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「インフルエンザ脳症」の症状やかかりやすい年齢層はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2026/02/26
「インフルエンザ脳症」の症状やかかりやすい年齢層はご存知ですか?【医師監修】

「インフルエンザで高熱が出た子どもが、急に様子がおかしくなったらどうしよう」「インフルエンザにかかった後、けいれんを起こしたら? 意識がもうろうとしたら?」インフルエンザ脳症は頻度こそ高くありませんが、発症すると急激に症状が進行することがあります。20歳未満に起こりやすい病気であり、保護者として正しい知識を知っておくことがとても重要です。
また、子どもだけでなく、成人や高齢の方の発症例も知られています。
この記事は、インフルエンザ脳症はどのような方に多いのか、どのような検査を行うのか、そして現在行われている治療について解説します。

参照:『成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン 第2版』(厚生労働省)

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

インフルエンザ脳症の概要

インフルエンザ脳症の概要

インフルエンザ脳症とはどのような病気ですか?

インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった後、脳の働きに異常が起こる病気です。インフルエンザ脳症は、インフルエンザを発症した後に、次のような症状が突然あらわれます。

  • 反応が鈍い、呼びかけに答えない
  • 意識がもうろうとする
  • けいれんを起こす
  • 嘔吐する
  • 急に暴れる、意味のわからない言動をする

自分で意思表示がしにくい子どもや高齢の方は特に「高熱でぐったりしているだけ」と見分けがつきにくいこともあります。

インフルエンザ脳症を発症する人の割合や人数を教えてください

インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった方すべてが発症するわけではない、まれな合併症です。
報告される年によって差はありますが、日本では毎年およそ100人から数百人程度が発症するとされています。

一方で、いったん発症すると重い経過をたどることがある病気でもあります。特に子どもの場合、命に関わることがあり、助かった場合でも後遺症が残ることが少なくありません

そのため、インフルエンザにかかった後に、「意識がはっきりしない」「けいれんを起こした」「様子がおかしい」といった症状がみられた場合には、早めに医療機関を受診することがとても重要です。

参照:『インフルエンザの臨床経過中に発生する脳炎・脳症の疫学及び病態に関する研究(総括研究報告書)』(厚生労働省)

インフルエンザ脳症にかかりやすい年代や性別はありますか?

インフルエンザ脳症は、子どもに多い病気です。
1年間に発症する方のうち、6割以上が20歳未満で、特に小児に多いことがわかっています。一方で、60歳以上の高齢の方も1~2割程度を占めています。

2019年のインフルエンザ流行期に報告されたインフルエンザ脳症では、15歳未満の子どもが約9割を占めていました。この年の発症年齢の真ん中(中央値)は7歳で、小学校低学年くらいの子どもが多かったことがわかります。

なお、男の子と女の子、男性と女性の間で、かかりやすさに大きな差があるという報告はありません。

参照:
『急性脳炎(脳症を含む)サーベイランスにおけるインフルエンザ脳症報告例のまとめ』(国立健康危機管理研究機構)
『成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン 第2版』(厚生労働省)

インフルエンザ脳症の検査と診断

インフルエンザ脳症の検査と診断

インフルエンザ脳症が疑われるときの検査方法を教えてください

インフルエンザ脳症の診断のためには、医師の診察による意識障害の程度の観察を中心に、以下の検査などを組み合わせて行います。

  • 頭部CT
  • 頭部MRI
  • 脳波検査
  • 血液検査
  • 尿検査

特に、頭部CTでインフルエンザ脳症らしい所見を認めたら、すぐにインフルエンザ脳症と診断できます。ただし、典型的な画像所見にならないこともあります。

インフルエンザ脳症はどのように診断されますか?

まず、インフルエンザ発症後に意識障害が重度であることが診断の条件です。重度の意識障害とは、放っておくとすぐ眠り込んでしまい、大きな声かけや強い刺激でやっと開眼するような状態から、痛みを加えると一瞬反応する程度である状態、または、痛みを加えても反応しない状態を指します。

このような重度の意識障害を認めた場合、すみやかにインフルエンザ脳症の確定診断となります。
また、頭部CTでインフルエンザ脳症らしい所見が得られた場合も、インフルエンザ脳症の確定診断となります。
そのほかの場合でも、経過を見ながら検査を重ねてインフルエンザ脳症と診断される場合もあります。

インフルエンザ脳症の治療法と後遺症

インフルエンザ脳症の治療法と後遺症

インフルエンザ脳症には治療法がありますか?

インフルエンザ脳症では、身体を支える基本的な治療(点滴や呼吸、体温の管理など)に加えて、脳にもとに戻らないダメージが起こる前に、できるだけ早く治療を始めることが大切だと考えられています。
検査でインフルエンザ脳症とはっきり診断された場合だけでなく、その疑いがある段階でも、安全に行える治療が早めに選ばれることがあります。具体的には、下記のような治療です。

  • インフルエンザウイルスを抑える薬
  • 強い炎症を一時的に抑える薬(ステロイド治療)
  • 免疫の働きを整える点滴治療(免疫グロブリン療法)
これらは、脳へのダメージが広がるのを防ぐことを目的として行われる治療です。

インフルエンザ脳症の治療方針はどのように決まりますか?

インフルエンザ脳症の治療は、その方の症状の重さに応じて決められます。
症状が軽い場合と、意識が低下したり、けいれんが続いたりする重い場合とでは、必要な治療や管理の方法が異なります。
基本となるのは、身体の状態を安定させるための治療です。例えば、下記のような対応を症状に合わせて行います。

  • 呼吸や血圧を保つ
  • 点滴で水分や栄養を補う
  • 体温やけいれんをコントロールする
このように、そのときどきの症状や経過をみながら、治療の内容や強さを調整していくのが、インフルエンザ脳症の治療の基本的な考え方です。

インフルエンザ脳症の後遺症について教えてください

インフルエンザ脳症の罹患後の経過は、治療や医療体制の進歩により、近年は少しずつ改善してきています。
これまでの報告では、命を落とすケースや、何らかの後遺症が残るケースが一定数あることがわかっていました。ただし、すべての方に後遺症が残るわけではなく、身体に大きな障害を残さずに回復する方も多くいます。
一方で、後遺症が残る場合には、下記のような症状がみられることがあります。

  • 手足に力が入りにくくなる、動かしにくくなる
  • 発作(けいれん)を繰り返す
  • 記憶や集中、考える力に影響が出る
後遺症の種類や程度には個人差が大きく、軽い症状で日常生活にほとんど支障がない場合もあれば、リハビリや長期的な支援が必要になる場合もあります。
そのため、急性期の治療だけでなく、回復後も継続して医療機関で経過をみていくことが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ

インフルエンザ脳症は、医療の進歩によって以前より回復する方が増えてきている一方で、今でも命に関わったり、後遺症が残ったりする可能性のある重い病気です。
そのため、もっとも大切なのは、インフルエンザにかからないこと、そしてかかっても重症化しないようにすることです。
具体的には、下記のような基本的な対策が、ご自身や大切な家族を守ることにつながります。

  • 流行シーズン前にインフルエンザワクチンを接種する
  • 流行期には、マスクの着用やこまめな手洗いを心がける
  • 発熱後に「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに医療機関を受診する

また、インフルエンザ脳症は、まれだけれど知っておくことですみやかに医療機関にかかり、重症化を防げる病気であることをぜひ覚えておいてください。

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