「麻疹の予防接種」はどんな副反応が現れるかご存知ですか?【医師監修】

麻疹(はしか)は、発熱や発しんを伴う感染症で、感染力が強く、重大な合併症のリスクもある疾患です。現在はワクチンによって予防が可能となっている一方で、ワクチン接種歴があっても抗体価が十分でない世代が存在します。
本記事は、麻疹の基礎知識や予防接種の重要性、接種回数や時期、大人が接種を検討すべきケース、副反応や接種後の過ごし方などを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
麻疹の予防接種とは

麻疹とはどのような病気ですか?
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症です。発熱や全身の発しん、咳、鼻水、目の充血などの症状がみられ、空気感染・飛沫感染・接触感染によってヒトからヒトへ感染します。
感染力が強く、免疫を持たない方が感染した場合、ほぼ100%発症するとされています。肺炎や中耳炎、脳炎などの重い合併症を起こすことがあり、先進国であっても死亡例が報告されている感染症です。麻疹を発症すると、生涯にわたる免疫(終生免疫)を獲得すると考えられています。麻疹の予防接種が必要な理由を教えてください
麻疹は重症化や合併症のリスクが高いため、ワクチンによる予防が重要です。
麻疹あるいは麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を1回接種すると、通常は95%以上の方が免疫を獲得します。ただし、1回の接種で免疫がつかない方も一定数存在します。
そのため、日本では2006年以降、2回接種制度が導入されています。
麻疹の予防接種を受けないときに想定されるリスクはありますか?
麻疹は肺炎や脳炎などを合併し、後遺症が残る場合や、まれに命に関わることもあります。
また、発症する少し前からウイルスを排出するため、本人が気付かないうちに周囲へ感染を広げてしまう可能性があります。麻疹にかかると重症化や重大な合併症のリスクが高い乳児や妊婦、免疫不全などの理由でワクチンを接種できない方にうつさないためにも、予防接種を受けることが大切です。予防接種を受けることで感染リスクはどの程度減りますか?
麻疹ワクチンは高い有効性があり、1回の接種で95%以上の方が免疫を獲得するとされています。1回接種で免疫を獲得できなかった場合でも、2回目の接種によって免疫を得られる可能性が高まります。
仮に1回接種後に免疫を獲得できなかった方が流行地域で麻疹に曝露された場合、感染・発症する可能性はありますが、その割合は約5%とされています。2回接種を行うことで、こうしたリスクをさらに低下させ、集団全体として麻疹の流行を防ぐ効果が期待されます。
参照:『麻しんQ&A(麻疹ワクチンについて)』(国立健康危機管理研究機構)
麻疹|予防接種を受ける時期と方法

