとインフルエンザ脳症の症状の違いを教えてください

インフルエンザは、急な高熱(38度以上)、強い全身のだるさ、筋肉痛・関節痛、頭痛、咳、のどの痛み、鼻水などが中心の全身感染症です。一方、インフルエンザ脳症では、これらインフルエンザの症状に加えて、脳の働きの異常によるサインが初期から目立ちます。具体的には、呼びかけても反応が薄い、ぼんやりしている、意味不明なことを言う、急に泣く・怒る・暴れるなどの異常な言動や行動、けいれん、繰り返すおう吐、ひどい頭痛、ふらつきなどです。

参照:『インフルエンザ脳症から子どもを守るために。知っておきたい症状と家庭での注意点』(愛媛県小児科医会資料)

通常の熱せん妄やけいれんとインフルエンザ脳症の異常行動や意識障害は異なりますか?

通常の熱せん妄や熱性けいれんと、インフルエンザ脳症による異常行動・意識障害は性質や経過が異なることが少なくないと考えられます。熱せん妄は、高熱に伴って一時的に夢と現実が混ざったような状態になり、意味不明なことを言う・怖がる・泣き叫ぶなどの異常行動を伴いますが、多くは数分〜数十分のうちに落ち着き、呼びかけにはある程度反応が残ります。

一方、インフルエンザ脳症は、意識がはっきり戻らない、呼びかけにほとんど反応しない、視線が合わないなどのはっきりした意識障害が持続しやすく、けいれんが長く続く、何度も繰り返す、異常行動が長時間続くなどの特徴があります。ただし、発症直後は見分けがつきにくいことも少なくないため、高熱と様子がおかしく、その状態が続く・悪化する場合は、熱せん妄と決めつけないことが大切です。

参照:
『徳島県医師会の小児科相談 』( 徳島県医師会Webサイト)
『インフルエンザ脳症ガイドライン 【改訂版】』(厚生労働省)

インフルエンザの初期症状を見逃さないためのポイント

インフルエンザの初期症状を見逃さないためのポイント

インフルエンザを発症してから脳症を発症するまでの期間の平均を教えてください

インフルエンザ脳症は、インフルエンザを発症してからごく短い期間で起こる危険な合併症です。インフルエンザ発症から脳炎・脳症発症までの平均は1. 4日程度と報告されており、発症から1〜2日以内に神経症状が出るケースが少なくないとされています。

参照:
『インフルエンザ脳症』(佐久総合病院薬剤部)
『北海道における小児期インフルエンザ脳炎・脳症の発症状況』(厚生科学研究費補助金分担研究報告書)

インフルエンザの子どもを見守る際に注意すべき兆候や症状を教えてください

高熱+いつもと様子が違うことに特に注意して見守ることが大切です。まず、重い合併症や脱水を疑うサインとして以下があります。

  • ぐったりして起きていられない、顔色が悪い
  • 水分が十分に飲めない、尿が少ない・半日以上出ていない
  • 息が速い・苦しそう、胸やおなかを大きくへこませて呼吸している
  • 強い咳で眠れない、ゼーゼー・ヒューヒューしている

これらが続く場合は受診を急ぎます。さらにインフルエンザ脳症などを疑う危険なサインとしては以下です。

  • 呼びかけても反応が弱い、ぼんやりしている、視線が合わない
  • 意味不明なことを言う、急に泣く・怒る・暴れるなどの異常な言動
  • けいれんを起こした、同じような発作を繰り返す
  • 繰り返し強く吐く、頭痛を強く訴える

これらの症状が高熱と一緒に見られた場合は、夜間でもただちに救急受診を検討してください。

すぐに救急車を呼んだ方がよい症状はありますか?

