2型糖尿病は、糖尿病のなかでもっとも多いタイプの糖尿病であり、年々患者さんの数が増加しています。初期には自覚症状が出にくい一方で、病状の進行に伴いさまざまな合併症がみられるようになります。このため、正しい理解と早期からの対応が重要な疾患です。本記事では、2型糖尿病の基礎知識、診断や治療法などを解説します。
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2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。
2型糖尿病の概要

2型糖尿病とはどのような病気ですか?
糖尿病は、血液中のブドウ糖の量が増え、
血糖値が慢性的に高くなる疾患です。
インスリンと呼ばれるホルモンは、血液中のブドウ糖を細胞の中へ移動させるのを助けます。
インスリンの分泌が減る、分泌はされるのに
効果を発揮できない、などの状態になると
血液中にブドウ糖が増え、血糖値が上昇します。
2型糖尿病は、このインスリンの分泌低下と、インスリン抵抗性(効き目が悪くなること)が合わさることで、血糖値が高くなる病気です。
2型糖尿病の原因を教えてください
2型糖尿病の原因は、完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境的素因の二つが合わさっていると考えられています。2型糖尿病の発症に関連する原因遺伝子が報告されており、そのなかでもKCNQ1は日本人の発症に強く関わっているとされます。このような遺伝的素因によってインスリンを分泌する能力の低下した状態に、環境的素因が加わると2型糖尿病を発症する可能性があります。環境的素因の具体的なものは、食べ過ぎ、運動不足など生活習慣の悪化からくる肥満、インスリン抵抗性です。
2型糖尿病の患者数を教えてください
2型糖尿病の患者さんの数は正確にはわかっていませんが、年々増加傾向にあるとされています。2016年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる成人は推計1,000万人となり、1997年の調査開始以来初めて1,000万人を超えました。さらに、2024年の調査では約1,100万人にのぼると報告されました。このうちのほとんどが2型糖尿病の患者さんといわれています。
参考:
『糖尿病の疫学』(日本内科学会雑誌 110 巻 9 号)
『令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要』(厚生労働省)
1型糖尿病と2型糖尿病はどう違いますか?
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があり、その成り立ちが大きく異なります。1型糖尿病は、自己免疫の異常などにより膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されてしまい、インスリンがほとんど出なくなる疾患です。発症は若年の方に多く、症状は急に現れることが多いとされます。インスリンが絶対的に不足するため治療にはインスリン注射が必須です。
一方、2型糖尿病は前述のように遺伝的素因と環境的素因の影響でインスリンが効きにくくなったり分泌不足になったりして起こる病気です。発症は中高年の方に多く、症状が出ないまま静かに進行することもあります。治療は食事療法、運動療法を基本として、必要に応じて薬物療法が選択されます。このように、1型糖尿病はインスリンが分泌されなくなる病気であり、2型糖尿病はインスリンの分泌が不十分になるだけでなく、効き目も悪くなる病気です。
2型糖尿病の症状と合併症

2型糖尿病の主な症状を教えてください
2型糖尿病の初期には、ほとんど自覚症状がみられません。症状がまったくないまま、健診などで糖尿病が疑われるケースもあります。血糖値がとても高くなると、のどの渇き、多飲、多尿、体重減少、疲れやすさなどの自覚症状が現れることがあります。さらに血糖値が上昇すると、意識障害をきたす場合もあります。なかには急に高血糖の症状が出現する方もいます。ただし、基本的には2型糖尿病の症状は初期には出にくく、症状が出る頃には、すでに病気がかなり進行している可能性があります。
2型糖尿病には合併症がありますか?
2型糖尿病の合併症は、
急性の合併症と
慢性の合併症の大きく二つに分けられます。
急性合併症は、短期間で生命に関わる状態となる合併症です。代表的なものに
糖尿病性昏睡があります。糖尿病性昏睡は、
糖尿病性ケトアシドーシスと
高浸透圧高血糖症候群と呼ばれる二つの病態があり、いずれも緊急での治療が必要です。
一方で、慢性合併症は高血糖が長期間続くことにより徐々に進行する合併症を指し、主に血管の障害によって引き起こされます。障害される血管の大きさにより、細小血管合併症と大血管合併症に分類されます。細小血管合併症には、具体的に糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症があります。この糖尿病の三大合併症は、進行するまで症状が出ないことも多く、注意が必要です。
大血管症は、動脈硬化の進行によって引き起こされます。具体的には
脳梗塞、心筋梗塞、足の動脈の狭窄や閉塞(末梢動脈疾患)などです。また、このほかの慢性合併症に、
感染症、足の病変、認知症などがあります。
2型糖尿病を治療しないとどうなりますか?
2型糖尿病を治療せずに放置すると、深刻な合併症がみられるようになります。細小血管合併症が進行すると、先ほど挙げた糖尿病の三大合併症が出現します。糖尿病性神経障害には、末梢神経障害と自律神経障害があります。具体的には手袋や靴下をはいたような異常な感覚、手先や足先のしびれ、立ちくらみ(起立性低血圧)、便秘、下痢、排尿障害などが出現する可能性があります。糖尿病性網膜症では、視力低下などの症状がみられ、失明に至る可能性があります。糖尿病性腎症では、腎臓の機能が低下し、最終的には透析治療が必要となるケースもあります。
大血管合併症には、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患(足の血管が細くなったり詰まったりする病気)などがあります。これらの合併症は重大な後遺症を残したり、命に関わる状態になったりする可能性があります。
2型糖尿病の治療法と生活上の注意点