子どもはいつ麻疹の予防接種を受けますか?
日本では、麻疹の予防として多くの場合麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を2回接種します。定期接種のスケジュールは、第1期が1歳、第2期が5歳以上7歳未満です。
なお、周囲で流行があるなどの事情で0歳(1歳未満)に緊急的に接種した場合は、1回目として数えず、1歳になったら改めて第1期を接種します。
子どもが麻疹の予防接種を受ける際の手続きを教えてください
麻疹の定期接種を受け忘れたときはどうすればよいですか?
麻疹の定期接種を受け忘れた可能性がある場合や、接種回数が不足している疑いがある場合は、自治体やかかりつけ医へ相談が必要です。
母子健康手帳や予防接種済証で接種歴(いつ・何回接種したか)を確認しましょう。定期接種の実施主体である市町村では、医療機関から提出された予診票に基づき予防接種台帳を保管しています。そのため、居住地の自治体に問い合わせることで、接種記録を確認できる場合があります。大人でも麻疹の予防接種が必要になるケースはありますか?
2024年度の感染症流行予測調査によると、全年齢でみたEIA抗体価2.0以上の抗体保有率は96.6%と高い一方、麻疹抗体陽性と判断されるEIA抗体価4.0以上の割合は全体で86.6%にとどまっています。
特に年齢別にみると、50歳未満の多くの年齢層で抗体保有率が95%を下回っており、10代や20代、30代を含む複数の世代で免疫が十分とはいえない状況が確認されています。
また、8~47歳では、高い抗体価(EIA抗体価16.0以上)を保有する方の割合が50%未満です。
ワクチン接種歴があっても免疫が十分に維持されていない可能性が示唆されています。
厚生労働省も、定期接種の対象年齢(1歳児、小学校入学前1年間)以外の方で、麻疹にかかったことがなく、ワクチンを1回も受けたことがない方にかかりつけ医への相談を呼びかけています。
また、2000年4月2日以前に生まれた方は、定期接種として2回のワクチン接種を受ける機会がなかった、あるいは1回のみだった世代に該当する可能性があります。そのため、麻疹の罹患歴がなく、2回の予防接種を受ける機会がなかった方のうち、医療関係者、児童福祉施設や学校などの職員、集団生活に関わる方、流行国へ渡航予定のある方は、追加の予防接種(2回目)を含め、かかりつけ医への相談が重要とされています。
大人が麻疹の予防接種を受ける方法を教えてください
大人が麻疹の予防接種を受ける場合は、麻疹にかかったことがあるか、何回ワクチンを接種したかを確認します。母子健康手帳や予防接種済証などで記録が残っていれば判断できますが、接種歴が不明な場合も少なくありません。
接種歴がはっきりしない場合や、免疫が十分か不安な場合には、医療機関で麻疹の抗体検査を受け、免疫の有無を確認する方法があります。抗体検査の結果、抗体価が低い、または免疫が不十分と判断された場合には、医師と相談のうえで麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)などの予防接種を検討します。
参照:
『麻しんQ&A(麻疹ワクチンについて)』(国立健康危機管理研究機構)
『接種記録について』(厚生労働省)
『麻しん』(厚生労働省)
『麻疹の抗体保有状況―2024年度感染症流行予測調査(暫定結果)』(国立健康危機管理研究機構)
麻疹の予防接種における副反応と対処法

麻疹の予防接種にはどのような副反応がありますか?
麻疹の予防接種後には、身体が免疫をつくる過程で副反応がみられることがあります。発熱は接種した方の2割程度、発しんは1割程度にみられます。接種後5~14日頃に現れることが多く、通常は数日で自然におさまります。
そのほか、かゆみや、注射をした部位の赤み、腫れ、しこり、リンパ節の腫れなどが起こることもありますが、多くは一時的なもので、治療を必要とせずに改善します。
一方で、頻度は低いものの、重い副反応が報告されることもあります。アナフィラキシー様症状、急性血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症、けいれん、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などが挙げられます。いずれも0.1%未満で、報告例のなかにはワクチンとの因果関係が明確でないものも含まれています。予防接種後にどのような症状が現れたら受診を検討すべきですか?
予防接種後に、発熱や発しんが数日以上続く場合や、症状が強く日常生活に支障が出ている場合には、自己判断で様子を見続けず、早めに医師や医療機関への相談・受診を検討してください。
また、元気がない、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、意識の状態がおかしいなど、普段と明らかに様子が異なると感じた場合も、速やかに受診しましょう。
予防接種後は入浴してもよいですか?
発熱や軽い麻疹様の発しん、咳や鼻水、食欲低下などの症状が現れている時期は、無理に入浴せず、激しい運動や外出を控えて安静に過ごすことが大切です。症状の多くは1~3日程度で自然におさまるため、体調が回復するのを待ちましょう。入浴する場合でも、短時間で済ませ、身体を冷やさないよう注意してください。
参照:
『予防接種と副反応 麻しん風しん混合』(かつらぎ町)
『MRワクチン』(厚生労働省)
『麻しんの予防接種の実施について』(厚生労働省)
編集部まとめ

麻疹は、免疫を持たない方が感染すると高い確率で発症し、肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こすことがある感染症です。一方で、ワクチンによって高い予防効果が期待できる疾患でもあり、日本では2回接種制度が導入されています。
子どもは、定期接種の時期に合わせて接種を受けることが重要です。また、大人の場合でも、接種歴が不明な方や、1回のみの接種で終わっている可能性がある世代、医療・教育・福祉など集団生活に関わる方、海外渡航を予定している方などは、抗体検査や追加接種を検討する意義があります。
接種歴に不安がある方はかかりつけ医や自治体へ相談しましょう。
参考文献