以下のような症状があらわれた際は救急車を呼びましょう。

  • 呼吸が苦しそう(肩で息をする、息が浅く速い、顔や唇が紫っぽい)
  • 意識がおかしい(呼びかけにほとんど反応しない、視線が合わない、ぐったりして起きていられない)
  • けいれんが5分以上続く、繰り返し起こる、けいれん後も意識がはっきり戻らない
  • 繰り返し強く吐く、まったく水分が取れない、尿が半日以上出ないなど脱水が強い
  • 激しい頭痛を訴える、首を痛がる・後ろに反らすなど、髄膜炎や脳症が疑われる様子がある
高熱がある+いつもと明らかに様子が違う、親から見て明らかにおかしいと感じたときも、迷わず119番に電話し、症状を詳しく伝えて指示を仰いでください。

様子見をしても問題がない症状を教えてください

まず、発熱があっても水分がしっかりとれており、おしっこ(尿)もいつもどおり(あるいは少し減る程度)出ている場合は、脱水の心配は少ないです。また、ぐったりせず、抱っこや声かけに反応して笑ったり嫌がったりできる、好きな動画を見たり少し遊ぶ元気がある、などであれば、重い意識障害の可能性は低いと考えられます。

インフルエンザ脳症が疑われるときの病院での対応

インフルエンザ脳症が疑われるときの病院での対応

インフルエンザ脳症の初期症状がみられるときは病院でどのような対応がとられますか?

病院ではまず全身状態意識レベル呼吸や循環の安定性を優先して評価します。呼吸が不安定なときは酸素投与や気道確保を行い、必要に応じて集中治療室(ICU/PICU)での管理が検討されます。そのうえで、インフルエンザ脳症かどうかを判断するために、血液検査(炎症反応、電解質、肝腎機能など)や髄液検査、頭部CT・MRI、脳波検査などが行われます。

参照:『インフルエンザ脳症ガイドライン 【改訂版】』(厚生労働省)

インフルエンザ脳症の治療法を教えてください

全身状態を守る治療脳のダメージを減らす治療をできるだけ早く始めることが重要です。まず、呼吸や血圧、脈拍、尿量などをしっかり管理し、必要に応じて酸素投与点滴、場合によっては人工呼吸管理などを行って、命を守るための支持療法を行います。

同時に、けいれんがあれば静脈注射の抗けいれん薬で早期に抑え、脳の腫れ(脳浮腫)を抑える薬や輸液の調整を行います。そのうえで、抗インフルエンザ薬(タミフルなど)を投与し、病型や重症度に応じて、メチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法免疫グロブリン大量療法などの特異的治療が検討されます。これらを行っても改善が不十分なとき、施設や症例によっては脳低温療法血漿交換療法などの高度な治療が追加される場合もありますが、効果はまだ研究段階とされています。

参照:
『インフルエンザ脳症の新しい治療法について』(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
『インフルエンザ脳症ガイドライン 【改訂版】』(厚生労働省)

インフルエンザ脳症には後遺症はありますか?

発症した子どものうち、4分の1前後に何らかの後遺症がみられると報告されており、死亡例も含めると3割程度が死亡し、2~3割程度に後遺症、後遺症なく回復するのは4割ほどとするデータもあります。後遺症は、知的障害・発達の遅れ、てんかん(けいれん発作を繰り返す状態)、四肢麻痺・片麻痺などの運動障害、高次脳機能障害(記憶力や注意力の低下、学習障害)などが挙げられ、長期のリハビリテーションや継続的な医療・療育支援が必要になることがあります。

参照:
『インフルエンザ脳炎・脳症に関する研究(総括研究報告書)』(厚生労働科学研究成果データベース)
『急性脳症の全国実態調査』(厚生労働科学研究補助金)

編集部まとめ

編集部まとめ

インフルエンザ脳症は、インフルエンザ発症から短時間で意識障害やけいれん、異常行動が現れる重い合併症です。特に高熱+呼びかけに反応しにくい・意味不明な言動・けいれん・繰り返す嘔吐などは緊急受診のサインで、発熱から1日以内でもためらわず受診が重要です。一方で、水分がとれて意識がはっきりしている場合は自宅で経過観察も可能ですが、様子が急に変わることがあるため、「いつもと違う」と感じたら早めに医療機関に相談してください。

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