2型糖尿病の検査方法と診断基準を教えてください
糖尿病の診断には、主に血糖値およびHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)などの血液検査が行われます。具体的な項目は次のとおりです。
- 空腹時の血糖値が126mg/dL以上
- 随時血糖値(任意の時間に測定した血糖値)が200mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が200mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
これらのいずれかを満たす場合を糖尿病型と呼びます。別の日に行った検査でこの糖尿病型を2回以上認める場合、糖尿病と診断されます。ただし、HbA1cについては、2回のうち1回は必ず血糖値の検査が必要です。また、同一採血であっても血糖値とHbA1cがそれぞれ糖尿病型を満たす場合は、1回の検査のみで糖尿病と診断されます。
明らかな糖尿病の症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)がある場合や、典型的な糖尿病網膜症が認められる場合は、1回の検査で診断が確定されます。このように糖尿病と診断されたのち、症状や経過、自己抗体(1型糖尿病に関連するもの)の有無などを総合的に判断して2型糖尿病と診断します。
2型糖尿病の主な治療法を教えてください
2型糖尿病の治療は、
食事療法、運動療法、薬物療法の3つの柱から成ります。まず基本となるのが食事療法です。適正なエネルギー量(カロリー)を摂取し、過剰にならないよう気を付けます。1日の摂取エネルギー量は、年齢、身長、活動量などを考慮して個別に設定されます。さらに、炭水化物、たんぱく質、脂質をバランスよく摂り、食物繊維を多く含む食品を取り入れます。栄養バランスのよい食事を規則正しく摂るようにしましょう。また、食塩の過剰摂取は高血圧の原因となるため、食塩を減らし味付けを工夫します。
次の柱は運動療法です。食後の運動は、ブドウ糖や脂肪の利用が増えるため、食後の血糖値の上昇が押さえられます。また、運動によってインスリン抵抗性が改善し、血糖値のコントロールが改善します。具体的には、散歩、ジョギング、自転車エルゴメーターなどの有酸素運動が適しています。このほかに、ダンベルなどのおもりやマシンで筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動も行うとよいとされています。
食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが不十分な場合に、薬物療法が追加されます。薬物療法には経口薬と注射薬があります。経口の血糖を下げる薬にはさまざまな種類があり、患者さんの状態に応じて選択されます。経口薬のほかにインスリン注射やGLP-1受容体作動薬などの注射薬が用いられることがあります。
2型糖尿病の人が日常生活で気を付けることはありますか?
2型糖尿病の方が日常生活で気を付けることでまず大切なのは禁煙です。喫煙はインスリン抵抗性を高めることがわかっています。また、健康的な体重を維持することも糖尿病の管理のうえで重要です。健康的な体重を維持できるよう、体重測定しながら食事管理を行います。食事療法、運動療法と併せて日常生活の管理も継続しましょう。
編集部まとめ

2型糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどないことが少なくありません。治療を行わずに放置すると、神経症や網膜症、腎症といった細小血管の合併症や、心筋梗塞などの大血管の合併症を引き起こすおそれがあります。治療の基本は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善と薬物療法です。早期に発見し、適切な治療と自己管理を続けることで、合併症の発症や進行を防ぐことができる可能性があります。健診で血糖値の異常を指摘された場合や、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。